開会式前日

地元だった長野からは、どこが出場してきたのか。

取っ掛かりはそんな好奇心だけ。

昨年出てきた龍門渕は全員1年生でありながら県大会を圧倒。

全国でウチと当たり、ダヴァン先輩が副将戦で龍門渕以外の選手をトバし

そこで敗退となっている。

バケモノと謳われた大将にまで回させなかったのは凄まじいものだ。

今年。当然再度出場してきたんだろ、と調べてみたら

県大会決勝戦で敗れたとのこと。

長野からの出場校は清澄とあった。

風越ですらないのか? 疑問が募り詳細を調査していく。

清澄のメンバー表、その大将の欄を見て即座に疑問は氷解した。

宮永咲。

同い年の幼馴染にして、チャンプ照さんの妹。

家族麻雀に付き合うことになった小学校6年間が思い出される。

細かいことはアレコレあるが、姉妹揃ってとんでもないのは確かと言っていい。

さて、何を調べるかを考えなければならないだろう。

シード校として時間の余裕はある。といって胡座をかくわけにはいかない。

椅子に座ったまま、腕と上半身を伸ばす。で、膝に感触。

ネリー「何見てるのー?」

ベッドに腰掛けていたネリーが、俺の膝上に座っていた。まあいつものことなんだが。

いつもじゃないのは、ここはホテルの部屋ってこと。監督と部長の部屋。

他に女性がいるからって野郎の俺が入っていいんだろうか。

まあ男は俺一人だから別階でシングルなんだけど。

ネリー「えーと、ミヤナガ、サキ?」

繋いでいたPCの画面を見たらしいネリーが声に出す。

部屋が緊張に包まれたのは気のせいではあるまい。

智葉「ネリー、少しどいてくれ」

部長も覗き込んでくる。

智葉「漢字も同じ、か。京太郎、この大将は…」

京太郎「ええ、照さんの妹です。俺と同級生で」

明華「幼馴染、ですね」

いつ寄ってきたのか、雀先輩がそこにいた。軽く頷く。

ネリー「1年で大将ってネリーと同じ?」

京太郎「そういうこった。いくらお前でも手こずるんじゃないか?」

ダヴァン「そんなにデスカ?」ズルズル

ハオ「意外、というか初めてですね。京太郎が言及するのは」

京太郎「まあ、経験則で」

智葉「卓を囲んだのか?」

京太郎「小学校の頃ですが。勝てたことあったっけ?レベルですよ」

アレク「この歳で10年以上の経験なら、土台としちゃ充分だね。

    姉妹揃ってスカウトしたいレベルかな」

質問の答えに話せることは話していく。

といっても先入観や予断の警戒か、表面的な内容だけで終わる。

俺自身も、咲を含めてのメンバーのデータを洗えるだけ洗わなければならない。

ぶつかるにしてもどこでぶつかるかは、明日のくじ引き次第だ。




で、開会式。

臨海はBブロック。同じくB側シードは鹿児島の永水。

A側シードに照さんの白糸台、北大阪の千里山となった。

咲の清澄はBブロック。

ただ永水シード側なので、当たるとしたら一番早くても準決か。

まあ、当面やることは決まったし、監督からの指示も来た。

1回戦12校から上がって来る3校は結果が出てからでもいい。

永水、姫松、清澄、白糸台、千里山の順で調べろとのお達しだ。

シードじゃなかったので俺は意識から外していたが、

南大阪の姫松だって舐めていい相手じゃないから。

しかしそれとは別に、心臓の鼓動があまりよろしくないのは何故だろう。

病気とかそういうのではない。嫌な予感、とも違うはずだ。

ハンドでミスした心地悪さとも一線を画す。

見ているしかできないもどかしさ。多分これかな。


京ちゃん視点でした。カンッ

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最終更新:2018年04月26日 22:32