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日も暮れ、学生はもうそろそろ帰る時間。
変に調子付いた同学年の奴らの声と、突然の雨音を喧しく思いながらも、顔を上げるとそこにあるのは、空の自分の下駄箱。

案の定、ゴミ箱に捨てられていた靴を拾い上げ、溜息を一つ吐いた。
俗に言う『いじめ』と言う奴だ。
己の自己満足の為か。それとも次の標的にされるのを避ける為か。
何の為にこんな事をするのか。どうせ考えても、それは自分には分かりえない。

なぜなら、いじめる側に立つ事はなく、いじめの標的にしか自分はならないからだ。

傘立てを見ると本来あるはずの傘はまた無くなっていた。
安物だろうがお前のもんには名前を書け、と父親から言われていたし、名前は書いてあった筈。
しかし、名前を書いてようが書いてなかろうがビニール傘はビニール傘。傘がない奴は誰だって持っていく。 いじめの一環として持ってかれた、と考えるにはバカらし過ぎる。
でも継続的に無くなっているのだからいじめの部類である可能性も───
と、ここまで思考して溜息をまた一つ。

あぁ、こんな捻くれた考え方しかしないからいじめられるのか。
そりゃ先生も『小学生の癖に』なんて気味悪がるわ。
そう考えれば自分がいじめの対象になった理由は分かる気がする。
問題が一つ解決したかもしれない。
雨が降っているのに傘が無い事に変わりは無いのだから、目の前にまだ問題はあるのだが。

靴に付着した埃を払い、苛立ちを含んで床に叩き付けた所で、視界の端に男の子の姿が入った。
何かを探しているのだろう、彼の目線は忙しなく動いている。

「どうしたの?」
「傘、なくなっちゃったの」
「君も?実は僕もなんだ」
「キミも?そっか。一緒なんだね」

きっと彼も自分と同じなのだろう。突如降って来た雨を凌ぐ手段を懸命に考えていた。

雨が何時止むのかは分からない。
仮にここで雨宿りしたとしても、雨が止んでくれるとは限らない。

「良かったら、雨が止むまでお話しない?」
「……うん!」

本当にただの気まぐれだった。
普段、人と仲良くしようと思えなかった自分が初めて声をかけた。
結局、雨は止まずに10分くらい話をした後にずぶ濡れになりながら二人とも帰った。
途中からは何時も通りの一人での帰宅だったが、不思議と晴れやかな気分だった。


僕に出来た初めての友達。

それが僕『有坂大輔』と彼『上村俊太郎』の初めての会話だった。


「あ……。もうこんな所まで来ちゃった。それじゃあね!有坂君!」
「それじゃ!また明日、上村君!」

そんな出会い方をしてから僕と彼は色んな事を話す様になった。
休み時間の過ごし方。自分の家の事。嫌いなモノが給食に出た時どうするか。
くだらない事をだらだらと話しながら彼と二人で帰る。
実によくある風景ではあるが、それでも彼との時間は学校での唯一の楽しみだった。

何回も話して分かった事だが、僕と彼には共通点がある。
それは『お互いにいじめられている』事だった。

時も傘を無くしたのではなく誰かに持ってかれていたのだと思う、と彼は語った。
『きっと、間違えちゃったんだよ』と口では言っていたが、その目は何処か悲しげだった。

彼は、いじめられている現状から脱却したい。
僕は、いじめられている事はどうでもいいが面倒だから現状から脱却したい。

本質的な違いはあれども彼には話が通じたし、僕も彼の話が理解出来た。
具体的な対策はちっとも出る兆しが無かったけれども、話すだけで楽になる事もある。
実際、愚痴りあう事で少しは気が楽になったし、彼にも気が紛れるくらいの効果はあったと思う。

その話が出たのは突然だった。
上村君が何時もよりもいくらか感情を抑えたかの様な小さな声でぽつぽつと語り始めた。

どうやら上村君が抱えているのはいじめだけではなく、両親の問題もあるらしい。
いじめについて相談しても聞いてくれなかったり、自分がひ弱である事に関して恥晒しだと暴力を振るわれたり。
自分の親は相談に乗ることも何もなかったが、いつも、決まって学校から帰ると穏やかな顔で僕を見つめるのだ。まるで、何があったのかを見透かすような表情で見てくるのだが、何も言うことは無い。

そんな彼の話を聞いてしまうと、自分が置かれた境遇は彼より温いモノなのだ、と頭が冷えるのだ。

僕だって人間だ。
いじめられれば嫌だと思うし、やめてくれとも思う。
それでも周りに自分よりも苦労している人がいる、と思うと自分の事なんてどうでもよくなってしまうのだ。 僕より苦労している人を見ておきながら、それ以下の苦痛で泣き言を吐くのか、と。
こんな考え方をしているのだから、お前は本当に小学生か?と言われても仕方ない。
だからこそ、先生には気味悪がられ、周囲からはいじめられる。
人間であっても、大分捻くれた、根性の腐ったガキだ。

しかし、彼とは違い僕の両親はおそらくだが、味方だ。
いじめに関して相談した事はないが、それとなく空気で分かっていると思う。
息子の状況を察して置きながら、助けを求めるまで何も言わない。
一般的に見たらふざけた親だ、と思うかもしれない。
だが、基本的に人に迷惑をかける事を嫌う僕には何よりも助かる行為だった。

自分が帰る家すらも敵に塗れ、居場所の無い彼。
家にさえ帰れば安心出来る場所がある僕。

この差を目の前にしてしまうと、自分が気にしている事なんか豆粒のように小さく見えてしまうのだった。

上村君と友達になって約4ヶ月。
仲の良い友達と言っても喧嘩する事くらいある。
きっかけは、僕がクラスのガキ大将に吐かれた『死ね』と言う発言についてだった。

「上村君はさ」
「うん」
「死にたいと思った事ってある?」

答えにくい質問だったのだろう、彼は少し考える様な顔をしてから

「正直に言えばある、かな。でもやっぱり死にたくない。上手く言えないけど、死にたくない」
「死にたくない?」
「うん。やりたい事もあるし、友達も増やしたい。まだ。まだ死にたくない」

これまた普段通りの簡潔な会話。
の、様に思えた。

「有坂君はあるの?」
「無いよ。死にたいとは思わない。何時死んでも良いとは思うけど」
「……どうして?」

この時、上村君の表情が強張ったのを僕は見逃さなかった。
何処か琴線に触れたのだろう。
しかし、その程度で自分の意見が変わる訳じゃない。
僕は言葉を遮る事なく、続ける。

「何時死んでも同じなんだよ。今死んでも、明日死んでも、10年後でも───」
「今死にたいとは思わない。でも、今死んだって構わない」

きっと自分一人が居なくなっても何も変わらないから。
大人からも気味悪がられる様な子供に存在価値があると思えなかったから。
そんな存在の奴が何時居なくなっても関係ないだろう?と。

死ねと言われた直後に窓から飛び降りてやれば良かったか。
次にそう口を開こうとした瞬間、言葉を塞ぐ様に、パチン!と小気味良い音が響いた。
後から頬に来るじんわりとした痛みと、泣き顔の上村君。

「なんでさ!なんで簡単に死んでも良いとか言えるのさ!」
「死んでもいいと思っているから。それ以外に理由必要?」
「そんなの異常だよ!そんなの……そんなの!」

続く言葉を失ってしまったのか。
そのまま彼は、走り去った。
彼が怒った理由も分からずただ、立ち尽くす。
謝るべきなのかも分からない。
自分の意見を述べたら叩かれた。僕にはそれくらいの感覚しかなかったからだ。

彼の生きたいという意見を否定するつもりもない。
自分の意見が絶対に正しいと思わない。

皆それぞれ考えがあるんだなぁ。
その程度の話じゃないか。何故そこまで怒るのか。
幾つもの疑問が頭の中を駆け巡った。


以来彼と一緒に帰る事は無かった。

それから何ヶ月経ったろうか?
突如起きた大勢の殺人事件や、失踪事件と言ったニュースを横目にパンをかじる。
小学五年生から六年生に進級した今も、自分に対するいじめが止まる事は無い。
かつての楽しみだった彼との下校も無くなり、いじめられる為に学校に行く様な現状。
感覚が麻痺してしまったのだろう、既にそれを疑問に感じる事さえも無くなった。

ここでふと、一つの疑問が浮き上がる。
そういえば最近、上村君を見ない。
五年の頃は廊下ですれ違うくらいはあったのに、それすらも無いのだ。
ここまで遭遇率が低いと彼の身に何かあったとしても不思議では無い。
今では交流が無くなってしまったとしても、彼が僕の友達である事に変わりはない。
上村君に何かあったんじゃないだろうか?そう考えるといてもたってもいられなくなった。

「上村君?最近は学校来てないねぇ」
「学校に来てないんですか?体調不良とか両親の都合とか……?」
「うん。先生も詳しい事は分からないんだ。ごめんね?」
「いえ、ありがとうございます」

通算五人目。
今の担任の先生から去年の担任の先生まで、心当たりがありそうな人に片っ端から当たったけども、有益な情報は何一つ手に入らなかった。
どの先生も『詳しい事は分からない』の一点張り。
学校側が上村君についての情報を握りつぶしているのか?
例えばいじめに耐えかねて転校した、だとか。
でも、その程度の事なら隠す必要は無い筈だ、と僕は思うのだ。
実際にはそうなのかもわからないんだけども。

そう、分からないのだ。
小学生の頭と足じゃ情報をかき集める手段も無く、自分が無力だという現実の前にただ項垂れる事しか出来なかった。

僕に何が出来るのか?
彼の親に聞きに行くか?いや、家を知らない。
いじめっこ達に聞くか?いや、いじめる対象についてなんか気にしてもいないだろう。
先生に聞いても答えは出ない。
何も出来ない。分かった事はそれだけ。


かつて二人で歩いていた帰宅路を一人で歩く。
僕達の話し声で賑わっていた住宅街は、今ではとても静かだった。
家を囲うレンガ達と僕の間には人、一人分のスペースがずっと空いている。
日が落ち、夕方になった頃。
蹴った石ころから目線を上げた先にあったのは、力無く猫背の様に頭を垂れた後ろ姿。
間違いない。あの姿は―――

「上村君!」

交差点を曲がった後ろ姿を追う様に走る。
走る。走る。走る。
まだ間に合う。その一心で。

「……あれ?」


後ろ姿が曲がったであろう道には誰もいない。
きっと、急に走った所為で視界が霞んでいるんだ。
そう思い目を擦っても、目に映るのは閑静な住宅街。
見間違い。もしくは、幻か。
らしくない事をしてまで探し求めた姿を目の前で失い、膝から地に落ちる。


遠くへ行ってしまった僕の友達。
コンクリートから膝へと伝わる痛みを意に介す事も無く、僕はその場に座りこんでしまった。


「……大輔、ゴメンな」
「大丈夫。僕気にしてないから」

それから数週間。
殺人事件が多発しており危険だと言う事で説明を兼ねた授業参観が行われる事になった。
子供達に危険が及ばぬ様に警戒態勢を敷く意味でも、子供と一緒に帰宅してあげて欲しいとの事らしい。

しかしながら、僕の父親はその大層な理由の授業参観には参加出来なかった。
母は実家の都合で帰省中。訳ありらしく、授業参観の為にはとてもじゃないが帰ってこられない。
代わりに出れるであろう父親は、それなりに危ない職業の様で、首元の切り傷を始めとして、身体のあちこちに傷がある。
そんな父親が今回の授業参観に参加したらどうなるか?
十中八九騒がれた上に白い目で見られるだろう。
そんな事くらい、僕にも容易に想像が出来た。

「それじゃ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」

自分が煙たがられる分には構わない。
ただ、父親に自分に対する目線と同じものを向けたくなかった。
いつもと同じ一日を過ごし、まさに今は、授業参観開始五分前。
親子の会話で教室内がごった返す頃である。
今日の授業で何問答えられたらゲームを買ってあげるだとか、そう簡単に当てられないから手だけ上げとけだとか。 そんなくだらない会話が四方八方で飛び交っている。
後ろをチラっと見ても、僕の親はいない。 心の中では分かっていても、やはり寂しかった。

「先生、ちょっとお腹痛いんでトイレ行っても良いですか?」
「おう有坂。体調悪いなら先生に聞いてないでさっさと行って来い。授業参観だからって無理して戻って来なくて良いからな?」

もやもやした気分なのはきっとお腹が痛いからだ。
そう無理矢理な理由をつけて、授業が始まるまで僕はトイレに篭る事にした。

「……ふぅ」

便座に座り一息着く。授業が始まるのは後二分くらいだろうか?
このままだと授業開始には間に合わないな。
いや、どうせだから早く出る様に努力しよう。 腹痛に長時間悩まされるのも嫌だ。

上原君の両親は今日来ているのだろうか?
そもそも彼は今日の授業に出ているのだろうか?
両親からも嫌われている、と言っていた彼の事をまた思い出す。

───あぁ、もやもやが取れない。お腹の中もすっきりしない。
いいや、もうトイレから出て授業に行ってしまおうか。
と、便座から立ち上がった。

その次の瞬間。
激しい轟音と共に校舎が揺れた。

「地震!?」

教室の方から子供と親の悲鳴が聞こえて来る。
その声を押し潰すかの様に、壁が崩れる音がした。

この地震は相当デカい。 僕は咄嗟に身の危険を感じ、何時ぞやの避難訓練で学んだ方法を実践する。
頭を抑えて便座の上から動かないだったか?曖昧な記憶から来る方法でも多少は効果があるだろう。

あちこちで人の悲鳴と壁や柱が崩れる音がする。
トイレの壁すらもミシミシと音を立て今にも崩れそうだ。
底知れぬ恐怖に怯えながら、揺れが収まるのを待つ。

約数分間の葛藤の末、揺れは収まった。
あちこちでまだ壁が軋む音が聞こえる。
扉が崩れない様に抑えながら、僕はおそるおそるトイレから出た。

「……え?」
一言で言えば絶句。
教室の壁は歪み、扉は割れて、壁に貼られていた習字の紙が散乱している。
そこまでは良かった。

習字の紙に染みている赤黒い液体。
廊下に充満している生臭い臭い。 そして塊。
そう、紛れもない血と肉片。

地震?違う。これは。
これは何だ?

本能が告げている。
ここから逃げろと。逃げなければお前の命は無いと。
それでも足が震えて動かない。
未だに轟音が奥から聞こえて来る。

来る。

こちらに。

アレはクラスメイトだっただろうか?
顔が良く見えない。
そもそも人なのだろうか?

人の形をしたナニカが教室から飛ばされ、廊下の窓ガラスに叩きつけられた。
付着している血液量から察するに既に命は無い。
最も、恐怖に怯える現状でそんな事を判断出来る訳がないのだが。

湧き上がる恐怖と疑問に答える様に、静かに元凶は姿を現した。


「……上村、君?」

白目を剥き、鋭く尖った牙をむき出しにした人型の化け物。
その服には大量の血痕が付着しており、元の姿を成していない。
口元には血痕と行為に及ぶ際に付着したであろう肉片。
あえて表現するならば吸血鬼、だろうか?

凝視してはいけないと分かっていても見てしまう。

こちらを見た化け物は、何処か上村君に似ていた。

化け物は先ほど叩きつけた人型を掴み直し、こちらに投げつけて来る。
震えている足を生存本能だけで動かし、精一杯の力でソレを避ける。

投げつけられたソレは、床に叩きつけられた事で歪み、形を崩す。
ちらりとソレの表情が見えた。

あぁ、こいつは例の隣のガキ大将だったか。
こいつが俺に死ねと言ったんだっけか───

僅かに残った思考能力が無残な現実を告げる。
コイツは紛れも無い上村君そのものなのだと。

「う、うわああああああああああああああ!」

そして、その思考能力すら押し潰し、少し遅れて恐怖心はやって来た。

本能が赴くままに、僕は廊下を駆ける。
後ろから声にならない騒音を発しながらも、化け物は後を追って来る。
流れる汗を拭う事も無く、永遠に感じられる廊下を、ただ走り続ける。

逃げなくては、と言ってもここは校舎内。
逃げる通路にも必ず限界は来る。

崩れた壁に通路は阻まれ、もうこれ以上逃げられない。
足元には散乱した血痕と割れた窓ガラスの破片。
そして、崩れた壁の欠片のみ。
目の前の化け物は明確な殺意を持って近寄ってくる。


異様に伸びた爪の手が僕の首元に伸びて来た。
こちらに退路が無いと分かっているに違いない。
首元に触れた手はじわじわと嬲り殺しにするかの如く、僕の首を締め上げる。

息が出来ない。
視界が揺らぐ。
退路は無い。

叫びを上げるにも、声を発するだけの酸素は無かった。
ゆっくり、ゆっくりと首を締め上げる力は強くなっていく。

僕はここで死ぬのか?



「上村君はさ」
「うん」
「死にたいと思った事ってある?」
「正直に言えばある、かな。でもやっぱり死にたくない。上手く言えないけど、死にたくない」
「死にたくない?」
「うん。やりたい事もあるし、友達も増やしたい。まだ。まだ死にたくない」

「有坂君はあるの?」
「無いよ。死にたいとは思わない。何時死んでも良いとは思うけど」
「……どうして?」

「何時死んでも同じなんだよ。今死んでも、明日死んでも、10年後でも───」
「今死にたいとは思わない。でも、今死んだって構わない」



僕は。

僕は―――――

一瞬だった。自分でも何をしたのかは分かっていなかった。
揺らぐ視界の中で、指が切れる事すらも構わずに、ガラス片を拾い上げる。

ひとつめ。ガラス片を自分の首を絞めていた腕に突き刺した。
突然の痛みに怯んだのか、化け物はその手を緩める。
ふたつめ。辛うじて腕が逃げ出した後、もう一つのガラス片を目の前の化け物の眼球ヘと向かって刺し込む。
みっつめ。声にならぬ断末魔を上げ、目元を抑える化け物の喉元目掛け、腕に刺していたガラス片を抜き去り、その喉元へと突き立てる。



しばらく響いていた断末魔は、徐々に掠れて無くなった。

僕の首を絞めていた手は地に落ちもう動かない。
目の前に転がっているのは、きっと、かつて友達だったモノ。
僕の初めてのトモダチ。

彼がこんなモノになってしまった理由。 それは分からない。
それでも、これが上村君である事は何故か分かった。
ガキ大将を殺した彼は、醜く姿を変えてでも、自分の中の何かと戦い続けたのか。


僕は何時死んでも構わないと喚いておきながら、恐怖心に堪えきれずに友人を殺したのか。
生きたいと。
まだやりたい事があると言っていた友人を。

生きたいなら、殺すしかなかった。
自分が生きる為に、友達を殺した。

まるで、自分がいじめの標的にならない為に人をいじめ続けた、辺り一面の元クラスメイトの様に。

目の前に広がった地獄の中。耐えられなくなった僕は声にならぬ叫びと共に意識を手放した。



「......父さん?」
「どうした?大輔?」

「僕はどうして病院にいるの?」
「怪我をしたからそれを治すためだよ」

「どうして僕は怪我をしたの?」
「それは、自分を守るために精一杯頑張ったからだよ」



「父さん?」
「どうして僕は、一人で生きているの?」
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