和漢診療のエビデンス

和漢診療というのは
全身状態をみて、その人の証(体質)に合った漢方薬を処方するもので、「この病気には、この薬」という処方の仕方はしないという。
だから、同じ病気でも人によって違う薬を出すし、(同病異薬)
違う病気でも、体質が同じであれば同じ薬を出す(異病同薬)
と、言うらしい。

当然、今まで回ってきた西洋医学とは診察の風景や考え方は違ってくる。

驚いたのは薬の出し方。

「よし、じゃあ今日はこの薬で行こう。」とか
他の科とはノリが違う。

「この生薬には肝転移を抑えるっていう報告があるから入れてみよう」とか。
基礎研究レベルの話をいきなり臨床の場に持ってきてるわけで、こういう発想は他の科ではありえない。

薬というものは、新薬の開発→前臨床試験→臨床試験(PhaseⅠ~Ⅳ)、で10~15年近い、長い期間の研究と審査を経て保険が利くようになって、ようやく臨床で使われるようになる。
たとえば、「ブラックジャックによろしく」の6巻にあったように、日本で膵癌の薬として認められていない抗がん剤は、たとえ同じ腺癌である胃癌の薬として認められていようとも、海外で膵癌の治療に使われていようとも、保険診療で使うことはできない。
たとえ保険が利いても、こういう臨床試験に基づかない治療が行われることはほとんどない。

1976年に漢方方剤のエキス剤が保険適用になったが、当時の医師会長の鶴の一声があったようで、他の新薬が受ける臨床試験も受けていない。漢方に批判的な先生方は、こういった経緯にも問題があると考えているようだ。

最近は、そういう批判に応えるためか、和漢診療にもEBMを取り入れようと、臨床試験が行われているようだ。例えば鼻アレルギーに小青竜湯が有効であるということがRCT-trialで証明されていたり、個々の方剤や生薬では効果が確認されているものもある。

しかし、それは全体の中のごく一部で、EBMの面では他の西洋医学の科とはまだまだ隔たりがあるように感じる。

 

(shimizuguchi)

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最終更新:2007年06月24日 01:13