強者が弱者を食う、それは当然の話だ。
力の無い者と言うのは、それだけで罪なのだから。
何を為すにしろ、その身に力が無ければ何も始まらない。
ただ、ただ、蹂躙されていくだけ。
それは、この世の当然の理。
決着は一瞬だった。
突如現れた獣人が、体に無数の穴を残して息絶え。
ほぼ同時に現れた鋼鉄の棺桶が、高速で自身へと詰め寄る。
剣を抜く間もなく、体全身に重々しい衝撃が走る。
ふわりと浮遊感を味わった頃には既に遅く、激痛が前進に走る。
自身の体が地面に着地する前に、棺桶はまるでドラゴンのような急速の方向転換を行う。
そのまま流れるように獣人の命を刈り取った、無数の鋼鉄の矢のようなものを放つ。
激痛に加わる激痛、的確に四肢が貫かれていく。
そして、無抵抗のままドサリと重い音と共に体が地面へ着地する。
初撃に比べればなんて事は無い攻撃なのだが、ボロボロの体には効果覿面の追い打ちだった。
腕の一本を動かそうとするだけで全身に走る激痛が身を蝕む。
足りない。
生き残る力が。
痛みを超える力が。
全てに対抗する力が。
彼女を守るだけの力が。
このちっぽけな体には、力という力が足りない。
「く……そ……」
また、あの時のように指を咥えて見る事しか出来ないのか。
そんな事は無い、そんな事はさせないと思って体を動かそうとする。
動かない。
痛みに耐えられない、肉体が動くことを拒否する、本能がさせてくれない。
行動しなければ力は手に入らないのに、体は動かない。
こんなところで寝ている場合じゃないのに、もっと力を手に入れて彼女を守らなきゃいけないのに。
動け、動け、動け動け動け動け動け。
「おい」
声がする。
唯一まともに動く顔を動かし、声のするほうを向く。
「力、欲しいか?」
そこに立っていたのは、悪魔だった。
殺す事は容易かった。
車体による一撃に加え、ノラバルカンを撃てばそれだけで終わりだ。
だというのに、レナはそれをせずにわざと狙いを外して男を生かした。
何故か?
レナの心に、ある一つの興味があったからだ。
ノラバルカンで獣人を打ち抜く前、獣人はある一言を残した。
「ベヘリット…………」
騒音に掻き消えてしまいそうな小さな声を、彼女は逃さず聞いていた。
そして、獣人がその一言を呟いたのはあの男を見たときだ。
考え込むまでも無く、男が首から提げていた赤いアクセサリがそれだと分かる。
一歩間違えればすぐに死ぬという状況で、何故あの獣人はそれを欲したのか?
力だ、生き残る力を手にしようとしたのだろう。
だが、獣人はそれを手にすることが出来なかった。
力を手にする代償と覚悟を、持っていなかったからだ。
空気と起こった出来事と情報から、そこまでを察していく。
ならば。
あのベヘリットというアクセサリは、己に力を与えるのではないか?
何らかの、代償と引き換えに。
そこまで辿り着いたレナを支配するのは、力への単純な興味だった。
「もち、ろん」
地に這い蹲りながらも、自分を睨みつける男が問いかけへと即座に反応する。
「そう」
返事を受け、にやりと笑う。
「力を求めるのは、何故?」
次の質問を、淡々と投げかけていく。
「愛、する人を、救う、ため」
答える男の目は、力に対する"欲"で満ちていた。
何時かの自分と重なる光景に、吐き気を覚えながらもレナは次の質問を投げかける。
「それを失っても力を欲し続ける覚悟がある?」
男が目を見開き、瞬時に黙る。
「力の為に、守りたい何かを手放す覚悟はある?」
力は欲しい、だがそれは愛しの彼女を救うための力。
力と彼女を天秤にかけたとき、天秤が傾くのは彼女の方だ。
彼女を手放してまで、手にする力など無意味に等しい。
「最後に立っているのが自分だと笑っていられる覚悟がある?」
だって、自分が欲しいのは彼女を守る力なのだ。
彼女の刃となり、彼女の盾となり、彼女と共に道を歩む力が欲しいのだ。
自分が生きているのは、彼女を愛し守り続けるためなのだから。
俺は、俺は、俺は、僕は、彼女と共に生きる力が欲しい。
だから、力より彼女が欲しい。
彼女が欲しい、愛したい、愛されたい、傍に居たい。
そのためには力が欲しい、でも彼女は失いたくない。
力は、彼女を守るためのもの。
この身で享受すべきなのは、彼女の愛なのだ。
そのために力を欲しているというのに、彼女が居なければ意味が無い。
彼女を失ってまで手に入れる人生と力に価値は無い。
無意味、無価値。
彼女という存在が無ければ、何もかも色と意味を失う。
自分には、彼女という存在があれば良い。
守るための力、守るための刃、守るための盾。
守るものが無ければ、何の意味もない。
自分の力も、肉体も、人生も。
ああ、フリアエフリアエフリアエフリアエフリアエフリア――――
「甘い」
ぱん
一発の軽い銃声が響いた。
力を欲する姿勢、それにレナは一つの興味を持った。
この男も、何時かの自分と同じなのではないかと。
ここで命を奪わず、生かしておくことでより強大な力を手にするのではないかと。
自分を上回る力、それに対しての単純な興味で男をまずは生かした。
あの日、わざと自分を生かすためにトドメを刺さなかったテッド・ブロイラーのように。
だが、返ってきた答えはそうではなかった。
力を欲していたのは、他人のためだった。
男は、自分が生きるためではなく他人の為に力を欲していたのだ。
自分が生き残るつもりが無い人間が、強大な力を手に出来るはずも無い。
今の自分を作り上げてきたのが、自分が生き残るという確固たる意思ただそれだけだったからだ。
自分の命を顧みない奴に、力は宿らない。
何を捨ててでも前を向く人間にのみ、生き残る力という物は宿る。
何かを守るなんて考えは、甘えだ。
淡々と、淡々と彼女は"作業"をする。
獣人と男の道具を剥ぎ取り、刀を用いて手馴れた手つきで心臓を抉り出す。
返り血も、肉が裂ける嫌な音も、彼女の人生を止めるには弱すぎる。
そんなことで立ち止まっているのならば、彼女は既に死んでいるのだから。
立ち止まらない、失うものも、後悔するものも、何も無い。
生き延びるための力を手にするためなら、なんだってする。
だって、自分が生きなければ意味が無いから。
他人に構っている暇など、一秒だってあるはずも無い。
だから、彼女は前を向き、一つの物を取り出す。
それは、獣人が最後に縋った存在。
弱者たる男が付けていた、アクセサリを手に取る。
本当に、こんなちっぽけなアクセサリが力を与えるというのだろうか?
「力を、寄越せ」
力の為に、彼女は呟いた。
誰もいなかったはずの場所、そこに現れる存在。
人と呼ぶべきか、霊と呼ぶべきか、なんと呼ぶべきか。
自分にはわからないが、そんなことはどうでもいい。
"それ"は、現れた。
声が聞こえているような、聞こえていないような。
そもそもそこにそれがいるのかどうか、分からない。
そんなあやふやな意識の中で、彼女は考える。
獣人は、力を得れなかった。
何故か? 代償が無かったからだ。
男は、力を得れなかった。
何故か? 代償たる者がそこにいなかったからだ。
では、自分はどうか。
捧げるものなど、何もない。
金も、友も、時間も、何もかも。
生きるために、生きるための力を手にするために差し出し、失っててきた。
この手には、全てを失いながら手にした力しかない。
力を捧げて力を手にしても、何も代わりはしない。
もう、力を得るために捧げるモノなんて、自分には何もない――――
いや、ある。
一つだけ、ある。
生きる為に死ぬ。
死ぬ為に生きる。
自分が生きる為、生き延びる力を手に入れる為なら。
彼女は、何も躊躇わない。
生き延びる力さえあれば、自分が生きるための力が手にはいるならば。
自分を縛り付ける命も、肉体も、いらない。
それを手放すことで生き延びることが出来るのならば。
より強力な力を持って、生きることが出来るのならば。
喜んで、差しだそう。
そして、彼女は。
笑顔と、共に。
銃を素早く、こめかみに当て。
躊躇い無く、引き金を引いた。
【イウヴァルト@ドラッグオンドラグーン 死亡】
【レナ@メタルマックス2:リローデッド 死亡】
【レナ@メタルマックス2:リローデッド 死】
【レナ@メタルマックス2 死】
【レナ 死】
【レナ】
終わらない。
むくりと、一人の人間が起きあがる。
いや、人間ではない。
力を手にし、生きる者が起きあがる。
「ふふ、ふふはは」
生きるにふさわしい力。
それを手にするために、彼女は"自分"を失った。
別にかまわない、人間であることを失っても。
別にかまわない、生きられるのだから。
別にかまわない、力が手にはいるのだから。
大事なのは、力を手に生きることだから。
生きて力を手に出来るのならば、自分だって捧げてみせる。
「あははははははははは!!!!」
レナという一人の少女は死んだ。
ここにいるのは、力を手にただ生き続ける。
"存在"
【B-6/森林地帯/早朝】
【" "@俺ODIOロワ】
【状態】使徒化
【装備】三菱GTO(後述状態表に詳細)@現実+改造、黄金銃@真・女神転生
銀の銃弾@真・女神転生、ムラマサ@LIVE A LIVE、星降る腕輪@DQ5、アームターミナル(中身:空)
【道具】基本支給品×4、やくそう*5@ドラゴンクエスト5、ドクンドクン細胞@MM2R、覇王の剣@真・女神転生Ⅰ
ワイアルドの心臓、イウヴァルトの心臓
【思考】基本:力で生き残る。
1:デスクルスへ
【備考】女ハンター、サブジョブとしてレスラーをマスターしています。他のサブジョブは不明。
一番大切なもの"自分"を捧げて使徒になりました。その他詳細は不明です。
【三菱GTO@現実+改造】
【状態】装甲初期状態
【装備】穴1:ノラバルカン
穴2~5:未改造
エンジン:ルドルフ
Cユニット:ATストライク
【道具】なし
【備考】特殊弾は搭載できません。装備は全てMM2Rのものです。シャシー重量はスーパーカーと同等だと思っていただいて結構です。
最終更新:2013年02月06日 15:56