只今より、稜桜学園臨時演劇部ならびに、聖フィオリナ女学院、一般の有志による演劇『桃太郎・改』を上演いたします。 なお、人によっては不快と思われる表現もございますが、舞台に物などを投げないように、最後までごゆっくりご観賞ください。
「…ねえ、こう。有志ってフィオ女からわたししか来てないんじゃない?」「一般からも何人か来てるみたいなんだけど…役者以外なのかな」
- 桃太郎・改 -
むかーしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでいました。 ある日、お爺さんは山へ芝刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、上流の方からなにやら大きな物体が、ドンブラコドンブラコと流れてきました。「なんだろう?」 よく見てみると、それはとても大きな桃でした。「あれだけ大きな桃だったら、しばらくは食べ物に困らないよね」 桃ばかり食べるのもどうかと思うのですが、お婆さんは桃を拾って家にもって帰ることにしました。「う、うーん…あ、あれ?うーん」 あ、持ち上がらないんだ。すいませーん、黒子さんおねがいしまーす。
「…ゆた…コホン…お婆さん、この桃は一体…?」 お婆さんが持って帰ってきた桃を見て、お爺さんは大層驚きました。全然驚いてるように見えませんが、驚いてることにしてください。「えっとね。川で洗濯してたらね、川上の方から流れてきたんだ。ホントだよ?」 身振り手振りを交えて、お爺さんに説明するお婆さん。 それにしても、なんとまあ男前なお爺さんとプリティなお婆さんだこと。配役間違えたんじゃないかしら。「…とりあえず、割ってみる」「うん、頑張ってお爺さん」 お爺さんは桃を割るために、仕事で使う大鉈を持ってきました。ちなみに本物ですので、取り扱いにはご注意を。「…えい」 気合一閃。お爺さんは、桃を真っ二つにしました。すると、なんと言う事でしょう桃の中から…。「…あ、ごめん。やり直し」 …何したの。「…中身まで真っ二つ」「みなみちゃーん!?」 だから取り扱いには注意してっていったのにー!
「中身、何だっけ?」「わたしが徴収した、ゆーちゃんのぬいぐるみ」「…泣かれるぞソレ」「…うん、後で謝っとく」
えーっと…とりあえず、桃の中から玉のように可愛い赤ん坊が出てきました。そう言う事にしといてください。 お爺さんとお婆さんは、赤ん坊を『桃太郎』と名付け、大切に育てました。 赤ん坊は驚くほど早く大きくなり、立派な若者へと成長しました。 そんなある日のこと。「え、えーっと。お爺さん、お婆さん。お願いがあります」 桃太郎が、カンペをチラ見しながら棒読みでお爺さん達にそう言いました。「…なに?」「え、えっと…近頃都では鬼ヶ島から来る鬼共が、金銀財宝を強奪し人々の暮らしを脅かしていると聞きます。わたしはお爺さん、お婆さんに、立派に育てられた恩を返すために、この鬼を討ち人々に平穏を取り戻したいと思ったりなんかして…えっと…ダメかな?」 なんで最後で自信無くすの。「…よく言ってくれた桃太郎。その優しさと勇気に満ちた決意を、わたしが止めることは無い」「お爺さん…」「…ぶっちゃけ、お婆さんといちゃつきたいから、出て行ってくれると有難い」「えー」 ぶっちゃけないで!
と、とりあえず、桃太郎にお爺さんは、都で兵役を勤めていた時に使っていた武具一式を与えました…こんな設定あったっけ?…え、お爺さんが武具を持ってる理由?…そんな細かいところどうでもいいのに。 「それでは、お爺さんお婆さん、行ってくるね」「桃太郎、これを」 旅立つ桃太郎に、お婆さんが袋を手渡します。「きっと旅の助けになるはずだよ」「うん、ありがとうお婆さん」 こうして桃太郎は、謎の袋を手に鬼ヶ島へと向かいました。
………え?謎の袋?きびだんごじゃないの?
鬼ヶ島に向かって桃太郎が歩いている途中、一匹の犬に出会いました。「桃太郎さん、桃太郎さん。鬼ヶ島に鬼退治に向かわれると言うのは本当でしょうか?」「うん、そうだよー」 仮にも鬼退治に向かうって英雄が、そんな気の抜けるような返事でいいのかしら。 それにしてもこの犬。背は高いは、胸はデカイは、犬の癖に生意気な。「…なんだかナレーションから悪意を感じるのですが」 気のせいです。「そ、そうですか…え、えっと、桃太郎さん、お腰のモノを頂けるのなら、鬼退治のお供をいたしましょう」 言い方がエロいです。「エロくないです!」「え、えっと…こ、これかな?」 そう言って桃太郎が謎の袋から取り出したのは………首輪?「えー」 まあ、いいか。仲間が下僕になったくらい、大差ないでしょう。犬だし。「…思いっきり違うと思うんですけど」 うだうだ言ってたら話進まないので、ちゃっちゃと首輪つけて先進みましょう。「う、うん。ゆきちゃんつけるね」「…うぅ、なんでこんなことに」 と言うわけで、犬を下僕にした桃太郎は再び鬼ヶ島を目指して歩き始めました。「それでは桃太郎さん、参りましょうか………桃太郎さん?」 あれ、桃太郎が動きませんね。「…えーっと、ゆきちゃん…なんで四つんばい?」「え?何故って犬ですから…あ、そうでしたね。これが無いと変ですよね」 そう言って犬が差し出したのは、自分の首輪につながれた鎖でした。何時の間にそんなものを。「え、えーっと…引っ張れって事なのかな…」「はい。少し苦しいくらいが良いです」「そ、そうなんだ…」 とりあえず、わたしはノーコメントで。
「…待ちなさい」 桃太郎と犬が旅を続けていると、どこからともなく声が聞こえてきました。「え?ど、どこ?」「桃太郎さん、あそこです」 犬が指差したほうを見ると、一匹の雉が大きな岩の上に、腕を組んで立っていました。「…はっ!」 雉は岩の上からジャンプすると、桃太郎たちの前に軽やかに着地しました。「あなたが桃太郎ね…鬼ヶ島に鬼退治に行くという」「う、うん、そうだけど………お姉ちゃん、キャラ作りすぎ」「うるさい。そんなことより、鬼ヶ島に行くならわたしも連れて行きなさい」 何故か偉そうに雉がそう言いました。「え、えっと、うん…それじゃあ、これを…」「あー、いいから。あんたの腰のモノなんかいらないから。鬼ヶ島に連れて行ってくれるだけでいいわよ」「へ?そ、そうなんだ…」 あ、あれ?ここってこんな脚本だったっけ…。「時間が惜しいの。とっとと行くわよ。ほら、ぐずぐずしない」「あ、うん…」 何故か仕切り始めた雉に、桃太郎と犬が付いていきます。 桃太郎達の旅は更に続きます。「ところで…なんでみゆきは四つんばいで歩いてるの?」「犬だからです」「なるほど」「…納得できちゃうんだ」
一人と二匹に増えた桃太郎一行が鬼が島を目指したいると、今度は前方から猿がやってきました。「ハーイ!ミナサンおゲンキですカー!」 一行はその横を通り過ぎて、鬼が島を目指します。「ホワィ!?ムシですカ!?」 めんどくさそうな相手だというのは分かるんですが、話が続かないので相手してあげてください。「なんだかサベツテキなイトをカンじるのですガ!?」「まあ、ぶっちゃけお供になりたい、と」「イエス!おトモになるカわりに、おコシにつけた…」「うるさい。うだうだ言わずに付いてきなさい」「………イ、イエッサー」 こうして猿は、雉の一睨みで仲間になりました。「…ところで、そうしてミユキはヨつんばいなんですカ?」「犬だからです」「…ナルホド」「あ、やっぱり納得しちゃうんだ」
そして、桃太郎一行はいよいよ鬼ヶ島に到着しました。 都襲撃の成功を祝って宴を開いている、鬼たちが集う広間に桃太郎たちは乗り込みます。「日本一の桃太郎見参!さあ、鬼の大将はどこ!?」 いや、あんたは雉でしょ。「…お姉ちゃん、台詞取らないで」 桃太郎さん、少しは頑張って…。「ふ、小賢しい。我らが大将が出るまでも無いわね」 雉の名乗りを受けて、鬼Aが啖呵をきります。その後には鬼B~Eが続きます。「…わたしら、ドラクエの雑魚モンスター扱いッスね」「…まあ、端役だからしょうがないんじゃない?」「…背景とたいして変わらないよなー」「…う、うん」「その程度の戦力で、我らを退治しようなどと笑止千万!」「…てか、なんか永森先輩ノリノリなんスけど」「…うん、こういうのやりたかったのかな」「鬼の恐ろしさを知りたいのなら、さっさとかかって」「ほわちゃぁぁぁぁっ!!」 紫電一閃。雉のドラゴンキックが鬼Aに炸裂。鬼Aは後方に吹っ飛び、書割の背景をぶち破っていきました。人型の穴がなんともカートゥーンチックです。「やまとぉぉぉっ!?」「永森先輩生きてるッスかーっ!?」 いや、いいんでしょうかこれ。「お、お姉ちゃん…まだ台詞の途中じゃ…」「なんか、演劇と言うキーワードとあの顔がむかついた」「…リフジンキワまってますネ」「…って言うか、永森さんはなにも悪くない気がしますが」「さあ、次は誰?」 軽やかにジークンドーステップを踏みながら、鬼たちを手招きで挑発する雉。「…こーちゃん先輩。お先にどうぞ」「い、いや、ここは後輩が先輩の仇をとりに行くところでしょ?」「ひ、柊ちゃんに運動神経で対抗できるの、この中じゃみさちゃんだけじゃないかしら…」「あ、あれは運動神経どうこうの問題じゃねぇぞ…」 しかし鬼たちは、すっかり腰が引けています。「来ないのかしら?…じゃ、こっちから行くわよ!」 その鬼たちに、雉は容赦なく襲い掛かります。『嫌ぁぁぁぁぁっ!?』
獅子奮迅と言うより雉奮迅…いや、むしろ雉無双な活躍で、鬼たちは蹴散らされました。 そして、争いの音を聞きつけて、鬼の大将が現れ…現れ…あれ?こなたー。出番よー。「…こなちゃん、出てこないね」「…出るに出られないと思いますが」「まったく、しょうがないわね」 雉は少し匂いをかぐ動作をすると、張りぼての岩の前に立ちました。「そこっ!」 雉は岩に手を突っ込み、鬼の大将の角というかアホ毛を引っつかんで、引きずり出しました。「見つけたわよ。さーてどうしてくれようかしら…」「い、いやあの…ごめんなさい…」 思わず謝る鬼の大将。個人的には凄く逃げ出してほしいのですが。「ゴメンで済んだら、桃太郎は要らないのよ」 いや、今も十分にいらないと思います。「い、命ばかりはお助け…」「命まで奪うつもりは無いわ…命の次に大事な貞操は奪うけど」 ちょっとー!こなたに何するつもりなのー!?「うるさい、黙れ」 …はい、すいません。「う、うわーっ!」 鬼の大将はプラバットを改造した金棒を振り回して、精一杯の抵抗を試みます。 偶然にも、金棒の先が雉の顔にペチッと当たりました。「あんっ」 すると、雉は当たった頬を押さえ、変な声を出して倒れました。 なんかハァハァしてますが、気にしないでおきましょう。「え、えっと…えいっ、えいっ」「あんっ、あんっ」 鬼の大将が金棒で打ち据えるたびに、変な声をあげる雉。 なんか恍惚の表情をしてたり、「もっと」とか聞こえてきたりしてますが、気にしないでおきましょう。 ってかもう色々やばそうなので、桃太郎さん鬼の大将斬って終わらせちゃってください。「えーい」「うわー」
こうして、鬼たちを退治した桃太郎一行は、鬼が溜め込んでいた財宝を持ち帰り、お爺さんお婆さんと末永く幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし。
「…ワタシタチがおトモするヒツヨウあったのでしょうカ?」「わたしは、つかさんに連れられて満足ですが」「…そ、そですカ」
個人的な業務連絡。 色々お話がありますので、後でそう君はわたしのところに来るように。
- 終劇 -
キャスト&スタッフ
桃太郎 柊つかさ犬 高良みゆき雉 柊かがみ猿 パトリシア・マーティンお爺さん 岩崎みなみお婆さん 小早川ゆたか鬼の大将 泉こなた鬼A 永森やまと鬼B 八坂こう鬼C 田村ひより鬼D 日下部みさお鬼E 峰岸あやの
ナレーション 泉かなた(故人)
黒子 柊いのり 柊まつり
脚本 泉そうじろう
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