その感情の名を──


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点々と砂浜の上に広がっていく赤の斑を月の光だけが照らしていた。
その場所には何一つとして、何一つとして、彼を害する者はなかった、
夜の色に染められた海があり、熱を無くした砂浜があり、そして、それらを照らす月だけが存在していた。
それにも関わらず、彼の首筋からは砂浜の白に映える真紅を落とし続けている。

熱を失った海──定のテンポで刻まれる波の音、彼の呻きが波にかき消され、かき消され、かき消され、

そして、呻きが叫びに変わった時、波がかき消され、かき消され、かき消され、かき消され、かき消され。




再び、海に波の静寂が取り戻され、
砂浜にはただ、意識を失った彼の姿だけがあった。


月の光だけがそれを照らしている。


波の音、波の音、波の音。

彼に近づく足音を波の音がかき消した。
砂を踏みしめた足跡を月の光がだけ照らしている。

足音、かき消され。 足音、かき消され。 足音、かき消され。

彼の影と彼女の影が重なった時、足音が消えた。
黒い剣士と白い天使を月だけが朧げに照らしている。

黒い剣士──彼の名をガッツといい。
白い天使──彼女の名を恵魅といった。



この殺し合いの環境にも関わらず、さもそうするのが最善であるかのように、
恵魅はガッツの体を揺すり起こそうとしていた。
彼女は眠る彼ならば楽に殺すことが出来るなどと考えもしなかった。
彼女は起こした彼に殺されてしまうことなど考えもしなかった。
ただ、意識を失いながらも苦痛の呻きを漏らすガッツを救いたいと考えていた。
それだけが彼女にあった、それ以外は彼女にはなかった。

一方で、ガッツには意識の空白だけがあり、その空白を埋めようとする悪夢以外は存在しなかった。
夢の中で彼は再生る、全てを失ったあの日の光景を。
踏みしめた仲間の臓物のグニュリとした感触を、浴びてしまった仲間の鉄分混じりの味を、
最早誰出会ったのかわからない程にぶち撒かれた仲間を、焼けるような傷の痛みを、
全てを失い殺された仲間の表情を、目の前で恋人が犯されたことを、

己の苦痛を、仲間の苦痛を、恋人の苦痛を、

再生する。
再生する。
再生する。



夢はクライマックスへと向かう。

化物へと成り果てた友を──敵を見据える。

認識は誤らない、人生を懸けて殺すと誓った男をその目に再び焼き付ける。















夢が終わる────終わった夢を終わらせるために




覚醒。


刹那の空白。




鋼鉄が恵魅の頭を打ち抜いた。



「え……?」
顔面にめり込んだ鋼鉄の拳に、恵魅の口から戸惑いが漏れる。
状態を完全に認識する間も無いままに、二発目の拳が飛ぶ。



乾いた地面に血が染み込み、世にも珍しい真紅の華が咲いた。
月だけがそれを照らしている。




鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。

鋼鉄、破壊。


「可哀想な人…………」
恵魅の呟きは、拳に飲み込まれた。




鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。

「私は……貴方を救ってあげたいだけなのに、貴方は…………」

鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。

「献愛(ボランティア)してあげたいだけなのに…………貴方は…………」

鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。

「人を救ってやろうなんざ、大層な考えの持ち主さんが…………」

鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。
鋼鉄、出血。

「何で、笑ってやがる」


烙印から流れでた血が砂の中に染み込んだ。

鋼鉄、恵魅の体が空を舞った。

海に沈み込む恵魅。








「貴方は…………こういうのが好きなのね!!」


白衣が彼女の裸体にみつしりと張り付いて、恵魅の豊満なボディラインを浮かび上がらせていた。
崩壊した顔面を除けば、どのような男でも魅了するであろう官能的に完全な存在。
美しい女性は華に例えられることがある、ならば彼女は……人間とは思えない官能的な美しさを持った彼女は…………

「官能弛緩吐息(メロルリブレス)」

文字通りの桃色吐息が彼女の口から吐き出された。
それは彼女の蜜、相手の平衡感覚を奪い去る甘い罪。

海水に沈み込んだ恵魅を追撃しようとしたガッツの動きが酒に溺れたかのように曖昧となる。

「何があったかはわからないけど…………そんなに苦しんでいる貴方を見ていられないの、だから…………」

白衣を脱ぎ捨てた彼女は、まるで芸術家によって描かれるヴィーナスの様に美しくあった、
ただ、彼女の腹部にて存在を主張する鬼の面を除けば。

「献愛(ボランティア)させてッ!!!!」

叫ぶと同時に恵魅はガッツへと跳ぶ。
彼女は武器を持っていた、鞭の柔軟さ、斧の重さ、両方を併せ持った恵魅の持つ最悪の武器、

彼女の持つ両の乳がガッツを押し潰した。






舞い上がる砂の中心部に、乳に潰されたガッツの姿がある。
普段の彼ならば、何ということも無いのだろう。
向かい来る乳を避け、あるいは掴み、その超人的な筋力で投げ飛ばす、それを行えば良い、
だが、官能弛緩吐息(メロルリブレス)により奪われた感覚(もの)は大きく、
今の彼に出来ることは、ただ乳の向こうにある敵を見据えることだけだった。



鞭のようにうなる乳がガッツの体を押しつぶすこと無く、嬲っていた。
恵魅の哄笑が高らかに響き渡る。
じわじわと己の豊満な肉体をガッツに味合わせるつもりなのだろう。


乳の猛攻の中、折れた骨の数、吐いた血の量、それを数える必要も無いほどに、ガッツは己の体に受けた傷を認識していた。
己の体を守る鎧は無く、反撃のための義手に備え付けられた武器も、そして幾多の敵を打ち破ったドラゴンころしも取り上げられ、
戦場で鍛えあげられた肉体と精神力だけで恵魅の攻撃を受け続けているこの状況では、まもなく死に至ることも認識していた。

そして、己の指が正常な感覚を取り戻していることも認識している。

恵魅が再度ガッツを潰そうと乳を戻した時、ガッツは己の勝利を確信した。



「両巨乳重爆(ダブルゼットカップボンバー)ッ!!!!」

ガッツの下に死天使の鎌が振り下ろされた。


乳の後にはクレーター以外、最早何も残っていなかった。
喜びが恵魅の豊満な胸の中に広がっていった。
そう、こうすれば良いのだ、
ただ、この様な状況に巻き込まれた可哀想な人達に、官能的な喜びの中、救いを与えれば、それで良い。














グシャ


彼女は背後から迫り来る死に気づくことはなく、心地良い優越感の中逝った。

【恵魅@覚悟のススメ 死亡】




迫り来る死の中、ガッツは敢えてより深く砂の中へと潜り込むことによって、攻撃を避けた。
後は、ただ油断した恵魅を背後から打ち抜けば良い。
デイパックの中から取り出した魔神の金槌を装備し、完全に油断しきっていた恵魅を打ち抜いた。


「結局、何一つとしてすることは変わらねぇ…………」

恵魅のデイパックを回収したガッツはよろめく体を引き摺って歩き出す。

「神気取りの糞餓鬼を殺す…………集められた化け物どもを殺す…………」

気絶するほどの苦痛を与えた神との遭遇、それを意に介すことはしない。

「希った奴らから…………わざわざ…………呼んでくれたんだ、遠慮なく…………殺る………………」

ただ、進む。

ただ、進む。


彼の敵を殺すために、

そう────

「────を」

呟いた仇の名は、波の音にかき消され誰も聞くことはなかった。









【F-9/砂浜/1日目/深夜】

【ガッツ@ベルセルク】
【状態】全身重度の打撲、胸部骨折、腹部骨折、ガッツだから生きてる
【装備】魔神の金槌@DQ5
【道具】基本支給品×2、不明支給品1~5
【思考】
基本:復讐

[参戦時期]
黒い剣士編以降、ロスト・チルドレンの章以前です。

018:状態表探すのダルいから頭に持ってこよう 投下順 020:ゲマ、自殺やめるってよ
018:状態表探すのダルいから頭に持ってこよう 時系列順 020:ゲマ、自殺やめるってよ
初登場 ガッツ 040:夜明けの海岸
初登場 恵魅 GAME OVER
ツールボックス

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