東の山に……

めのまえが まっくらになった!

ぱちくりと目を開け閉めする。
夢だったのだろうか、どこから夢だったのだろうか、まだ夢の中にいるのだろうか。
そんなことをぼんやりと思いながらまっすぐ前に進む。

ゴツン!
暗い中でも目の中に火花が散ったように錯覚する。
ぶつかった。いたい。夢じゃない。

別に戦闘不能に陥ったわけでも、命を落としたわけでもないし、闇の世界を支配する大魔王に昼の世界の光を奪われたわけでもない。
以前に男の子も体験したことがある灯りのないダンジョン、どうくつの中にいるのだ。

普通は入口の光がまだ届ところでたいまつに灯りを点けるのだが、今回は自分から乗り込んだわけではない。
暗闇に目の利かない中、いつのまにかに背負っていたデイバックに手を伸ばし、手探りで松明を探しだし手慣れた様子で灯りを点した。


┏どうぐ━━━┓
┃デイバッグ.....┃
┃┏━つかう━━━━━━━┓
┃┃  地図             .┃
┗┃  コンパス           ┃
  ┃  水               .┃
  ┃  名状しがたい物      ┃
  ┃  筆記用具         .┃
  ┃  名簿             ┏━━━━━━━━━━━━┓
  ┃  時計             ┃松明をつかいますか?.   .┃
  ┃→松明×3       .┃→  はい               ┃
  ┗━━━━━━━━━ ┃   いいえ           ┃
                 ┗━━━━━━━━━━━━┛
「うわっ!」

照らされた部屋の様子に気付くと大声を出して驚き尻もちを着いた。
目の前には見た事もない鳥の形をしたモンスターがいた!
……もっとも、本物ではなくてただの石像だったのだけど。
見渡してみるとこの部屋には他にも6つの石像が置かれている。
7つの石像は見た事のない服を着た人だったり、見たことも無いモンスターのものだったり統一感のないものだ。
暗がりで見るそれらの像は、その精緻さも相まって生きているように見えて、大人であっても不気味さを感じるのは必然だろう。

「ちょ、ちょっと驚いただけ!別に恐い訳じゃないよ!」
だってぼくはお兄ちゃんなんだから。そんな言い訳をだれが見ているわけでもないのに繰り返す。

小さな男の子にとってお兄ちゃんであるということはそれだけ大きな矜持だ。
ひょっとしたら実感の薄い王族であることや勇者であることよりも大事に思っているのかもしれない。

「ここにある像ってなんの像だろう?」
一通り騒いだ後に気になったのはそんなことだ。
まるで生きているみたいな石像。それはお父さんやお母さんのことを思い出させる。

「ストロスの杖があれば元に戻るのかなぁ?」

元々持っていたものは没収されて再分配する。
そんなことを言っていたから、きっと誰かが持っているのかもしれない。
「出口を探そう」

ダンジョンの中に入ったらまずする事、と言えば徹底的に隅々まで探し回る事だ。
いいアイテムや武器・防具が転がっていて冒険を楽にしてくれるかもしれないし、不思議なしかけがあるかもしれない。
だけど、それは帰り道をしっかり確認した上でやる事だ。
宝物を探すのは素敵で大事なことだけど、家に帰るのはもっと大事なことなんだから。
だから松明の炎を揺らす空気の流れに従って、奥の部屋への扉を開けた。



唸り声とも呻き声ともなんとも形容しがたい声にならない声のようなモノが断続的に響いている。
部屋にあるのはたった一つの大きな像。それだけの実に殺風景な部屋だ。
マントと鎧兜を装備したその像は騎士のようにも見え、先の7つの像と比べては慣れ親しんだ姿を模ったものだ。
声を発する石像は不気味だけど、それ以上にはっきりと怪しい。

→しらべる

石像の台座が開いてヒミツの階段が見つかった!
像が声を出しているみたいに見えたのは外の空気がここにぶつかって像の中で響いていたのが原因なんだろう。
こういうヒミツの入り口は外に通じているか、お宝を隠すのに使うのが定番だ。
ラインハットのお城みたいで少しワクワクしてくる。
迷う事なく一本道を進む。
通る人が少ないのが原因なのだろう、人工的な少し長い道は直前に通った部屋と比べて荒れているように感じる。
「わぁ!」
辿り着いた出口は外に通じていて、星の散らばった空はこんな時でも素直に綺麗だ。
同時にここが山の頂上である事も理解する。
見渡す限り誰もいないのは残念だけど、高いところは好きだ。
真っ直ぐ進んだ先にはさっきのヒミツの入り口を隠していた像と同じデザインの、それよりも大きな像があって、
ぽっかりと空いた入口から見える部屋の中にはベッドも見えた。
寝る場所を確保出来た安心と、暗さに引きずられて襲ってきた眠気に耐えて最後にもう一つだけやる事をやってから眠ろう。


これはお父さんにだってできないボクだけの勇者の魔法だ。
これを見た、勇者を知る人はきっとここに集まってくる。
仲間が増えれば、みんなで助け合えればきっと、ワルい奴らもやっつけてみんなで家に帰れる。
勇者だなんて呼ばれるけどもボクに出来る事は本当に少ない。
まだ子供だからだ、なんて言い訳も思い浮かぶけど、きっと全てを一人で背負うことなんて大人にも出来ないんだ。
お父さんがそうだったように、ボクも色んな人や、人じゃないものと一緒に闘っていきたい。


「来たれ、希望の雷」

ライデイン!


暗い世界を一瞬、明るい光が照らし出した。

朝起きたらこの石像の上に登ろう、きっと見晴らしがよくてみんな見つかる筈だから。
そんなことを考えながら男の子はベッドに入り、夢の中に落ちて行った。

【D-6 /魔王山最深部/1日目/深夜】
【主人公の息子@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:健康・就寝
[道具]:基本支給品1式(松明をひとつ消費しました)、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:ワルモノを倒してみんなで帰る
1:ここに集められた人と合流して助け合う
2:少し石像が気になる。
[備考]
ライデインによって山に落ちた雷が幾つか離れたエリアでも観測できるかもしれません。



「くそっ、ダメか!」
静かな森だ。生き物の気配が、音が、普通なら聞こえてくる筈の生きている息遣いがまるで見つからない。
何も聞こえないここではまるで生きているのが場違いであるようにすら感じられる。
そんな場所に存在する唯一の音源はこの場に送られてきた参加者の一人、ストレイボウという名の魔法使いの青年だ。
ウェーブのかかった長髪に、魔法使い特有のローブを着た姿は、その面構えと相まり彼の姿に理知的な印象を与える。

しかしその実、彼は感情的な激情家としての一面を持つ。
この場に放り込まれる直前までの彼はオルステッドの引き立て役だった過去に決別する事を彼の感情のままに求め、行動に移した。
見知らぬ子供の言い放つ神との契約は彼の感情にとって魅力的なものではなかったし、彼は人並み以上に正義感を持ち合わせていた。
彼も知る、みんなに好かれている全ワールド一の人気者(ライブ・ア・ライブ 公式冒険ガイドブックbyスタッフより)ワット・ナーベ親子の死も拍車をかけた。
神を名乗るものたちに従う義理はない。
彼が目指すのは反逆であり状況の打破だ。
そのためにも、と試みたアクロフォビアの召喚はまるで手ごたえがない。
健常者が何も考えずに歩く事ができるように、それは息をするように自然と出来ていた筈なのに、その感覚は霧散してしまっている。

「これが、神との不完全な契約、ということか」
魔法使いであるストレイボウにとって明らかに大きな損失だ。
一対一の戦闘に魔法使いは向いていない。前衛となる何かがあってこそ初めて活きる技能であると言ってもいい。
国で二番の実力を誇るストレイボウであってもそのことに変わりはなく、そのためにも情報と言うアドバンテージを増やす事は急務となる。

「■■■■」
詠唱し、念ずるは飛行魔法。
彼が戦闘行動において、平行して幾つもの魔法を使用できない以上、なんの役にもたたない飛行魔法。
だが現状の目的を果たすにはぴったりの魔法だった。
これを用いて薄暗い森の中から遮るものの無い上空へと至った。
状況を打破するためには情報を理解しなければならない。

遮るもののない世界は、それでも薄らぼんやりとした明りしか存在せず明瞭とした輪郭を教えてはくれなかったが、
それでも地図に書かれた地形はおおよそ正しいものである事を教えてくれた。
(もしもあそこが魔王山だったなら、力をまた得る事ができるのかもしれないが……)
憎しみはある、復讐心に陰りはなく、行動指針に揺らぎは無い。
ただ肝心要の力だけが、ごっそり抜け落ちてしまっているのを理解していた。
それが酷く歯がゆい。
そんなことを想いながらも、これ以上の収穫は望めないと現在地を脳内の地図と重ねて確認しながら落ちていく。
そんな中、たまたま向いていたのが魔王山の方向だったのが幸いした。
視界を鮮明な光が走る。
空から降ってきた小さな雷は、それまでおぼろげにしか見えなかった山の姿を鮮明に照らし出し、彼はあれが紛れも無く彼の知る魔王山であることを知った。



ありえない、と呟く。
船乗りは方角や現在の位置を知るために星を見ると言う。
どんなところから見ても共通した星の並びは、古来より伝わる偉大な知の一つだ。
魔法使いであるストレイボウも当然のようにそのことを知っていた。
だからこそ見知った星の並びが存在しない現状は、はっきりとした異常事態だ。

それでも彼は世界中を飛び回る冒険者というわけではない。
自らの知らぬ天体を見てもそういう土地も存在するのかもしれない、そんな可能性を否定しきることは出来なかった。

だが、ここにはたしかに魔王山がありルクレチアが存在しない。

同名の別の土地であるという可能性は自ら視認してしまった以上かき消えた。
これまでの認識では強力な集団の力があれば人間でも再現できないことはない事態だと考えていた。
あの凶悪なまでの顔景色は幻術の類とみれば不可能ではないし、人を攫うのは存外簡単だ、ということは他ならぬ王女アリシアが実証済みだ。

だが、土地一つ、天体一つ組み替えるような、そんな魔法は存在しない。
そんなものはおとぎばなしや神話の時代にしか存在しない事態だ。
人の業ではない、それこそ神や魔王と呼ばれる存在のそれとしか……
「やめだ、やめ」

それ以上はダメだと、逃避にも似た思考に走る理性に、声を出して待ったをかける。
機械仕掛けの神を肯定するようなその発想は逃げでしかない。
この悪趣味な催し物を用意したのがどんな存在なのか結論づけるにはまだ早いし、どちらにせよこれからする事に変わりは無い。
それがどんな存在であったとしても殺し合いに乗るつもりはないし、敵は参加者ではなく主催者だ。

唯一彼の見知った土地へ、魔王山へと足を向ける。
ルクレチアが存在せず魔王山だけが存在する。その意味を確かめるために。

恐れながら、彼は向かう。この行動も思考も全て、オルステッドの引き立て役にしか成れないのではないかと。
奮いながら、彼は向かう。他の誰でもなく、自分こそが状況を打破するのだと。

彼個人としては、この場において数少ない、幸運な人間であったとも言える。
善良な意志のもと、強力な何かに向かって挑戦しているとき、彼は友に対する暗い感情を抑えつけることが出来た。
憎しみも復讐心も嫉妬心も敗北感も全て胸の内に秘めて、いつもどおりに過ごす事が出来た。

今はまだ、彼の感情は見えない主催に向かっている。
今はまだ、全てに取り返しが着く段階だ。
今はまだ、夢を見る事ができる。
今はまだ、今はまだ……

【エリアC-5/森林地帯/1日目/深夜】

【ストレイボウ@LIVE A LIVE】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品1式、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:神に従わない、オルステッドの引き立て役だった過去に決別する
1:情報を求め魔王山へ向かう
2:偽魔王と闘った部屋まで行けば、また力が戻るのではないかと期待
[備考]
参戦時期は魔王山にて岩盤を落としオルステッドたちと別れた以降からの参戦です。
ゲーム中、レベルアップで覚えさせる事が出来る魔法は全て使えますがオディオとしての力は制限されています。
地図がおおよそ正しいことを把握しました、また魔王山が自分の知る魔王山であると認識しました。


011:明けない夜を行け 投下順 013:心閉ザセシ鉄棺
011:明けない夜を行け 時系列順 013:心閉ザセシ鉄棺
初登場 主人公の息子 044:夢の続きの既視感
初登場 ストレイボウ 048:・・・の祈 上空

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最終更新:2012年12月15日 10:03
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