第四章 豚からの返信


深夜二時半過ぎ。
僕らの想いは電磁波になり光の速さで大気圏を突破、地球の周りを第一宇宙速度で
回り続けている人工衛星はそれをキャッチするとそのまま日本の、ある男のケータイに送りつけた。


「まだ起きていますか?」


と送信して早1分。さすがに彼ももう寝てしまったのだろう。僕らは半ばあきらめかけていた。
だってそうだろう?普段からこんな深夜まで起きていられるのなら合宿だって苦ではない。
おそらくこれ以上の祭はないのだろうと思ったそのとき、どこからか地響が聞こえた。


ブブブ…


錯覚のようだがそうではない。何かが工部室のマットレスの上で暴れているのだ。
それはすぐに見つかった。まさかとは思ったが、案の定ユニのケータイだったのだ。

受信箱をおもむろに開くと送信者はすぐに判明した。


「 02:32 本山さん 」


起きとるやん!誰もが心の中でこう突っ込んだだろう。
この初夏の爽やかな夜に一人、ベットで何時間も悶々と過ごしていた本山を想像すると
少し気の毒であり、不思議と愛着に似た感情さえ覚えた。

内容はもちろん


本山「起きてるよ」


であった。まぁ返事がきた時点で起きているのは決定したわけだが。

次は当たり障りもなく


「さっきは変なメールと電話してごめんなさい。ああいうの迷惑ですよね?」


と送ってみた。
本山は生粋のMなので迷惑という言葉が当てはまることは一生ないと思うのだが
二通目としてはこういう内容の方が無難だろう。
返事はすぐ返ってきた。


本山「いやいや、こっちこそしょーもない先輩の相手させてごめんな。」


この件が全て片付いたらこいつを殺すとして、やはりメールの返事を見るに
ユニを意識しているのがよくわかる。これはもしかするともしかするぞ!
しかしここで油断してはいけない。第三通目は、


「あの…部誌に書いてあったこと、嘘ですよね…?」


と送った。部誌に書いてあったことというのは、二日ほど前から工部誌を賑わせた
本山に彼女ができた!という書き込みである。これは蜻蛉が作った真っ赤な嘘である。


本山「いやいや、もちろん嘘だよ!!」


本山のドキドキが僕らにも伝わる。汗が額を走り、そして酒を美味しくさせる。
そろそろ畳みかけるか!


「本山さんは私の事、どう思っていますか?」


十分近く待ってようやく返事が返ってきた。この間に本山が何をしていたのか
想像したくはない。とにかく内容を見てみた。


本山「俺にとっては、大事な可愛い後輩です。」


この瞬間僕らは思った。もういけるんじゃね?
僕らは今まで持っていたペーパーナイフを投げ捨て、長く鋭い鉈に得物を変えた。


「今から電話していいですか?」


もう外堀は埋めた。後は網に魚が掛かるのを待つのみだ。
魚は思った以上に早く現れた。


本山「構わんよ。」