ID:HGs4DHM0氏:私の理由
窓の外が騒がしい。雨が降ってきたみたいだ。 鬱陶しい。 晴れてたからって外に出ることなんて無いけど、それでも雨は鬱陶しい。 ふと、窓の外に人影が見えた気がした。 でも、窓の外は家の庭だ。誰かがいたのだとしたら、それは不法侵入だ。 私は思い切って窓を開けた。強盗だったりしたら危ないのだろうけど、今の私にはどうでもいいことだ。 でもそこにいたのは強盗とかでなく、一人の女の子だった。 私はその子を知っている。中学に入って一年の時同じクラスだったから。二年になった今も、確か同じクラスだったはず。 彼女の名前は泉こなたさん。どう見ても小学生にしか見えない、とても小さな女の子。その体型から、クラスの中でも目立ってたから、よく覚えてる。 泉さんは突然開いた窓に驚き、しばらく私を見つめた後、ポリポリと頭をかいた。「いやー、ごめんね。急に降り出したから、とっさに塀越えて雨宿りに来ちゃったんだよ」 図々しいにも程がある。「…あれ?キミどっかで会わなかったっけ?」 泉さんは私の事は知らないのだろう。登校拒否を繰り返してる人間のことなど、知らなくて当たり前だ。「傘、あげますから出て行ってください」 私は出来るだけ冷たくそう言って、玄関の方に向かった。 傘を持って玄関から出ると、泉さんはまだ私の部屋の軒下で考え込んでいた。 私は彼女に近づき、黙ったまま傘を差し出した。「あ、思い出した。確かわたしと同じクラスだよね?家、ここだったんだ。結構わたしんちと近かったんだね。知らなかったよ」 傘を受け取りながら、泉さんはそう言った。私の事を知っていたようだ。「でも、最近学校で見ないよね?どうかしたの?」 知らないのなら、聞かないで欲しい。話すのは嫌だし、聞かれるのは鬱陶しい。「…帰ってください」 私はそれだけ言い残して、玄関に向かった。「傘、ありがとう。学校で返すね」 背中の方から、泉さんがそう言ってるのが聞こえた。 それは無理だ。学校なんて私は行かないから。 彼女に対し何も答えず、私は玄関のドアを閉めた。
- 私の理由 -
実際に自分が体験するまでは、いじめなんてのは漫画やドラマの中の世界だった。 もっとも、私が受けていじめは漫画とかのように陰惨ではなかったし、私自身がそう言う性格だったからか無視することができた。 相手も反応のない私がつまらないのか、いじめはすぐに止まった。 その代わり無視されるようになった。いじめていた人以外からも無視されるようになった。元々根暗だった私を鬱陶しがってた人は多かったのだろう。 しばらく経って、私は学校に行かなくなった。行ってもつまらない。たまに行けば、鬱陶しそうな視線を向けられる。それが私には、たまらく鬱陶しかった。「やふー。元気?」 ベッドに寝転びながら、色々なことを考えていると、窓の外から能天気な声がした。 私が窓を開けると、そこにいたのは泉さんだった。「…何か用?」「いやー、インターホン鳴らしても誰も出なかったからさ。ついつい入ってきちゃたよ」 そんなことは聞いてない。「玄関、鍵閉まってるみたいだから開けてくれない?」 図々しいにも程がある。「嫌だっていったらどうします?」「このまま窓から入る」 ほとんど強盗だ。いや、クラスメイトな分強盗よりたちが悪いかもしれない。 私は仕方なく玄関を開け、泉さんを部屋に入れた。
「…で、なんの用です?」「お、PS2だ。いいなー。居間に家族共有のはあるけど、わたし専用のはないんだよね」 話、聞け。「…RPGばっかだね。格ゲーは無いのかな?…コントローラーも一つしかないし」「あの、なんなんですか?」 私の声に苛立ちが混じる。本当になんなんだろう、この人は。「ん?ああ、ごめんごめん。今日学校に来てなかったからさ。どうしたんだろうって思って聞いてみたら、ずっと来てないって言われてさ」 私が引き篭もりだって事も知らなかったんだ。「あなたには関係ないことです」 私が出来るだけ冷たくそう言うと、泉さんはポリポリと頬をかいた。「何で敬語?クラスメイトなのに」「…あなたには、関係ないことです」 誰にでも敬語を使うのは私の癖だ。人とぶつからないための私の癖だ。「まあいいか。とりあえず、病気じゃないんなら安心かな。今度格ゲー持ってくるから、対戦でもしよっか」 わけがわからない。この人は一体なにがしたいのだろう。
翌日。泉さんはホントに、格ゲーとやらとコントローラーを持ってやってきた。「さ、やろっか」 もうこの人には何を言っても無駄なのだろう。 飽きるまで適当に受け流すしかない。かつてのいじめの人たちみたいに。「…私、こういうゲームはやったことありませんけど」「あら、そうなんだ?じゃ、基本から教えよっか」 しばらく私は、泉さんから格ゲーの事を色々と教えてもらった。
それから一時間ほど私達は対戦を繰り返した。 初心者の私に遠慮して手を抜いているのか、最初は随分あっさりと泉さんに勝つことが出来た。 しばらくして、私が慣れてきたと判断したのか、泉さんは少しずつ本気を出してきていた。 しかし、それでも私は負けることは無かった。 泉さんの表情に焦りの色が出ているのがはっきりと分かった。 そして、今回もまた私が勝利していた。「嘘だー…」 泉さんが画面を見つめながら固まってる。私が勝ったことが信じられないらしい。「一時間でコレ?信じられないよ…最近はお父さんとだって互角に闘えるようになったってのに…」 どうやら泉さんは、この手のゲームにかなりの自信があったみたいだ。「…ふ、ふふふふ…どうやらわたしは、ダイヤの原石を掘り当ててしまったみたいだね…コレほどの隠れた実力者が、こんな身近にいるなんて…」 なんか怖い。「さあ、もう一度勝負!こんな面白い勝負は久しぶりだよ!」 勘弁して欲しい。
結局その後、私は一度も負けることは無かった。「…出直してくる…」 泉さんは、なんだか弱りきった感じで帰っていった。不謹慎な気もするけど、少し気持ちがいい。 私の部屋には泉さんが置いていった格ゲーが残されている。もって帰るのを忘れたようだ。 彼女はきっとまた来るだろう。ゲームはその時にでも返せばいい。 それにしても…彼女はホントに私とゲームをしに来ただけだったのだろうか。
それから、ほぼ毎日泉さんは私の家にやってきて格ゲーの対戦を挑んできた。 よく懲りないなと思いつつも、私は律儀に泉さんの相手をしていた。 いや、正直に言うと、私に負けてへこんでいる泉さんを見るのは少し楽しかった。 学校で無い場所。自分の家ならば、私はここまで人と関われるのかと、少し驚いていた。 それにしても、泉さんのやりたい事が分からない。こんなことをして何の得があるというのだろう。「…くっそー…なんで勝てないんだろう…」 なんだか、楽しそうではあるんだけど。 ふと、私の頭の中にある考えが浮かんだ。泉さんの目的はアレなのではないだろうか。もしそうなら…それはとても鬱陶しいことだ。
「ねえ、学校には来ないの?」 対戦の休憩中に、泉さんは唐突にそう言った。 どうやら私の懸念は的中したようだ。「…行きません」 私はほとんど声にならないくらいに、ボソリと呟いた。我ながら鬱陶しい態度だ。「どうして?」 その質問が一番鬱陶しい。「…行く理由がありません」 そう、理由が無い。勉強は嫌いだし、大勢の人間がいるところも嫌い。わざわざそんな所に朝早くから行くなんて、鬱陶しいことこの上ない。「そっかー…傘、返したかったんだけどな」 何のことか一瞬分からなかったが、あの雨の日の傘のことだと思い出した。「あれはあげたんです…それに、返してくれるならここに持って来てくれればいいのに…」 私がそう言うと、泉さんはポリポリと頭をかいた。「学校で返すって決めちゃったからね。だから学校に来て貰わないと、わたしが困る」 自分勝手にも程がある。「よし、じゃあ準備があるから今日は帰るね」 泉さんは立ち上がると、部屋から出て行こうとした。「…準備?」 私が思わずそう聞くと、泉さんは実に楽しそうににやりと笑った。「丈夫な縄。明日、キミを縛って引き摺って学校連れてくから」 そう言って泉さんは部屋を出て行った。 …冗談…だよね?
翌日の朝。私は酷い圧迫感に目を覚ました。そして、身体を起こそうとしたが、何故か手足が動かない。 よく見てみると、私の身体は縄で妙に複雑な方法で縛られていた。「おや、起きた?おはよう」 聞こえてきた声の方に顔を向けると、泉さんが椅子に座ってベッドに寝ている私を見ていた。「…これは…一体…」 訳の分からない状況の中、かろうじて私はそれだけを言えた。「昨日言ったじゃん。縛って引き摺って学校連れてくって」「ホントにする人なんていません!」 思わず大声を上げてしまう。泉さんは、何故かニヤニヤと笑ってこっちに向かって右手の親指を立てて見せた。「な、なんですか…?」「初突っ込みゲット」 本気でもう意味が分からない。私は、とんでもない人に関わってしまったようだ。「…わかりました…学校には行きますから、とりあえず縄を解いてください…」 このままだと、本当に縛られたまま学校まで連れて行かれかねない。そう判断した私は、今日一日だけでも泉さんに付き合うことにした。「おお、ようやくその気になった。良かった良かった」「…こっちは全然良くありませんけど」 私の縄を解く泉さんに出来るだけ冷たくそう言ったが、彼女はまったく気にも留めていないようだった。 ベッドから降り、制服をしまってあるクローゼットに向かう。随分と長い間出していないから、虫に食われていないかが心配だ。 出してきた制服をベッドの上に置き、パジャマのボタンに手をかけたところで、泉さんがまだ部屋にいたことに気がついた。「あの、着替えるから出てくれませんか?」 私がそう言うと、泉さんは露骨に嫌そうな顔をした。「目を離したら逃げそうじゃん。それに…」 泉さんがニヤリと笑う。「女子中学生の生着替えなんて滅多に見れないし」 貴女も確か女子中学生だったはず。「いいから、出て行ってください」 私は泉さんの体を押して、無理矢理部屋から追い出そうとした。「少しくらい見せてくれてもいいじゃん、けちー」「そのオヤジくさい視線を何とかしてくれたら、少し考えます」 泉さんを廊下に押し出し、念のために鍵をかけると、私は改めて着替えを始めた。 そして、自分の中の違和感に気付く。 少しだけ…ほんの少しだけ、泉さんと学校に行くという行為が楽しみだと感じていた。
学校までの道を二人並んで歩く。私から話しかけることなんてないし、泉さんも取り立てて話すことを考えてなかったのか、二人とも無言で歩いていた。 よく考えてみたら、こうやって誰かと並んで登校するのは私は初めてじゃないだろうか。
結局私達は一言も話すことも無く、学校に着いた。
「ほい、これ傘」 泉さんは下駄箱の近くにある傘立てから私の傘を引き抜いて、こちらに持って来た。 私は無言でそれを受け取った。「…今から教室に行くのに、傘持って行ったら邪魔じゃないですか」「あら、ばれた?」 私は傘を傘立てに戻しながら、泉さんに向かってわざとらしくため息を吐いた。「そう怒らないでよ。ちょっとしたお茶目だよ」「怒ってません。呆れているんです」 悪びれもせず言う泉さんに、私はもう一度ため息を吐いて見せた。この人は、こういう変なアクションを挟まないと人と話すことが出来ないのだろうか。
私達が教室に入ると、それまで騒がしかったのが一瞬で静まり返り、ヒソヒソとささやき合う声があちこちから聞こえ始めた。 酷く鬱陶しくはあるけど、我慢できないほどじゃない。 教室の半ばまで来たところで、私は自分の席がどこにあるのか分からないことに気がついた。「席、ここじゃないかな」 そんな私の袖を引っ張り、泉さんが一つの席を指差した。「一つだけ席空いてて、不思議におもってたんだよねー」 泉さんはのんきにそう言いながら、机の中を勝手に覗く。つくづく図々しい人だ。「見事に空っぽだねー。教科書とか持って来たの?」 そう聞いて来た泉さんに、私は空っぽの鞄を開けて見せた。「あら…それ、授業どうするの?」「私は、傘を返して貰いに来ただけですから」 泉さんにそう言って、私は席に着いた。 泉さんは少し困ったような顔をして、自分の席へと向かった。
一時間目が終わった後の休み時間。予想通り泉さんが私の席へとやってきた。 余計なことは言わさないようにしよう、そう思って泉さんの方に顔を向けた私は、彼女の後ろにもう一人女子生徒がいることに気がついた。 その顔を見た私は、一体どんな表情をしていただろうか。 彼女の顔は忘れようにも忘れられない、私をいじめていたグループの中心人物だった人だ。 こいつも同じクラスだったんだ。「…あの」 鬱陶しい。声を聞くだけでも不快になる。「…えっと」 何を言いたいのか知らないけど、はっきり言って欲しい。きっとその内容はろくでもないものだろうけど。 そこで私は一つだけ疑問に思った。どうして彼女は泉さんと一緒に私の席に来たんだろう? 答えはすぐに出た。同じなんだ、泉さんも。目の前で何か言いたげにしている彼女と同じなんだ。 手の込んだことをして、私を学校に来させた理由はこれか。欲しかったんだ、私みたいなのが。 私は席を立って、足早に教室の出口に向かった。後ろの方で誰かが何か言っていたが、無視してドアを開けた。
靴箱まで来た私は、傍にある傘立てから自分の傘を乱暴に引き抜き抜いた。この学校に来る理由など無くしてしまいたかったからだ。 ほとんど走るような速さで校門を抜ける。その時、頭に冷たいものが落ちてきたのを感じた。見上げると、曇った空からポツリポツリと雨が落ちてきている。 私は何故か傘をさす気にならず、そのまま家に向かって走った。
家に着くころには、雨は本降りになっていた。
鬱陶しい雨が降る。相当ひどく降っているらしく、雨音がうるさい。 コツコツと控えめなノックの音がした。多分母だろう。私は会う気にはなれずに、無視することにした。 もう一度ノックの音か聞こえた。どうにもおかしい。音が聞こえるのは、ドアの方からじゃない気がする。 私は窓の方を見た。ノックの音はそちらから聞こえてくる気がする。 嫌な予感がした私は、窓に近づいた。外は雨のせいでひどく暗い。私は窓を開けた。「…おー、やっと開いた。早く気付いてよ」 そこに、泉さんがいた。雨の中を歩いてきたらしく、全身がずぶ濡れだ。「いやほら、鞄忘れていったじゃない。もっていてあげようと思ってさ」 私が何か言うより早く、泉さんはしっかりとビニール袋で包んである私の鞄を差し出してきた。「ちゃんと包めてると思うけど、濡れてたらゴメンね」 そう言って、私の手に鞄を押し付けてくる。私がそれを受け取ると、泉さんは少し満足気に頷いた。「それにしても、急に帰っちゃったから驚いたよ。折角お昼一緒に食べようと思ってたのに」 鬱陶しい。どうしてそう飄々としてられの。「…楽しいですか?」「…へ?」「楽しいのかって聞いてるの!」 雨音に負けない私の怒鳴り声に、泉さんの動きが止まる。「どうして私なのよ!私みたいなのが欲しかったら、学校で代わり探せばいいじゃない!あんな手間かけて、そんなに私が嫌いなの!?嫌いなら関わらなければいいじゃない!こっちは引き篭もってるんだから!それをわざわざ引きずり出してまで、あんた達は一体何がしたいってのよ!」 敬語を使うのも忘れて、私は怒鳴り散らした。「…話だけでも…聞いてくれないかな?」 泉さんは少し怯えたような表情で、そう言った。「絶対に嫌!もう私に関わらないで!」 そう言い放ち、思い切り窓を閉める。 だが、窓の閉まる音はしなかった。私の目の前には泉さんの手。窓は泉さんの右腕を思い切り挟んでいた。「…お願いだから…話聞いてよ」 苦痛に顔を歪ませながら、泉さんはそう言った。 私には、彼女の考えていることが何一つ分からなかった。
私は、とりあえず窓から泉さんを部屋の中に入れた。床にタオルを引き、そこに座ってもらう。 相当強く挟んだらしく、泉さんは顔をしかめながら右腕を気にしていた。「騙した風になっちゃったのは、ごめん…ホントは最初から知ってたんだ。キミが引き篭もってたのも、その理由も」 唐突に泉さんがそう言った。「でも、コレだけは信じて欲しいんだ…わたしはキミと友達になりたかったんだよ」 信用できない。私をいじめていた人間と一緒にいて、そんな事信じられるわけが無い。「じゃあ、どうしてあいつと一緒にいたの?」「…頼まれたんだよ…『あの子に謝りたい』って…だから、雨が降ってきたの利用してキミに傘借りて、学校に来る理由を作ったんだ」 回りくどいことをする。「だからさ、もう一度学校に来てよ。あの子の話もちゃんと聞いてあげてよ…学校に行きたくない理由が消えれば、来れるはずだよね?」「どうして…そんな事を」 本当に訳が分からない。泉さんがそこまでする理由が分からない。「さっきいったじゃん。キミと友達になりたいんだよ…付け加えるなら、キミと学校に行きたい。出来れば一緒に卒業したい」 友達になるならこの家でもいいのに、なぜか泉さんは私が学校に行くことにこだわる。そのこだわりが無ければ、今日みたいなことは無かったのに。「…泉さんは、学校が好きなの?」 だから私は、泉さんにそう聞いた。「好きだよ」 何の迷いも無く、泉さんはそう答えた。「あ、でも授業と宿題とテストは嫌い」 それらを除いて、一体学校に何しに行くのか。「…人がね、好きなんだ。学校は色んな人がいるから好きなんだよ」 泉さんはそう言って、私の手を握った。「特に、キミみたいな変わった人が好き」 そう言って、泉さんはニコリと笑った。不思議な事に、さっきまでの嫌悪感が消えていた。「…どうして、私なの?」「言ったじゃん。キミみたいなのが好きなんだよ」 私は、彼女には理由が無いような気がしてきた。 私と友達になりたいから、友達になる。ただそれだけの事のように思える。 そして、ただそれだけのことのために、彼女はここまでやったんだ。「…明日、学校にいくよ」 だから、私は少しだけそれの答えようと思った。「学校行って、あの子と話して、泉さんが嘘ついてないか確かめるよ」 理由は、多分ない。強いて言うなら、泉さんと一緒だろう。「…嘘ついてたら、本気で怒るよ?」 ただ、友達になりたい。私もそう思ってたから、泉さんと一緒に学校に行ったはずなのに。「…うおお、アレで本気じゃなかったんだー」 泉さんが大袈裟に身を竦める。そして立ち上がり、窓の方に向かった。「じゃ、明日は校門で待ってるよ。迎えに来なくて大丈夫だよね?」 そう言って窓を開ける。雨は何時の間にか止んでいた。「…手、ごめんなさい」 泉さんの背中に、私はそう謝った。「キミと友達になれるなら、コレくらい安いもんだよ」 振り返りもせずにそう言うと、泉さんは窓から出て行った。
翌日。学校の校門前に私が着くと、そこには左右にうろうろしている泉さんがいた。 私が本当に来るのか不安だったのだろうが、はっきり言って他の生徒の通行の邪魔だ。 私は泉さんの迷惑行為をやめさせるためにも、少しだけ足早に泉さんの方へと向かった。
- つづく -
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。
下から選んでください: