京太郎「そういえば昨日、買い物しに出かけたんだけど……」

久「財布を忘れたと」

京太郎「俺、そんなに愉快じゃないですよ」

優希「靴は?」

京太郎「履いてたわ」


咲「私も誘ってよ」

京太郎「ゴメン。おまえ本屋で時間食うじゃん。で、文房具コーナー寄ったら手帳いっぱい売っててさ」

和「あれを見ると、秋の深まりを感じます」

咲「もはや風物詩だよね」


優希「手帳かー。あんまり使った事ないじぇ」

久「便利だから使いなさい。あなたは特に」

優希「ちょっとした事なら、わざわざ書かなくても大丈夫だし!」

まこ「そうは思えんが……まあ、わしも持っとらんがの」


京太郎「せっかくだし新しいの買おうと思ったんだけど、これが種類多すぎて迷っちゃうんですよね」

久「多いわよねぇ。ポケモンより多いわ、絶対」

咲「151よりも!? それは迷っちゃうね」

和「咲さん……」

京太郎「竹井先輩はどういうの使ってるんですか?」

久「私? 私のはマンスリータイプってやつね」

京太郎「マンスリー?」


久「そうそう。スケジュール管理をメインで使ってるわ。えーと……こういうのよ」

咲「わぁ……他人の手帳の中身を見るのってドキドキするね」ドキドキ

優希「パッと見、カレンダーみたいだじぇ」

久「わかりやすいわよね。1ヶ月の予定を一目で見渡せるのがいいのよ」


まこ「やたらカラフルじゃのう」

久「ペンの色で学生議会の予定、部活の予定とかで分けたりしてるわ」

和「へぇ、なかなか使いこなしてますね」

久「後ろのページは細かいメモとか私的な予定なんかも書いてあるけど、それはぁ……ヒ・ミ・ツv」


まこ「お、咲も手帳つかっとるんか?」

優希「可愛らしくもシックで上品な表紙。咲ちゃんにピッタリだじぇ」

咲「んん、そうかな?」

久「……知りたくなーい? 私のプライベート、興味無い? ねえねえ?」

咲「私は、1日1ページタイプなんだけど……こういうの。実際に書いてあるページは見せられないよ」

和「やはり、書きこむスペースが広いですね」

京太郎「毎日1ページも、一体なにを書くんだ?」


咲「いろいろかな。気になる本のメモとか、読んだ本の感想なんかだったり」

久「そういう使い方だったら、1ページなんてすぐ埋まっちゃうわね」

咲「あとは睡眠時間かな。つい夜更かししちゃうから」

まこ「なんか日記みたいじゃのう」

咲「そうですね。主にその日あった出来事とか、次の日やりたい事を書いたり……」


京太郎「詩的な文章とか書いたり」

咲「ぬううううううっ!?」ビビクン


和「咲さん!?」

久「おそらく恥ずかしい記憶を思い出して悶えているのね!」

京太郎「中学の頃、借りたノートにそんなのが書いてあったの思いだした」

優希「それは……そのまま、言わないでやってほしかったじぇ……」

京太郎「ほかに手帳使ってそうなの……和は?」

和「はい。実は、私も買い換えたばかりなんですよ」

優希「おお、タイムリー!」

久「でも、和がアナログの手帳使うのってちょっと意外な感じがするわ」

和「スマホにも予定は入れたりしてますよ。アラーム鳴るようにしたりして」


和「でも、手書きの方が『気持ち』が込もる気がするんです」

久「ふふっ、そういうのは否定しないのよね。和って」

まこ「ほんで、どんなん使っとるん?」

和「あの、これなんですけど……」

京太郎「こ、これは!?」


京太郎「……県民手帳?」

和「はい」


久「いや、意外すぎでしょ」

まこ「役所とか農協の人が使っとるやつじゃないんかコレ?」

優希「でも色はかわいいじぇ」

和「限定版のアップルグリーンです」

京太郎「えーと、お父さんにもらった……とかじゃなく?」

和「はい。自分で買いました」

優希「うしろ半分くらいが資料になってるじぇ」パラパラ

久「どうして数ある手帳の中からこれを選んだのかしら?」

和「いろいろありまして」


和「本当は私、来年ここを離れて東京に引っ越す予定だったんです」

京太郎「ああ……そうなんだってな」

優希「でもでも、インハイで優勝したからその話は無効だじぇ!」

和「ええ、ちゃんと約束は果たしてくれました。だからこそ」


和「私は、また来年も長野にいられるんです」


和「手帳コーナーには本当にたくさん種類の手帳があって、迷ってしまって」

和「その日はもう帰ってしまおうと思ったんですけど、レジの近くにあったこの手帳を見つけて」

和「そうしたら、また来年もここにいれる実感というか、そういうものが湧いてきて……」

和「気が付いたら手に取っていました」


まこ「地元愛に目覚めたって感じかの」

和「まぁ、簡単に言えばそうかもしれませんね」

久「これでも一緒に、信州を背負って戦ったんですもの」

優希「戦友だじぇ!」

京太郎「……なんかいいなぁ、そういう関係性」

まこ「なに言っとるんじゃ。あんたも一緒に戦った仲間じゃろ」

和「来年は期待していますよ、須賀君」


京太郎「よし! 俺も長野を背負っていけるように、県民手帳買おうかな」

和「そうですか? おそろいですね」

京太郎「願懸けってわけじゃないけど、気分を高めるにはちょうどいいぜ」

優希「じゃあ私も!」

まこ「ふむ。ついにわしも手帳デビューか」

久「ここは流れに乗るのが正解ね。ほら咲、いつまで悶えてるの?」

咲「むおぉぉぉぉ……ハッ! え、なになに?」


京太郎「いつまで呆けてんだ。いまから買い物行くけど、どうする?」

咲「えっ? やっと連れて行ってくれる気になったんだ!」

まこ「すまんが、わしら全員同行じゃけぇ」

優希「っていうか、手帳なんてどうやって使えばいいんだ?」

久「やっぱり人によって違うんだけど、たとえば付箋にメモを書いて管理したり……」

和「竹井先輩、そういうライフハック的なの大好きですよね」


京太郎「いまから県民手帳買いに行くんだ」

咲「んー。京ちゃんと一緒にお買い物できるんなら、まぁいいや。そのあとでいいから本屋さんね?」

京太郎「はいはい。それじゃあ行こうか……あっ!」

咲「どうしたの?」


京太郎「……財布忘れてた」

咲「すこしなら貸すよ……」



カン

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最終更新:2018年04月30日 20:53