「ふわぁ」コッペパンをかじっているこなたが欠伸をする。残念な姿をした自家製お弁当を突っついていた私がすかさず突っ込む。「また、ネトゲ遅くまでやってたんでしょ」「いやぁ、敵がちょっと強くてねぇ」「ちょっとは自重しなよ~」私は若干投げやりに注意を促す。「・・・うん」こなたの返事の元気がない。「こなちゃんどうしたの?元気ないみたいだけど・・・」つかさが鮭を口に含みながら言う。全く、食べ物を口に入れたまましゃべるんじゃない。「うん、ちょっと疲れてるのかな。ははは・・・」今の言葉に焦点なる概念があったら間違いなく私たちの中には焦点は無かったはずだ。「保健室に行きますか?」みゆきがこなたに心配した声で聞く。「いや、いいよ。私が倒れてたら世界が終わっちゃうし」「またネトゲの中の話か?」私は若干あきれながら言う。こなたが私のセリフが言い終わる前に立ち上がった。「どうしたの?」つかさの問いにこなたは全く関係のない返事をする。「ちょっと屋上まで来てくれない?」「え?どうしたの、突然?」「まぁ屋上で食べるのもいいものですからね」私とみゆきが答える。そしてお弁当を持って屋上まで移動する。「私の後ろに隠れててくれない」屋上に着いた。こなたが前を見ながらいう。よくわからないけどその指示に従う。「『氷槍・序!』」こなたが右手を前に出して叫ぶ。アハ体験をしに来てるわけではないんだけどそれぐらい注意を払っていないと気がつけなかった。いつの間にかこなたの右手に氷柱が握られていた。 ・・・のは一瞬。すぐその氷柱は前に向かって飛んでいく。ぎりぎり目に見える範囲の速度で。ドンっ!少しして下のほうから音が聞こえる。こなたが振り向いて言う。「まさか、学校まで襲ってくるとはね・・・みんなには見せたくなかったんだけど・・・」「え、どういうこと?」私がこなたに問う。「グラウンドを見てくれない?そして、驚かないでほしいんだ」フェンスの中からグラウンドを覗き込む。そして、驚いた。黒色の何かが落ちていた。こなたはつぶやく。「今私が倒した相手」「!!?」3人そろって息を失う。こなたが撃ったのであろう氷柱によって一つのものが・・・「ごめんね、黙ってて。私ね、たくさんの敵と戦ってるの」「こなた・・・」私はそう言う事しかできなかった。「さらにね、私の中には敵が求めてるお宝があるんだ。でもそれを盗られたら私は死んじゃう。だから襲ってくるのかな?」あまりにも突然かつ重大な発表を飲み込めたのは2分後のことだった。まぁ要するにそれぐらい私たちは沈黙してたってこと。「こんなこと突然しゃべってごめん。迷惑だよね」こなたがうつむきながら言う。私は持ち前の想像力のおかげか話を理解することができた。「・・・どうして黙ってるのよ?」「いや・・・」気まずい沈黙が場を覆う。「そうだったのね・・・こなたも大変だったんだ」こなたが驚いた様子で顔をあげる。私は続ける。「どうせ、ネトゲって言ってた中にはこうしてた時もあったんでしょ。そんなこと考えずにネトゲとか言っちゃって」「かがみ・・・」「ごめん」「かがみ・・・うわぁぁぁん!」こなたが私の胸に飛び込んでくる。私はこなたの頭をなでる。「どうして見られたくなかったのなら私たちを屋上まで連れてきたのですか?」みゆきが聞く。「1人じゃグス・・・さびしかった・・・」「・・・」3人はお互いの顔を見る。そして微笑む。しばらくしてこなたの涙が止まったのが制服の感触でわかる。そして上を向く。「ないと思ってたけど。以外にあるんだね」「殴っていいか?」「さすが、世界一のツンデレ!」「う~んと、それはほっぺをつねられたいのかな~?」いや、でもまぁいいか、今日は・・・キーンコーンカーンコーン鐘の音にせかされるように私たちは教室に戻った。
放課後わたしとつかさとこなたは一緒に帰った。帰り道は今までのこなたの戦いの武勇伝を語ってもらった。「かがみ、つかさ」不意にこなたが呼び止める。「何?」ま、返事が重なるってのは双子らしいかな。「ねぇ、みんなはどう思った?」「何が?」私は怪訝な顔をして聞き返す。「いや、今日の昼休みの・・・」「あぁ、アレね。こなたはこなたでしょ。ああして戦ってた姿がこなたなんだから別に変わらないわよ」人には建前と本音というものがある。目の前で氷柱を手から出してきて前に放つ姿を見て驚かない人がいたらちょっと私のところまで来てほしいね。「学校にまで攻撃を仕掛けてくるならみんなを守れないかもしれない。だから、みんなにある程度の呪文を使えるようになってほしいんだ」・・・何をおっしゃっているのでしょうかこなたさん。一般人たる私たちが手から氷柱を出し、発射するなんてできるわけがないでしょ。「いや、私が持ってる栞を使えば一応それなりには術が撃てるようにはなるんだけど・・・」「こなちゃん、私は別にいいよ」つかさが即返事をする。私も同意を示す。「まぁ、私も別にいいわよ。自己防衛が迫られるみたいだし」「みんなありがと。明日、糟日部駅で渡すね。じゃ、また明日!」私たちは別れた。
家に帰るとお父さんが誰かに電話をしている。通り抜けるときに会話が聞こえてきた。「そうですか、ついにかがみとつかさも存在を知ったんですか」「ええ、娘に聞いてみたら学校まで襲ってきたそうです。双子姉妹のも解放したほうが・・・こちらの栞にも限度があります・・・」私が聞こえたのはここまでだった。リビングに入ろうと扉をあけたとき、お父さんが私を呼び止めた。「あとで話をしたい。つかさを連れて午後8時ぐらいに境内まで来てくれないか?」「あ、わかった。つかさにも言っとくよ」私はリビングの中に入った。さて、あっという間に時は過ぎて時間は指定された午後8時。まぁシーズンが終わって蚊がいなくなったのは有難いけど、今度は少し寒い。「お姉ちゃん。いったいなんだろう?」「私に聞くより今こっちに近寄ってくる影の主に聞いた方がいいと思うけど」そして私は影に指をさす。影から声が聞こえてくる。「いやぁ、待ったかな・・・」・・・
「『氷槍・連牙!』」氷柱が何発も前に飛んでいく。下手な鉄砲も数うちゃ当たる・・・は日常生活においてのみ。相手には余裕でかわされる。できればかわしてほしくないんだよね。糟日部駅前に攻撃があたっちゃったら修復にたくさんの力を使わなきゃいけないしさ。 あ、言い忘れてた。私が戦っている場所は閉鎖された空間。普通の人はこの空間がある限り内部での時間が止まるから動くことはできない。「『爆炎波・朧火!』」辞書的には朧はぼんやりとかいう意味なんだけど・・・普通にはっきり火の玉が見える。といってもたいしたことない威力だね。これは「『氷壁・第一!』」私の目の前に氷の壁を作り出して火の玉を迎え撃った。私の術の勝ちだね。否、壁にひびが入る。そして氷が赤く染まったかと思うとガラスが割れるような音がして壁はくだけ散った。咄嗟のことだったから私は回避も呪文を唱えることもできなかった。 「これで終わったかな。油断しているのが悪いのだよ」敵の勝ち誇った声が聞こえてくる。その次の光景は流石に予想できなかったよ。「『水壁・第一!』」私に迫っていた火の玉が『ジュ』という音を立てて一瞬にして消え去る。私は声の方向を見る。「かがみ! つかさ!」「まったくあんたは1人で無茶するんだから・・・」かがみが安心した顔で言う。つかさは私と対面する敵の方を見るといった。「油断しているのは誰なのかな?3対1なんだけど」・・・その笑顔が逆に怖い。かがみが呪文を唱える。「『火身強化・初!』」言うが早いかかがみの体を炎が包む。私はなぜか『こんなことして熱くないのかな』とか、どっちでもいいことを考えていた。この間わずか0.5秒、早い。炎が治まったかがみの髪が紅蓮色に染まっている。それ以上になんかオーラを見ることができるならこんな感じに見えるだろうっていうようなものがかがみの周りにある。 「さて、さっさと倒しちゃいましょ。これ以上戦ってると遅刻するし」「ところで、かがみたちはなんでこの中で動けるの?」「話はバスの中でね。『紅蓮双剣・序!』」いつのまにかかがみの両手に朱色の剣が握られていた。「私も参戦しないとね。『水弾・連泡!』」つかさが両手を前に突き出すと小さい水の玉が何発も出てくる。つかさがこっちを見る。「こなちゃんも攻撃してよ」「え、あ、うん。『天候・粉雪!』」10月としては場違いな雪が降ってくる。「・・・こざかしい。『炎砲・小銃!』」さっきとは比べ物にならない大きさ、―私の背丈ぐらいかな―炎の弾が飛んでくる。これで小銃?まぁ私もさっきみたいなへまはしない。「かがみ、私が術を防御するから私とつかさを連れて近づいて攻撃して!」「まぁ、2人ぐらいなら・・・オッケー」私を左手に、つかさを右手に抱えてかがみが大地を蹴る。言い出した本人が言うのもなんだけどちょうど首のところに剣があって・・・動けない。「あんた! もうすぐ術にぶつかるぞ!」「任せといて! 天気の力をなめたらダメだよ。『氷壁・第一!』」さっきの壁よりもはるかに大きくて厚い壁が聳え立つ。粉雪が壁を強化したんだから当然。ジュ。相手の術が壁に当たって溶け、靄がかかり始める。視界が急激に悪くなる。私は声量を押さえて言った。「かがみ、壁の上を飛んで一気に!」かがみは脇に抱えた私の顔を見てウィンクをしてジャンプする。人間離れをした人は既に慣れてるけどかがみの飛距離が人間じゃない。かがみが私とつかさを離す。そして本人は敵の頭上目掛けて剣を下にして落ちていく。「くぅぅらえぇぇ!!」「『氷槍・連牙!』」「『水弾・連泡!』」決着はあっけなくついた。駅前で止まっていた人たちが動き始める。私たちの勝ち。何事も無かったかのようにかがみが言う。「さて、早くバスに乗るわよ。遅刻点数はあまり欲しい物じゃないでしょ?」「え、うん」私はバス停の途中道で足を動かしながら改めて冷静に考えてみた。なぜ、かがみとつかさが閉鎖された空間の中で動けたのか。なぜ、二人は術を撃つことができたのか。この二つの疑問の最大公約数的答えはすぐに出た。3人でバスの最後尾を占領したあと私は聞いた。「2人は・・・栞を持ってるんだよね?」かがみとつかさがはにかみながらこちらを振り向いた。「昨日こなちゃんのお父さんに渡されたんだ」「3時間ぐらい鍛えられたから。あんたの足手まといになるようなことはしないわよ」「と、いうと?」「じゃあ、逆に質問。あんたはなんで敵と戦ってるの?」質問に質問は反則だよ、と思いつつ私は返答を出す。「いや、私に攻撃を仕掛けられると周りが壊されちゃうから・・・さ」喉に骨が刺さったような感じを残したまま答える。「じゃあ、あんたがどこか、誰もいないところに行けばいいんじゃないの?」「お姉ちゃん。それは・・・」つかさがおろおろしながら言う。かがみはそれをぴしゃりと塞いだ。「つかさはちょっと黙ってて。あんたが標的なら標的が離れれば街は守れるんじゃない?」「でも・・・」「あんたはここから離れたくない。自分が大切なのよね」かがみがあきれた顔をしながらいう。私は返事ができなかった。「私たちだってあんたにこの街を出て行ってほしくない。だから、協力するって言ってるの」「えっ?」私は驚いた。その拍子に出てきた声はかがみに疑問詞ととられたらしい。「だ か ら、協力するって言ってるの、いいわよね?」「かーがみー!」バスの中ということを忘れて私はかがみに飛び掛った。うれしかった。「こら、くっつくな!」「そういうかがみも顔真っ赤だよ~」「う、うるさい」ちょうど、バスが陵桜学園についた。
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