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『ガチャン』
少し重い扉を押し開く、カランという音とマスターの「いらっしゃい」という小さな声が聞こえる
カウンター席の一角にはもう軽い人だかりができていた
これはいつもの事、男は特に気にするでもなく歩みはじめる
男の向かった先、人だかりの中心には、
グラスに手もつけず、タバコを咥え、目を閉じて座っている女性が居た

「おまたせ」
「・・・遅いよ」
「ごめんごめん」

女性は不機嫌そうに言っていたが顔は嬉しそうだった
男が女性と話を始めるのを確認すると人だかりが減っていく
『なんだ、男連れかよ・・・』『ちっくしょー、俺マジで狙ってたのに』
という声がそこらから聞こえ、男には恨みがましい視線が注がれる

「相変わらず、リザはもてるね、今日は何人?」
「数えるのも面倒臭いね」
「はは、マスターいつもの奴」

言うと、スッと男の前にグラスが置かれる
口ひげのマスターは無言で二人の側から離れていった

「じゃぁ、今日もお疲れ様」
「オツカレサマデシタ」

わざとらしく答えるリザードンに苦笑しながら男はグラスを持つ
『キン』とグラスの合わさる音が二人の間に響き、続いてリザードンの喉が『コク』っと鳴った

リザードンはタバコをもつ手で長い髪を軽くかき上げ、そっとグラスを置く
グラスにはほんのりと口紅が着いていた
その様子を見ていた男は思わず胸が弾む
男の周りには女性が多く、元々鈍感なのもあって男の女性への免疫、耐性は比較的強い
しかし彼の周囲でこういった『色気』を感じさせる女性はリザードンただ一人なのだ
ボーっとしている男にリザードンは首を傾げる

「飲まないの?」
「いや、いただくよ」

男もグッとグラスを傾ける
その様子を見てリザードンもにこりと微笑んだ

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「・・・ピカチュウの様子はどうかな?」
「それは主人であるアンタが一番知ってるはずだけど?」
「それはそうなんだけど、ほら、バナとかイーブイとか・・・その・・ミュウツーとの仲はどうなのかなって」
「あー・・・まぁ、問題ないよ、あんたが心配するような事は何もない
  バナは・・・あの通りだからね・・・ほぼ無関心というかなんというか、ブイは『新しいお姉ちゃんができた』って喜んでるし、
  ツーだってなんだかんだ口では言ってるけど上手くやってるさ」
「そっか・・・」

『コクッコクッ』と男の喉がなる、テーブルに置いたグラスから『カラン』と氷が崩れる音がした
リザードンはタバコの煙を肺に送り込む、吐き出した煙の一部が男にかかるがどちらもそれを気にする様子はなかった

「リザ・・・」
「ん?」
「・・・ありがとうな」
「な、なんだよ、いきなり」

アルコールが回ったのだろうか、リザードンの顔が少しだけ赤くなっていた

「いきなりじゃない、いつも思ってるさ・・・ありがとうな」
「・・・ばーか」

男は楽しそうに笑う
リザードンは男の顔を見ないように、グラスの中身を全て流し込んだ