「まへ~……疲れたぁ……」エスペランザ高原の少し北に《テョモランマ》という鉱山がある。金や銀、銅やマグネタイトという希少価値の高い鉱物が採れることで有名だ。こなた達一行は、そんなテョモランマの山道を歩いている。旅をはじめて今日で三日目だ。「我慢しなさいよ。ザッパーアイン人ってばれたら、もっと辛い思いをするかもしれないのよ?」サンサの近くではザッパーアイン人はあまり迫害されなかったものの、他の町や村ではそうはいかない。中にはザッパーアイン人が入ることすらできない村があるという。それを考えると、ジェリウス人と偽っておいた方がいいのだ。しかし、ザッパーアイン人であるこなたに『大剣』は大きすぎた。「だけど~……重いよぉ……」「短刀のようなものがあればいいのですが……包丁では調理の際に血なまぐささが付いてしまいますし、嫌なイメージしかありませんし……」背中に背負うようにしている大剣を恨めしそうに睨み付ける。ちなみに包丁はキャンプ時の料理に使うために持ってきているのだ。「アタシはそこまで重く感じないけどなぁ」「ザッパーアイン人の腕力はジェリウス人の半分以下という話ですからね」頭の後ろで腕を組むみさおに、みゆきがそう説明した。かがみの腰に差している剣よりは確かに重いが、みさおにとっては片手で軽々と扱えるくらいだった。「泉さん、もう少し我慢してください。テョモランマには町がありますから」「へー、町なんかあるんだ」「ええ。この地域で採掘できる鉱物を求めてきた人が作った町だと聞いています。日下部さんの故郷でもあるんですよ」「へー、日下部のねぇ」みゆきの言葉にみさおの方を向く。特にリアクションもなく淡々と進んでいくみさおに、かがみは少しだけ疑問を抱いた。
「……てゆーか……よく発音できるわね、『テヨモランマ』って……」今まで何度もその発音に挑戦してきたが、どうしても『テヨモランマ』になってしまい、まともな発音ができやしない。「違いますよ、『テョモランマ』です」「……よく、言えるわね」「慣れてますから」「そんなもんなの?」「ええ、慣れてますから」「……」 第二章:されどこの拳は烈火の如し 1:悲しみの町、アピア 「――!!」山道を歩いている途中、みさおが突然立ち止まった。「どうしました?」「……なにか来る」みさおは辺りをキョロキョロと見回している。三人も周りを確認するが……特に変わった様子はない。いや、みさおは『気配を感じ取る』ということには、自分たちよりもはるかにすぐれている。近くになにかがいるのは明らかだろう、そう思った時、確かに前方から3つほどなにかの影が近づいてくるのをかがみが発見した。「みんな、あれ!」かがみの言葉を聞いて、三人が一斉に振り向いた。遠くにあった影が近づいてきて、次第にその形がはっきりしてくる。鳥だ。それもかなり巨大、人間と同じくらい。羽毛の色は毒々しさを感じさせる青紫色。
「みゆき、アイツは?」「コカトリスといいます。空は飛べませんが巨大な鳥の魔物で、人間の肉を好物としていてかなり危険です」「う……」大きなクチバシで人間の死体の肉をついばむ様子を思い浮かべ、こなたは背筋を震わせた。「みんな、行くわよ! こんなところで食べられるなんて真っ平ごめんだわ!」「かがみぃ~……」こなたの恨めしそうな言葉に気が付いた。このままではこなたは戦えない。もともと「種族を偽装するために」大剣を持っているわけで……人が周りにいなければその必要はない。「……よし、解禁よ!」「よっし!」辺りに誰もいないことを確認したかがみは、魔法を使うことを許可した。その瞬間にこなたは大剣を捨てて杖を取出し、ホウキにまたがってふわりと空中に浮かびだした。「私も魔法思い出したのよ。ちょっと使ってみたいから、みゆきに日下部、前は頼んだわよ!」「了解しました!」「あいよ!」かがみは剣を地面に突き刺し、柄の部分を両手で握って詠唱を開始。足元に紫色の――雷属性の魔方陣が現れた。魔法を詠唱する二人を背に、突撃してくるコカトリスの一体にみゆきが駆け出した。『クエッ!』巨大なクチバシを振りかぶり、みゆきに突き刺してくる!際どいところでそれを回避し、左手に持つメイスで右手の指に傷を付けた。「ガーネット・クロウ!」その傷から流れ出た血が伸びて爪のような形状に変化、その爪でコカトリスの胸を切り裂いた!『グエェェ!!』悲鳴ともとれる鳴き声を発したところを、更に左手のメイスで叩きつける。反撃の隙を与えないために何度も何度も。多少やりすぎな気もするが、生き延びるためなのだ。何回か攻撃した後、そのコカトリスは動かなくなった。 「来な! まとめて相手してやるってヴぁ!!」その少し横で、みさおの目の前から二体のコカトリスが迫る。それでも慌てず、みさおは拳を振り上げた。
「地砕拳!!」目の前にいるコカトリスではなく、地面に向かって拳を繰り出した。するとなんと大地がひび割れ、その破片がコカトリスの身体に叩きつけられる。その間に一体の後ろに回り込み、「破岩衝!!」『グゲェ!』みさおの拳を受けたコカトリスの身体は数メートルほど宙を飛び、谷底へ落ちていく。その後を見て、登ってくる様子のないことを確認し、みさおは額を拭った。しかし、『クエッ!』「あ!」一体を倒したことに気を取られ、もう一体が残っていることを忘れていたのだ。「柊! ちびっ子! 危ねぇ!!」その声に気付いたみゆきもまたコカトリスを追い掛けるが、この位置からでは間に合わない。と、次の瞬間、こなたの足元にあった赤い魔方陣が一層輝いた!「フレイムバースト!!」杖の先端から巨大な炎が発生、コカトリスに向かって飛来する。『グギャアアア!!』その炎は頭を飲み込み、羽に燃え移って全身を丸焼けにしていった。更にかがみが地面に刺した剣を抜く。それと同時に魔方陣が光を放ち、「ライトニングボルト!」空から何本もの雷が落ち、コカトリスに直撃。断末魔をあげることなく、黒焦げになったところで炎が収まり、辺りは静寂を取り戻した。「コカトリスの丸焼き……ウェルダンどころか黒焦げだゼ」食べる気だったんかい、というツッコミが飛んでくるかと思っていたが、不思議なことに何も起きなかった。コカトリスの向こうにいるかがみに目を向けると……プルプルと身体を震わせていた。
「ほ……ホントに……魔法が使えた……!」かがみはもともと魔法のない世界にいた人間。存在すら認めていなかったものの、実際に魔法が使えるようになったのだ。感動もひとしおだろう。「よかったな、柊~」「ええ。戦力も格段にアップしましたね」もちろん、二人が喜んでいるのは戦力がアップしただけではない。無くなったかがみの記憶も徐々に戻ってきている。以前からの親友であった二人にとっても、とても喜ばしいことである。「でも気を付けないとネ。かがみだから大丈夫だろうけど」「わかってるわ。それじゃ行きましょ! ……あ、こなた。忘れないようにね」「うへ~……やっぱりか……」こなたは深呼吸をすると、地面に捨てた大剣を背負うようにして再び持ち上げた。 「……ゼェ……ゼェ……」コカトリス戦から数十分、一行はまだ山道を登っていた。「こ、こなた、大丈夫?」「見て……わかん……ない……?」膝に手をつき、肩で呼吸をしている。間違いなく大丈夫じゃないだろう。重いものを持ったまま長い坂道を登るのはかなりの体力がいる。自分から持っているならまだしも、この場合は『持たされている』と言った方が近い。「……仕方ないわねぇ」「え……わっ」ふぅとため息をついてこなたの前に立つと、その華奢な身体を担ぎ上げた。いわゆる『おんぶ』というこの態勢、こなたの顔が真っ赤になっていく。「かかかか、かがみ……」「疲れてるんでしょ? 黙って休んでなさい」「――!」よく見ると、かがみの頬も赤みが差している。自分も本当は恥ずかしいのだろう。羞恥よりも自分の体調を気遣ってくれるなんて……
「……ツンデレ……?」「次言ったら降ろすぞ」そのやり取りに懐かしさを感じ、思わず頬が緩んだ。「はは……じゃあ、お言葉に甘えさせて……」そんなかがみの顔を見て、こなたは目を閉じると、そのまますうすうと寝息を立て始めた。相当疲れていたのだろう。みさおが後ろに回り、こなたの背中の大剣を外してやった。「仲良いよな、柊とちびっ子」「かがみさんが元いた世界で親友同士だったという話ですから。波長が合うのではないでしょうか」「ほら、行くわよ!」顔を赤くしながら先を行くかがみ。その様子を見て小さく笑い、二人は後を追い掛けた。 「やっと着いたってヴぁ……」『ようこそ鉱山の町アピアへ』と書かれた看板を目にして、みさおが呟いた。途中にある分かれ道を左に曲がり、更に山道を登ってようやくたどり着いたこの町。やはりサンサよりは規模が大きい。「こなたー、起きなー」「……ん……」眠っているこなたを起こそうと身体を何度か揺らす。すると小さく声をあげ、完全に開いてない目を擦り始めた。「ふぇ……もう、ついたのぉ……?」「ちょっと寝呆けてるみたいですね……」「アンタが寝てからもうかなり時間が経ってるのよ。早く起きな」「ふぁい……」(……かわえぇ……)かがみの背から飛び降りて地面に着地する。しかしまだ眠いのか上半身をフラフラさせている。ちなみに一番最後のはみさおの心の声だったりする。
「街中で重い装備を持つ必要はないわよね」「逆に怪しまれてしまうでしょうね。武器屋で手頃な武器が買えるといいのですが……」「とにかくいこーよぉ……」まだ目を擦っているこなたに促され、『三人』は町の中へと歩いていった。「……あれ?」異変に気付き、こなたがそんな声をあげて後ろを見る。かがみとみゆきも後ろを見ると、みさおが村の入り口に立ち尽くしていた。「日下部さん?」「……悪い、三人だけで行ってくれ。アタシ、この町苦手なんだ」「なんでよ。故郷なんでしょ?」故郷ならば、逆に帰りたくなるはず。なのに……「とにかく、アタシは町の外にいるから。結界石もあるから、大丈夫だゼ」そのまま後ろを向き、町の外へと歩いていく。「日下部……?」「……」その後ろ姿を悲しげに見つめるみゆきの瞳に、二人が気付くことはなかった。
「それで、どこに行くの?」
みさおと別れ、アピアの町を少し歩いたところで先頭を歩くみゆきに尋ねた。こなたこの町は初めてで、かがみは来たことがあるかもしれないがまだ記憶が戻っていない。故にみゆきに頼るしかないのだ。
「町長の家に泊まらせていただきましょう。日下部さんの幼なじみさんが居候しているんです」
かがみのまぶたがピクッと動いた。みさおの幼なじみ。これも向こうと同じならば……
「……その人ってもしかして、峰岸って名前かしら?」「はい。その方もご存知なんですか?」
かがみとみさおとあやの。ご存知もなにも、この三人は向こうの世界では五年も前からの親友同士だったのだ。忘れるはずがない。やはり、基本的な相関図は変わらないようで安心した。
「こちらでも、かがみさんに日下部さん、そして峰岸は親友なんですよ」
そんな心の内を見透かされたようで、かがみは頬を紅潮させた。
「……あれ? なんか騒がしいよ?」
広場の方に人だかりが出来ていた。更に、何かキンキンという音がしている。これは……剣戟の音だ! 「ええい、おとなしく帰れっ!」「そっちが金を出せばおとなしく帰ってやるよ!」
近くまで走って行くと、その集団の声が聞こえてきた。口元にスカーフをしていて、ナイフを装備。しかも、このセリフ……間違いなく盗賊だ。
「みゆき」「はい。あの集団は『BB団』といい、この地域で略奪行為を繰り返している盗賊集団です」「ボスは白石とかいう男で、確か高額な懸賞金が掛かってたはずだよ」
目の前にいる男達はおそらく下っぱ。それを町人が追い払おうと奮闘しているのだ。しかし、どう見ても町人の数が少なすぎる。こういう乱闘には関わらないほうがいいだろう。後々面倒なことになってしまう可能性が高い。
「脇道から峰岸の家に向かいましょう。ここは避けるべきよ」「懸命ですね」「ちょ、ちょっと待ってよ!」
意見が一致した二人に、こなたが諭すようにして声を荒げた。
「二人とも、町人を見捨てるっていうの!? 襲われてるんだよ!?」
こなたの言うことはわかる。ここで見捨てるなんて、薄情すぎる。だが、
「いい? こなた。ここで町の人達に加勢したとしても、後で大軍が襲ってくるかもしれない。それで町を滅ぼされるよりは」「だからって見殺しにはできないよ! 私は行くっ!!」「ああ、泉さん!!」
こなたはカバンからホウキを引っ張り出して広場へと向かった! 「はぁ、はぁ……」「けっ、おとなしく金を出せってんだ。そうすりゃ悪いようには――」「ファイヤボール!!」「ぐあっ!」
突然飛んできた火球を背中に受け、盗賊の一人が地面に倒れた。
「なっ!」
町人、そして振り返った盗賊が、空中に浮かぶこなたの姿を見て絶句した。空を飛べる人間、間違いなくザッパーアイン人だからだ。
「た、助けに来たよっ!」
こなた自身も、実際は恐怖を感じていた。ザッパーアイン人に対する迫害の程度をこなたは知らない。だからこそ、身体が微妙に震えているのだ。
「だ……誰がザッパーアイン人の助けなんか……」
そんな声がこなたの耳に届いてきた。明らかに拒絶をしている。罵倒が飛んでくるのも覚悟していたが……
「くぉらぁぁあああぁ!!」
軽く宙に浮き、猛スピードで何かが飛んでくる。その『何か』は町人の前に降り、立ち上がった。男だ。かなり長身の男で、背景に炎が映っているように見える。
「ちょ、町長……」「町長!?」
町人の呟きに、後ろの方にいたかがみが驚愕の声をあげた。
あまりにも衝撃的だったため、その男のことはかがみの記憶に焼き付いていた。足の裏から炎を吹き出しながら飛んできたり(?)、毎回毎回爆発して吹き飛んだり……向こうのこなたがよく行く店の熱い熱い店長……確かアニメ店長と呼ばれていたはずだった。さしずめ『アニメ町長』と言ったところか。
「種族なんか関係ない! 大切なのはハートだろうが!!」『!!』
町長の言葉に、町人達はハッとして顔を見合わせた。
「『来る者は拒まず、去る者は追わず、仇為す者には制裁を』が俺達アピアに暮らす人間の流儀だったのを忘れたのかぁ!!」
最後の言葉が異常にものものしいが、町長の気迫に押されて誰もツッコむことができなかった。しかし町人達は、瞳を潤ませて町長に駆け寄っていた。
「町長!」「俺達が間違ってました!」「大事なのはハートっスよ!」「よく言った! 俺達全員のハートでこの町を守りぬくんだ!」
あまりの熱気に、こなた達も盗賊達も動けなかった。『この隙に攻撃すればいいものを』とはよく言ったものなのだが……
「おう、そこの少女A!」「!」
町長が熱気を保ったまま、こなたに話し掛ける。最初こそたじろいだものの……
「わっ、私にはちゃんと泉・Spring・こなたって名前がついてるよっ」「よし、じゃあこなた! そっち側の盗賊を頼むぞ!」
言うや否や、町長が盗賊へと殴りかかる。それを契機に乱闘が始まった。
「みゆき! 私達も行くわよ!」「はい!」
こなたの方へと突進してくる盗賊の中にかがみが走り込む。腰に差した剣を引き抜きながら、かがみは数時間前のことを思い出していた。 『え、この世界の殺人罪って緩いんだ』『緩い?』
山道を歩いている途中に、かがみはこの世界について更に詳しく聞いていた。弁護士という職業を目指していたかがみ。そのために法律について聞こうとしたのだが……
『正当防衛と言いまして、相手に非があるならば殺人も認められるんですよ』
武器……つまり刃物の携帯は許可されている。それを利用して旅人に襲いかかる人間もいるだろう。そのため、正当防衛の定義が緩和されているのかなと、かがみは考えた。
『でも、その人にだって家族がいるんじゃ……』『それを言ったら泣き寝入りになっちまうじゃねぇか。やられる前にやるのがこの世界の基本だゼ』 そうだ。悪人に譲渡してはいけない、これがこの世界の常識。人殺しは正直怖いが……やるしかない!
「閃空裂破!」『うぁああぁあ!!』
遠心力を利用して剣を振り回し、周りの盗賊達を巻き込んで跳躍。身体に螺旋状の傷を負ってバタバタと倒れていく。そのまま下に突き出した剣が残っていた盗賊一人の左胸を貫く!
「がはっ……!」
嫌な感触が剣を伝い腕に走ってきた。滑るように心の臓に食い込む剣、赤い液体が頬を伝い、断末魔がループして脳内で何度も再生される。
「はぁ……はぁ……!」
男から剣を抜き、倒れていくさまを見ながら、かがみは深く深く後悔した。人の命を奪う……。こんなに辛いことを、これから何度も経験するのだろうか?やるしかないとは言ったが、これでは先が思いやられる。だが慣れれば……いや、慣れてはいけない気がする。人として。
「ダメですよ、かがみさん」「え――」
グジャ、というグロテスクな音が聞こえたかと思うと、斜め前にいた盗賊が吹き飛んでいた。仰向けに倒れた盗賊を見て、かがみは戦慄した。男の顔が、潰れているのだ。
「ひっ!!」「やはり、殺人に対して抵抗がおありのようですね」
さらりと言ってのけるみゆきに恐れおののいた。違う。みゆきはこんなことを言うような人間じゃない。こんなことをするような人間じゃない。かがみの頭の中で、その考えだけがぐるぐると回っていた。
「……この世界での私達とかがみさんの世界の私達とでは、あまりにも違いがありすぎるみたいですね……」
それを嘆いているのか、寂しげに視線を下げるみゆき。その反応が、全てが現実のものだということをかがみに思い知らせた。
「ですが、私達は人を殺すことに折り合いをつけているわけではありません。どうか、それをわかってください……」
殺したくて殺す、なんていうのは狂ってる奴が言うこと。そうだとわかっているのに。頭では理解しているつもりなのに。心がそれを認めてくれないのだ。
「イラプション!」
そしてこなたの声が聞こえたのとほぼ同時に、残りの盗賊達の足元から炎が噴き上げた。髪を、身体を焦がしていく真っ赤な炎。その炎の中心にいながらもかがみ達が無傷なのは『こなたが二人を攻撃対象から外している』からである。しかし、炎に苦しみ、焼けただれていく盗賊達を、かがみは目の前で見る羽目になってしまった。どこを見ても燃える人、燃える人、燃える人……軽いノイローゼに陥りそうだ。炎が消えると盗賊達に纏わりついていた炎も消えた。ただダメージは深刻だろう、ほとんどの人間が地面に倒れていく。おそらく、盗賊達の半分以上が……
「私達の力、舐めないでもらいたいねっ!!」
ホウキに乗ったまま『えへん』と胸を張る。だが、かがみはその言葉に賛同することができなかった。人殺しなんて、やはり自分には無理だ。これから先、また同じようなシチュエーションに出くわしたら……正直、生きていられる自信はない。だが、生きなければ。自分がここに連れてこられたその理由を知るまでは死ねないのだ。
「かっ、かがみぃ!」
こなたの小さな悲鳴に顔をあげ、目の前の光景を見て絶句した。こなたが盗賊の一人に捕まっていたのだ。しかも、首にはナイフが突き付けられている。
「こなた!」「動くな! 動くとこいつの命はないぞ!!」「く……」
向こうのこなたなら、このくらいの男に拘束されてもすぐに反撃できただろう。しかし、この世界のこなたではどうあがいても拘束から抜け出すことは不可能だ。
「……お金なら持ってます。いくらですか」「おっ? 話が早ぇじゃねぇか」
傍らにいたみゆきが、盗賊に向かって交渉を始める。このようなシチュエーションになってしまっては、『悪人に~』などと言っている場合ではない。友達の命が先決だ。
「そうだなぁ……最低でも25万ラキだ。払うならこいつを返してやるし、おとなしく帰ってやる」「25万……」
持ち金の半分。十分に払える金額だ。それでも25万ラキは高額。払うべきか……
「どうした! 払わねぇなら……!」「っ……!!」
ナイフの刃先がこなたの首に食い込んだ。傷口から血が流れてくる。
「わっ、わかりました!」
みゆきは荷物が入っているものとは違う、お金が入ったスーツケースを開けて盗賊に見せた。
「……この中には30万ラキあります。全部持って行って構いません」「30万!? かっ、金持ちじゃねぇか!!」「先に泉さんを解放してください。お金はそれからです」「あ、ああ」
盗賊がこなたの身体を放すと同時にかがみの元へ駆け寄ってきた。
「かがみぃぃぃぃ!」「こなた! もう大丈夫よ!」
よほど怖かったのだろう、目に涙を溜めながら走ってくる。そんなこなたの身体を、かがみは思い切り抱き締めてやった。
「金、かね、カネ!!」
お金の入ったスーツケースに走っていく盗賊。目がドルマークになっている。手がスーツケースに触れる直前、みゆきが盗賊に向かって走りだした! が。
「へぶぁああ!!!」
横殴りの衝撃、頭蓋が割れ、顔の形が変わるほど、ヘビー級グラップラーの正拳突き並みの威力がぶつかる。バランスを崩し、倒れようとする盗賊にどこからか飛来した『何か』が殺到、倒れるタイミングを完全に失ってしまった。
「……ふふふ。相変わらずの不意討ちっぷり、見事です」
不敵に笑うみゆきの視線を追い、かがみが後ろを見ると……
「これで終わりね。ナパームキャノン」
一人の少女が、指先から火の玉を発射する。高速で撃ちだされたソレは盗賊の胸元に直撃した瞬間に炸裂、炎上。断末魔もあげることなく、盗賊は灰と化してしまった。
「お金に目が眩むから、こうなっちゃうのよ」「あ……ああ……」
かがみは、改めてその人を見た。栗色の長い髪、特徴的なおでこにカチューシャ……間違いない。
「み、峰岸……!?」「久しぶり、柊ちゃん。元気だった?」
あまりにも、衝撃的すぎる再会であった。 「あれ、スーツケースは?」「……あ……」「え?」「……一緒に燃やし尽くしちゃったかも……」「……うそ……」
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!!」
盗賊達を蹴散らしてから、こなた達はあやのの――町長の家にやってきていた。そして着いたなり、あやのの土下座が炸裂(?)する。
「い、いいのよ。まだ20万残ってるし」
とは言ったものの、消えてしまったのは30万。損失は目に見えて大きかった。だからといって、「消した分払え」とは言えない。ここは涙を飲むしかないのだ。
「あやの、お客様が困っている。過度な謝罪はリピーターを失うことに直結すると教えたはずだ」「う……」「それに、この子達はもういいって言ってるじゃないか。過度な謝罪はリピ(ry」「ご、ごめんなさい……」
どうやらあやのは、町長に頭が上がらないようだ。まあ、居候先のお父様なのだから、当然と言えば当然か……それにしても、と、かがみは町長――兄沢命斗の顔を見た。向こうの世界では熱く燃え盛っている姿しか見なかったが、本当はこんな冷静な姿も持ち合わせていたとは……
「じゃあ俺は工房な行っているから、用がある場合は来いよ」
そう言って立ち上がると、兄沢は奥の扉から出ていってしまった。彼は町長でありながら鍛冶師でもある。客からの依頼がかなり多いベテラン鍛冶師だ。
「……お久しぶりですね、峰岸さん。先ほどの不意討ちは見事でした」
兄沢が扉を閉めてから少し経って、みゆきがあやのに称賛の言葉を送る。みゆきも、盗賊が金に執着している間に攻撃を仕掛けようとしていたのだが、一歩遅かったようだった。
「ううん。高良ちゃんに任せた方が良かったみたいね。私のせいで……」「過ぎたことは仕方ありませんよ。お気になさらず」
かがみとこなたには、入りがたい空気だった。この中で『こっちの』あやのと面識があるのはみゆきだけ。こなたはあやのとは初対面だし、かがみもこちらのあやのとは初対面だ。それに、かがみはまだこちらの記憶をすべて取り戻したわけではない。あやのにいろいろ聞かれてしまったら、答えられる自信はない。だからといって、はぐらかすこともできないだろうし……
「あなた、泉ちゃんね。高良ちゃんから話は聞いてたわ」「う、うん。よろしくね、峰岸さん」
こなたとあやのが挨拶をした。次の質問のターゲットは間違いなく自分だ。どうするべきか、必死に考えたのだが、うまいかわし方が見つからない。
「それと、お帰りなさい、柊ちゃん。あれから五年……。私てっきり、もう帰って来ないかと思ってたわ……」
ついにかがみの番がやってきてしまった。よく見るとあやのの目にはうっすらと涙がたまっているように見える。心配してくれていたのかと、『今の自分のせいではないが』心が痛んだ。
「それで……どうだったの?」「う……」
記憶を無くす前に自分がした『家族探し』の旅。その話をしているのだから、あやのの問には答えられない。適当に答えてあしらうことなど言語道断。本当のことを言っても信じてもらえないに違いない。解決策が一向に見つからないのだ。こうやって考えている間にも、あやのは不振がり首を傾げている。どうにかしなければいけないのだが……
「……!」
肩の感触に振り返ると、こなたが手を置いていた。彼女の目は真剣そのもので、これまでに見たことがないほどに鋭い。
――言おう。
目がそう言っていた。ここは従うしかないか。かがみはそう判断し、覚悟を決めた。
「峰岸、聞いてちょうだい」「なに?」「……私、この世界のかがみじゃないの」「……?」
それから数十分かけ、あやのに事情を説明した。一ヶ月と少し前にエスペランザ高原に帰ってきたこと、その時はなぜか大ケガを負っていて慌てて家の中に担ぎ込まれたこと。そして、魂――恐らく記憶――が上書きされてしまい、この世界についてまったくと言っていいほど無知になった、ということも。
説明の間、あやのはずっと黙ってかがみの話を聞いていた。時折何かを考えているかのように、視線を下げたり胸に手をやったりといった行動をとる。それは、かがみが予想していたのとはまったく違う行動だった。
「……って、ことなんだけど……信じてくれるかしら……?」「……」
説明を終えてもあやのはそのままだった。ただただ床を見つめているばかり。にわかには信じがたい出来事なのだ。まともに取り扱ってくれるかどうかすら危うい。
「……のも……ありなのかしら……」「え……」
本当に、本当に小さく呟いたために、その言葉の全てを聞き取れた者はいなかった。
「……うん、私は信じるわ。柊ちゃんのこと」「え……ホント?」「だって柊ちゃん、そういう出来事を誰よりも強く否定する人間だもん。そんな嘘をつくわけがないわ」
なんだか普通に聞けばけなされているような気がするが、この状況下ではありがたい話だった。
「それなら……あのことを説明した方がいいかしら。二人とも、ある意味記憶喪失なわけだし」「……お願いします。私は言えなかったので……」
みゆきと二人で目配せをし、『あのこと』とやらについて話をする。その内容がわからないこなたとかがみは、案の定ぽかんとしていた。
「……どこから話せばいいかしらね」
しばらく考え込んでから顔をあげ、どこか遠くを見るような瞳で呟き、語り始めた。 ここは鍛冶師の町という以外にも有名なことがあったの。お城で行われた格闘大会で、男性・女性部門ともに何度も優勝していた『世界最強』の夫婦が、この隣にいた。その人に会いたいと、何人もの人達がここに来たわ。私の幼なじみの両親がその夫婦なんだもの。私もすごく嬉しかった。
「その幼なじみって、まさか……」「そうです。日下部さんです」「じゃあ、期待とか凄かったんじゃない? 世界最強の子供なんだから」
柊ちゃんの言う通りよ。特にお兄さんが剣の道に進んじゃったから、余計にプレッシャーを感じちゃってたみたいよ。
「お兄さん?」
あ、ええと……みさちゃんにはお兄さんが一人いたのよ。だから四人家族ね。じゃあ話を戻すわ。みさちゃんはほとんど毎日と言っていいほど修行をしていたわ。私も付き合ったりしてたのよ。それでみさちゃん、子供の部の格闘大会で優勝したの。
「へぇ、すごいじゃない!」
プレッシャーなんか跳ね返しちゃったのよ。それからも修行を続けて、もっと強くなったりね。お城のパーティーに呼ばれたことも何回かあったわ。私もついていかせてもらって、そこで高良ちゃん、柊ちゃんと仲良くなったの。
「四人は昔からの知り合いだったんだ」
ええ。新しい友達ができて嬉しかったわ。私にはみさちゃんしかいなかったから……。
(……そういえばこの世界……学校がなかったのよね……)
それで家がそこまで離れてないって知って、たまに遊びに行くようになったの。……もう柊ちゃんは覚えてないみたいだけど……。
「……ごめん」
あ、ええと、謝らなくていいわよ。柊ちゃんが悪いわけじゃないから。……っと、話を戻すわね。それで、私達の生活はとても幸せだったの。あの日がくるまでは。
「あの日?」 「今から8年前。みさちゃんの両親が死んだ」『な――!?』
かがみもこなたも、それしか言うことができなかった。世界最強といわれとおきながら、なぜこうも容易く死んでしまうのか?
「8年前、みさちゃんの両親はお城で開かれていた武術大会に出発したけれど……その道中で、死んでいるのが確認された」「死んだって……どうして!?」
みさおの両親。向こうの世界でだが、かがみもよくお世話になっている。それだけに、かがみの悲しみも相当のもの。声を荒げるのも仕方がない話だ。するとあやのは視線を下げ、私が見たわけじゃないけどと前置きして言った。
「血塗れの剣を持った少年が、みさちゃんの両親の近くにいたの。多分、彼がみさちゃんの両親を……」
見ると、あやのの目尻に涙が溜まっていた。拳を固く握り、唇を噛み締めている。みさおもそうだが……あやのにも、想像を絶する苦しみと悲しみがあったのだろう。
「それじゃあ、みさきちがこの町に入りたがらなかった理由って……!!」「両親と住んでいた、思い出の町だから……だと思います」
溢れ出た涙を袖で拭いながら嗚咽を洩らすあやのに変わって、みゆきが話を引き継いだ。
「楽しかった思い出よりも、悲しいあの出来事のほうが大きかったのでしょう。日下部さんにはお兄さんがいたのですが、彼も事件後に失踪し……」「失……踪……!?」
もう、わけがわからない。あやのとみさおに関しては、向こうと共通点がなさすぎる。しかも、悲しい過去ばかり……本当に、自分はどうしてこんなところに来てしまったのだろうか。
「それで、誰がみさきちの親を……」「『白石・whitestone・みのる』という少年です」「しら……!!」
名前を叫びたいという衝動を、両手で口を覆って無理やり抑えこむ。
「私達と同い年で、BB団のボスをしていると言われています。アジトがわからないためにそのままなのですが……」
みゆきの言葉が、かがみの興奮を抑えてくれた。そうだ、いちいち向こうの世界と比べるという行為自体が間違っているのだ。世界が違う。その時点で、何もかもが違っていてもおかしくないのだから。友人の性格が、友人関係がほとんど同じだということは逆に喜ぶべきこと。違うことは、受け入れなければいけない。
「……さっき何人か逃がしちゃったから、追い掛ければよかったのよね。そうすればアジトの位置がわかったのに」「……BB団は……人が多すぎるのよ。私達だけじゃ、勝ち目が……」
軍隊にお願いできるだけのお金もない。故に動くことすらできないのだ。町を襲うグループは下っぱで、グループのリーダーを筆頭に動いている。あまり統率のとれた軍団ではないことが伺えるのだが、『アジトを守る』ということになれば団結して強力になるだろう。
「……私達じゃ、何もできないっていうの……!?」
苛立ちと歯痒さから、拳を強く握りしめる。と、その時、
「失礼します」
男が三人、扉を開けて玄関に入ってきた。いずれも茶色のマントを羽織っている。お世辞にも『強そう』とは言えない背格好だ。
「先ほど、皆さん方の戦い方を拝見させていただきました。我々は反BB団組織の『AA団』の者です」「そこで、折り入って頼みたいことがあるのです」「我々、BB団の討伐を現在の活動目的にしているのですが、お恥ずかしながら戦力不足でして……」
ということ、このAA団という組織にはそれなりの団員がいるのだろう。しかし、まだ団員が足りないのか単に非力なのか、BB団に挑める団ではないという。そこで自分たちに『頼みたいことがある』と。これは半ばお約束な展開だ。
「リーダーの宮川・shrineriver・ひかげ様に相談したところ、あなた方にAA団へに加勢を願いたいということでした」
やはり。自分が知ってるのと同姓同名の10歳少女がリーダーなのは置いといて、これは願ってもみない申し出だ。自分たちもBB団を潰したいと考えていたのだから。すぐにでも了承し、アジトへと向かいたかったが……
「……峰岸はどうするの?」
この中で一番、BB団に対して恨みを持っているのはあやのだ。町の前で待っているみさおは、彼女の性格上間違いなくOKを出すだろう。だが、あやのはどうか?この場での最終的な判断はあやのに任せることにした。当のあやのは目を瞑って胸に手を当てながら、小さく呟いた。
「もちろんよ。こんなチャンス、逃してたまるもんですか」
あやのの言葉に三人は『ありがとうございます!』と家が震えるほどの大声で感謝の意を示した。
「明日の朝に決行する予定ですので、町の前でお待ちください」「作戦はまた明日お伝えします」「では!」
それだけ言うと、男達は風のように帰っていった。残された四人は、揃ってお互いの顔を見つめ、
「明日の朝に出発だから」「今日はゆっくり休んでおかないといけないですね」「こなたにも剣みたいなのを買ってあげないとね。杖じゃ防げないだろうし」「ありがとー、かがみ」「べっ、別にあんたのためじゃないわよ! あんたが死んだら貴重な戦力が――」 四人が今日すべき事を話し合っている数十分前、みさおは町の前にある大岩の上に仰向けで寝そべっていた。ゆっくりと流れていく雲。その行き先は、死地にいる両親のもとだろうか――
「……なんてな」
その思いを、少し自嘲気味に笑い飛ばした。かつての、真っ白な心を持っていたころの自分なら、こんな夢見がちな台詞も許されただろう。だがその心は、『両親の殺害』という出来事で汚されてしまった。今では霞んでしまったかつての自分。思い出すことはできるが、戻ることはできないだろう。
「……」
それもこれも兄のせいだ。彼が自分の近くにいてくれたなら、ここまで荒んでしまうこともなかっただろうに。しかし兄は事件後、行方をくらませた。妹である自分を置いて。
「……チクショウ……あのバカ兄貴……」
悔しさと淋しさが入り交じる。涙はとうの昔に枯れはててしまった。そんな自分が嫌で嫌で仕方がない。
「……ん?」
寝返りを打ち、ちょうど町を見下ろせるような形になる。すると、町の中から男数人が走っていくのを発見した。
「あれは……」
格好からしてまず間違いなく盗賊だろう。町を襲っていたのだ。町の中心にもたくさんの盗賊が見える。ホウキで浮いているのは……こなたか。あの三人は女性ながら並みの男以上に強い。あれだけの大軍でも三人がいればなんとかなるだろう。みさおは小さく唸り、男達が通り過ぎた瞬間に大岩から飛び降りた。あれだけの大軍を有しているのは、この地域ではBB団――両親の仇が率いる軍団のみ。みさおは男達の後を追った。 そうして隠れながら走っているうちに、男達の向こうに洞窟が見えてきた。岩肌の壁に木の扉がしてある。どこかの炭坑跡であろうその洞窟に男達が入っていく。ここが奴らのアジトだろう。
(さってと……どうしようかな……)
かなりの大軍だと聞いている。正面突破は難しいかもしれない。陽動を起こして、そっちに軍団を持って来させればいいが、よい方法が思い浮かばない。
「……お、これなんかどうだろうか?」
みさおの脳は『炭坑の壁を壊せばどうか』ということを弾き出した。うまくいけば壁が崩れ、穴ができて侵入できるかもしれない。例え穴ができなくても、振動に気付いてBB団の軍団が殺到してくるかもしれない。その隙に……
「はーい、ここまでごくろーさん」「うぐ!」
あれこれ思案していたみさおの延髄にチョップが炸裂、気を失ったのかそのまま地面に倒れた。
「尾行はバレバレだし、アジトのまん前にいたらバリバリ目立つってーの」
小柄な女だった。みさおの身体より一回りほど小さい。
「こいつの処遇は……一応ボスだし、アイツにでも決めてもらうか」
彼女はその身長であるにも関わらず、みさおの身体を軽々と担ぎあげる。そして彼女は、BB団のアジトへと入っていった。 「――!!」「どしたの?」「……いえ、日下部にも言わなきゃって思ってね」「みさちゃん、そういう話を聞いたら後先考えずに突っ込んじゃうもの。明日にしましょう」「そ、それはちょっとひどいのでは……」 何も知らない四人は、のんきに町中を歩いていった。
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