京太郎「はぁ…」

京太郎「(咲の奴、また迷子になったのか…これで何回目だ?)」

京太郎「(…あのポンコツめ。本当に俺がいないとダメだな…っと)」

京太郎「咲、ようやく見つけたぞ」

咲「…あ、京…ちゃん」

京太郎「まったく。今まで何処をほっつき歩いてたんだ?」

咲「ご、ごめんなさい…」

京太郎「…まぁ、咲が迷子になるのは今に始まった事じゃないしな」

京太郎「それにまぁ…無事で良かった」

京太郎「ほら、皆が待ってるから、早く戻ろう」

咲「…う、うん」

京太郎「…どうした。元気がないな」

咲「そう、見える…?」

京太郎「あぁ。熱でもあるのか?」

咲「そ、そんな事ない…と思うけど」

京太郎「そうか? でも、お前、冷房弱いしなぁ…」

京太郎「ちょっと熱測るぞ?」ピト

咲「あ……」

京太郎「んー…大丈夫、そうだな」

咲「だ、だから、そう言ったのに」

京太郎「でも、万が一って事があるだろ?」

京太郎「特にお前は今、皆の期待を背負ってるんだからさ」

京太郎「…って、ゴメン。これじゃあプレッシャーを掛けてるみたいだな」

咲「…ううん。大丈夫」

咲「それより…き、京ちゃんの方は大丈夫?」

京太郎「ハハ。まさか咲に心配させるなんてな」

京太郎「俺の方は大丈夫だよ。…まぁ、今年は自分の手で、って言う目標は果たせなかったけど」

京太郎「でも、まだ来年があるんだ。腐らず、皆のサポートを頑張るさ」

咲「……そういうんじゃ」

京太郎「ん? もしかして体調面の方か?」

京太郎「咲も俺の健康優良児っぷりは知ってるだろ。心配ご無用」

京太郎「荷物持ちでも、迷子探しでもなんでもござれってね」

京太郎「実際、今回もお前の事をすぐ見つけられただろ?」

京太郎「だから、心配するなって」

咲「…………うん」

京太郎「それより、ほら、手、繋いどかないと」

京太郎「また迷子になられちゃ困るからさ」

咲「わわ…」

京太郎「って何を今更、顔を赤くしてるんだよ」

京太郎「こんなの何時もやってるだろ」

咲「そ、そう……なの?」

京太郎「あぁ。…ってお前、本当に大丈夫か?」

咲「だ、大丈夫…私は大丈夫……だよ」

京太郎「うーん…なら良いけど、あんまり無理はするなよ」

咲「それは……」

京太郎「まぁ…もうすぐインハイだもんな」

京太郎「お前って案外、責任感強いところあるし、そう肩の力とか抜けないと思うけど」

京太郎「でも、頑張りすぎてもダメになるだけだし、息抜きするところは息抜きしようぜ」

京太郎「その為なら俺も出来る限り、協力するしさ」

咲「……その言葉、そっくりそのままお返します」

京太郎「え?」

咲「……なんでも、ないよ」

咲「…それより…あの、京、ちゃん」

京太郎「ん、どうかしたか?」

咲「…京ちゃんは、さ。…原村さんの事、覚えてる?」

京太郎「何言ってるんだ。覚えてるに決まってるだろ」

京太郎「つか、咲こそちゃんと覚えてるのか? 和の事、和ちゃんって呼んでたはずだけど」

咲「…そう、だったっけ」

京太郎「そうだよ。忘れちゃったのか?」

咲「……うん。そう、かも」

京太郎「……まぁ、アレから色々とあったもんな」

咲「………そう、だね」

京太郎「咲の胸もなんか急にデカくなったし」

咲「っ! え、エッチ…!!」カァ

京太郎「はは。悪い」

京太郎「ま、それはさておきだ。インハイとかが落ち着いたら連絡してやれよ」

京太郎「和は咲の事、大好きだったからな」

京太郎「咲も珍しく和には素を出してたみたいだし…」

京太郎「一時、俺は二人の事をそういう関係なんじゃないかと邪推してたくらいだ」

咲「そ、そんなオカルト有り得ません」

京太郎「はは。懐かしいな、それ和の口癖だったっけ」

京太郎「最初の頃は咲が嶺上開花上がりやすい、なんて話題にする度に、良く言ってたよなぁ」

咲「…今でも」

京太郎「ん?」

咲「……今でも、彼女はそう思っていると思…うよ」

京太郎「あぁ。確かに。和の奴は頭良いけど、その分、頑固だったからなぁ」

咲「…それ、褒めてる…の?」

京太郎「勿論、褒めてるよ」

京太郎「実際、俺はトータルで和に勝てないままだったしなぁ」

京太郎「なんつーか…出費と稼ぎの採算が常に合ってるって言うか、鉄壁っつーか」

京太郎「本当にブレない堅実な打ち方するから、数回は勝てても、最後までやると負け続けだったんだよなぁ」

京太郎「だから、そのブレなさというか、頑固さは初心者の俺にとってはとても眩しくて格好良かったよ」

京太郎「俺なんか、今も迷走しっぱなしだった…いや、今もそうだしさ」ハハ

咲「……京、ちゃんは、頑張って、る」

咲「少なくとも、一年前よりはずっと強くな…なったよ」

京太郎「はは。ありがとうな。…でも、俺自身、分かってるんだ」

京太郎「もし、今の俺が和と戦っても絶対に勝てない」

京太郎「前と同じまま、だってさ」

咲「……」

京太郎「だから、次に和と会う時までにもっともっと強くなりたいんだよ」

京太郎「じゃないと、あのこわーいデジタルの鬼に、何言われるか分かんないしさ」

咲「そ、そんなに怖い?」

京太郎「そりゃもう。アレは経験者じゃないと分からんね」

京太郎「和ってば、麻雀にストイックで頑固過ぎるから、他人に教える時も妥協を許さないんだよなぁ」

京太郎「まぁ、そういう所も可愛かったけどさ」

咲「…へ、へぇ」

京太郎「…にしても、和の奴、今、何処で何をしてるんだろうな」

咲「……多分、多分……だけど」

咲「…きっと幸せだと思、うよ」

京太郎「幸せ?」

咲「…えぇ。きっと…好きな人に手を握って貰って、幸せを感じているかと」

京太郎「なんだ。やけに具体的だな」

京太郎「……しかし、和に好きな人かぁ。それが本当だとしたら、ちょっとショックだなぁ…」

咲「…え?」

京太郎「そりゃずっと良いなぁって思ってた相手だったからさ」

京太郎「まぁ、嫌われるのが怖くて全然、アプローチ出来てなかったけど」

咲「あの…じゃあ…」

京太郎「ん?」

咲「……もし、彼女が死んだら…今みたいに……」

京太郎「今?」

咲「……ごめんなさい。忘れて」

京太郎「……まぁ、咲がそう言うなら、俺も無理に覚えてはおかないけどさ」

咲「…代わりに一つだけ聞かせてください」

京太郎「なんだ?」

咲「…京ちゃん、…いえ、須賀くんは」

咲「おーい、京太郎ー!」

咲「こんなところにおったんか…まったく探したぞ」
   サキ
咲「…私が一杯いて、幸せですか?」

京太郎「あぁ。幸せだよ」






                 カンッ

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最終更新:2018年04月28日 23:05