はだかの王様


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ドグンッ……

          ドグンッ……
    ドグンッ……

脳にはっきりと響き渡る心臓の鼓動
それはとても耳障りで、心が乱れる
もうこれ以上聞きたくない、止めてくれ
疲れきった私に、長き戦いからの解放を、どうか


……どうせ私は一度死んだ身なのだ。
骨の髄まで焼かれ、溶かされ、本来ならばそこで終わったはずの命。
それを幸運なことに、この世界で先延ばしにして貰った、ただそれだけ。
もはや未練は無い。これ以上の生を望むなど、あまりにも贅沢な話だ。

……リュカよ、あとは頼んだ……。





【パパス@ドラゴンクエスト5 タヒ亡】










 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・。










―――果たして、本当に未練は無いのでしょうか?




ドグンッ……

          ドグンッ……
    ドグンッ……

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
走馬灯現象……人は瀕死状態に陥ると、脳の中にあるあらゆる記憶が呼び起こされる。
パパスの命は今、風前の灯。……死を目の前にして、彼の過去の思い出は鮮明に蘇る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




パパスはそわそわと落ち着かない様子だった。
玉座に座り、立ち上がり、周囲をうろうろと歩き回り、時折天井を見つめてはため息をついていた。
自分が男であるゆえに、この時ばかりは無力でしかない。
その苦しみを自分が代わりに引き受けられればどんなにいい事だろうか。……無論、それは叶わない。

今彼に出来ることは、ただ、妻を信じて待ち続けることだけだった。

……どれほど長い時間が経っただろうか?
やがて、上の階からざわざわと声が聞こえてきた。
その騒がしい泣き声は、彼が待ち望んでいたものである。
その瞬間に、思わず心が跳ね上がるのを感じた。

やがてドカドカと階段を駆け下りる音がする。
召使いであるサンチョが、嬉々とした口調で繰り返し主の名前を呼んだ。

「パパス様! パパス様! お産まれになりました!!」
「そっ、そうか!!」

ついにこの時が来た。
私とマーサの血を引く子が、今この世に生を受けたのだ。

サンチョはパパスの姿を見て、「ドヒッー!」などと叫びを上げて飛び上がった。
なんということでしょう、その格好はピチピチのハイレグアーマーに、ブリーフを頭から被った超セクシーな装備だった。
そんな危ない水着顔負けの危ない服装の主を見たら誰だって驚く、それはごく自然なことである。


……パパスにはこんな記憶があるのか? いや、無い。
知能が低下してる故に、記憶の一部曖昧になっているだけである。
何もかもパンツが悪い。パンツを被ったパパスも悪い。
それでは、話を戻そう。


パパスはすぐさま階段を駆け上がる。
早く我が子の顔を見たい一心で、全力疾走とも言える速度で走った。
部屋が近づくにつれて、パパスの緊張は徐々に高まる。
いよいよ対面の時が近づいてきたのだ。
どんな顔をしているだろうか、私とマーサ。どちらに似ているだろうか。
不安と期待が入り混じった複雑な感情……それをパパスは首を振って追い払う。
どちらに似ていても構わない! 我々の子なら、きっと凛々しい顔立ちに違いないだろう。

「パパス様、おめでとうございます! 本当にかわいい、珠のような男の子ですよ!」
「うむっ!」

男の子、と聞いて期待が高まる。
私以上に立派な男子へと育ってくれるだろうか。
ゆくゆくは私の座を継いで王になるのだろうな。
……まだ産まれたばかりだというのに、私も気が早いものだ、そんなことを考えながら寝室の扉を開けた。

ベッドの上には、疲労の色を浮かべながらも愛おしそうに赤ん坊を見つめるマーサの姿があった。
マーサは面白装備の夫を見て、一瞬だけ唖然とした表情を浮かべる。
だが、やがて彼女はクスクスと笑った。

「まぁ、あなたったら……」

夫はきっと、自分以上に気苦労をしたのだろう。
そして考えた挙句、私をリラックスさせようとあんな服装で飛び込んできたに違いない。
マーサはそう推測した。なんてポジティブな解釈だろうか。

パパスはマーサのそばに駆け寄り、いたわりの言葉をかける。

「よくやったな! おうおう、このように元気に泣いて……。
 さっそくだが、この子に名前をつけないといけないな」

パパスは泣き声を上げる赤ん坊の顔をまじまじと覗き込み、腕を組んでうーむと唸った。
どんな名前がいいのだろう? どんな願いを込めてあげよう?
必死で頭をひねりながら、なんの気なしに部屋の中を見回した。

そこで目に入ったのは鏡に映った自分の姿。
パンツに書かれていた名前、反転こそしているものの、それははっきりと読み取れた。

「よし、浮かんだぞ! ワタナベというのはどうだろうかっ!?」
「…………。でもね、私も考えていたのです。リュカというのはどうかしら?」

パパスの妄言を一切意に返さずに、マーサは微笑を携えながらそう言った。
妻と子供の姿を交互に見ながら、『リュカ』と言う言葉を吟味する。

「リュカか……。どうもパッとしない名だな。
 しかし、お前が気に入っているならその名前にしよう!」

自分の提案した名前も捨てがたいが、ここまで一番頑張っていたのはマーサなのだ。
彼女がそれがいいと言うのならば、私もそれでいい。
妻の幸せは、私の幸せでもあるのだから。

パパスは赤ん坊を抱き上げると、両手を上げて天へと掲げた。

「神に授かった我らの息子よ! 今日からお前はリュカだ!」
「まあ、あなたったら……」

二人はお互いに笑いあった。
リュカは相変わらず泣いていた。

これから、一緒にリュカを立派に育てられるのか、と言う心配はある。
でもこの瞬間は、二人ならきっと大丈夫さと心から信じることが出来た。
辛いことも、喜びも分かち合って、三人で幸せな家庭を築いていくのだ、と。
……三人で一緒に笑える日が来るだろう、と……。

「っ……! ごほんごほん……」
「おい! 大丈夫かっ!?」

むせる様に咳をする妻を見て、少しだけ不安を感じた。
赤ん坊も不安を感じたのか、先ほどよりも一層泣き声を強くした。



  ドクンッ……

       ドクンッ……
ドグンッ……       ドクンッ……

少しづつ体が軽くなり、少しづつ体が重くなっていく。
その感覚は決して心地よいものではない。
例えるならば、風邪で倒れているそれと似ている。
緩やかな苦痛が不快感を、吐き気を、感じさせた。

           ドグンッ……
  ドクンッ……




血液の鼓動が徐々に早まっていく。

砂がこぼれ落ちるように、赤ん坊と妻の姿が消えていく。

やがてその暗闇に陽が差し込むかの如く、景色が切り替わった。



眼前に広がっているのは一面の大海原。
照りつける太陽の光が波間に反射して眩しい。
カモメたちが騒ぎ立てる声と波の音だけが響く、船の上にいた。
マーサを探し始めてから数年が経った頃の記憶だろう。
ここはビスタの港、海の青と大地の緑、その境目とも言える場所。
傍らには6歳になった息子、リュカの姿があった。

「お父さん、今度はどこに向かうんだっけ?」
「サンタローズ村、わたしたちの故郷だよ」
「故郷……故郷かぁ……うーん……」
「はっはっは。まぁ、リュカは小さかったから村のことを覚えていまい」

リュカには旅の目的は話していない。
だが、この子は小さいながらもずっと私について来てくれた。
きっと友達も出来ず、私もあまり遊んであげられずに、淋しい思いをしてきたに違いない。
だから、そろそろ故郷で腰を落ち着けようと思った。

「まーったく、船長も人がいいよなぁ。
 あんたら親子のためだけに、あんな小さな港によってくれるんだもんなぁ」

船員の一人が声をかけて来た。

「あぁ、本当に感謝している。今までかなりの長旅をお主たちと共にしてきたが、とても楽しかったぞ」
「そっかぁ、お前さんともいよいよお別れなんだな……。
 最初はその気色悪い格好に反吐が出るかと思ったが、慣れると愉快なもんだったぜ」
「ははは。私も、お主の覆面マスクと、乳丸出しの格好には吹き出すところだったからな」
「おいおい、言ってくれるぜ! がっはっはっはっは!」

初めは、誰もがパパスの紳士の服装を哀愁漂う目で見てきた。
そんな最悪な第一印象を持ちながら誰とでも打ち解けることができるのは、持ち前の豪快さと風格によるものだろう。
サンタローズ村を作る際も誰よりも働き、多くの人々に慕われるに至ったのだ。

やがて、港に降りる。
その際に「あっ、パパスさん! 帰ってきたんだね!」と、正直よく覚えていない商人に話しかけられた。
そう、もはや顔を覚えきれないほどの、人望を彼は持っているのだ。
……ただ、知り合いが多すぎるのも困ったものだと思いつつ、彼は適当に話を合わせることにした。

そそくさと話を切り上げて港を出ると、息子が野生のモンスターと戦っていた。
6歳でスライム共とまともにやりあう姿を見て、私に似てたくましく育ったものだと感慨深く思った。
……いや、のんびり見ている場合ではなかったな。
パパスはすぐさま先頭に加担し、モンスターを切り伏せる。

「すごーい! お父さん!」

リュカは目を輝かせて父親の華麗な剣さばきを見ていた。
普段なら軽蔑の眼差しであろうハイレグアーマーも、この瞬間には踊りの衣装を連想させる。
具体的に例えるならば、"白鳥のダンス"、バレエのような軽やかさ、美しさがそこにはあった。
ここまで来ると気持ち悪くない。むしろ清々しい。

瞬く間に魔物を処理したパパスは、勝手な行いをした子をたしなめた。

「まだまだおもての一人歩きは危険だ。これからは気をつけるんだぞ」
「ごめんなさい……」
「だが、なかなかいい戦いっぷりだったぞ、リュカ。お前はきっと強い戦士になるだろう」
「本当!? よぉし、ガンガン強くなって、お父さんみたいになるんだ!」

息子の微笑ましい言葉に思わず笑みがこぼれる。
パパスはそんな健気な息子の頭を撫でながら言った。

「あぁ、きっとお前はお父さんより強くなれるさ。だから、頑張るんだぞ」
「うん!」

息子は大きく、力強く頷いた。
その姿は我が子ながら頼もしく感じたものだ。
私がリュカを鍛えてやらねば、立派に成長するのを見届けてやらねば。
この時、私はそう決意したのだった。

            ドグンッ……

  ドクンッ……
     ドクンッ……
ドクンッ……


幸福な家庭を築くことも、息子の成長を見守ることも、私には結局出来なかった。
骨を砕かれ、肉をちぎられ、黒ずみとなって、あっけなく終わってしまった。
どうも、私にも未練があったようだな。

……だが、私はここで立ち上がるべきではない。
私が犠牲になることでリュカが助かったのなら、それで悔いは無い。
マーサの事も伝えることが出来た。ならば、あとは息子を信じればいい。
父親として、息子を信じて待てばいい。
今までも、これからも、『リュカの未来』を信じてきたのだから。

ドクンッ……
   ドクンッ……


―――あなた……あなたは一度でもリュカを信じなかった時が無いというのですか?

―――もちろんだ。父親として最後までリュカを信じ続けて来た。

―――……いいえ、あなたは気づいていないだけ……あなたは一度だけ、リュカを信じなかった事がありました。



ドクンッ……
         ド……


「あなたは……パパス、さん……ですよね?」
「誰だか知らんが、私に何か用かな?」

気がつけば、自分はサンタローズ村にいた。
目の前には見知らぬ一人の男。
見知らぬ……? いや、私はこの男にどこかで会ったような気がする……。

紫色の布をまとい、杖を持つ立派な体格の男。
ただ、その肉体には痛々しいほど大量の傷跡が刻まれていた。
その腕に、その顔に、皮膚が裂かれた跡が、くっきりと。

「信用してもらえるかわかりませんが……僕は、貴方の息子なんです」
「なんだって? お主が私の息子!?
 わっはっはっはっ! 私の子供はあとにも先にもリュカ一人だけだ!」

パパスは男の言葉を笑い飛ばす。
この男は、悪い冗談を言っているのだと思った。
自分の息子はまだ6歳の少年なのだから。
だから彼は否定をした。「お前は私の息子ではない」と。

男は、少しだけ悲しそうな顔を浮かべた。
彼はため息をつき、そして話を続ける。

「信じてもらえないならそれで構いません。ただ、これだけは聞いてください。
 ラインハットの王からの呼び出しがあるならば、どうかそれを断ってください。
 息子さんとの幸せな日々を続けたければ、悲惨な運命を与えたくなければ、ですけれど」

彼の瞳は妻のものにとてもよく似ていた。
顔立ちも、雰囲気も、リュカにそっくりなことにも気が付いた。
ほんの一瞬だけ、本当に青年となった息子が私に忠告をしに来たのだと錯覚した。

……だが、私はその考えを認めなかった。
もとい、それを認めたくなかったのだ。
自分の息子に『悲惨な運命』が待ち受けているだなんて、考えられるわけがない。
あれだけきらきらと輝いていたリュカの瞳が、こんな光を失った瞳に変わるだなんて信られるものか。

だからこそ自分は、彼の忠告に耳を貸さなかった。
このような結果になるとは、夢にも思うこと無く。



         ……
……
    ……


「……つまり私は、『リュカの未来』を信じてやれなかった。そういうことなのか」
「そう……それでもなお、あなたは一切の後悔も無く死ねるのだと言い切れるのですか?」
「言えるものか……リュカが運命を変えようと伸ばした手を、私は無下に突き放してしまったのだ。
 自分の子供を信じてやれないなど……父親失格じゃないか……」

パパスは頭を抱え、大きくため息をついた。
どうして気付こうとしなかったのか。どうして信じてやれなかったのか。
自分の抱いた理想と違うものを受け入れられないなど、王として、父親として、なんと愚かな思考……。

「あなたはまだやり直せます。何故ならあなたは、まだ命が残っているのですから」
「……マーサ……」

目の前に現れたのは、先ほどから私に語りかけてきた声の主。
6年もの間、ずっと探し続けてきた最愛の女性。
彼女は6年前と全く変わらない微笑みを浮かべて、私をその腕で包み込んだ。

「私としたことが、弱気になりすぎていたようだ……
 マーサ、待っているが良い。必ずこの世界から脱出し、お前を救い出してみせる。
 そして、リュカと3人で幸せな日々を取り戻そう」
「ええ、あなたならきっと大丈夫ですわ」

マーサはそっと手を伸ばし、私が頭に被っているブリーフを外した。

「いってらっしゃい、あなた」
「あぁ、行ってくる」






ドクンッ……

   ドクンッ……







 ドクッ!





「ガハアッ!!」

パパスは血を吐き出しながら咳き込んだ。
大地に流れ出る生ぬるい血の感覚、そして胸部に感じる強烈な痛みがしだいにはっきりとしてくる。
やがて、朦朧とした意識が現実の世界へと覚醒した。

体を起こし、痛みと苦痛の元凶である傷口に目を向ける。
ザ・ヒーローの剣によって深々と左胸に穴を開けられている。……かろうじて心臓をかすめたのだろう。
だがそれでも、おそらく動脈に損傷があったのだろうか。とめどない勢いで血液が溢れ出している。

「……ホ、ホイミ!」

パパスは血がとめどなく溢れ出る風穴に、治癒の魔法を使う。
……一度だけでは足りない。何度も、何度も、何度も唱える。

「ホイミ! ホイミ! ホイミ!」

徐々に傷がふさがっていく。
失った血液は戻らないものの、なんとか傷口を塞ぎ、肉体的損傷を回復することが出来た。

額に流れる脂汗を振り払い、パパスは立ち上がった。
失血によってふらりと倒れそうになるが、なんとか持ちこたえる。

「……リュカ」

我が子の名をつぶやく。
彼の瞳から、輝きが失われてはいけない。
そうだ、その輝きを守るために、私はここに蘇ってきたのだ。
息子に待ち受ける悲惨な運命、それを変えてやらねばいけない。
リュカの幸せを願うのが、親としての義務なのだから。
この戦いにおいて彼が背負っているのは憎しみではなく、愛だった。

彼はまず、血で真っ赤に彩られたハイレグアーマーを脱ぎ捨てた。
それは、これまでどこか慢心のあった自分を脱ぎ捨てる決意の現れでもあった。

一糸まとわぬ裸体になった彼は、そばに落ちていた下着を履く。
それは、いつの間にか頭から外れたワタナベのパンツ。

彼の知力は下がった。おかえり、バカパパスさん。台無しだよ。



彼は、あらゆる臓物が体外に飛び出しているストレイボウの亡骸を見つけた。
天へと旅立った彼のために、両手を合わせて祈りを捧げる。

「すまない、私に力が無かったためだ……、共に戦ったお主の事、忘れはせん」

彼はストレイボウのマントを取り、それをまとった。
自らと共に戦い、ここに散っていった彼の、生きた証を自らの力とするために。



ブリーフ一丁にマントを付けたその格好はさながら変態である。
だが、はたしてこの姿を笑う者は、この場においては誰一人としていなかった。

何故ならば彼は今、目に見えぬ高貴なる魂を纏っているのだから。それを誰が笑えるというのだろうか。
そして何よりも、この場には他人の目が無かったからだ。それで誰が笑えるというのだろうか!



【エリアC-5/森林地帯/1日目/朝】

【パパス@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:疲労(大)、男らしさ全開、失血気味
[装備]:ワタナベのパンツ@LIVE A LIVE、ストレイボウのマント、アームターミナルE(無し)
[道具]:元々着ていた服
[思考・状況]
基本行動方針:息子に待ち受ける"悲惨な運命"を打開する
1:???
[参戦時期]:死亡後、エビルマウンテンで吹っ切れたリュカに会うよりも前

[備考]:ウルミン、ゴーレムは破壊されました。
    ワタナベのパンツはサイズが小さすぎるため、少し動くと破れる恐れがあります。

058:再始動 投下順 060:壊せば、いいんだろ?
058:再始動 時系列順 060:壊せば、いいんだろ?
054:愛を取り戻せ パパス :[[]]
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