太陽と豊穣に愛された夜

昔、太陽の女神である照と豊穣の大地を司る女神である咲の姉妹はとても仲がよく、ケンカの1つも、しやしませんでした。
しかし、天上の神々から太陽がいつまで経っても大地から離れないのは問題があると抗議を受け、姉妹は無理矢理引き離されてしまいました。

豊穣の女神がさめざめと泣いていると、二人の幼馴染の少年が慰めに来ました。
「どうしたの?どうして泣いているの?」

「お姉ちゃんと離れ離れになって、とても辛いの。まるで心が半分無くなったような辛さなの。」

すると少年は、一瞬心底悲しい顔をしましたが、覚悟を決めてこう言いました。「なら僕の心を分けてあげるよ。半分は無理だけど四分の一くらいなら。」

女神はとても慰められ、泣くのをやめました。「ありがとう、京ちゃん。」

そして少年は、きっと太陽の女神も同じような気持ちだろうから慰めに行かなくてはと思い立ち、旅にでました。
その旅の中で、少年はやがて立派な青年になりました。

青年が太陽に1番近い山の中腹まで来ると急に視界が悪くなり、とうとう1歩も歩けなくなりました。
「ああ情けない、ここまで来て立ち尽くす事しか出来ないとは!」

彼は顔を伏せ静かに泣きました。
すると途端に視界が晴れ渡り、見知らぬ麗しき乙女が立っていました。
「ずっと見ていたよ、来てくれてありがとう、格好良くなったね京ちゃん」

そう、この乙女こそ太陽の女神だったのです。少年が青年になる程の時が経っていたのですから女神もその分成長し、すっかり大人になっていました。

その麗しさに残っていた四分の三の心をすっかり奪われた青年はすぐさま婚姻を申し込み、女神はこの時を待っていたとばかりに即答しました。

彼女も最初の頃はあまりの辛さに泣いてばかりだったのですが、少年が妹に心を分け与えたと知った時に、嫉妬のあまり1つの国を焼いてしまい、少年が自分の元に来る為に旅立った時は嬉しさのあまりそこら中に祝福をもたらしました。
こうして彼女は失った心を自ら埋め、青年が無事自分の元にたどり着くよう天で輝き、道を照らし続けていたのでした。

夫婦となった二人は深く愛し合い沢山の子が産まれました。
(この時産まれたのが雲・雨・雪・カピバラとされている)

その頃、地上では豊穣の女神がどうしても残る四分の一の心を取り戻せずにいたため不作が続いていました。
これを憂いた天上の神々は、最近愛するものと結ばれた幸せから過剰に明るく暑くなっている太陽の女神にほんのしばしの暇をやり、妹と再会させようと考えました。
そうすれば豊穣の女神が自ら心を埋め太陽の女神も落ち着くだろうと思ったからでした。

しかしそうはなりませんでした。
再会した豊穣の女神があまりにも痩せ衰えていたため、心配した太陽の女神が青年の了承を得て青年の心を四分の一分け与えました。
すると豊穣の女神はすっかり良くなり、姉と負けず劣らずの麗しき乙女となりました。

豊穣の女神は青年にすっかり惚れ込み、青年も豊穣の女神をにくからず思っていたので、女神は青年の第二婦人となり子を産みました。
(この時産まれたのが月・星・花
運命とされている)

姉妹の女神は青年の心をそれぞれ半分ずつ持っていたので1日の始まりから半分を太陽の女神と共に天で過ごし共に降りてきて残り半分を豊穣の女神と共に過ごすといった具合にそれぞれと1日の半分ずつを過ごすと取り決めました。

すると夜と言う概念が出来上がり、青年はそれを司る神となったのです。
夜は文字通り二人の女神に心を奪われているので頭が上がりませんが、二人を引き離した天上の神々には容赦がなくこれを討ち滅ぼしてしまいました。

こうして太陽の女神が最高神として君臨し夜を尻に敷く今の世が作られたのでした。

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最終更新:2018年04月28日 23:06