~東京 とあるカフェ~

京太郎「うーん……」

京太郎(やっぱ咲の……というより女子の牌譜は見れば見るほど意味が分からん……)

京太郎(リーチかかってるのに普通カンなんてするか?やっぱり嶺上牌が何なのかわかったうえでカンを……いや、もっと前の段階か。嶺上牌が分かったうえで手作りをしているとみるのが妥当か……?)

京太郎「だとしたら咲のポンした牌の残り一枚が見えてないときは咲の手に入って加カンされることも考慮して……」ブツブツ

咏「おーす京太郎。相変わらず勉強熱心だねぃ」

京太郎「!咏さん、ご無沙汰してます!」

咏「わざわざ師匠の教えを乞うために毎週毎週東京通いとは……お前も麻雀馬鹿だねぃ」

京太郎「やっぱり弟子は師匠に似るもんなんですねぇ」

咏「まったくだ」

咏「やっぱこの店はコーヒーが美味いねぇ!いい豆使ってるよ」

京太郎「ならミルクとか入れずコーヒーそのものを……」

咏「けっ、これだからブラック党は。コーヒーくらい好きに飲ませろっての」

京太郎「はは……ブラックはやっぱりお嫌いで?」

咏「苦い云々の前にまずい。わたしの舌には合わないね」

京太郎「そうですか」

咏「……麻雀の話に戻るが……まぁだいぶ腕は上達したけど女子の牌譜見て研究するには地力がまだまだ足りないんじゃね?」

京太郎「う……ズバッと言いますね……」

咏「わたしが言うのもアレだけど女子のはなんつーか、偏ってるからねぃ……いろいろと」

咏「まぁあれだ。お前のとこの元インターミドルチャンプの子。あいつの牌譜以外は今は見なくていいと思うぜ。まずは来年のインハイを視野に入れとかねーと」

京太郎「そうですね……咏さんの弟子として恥ずかしくない成績を取らないと……」

咏「ま、あまり気負いすぎるのもよくないぜぃ」

京太郎「そういえば牌譜研究してて思ったんですけど」

咏「んー?」

京太郎「大沼プロとか南浦プロって男性雀士なのにすごく強いじゃないですか。最近の若い男性プロは咏さんとかのトッププロはともかく、一つ下の女性雀士にも手も足も出てないように思えたんですけど……」

京太郎「大沼プロたちはなんか違うなって思いまして……やっぱり年の功というか……経験の差でしょうかね」

咏「あー……まぁそれもあるだろうが……大沼のじいさんとか南浦のじいさんとか……今プロで上のほういるやつらは軒並み『裏』出身だからな」

京太郎「……『裏』、ですか?」

咏「最近は数が減ってるがバブルのころはいわゆる高レート雀荘がそこらじゅうにたくさんあったらしくてな。ああいうところは自分の金の増減がかかってるからねぇ……必然的に強い奴しか残らねぇからそれはそれはバイオレンス感満載だったらしいぜぃ。知らんけど」

京太郎「……知らないんですか」

咏「そりゃ知らねぇさ。わたしはまだ24だぜ?何歳だと思ってんだ失礼だな」

京太郎「いやそういう意味で言ったんじゃ……」

京太郎「だけどちょこっとだけ興味がありますね、裏麻雀。俺じゃすぐ破滅しそうですけど」

咏「今のお前じゃそうだねぃ」

京太郎「最近の男子は弱い弱い言われてますけど強い男性雀士はみんな裏に流れてたり……なーんて、もう時代が違いますかね」

咏「……お前はたまに核心を突くよな」

京太郎「え?」

咏「……事実、若くて強い男はそのほとんどが裏にいるんだよ。女子はまぁ、半々くらいで表にも裏にも強い奴らはいるけど」

京太郎「……ま、まじですか?」

咏「……よし!じゃあ今日の特訓は裏の強者と打ってみよう!にするか」

京太郎「え、えぇ!?」

咏「麻雀にまじめに取り組むなら遅かれ早かれ裏も体験することになる。いい機会だ。お前にはちょっと早いかもしれんがまぁ勉強になるだろ」

京太郎「いや、でも裏麻雀ってレート高いんですよね……?俺、持ち合わせありませんし」

咏「そんなガチの高レートにゃ連れて行かねーよ。元裏プロ、現表プロの行きつけの低レート雀荘があるんだ。いるかどうかはお前の運しだいだな」




~雀荘 東空紅~

カランカラン

咏「こんにちは~」

京太郎「お、お邪魔します……」

マスター「……これはこれはお久しぶりですな、三尋木プロ」

咏「久しぶりだねぃマスター。元気そうで何よりだよ。店は……あまり繁盛していないみたいだけどねぃ」

マスター「そんなことはありませんよ。競技麻雀の普及によって客はかなり増えましたから。今はたまたまです」

咏「そうかい?」

マスター「ところでそちらの……」

咏「あぁ、わたしの弟子だよ」

京太郎「須賀京太郎といいます。よろしくお願いします」

マスター「はい、よろしく。しかし三尋木プロに弟子ですか……」

咏「他言無用だぜ?来年の男子インハイでこいつが優勝したらネタばらしする予定なんだ」

京太郎「ちょっと待ってください。優勝って……聞いてませんよ!?」

咏「んー?今からできないとか言うのか?まだ半年以上あるんだぜ?どうにでもなるさ」

京太郎「はぁ……」

マスター「ふふ……それでは楽しみにしていますよ。須賀君」

京太郎「あ、はい……」

「かぁーっ!やっぱプロが二人も入ってたら勝てねぇよ、やめだやめ!」

「今日は負けたが……次は勝つからな、安さん!」

?「はいよ。またな」

?「……って三尋木?」

咏「あぁ、こんにちは多河さん、安永さん。いらしてたんですか」

京太郎「やっぱりそうですよね……なんか見たことあるなと思ったら……」

安永「こりゃまた珍しい……お前さんもここの常連かい?」

咏「そういうわけではないんですけどねぃ……今日は弟子の指導で」

多河「弟子がいたのか」

咏「来年の男子インハイで優勝するまでは他言無用でお願いしますね」

京太郎「す、須賀京太郎です!会えて感激です!あの……サイン、いただけますか?」

咏「……早い段階からはやりんとかに会わせちまったからしたたかになっちまったねぃ、お前は」

多河「はは……いい弟子じゃないか。サインせがまれたのなんて久しぶりだ」カキカキ

安永「こんなおっさんのサインなんか欲しけりゃいくらでもやるさ」カキカキ

咏「ちょうどよかった。お二人に相手してもらえるぜぃ。よかったな、京太郎」

京太郎「それはもう、ぜひともそうしたいですが……どうでしょうか」

安永「……来年のインハイチャンプのお手並み拝見ってとこだな」

多河「そうですね」

咏「二人とも『裏』出身の現役男性トッププロだぜぃ?まさしくお前が戦いたかった相手だな」

安永「……裏ねぇ」

咏「あと一人来たら卓が立つんだが……」

多河「三尋木は入らないのか?」

咏「わたしは牌譜を取ってあとからこいつの指導をするんで」

多河「そうか……」

京太郎「咏さんも裏にはよく来るんですか?」

咏「いんや、全然。私たちは恵まれてるからねぃ……昔と違ってプロ一辺倒でも食っていけるようになったってのもあるしテレビなんかの出演も多いからねぃ」

京太郎「へぇ……」

カランカラン

咏「……お。ラス1が来たぜ……!?」

?「……打てますか?」

安永(傀!?)

多河「……久しぶりの同卓ですよ、傀さんとは」

京太郎「常連さんですか?」

咏「……京太郎、悪いがさっきのは無しだ」

京太郎「はい?」

咏「お前は私の後ろで見てろ。人鬼と打たせるのは……まずい」

京太郎「人鬼……?」

咏「……ほんと、運がいいんだか悪いんだか。表の現トップがすこやんなら裏のトップはアレだよ、京太郎」

安永「しかも俺がもっと若かった頃からのトップだ……確かに高校生と打たせるわけにはいかねぇな」

京太郎「裏の……トップ……!」

咏「いい機会だ。牌譜取っとけ。こいつの牌譜なんざなかなか取れないからね。いいだろ、人鬼さん」

傀「どうぞご自由に」

京太郎「……」ゴクリ…

咏「……まさかオフで本気出す羽目になるとは思わなかったぜ」ゴッ!

傀「……」ニヤリ





続かない

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最終更新:2019年03月11日 01:28