打ち合ったストラディバリとムラサメが火花を散らす。
魔人が操りし比類なき最強の武器ストラディバリと互角に打ち合えるのは、
ムラサメの強さの故だけでは無くカオスヒーローの技量も当然あるだろう。
だが、剣を振るう強さと武器の質、共に分が悪いと判断したカオスヒーローは背後へと跳び、アギを放つ。
だが、アギ程度の火力ではミシカにとっては先程の火花と何も変わらない。
防ぐこともなく、そのままカオスヒーローの元へと突っ込む。
「それが、アンタの力?笑わせないでよッ!」
哄笑と共に、ストラディバリがカオスヒーローの心臓を襲うが、
それを予想していたかのようにカオスヒーローはムラサメにてストラディバリを弾いてみせた。
「なぁに!さっき舐められた仕返しだッ!」
しかし、ミシカの攻撃は未だ終わらない。
『メギドラオンッ!』
超近距離からの最上位攻撃魔法。
これを防ぐ術は普通の人間には存在しない、
だが、混沌の英雄たるカオスヒーローには存在している。
「マカラカーンッ!」
カオスヒーローの呪文によりて纏われた魔法反射障壁が、
メギドラオンを威力そのままにミシカへと跳ね返す。
――耐えられるか?
ミシカの内なる声がミシカに問いかける。
――耐えてみせるッ!
己の心に決意を誓う。
自分の力に耐えられずして、どうするというのだ。
これは儀式だ、反射された自分の力に耐え切り過去の自分を乗り越えろと、
そういう儀式なのだ。
刹那の思考の末、ミシカは歯を食いしばる。
メギドラオンをまともにくらったミシカに対し、カオスヒーローは未だ剣を構えている。
通常ならば、耐えられるはずはない。
だが、アスラ王と合体を果たした目の前の敵ならば容易くと言わずとも耐え切ってみせるだろう。
そして、メギドラオンに合わせての追撃も出来ない。
食虫植物は淫靡な香りにて虫を誘う。
有利な状況であるからこそ、今の相手には近づいてはいけないのだ。
メギドラオンが終わり、ミシカが再び光の中から現れる。
体の至る所が焼け、左腕に至っては炭化し、それでも彼女は笑っていた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!耐えたッ!私は耐え切ってみせたぞッ!」
狂ったように彼女は笑っている、まるで幼子のように無防備な姿をミシカは晒している。
それでも、カオスヒーローは構えたまま動かない。
ミシカのディアラマがミシカの傷を癒していく。
それでも、カオスヒーローは構えたまま動かない。
「マカラカーンがあるから、だから慌てる必要はない…………と、そう考えているの?」
ミシカの問いかけにも、ただカオスヒーローは黙したまま。
いや、よく見れば再びデイパックより取り出したちいさなメダルをムラサメと共に握っている。
ミシカがデイパックから取り出すは、死者より奪いし支給品。
その名を魔封じの杖、相手の魔法を禁じる術を放つという名前通りの魔封じの杖。
『マホトーン』
カオスヒーローの魔法は封じられた。
後はただ放つだけ、最強威力のメギドラオンを。
「コイントスは好きか?」
場違いなカオスヒーローの声が、東京タワーに響き渡った。
術式は終わった。
メギドラオンがミシカの手より放たれる。
「このメダルを弾いて、表面か裏面のどちらが出るか賭けるだけの単純なゲームだ」
ちいさなメダルがカオスヒーローの手より放たれる。
「俺は――」
メギドラオンの光が――
放たれたちいさなメダルに反射されて、ミシカの視力を一時的に奪う。
「俺の出したい方に賭ける」
メギドラオンの中、カオスヒーローはとうとう駆けた。
全身が焼けている。
やはりアスラ王の力は強大だなと独りごちる。
それでも負けてはいられない。
昔の俺に、俺の力を証明してやらなければ。
駆ける。
駆ける。
駆ける。
「俺はきっと、俺の出したい方を出したはずだ」
メギドラオンの中消滅していくちいさなメダルを背景に、カオスヒーローはミシカを咄嗟に殴りつけた。
悪魔と合体したと言えども、それでも人間であるということは悪魔人間となったカオスヒーローが一番に知っている。
何処を殴れば気絶させることが出来るであろうか、それも知っている。
そして悪魔人間すら殴ることが出来る力があることを知っている。
「お前の力よりも、俺の拳の方が強いのさ……」
メダルは裏面で消滅した。
それがカオスヒーローが出したい面だったのかどうかはわからない。
さて、正直なところを言えばカオスヒーローの勝ちの目は少なかった。
アスラ王の強大な力に、魔人が操りし武器、ストラディバリ。
それでもカオスヒーローが勝利したのは、ミシカが過去の彼によく似ていたからだ。
挑発の後、見せびらかすかのように新しい力を放つのではないか、
そうやって相手の魔法を窺ってみれば、案の定メギドラオンを繰り出してきた。
故に、彼はメダルを弾くだけの最小限の力にて勝利してみせた。
◆
カオスヒーローは考える。
何故、気絶させるだけに留めたのだろうか、と。
やはり――昔の己に似ていたからであろうか、だから生かしておいたのだろうか、そう考える。
俺は甘い。
池袋に於いても、結局フツオを助けてしまった。
カテドラルに於いても、ヨシオとは口論するだけで手を出す事はなかった。
そして今、昔の俺に似ている名前も知らない少女の命を奪わなかった。
「ハハッ」
横たわる少女を見て、笑いが溢れる。
俺の甘さは逆説的に強さの証明になっている。
甘かろうが、それで生き残ることが出来ているからこそ強いのだ。
目の前の少女は俺に似ていた。
だから殺さなかった。
最も、彼女が再び起きた時どうするかはわからないが。
ただ、これだけは言える。
俺は、この場において殺さない強さを持っている。
【B-8/東京タワー・ターミナル/1日目/早朝】
【カオスヒーロー@真・女神転生Ⅰ】
[状態]:魔力消費・大、全身に大火傷
[装備]:ムラサメ@LIVE A LIVE
[道具]:基本支給品1式、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本行動方針:もう何かに従う気はない、当然この殺し合いにも。
第一行動方針:少女(ミシカ)の始末をどうつけるか?
[参戦時期]:本編死亡後
[備考]:ちいさなメダルはミシカのメギドラオンによって消滅しました。
【ミシカ@メタルマックス2:リローデッド】
[状態]:気絶、全身大火傷(左腕の炭化はディアラマによってそこそこに治療されました)
[装備]:ストラディバリ@真・女神転生Ⅰ
[道具]:基本支給品*3、青酸カリ@現実、強化外骨格『零』不明支給品(2~9、アスラ王、モズグスの物を含む)、魔封じの杖
[思考・状況]
基本行動方針:生き残る
第一行動方針:殺す
第二行動方針:力を手に入れる
[備考]:『零』に宿る三千の英霊が現在成仏しているため、『零』を装着することは出来ません。
最終更新:2013年03月19日 22:59