京太郎「……」ムク

咲「あ、京ちゃん。おはよう」

京太郎「……ああ、咲。おはよう」

夢を、見ていたようだ。

京太郎「なぁ咲、俺はどこ出身だったかな?」

咲「もー、またそれー?」

京太郎「……いやすまん、寝ぼけてるみたいだ……うん……」

咲「心配しなくても、京ちゃんは生まれてからずうっと長野住まいだよ。私が保証するから」

京太郎「そう、だな……最近、どうも俺が奈良にいたような気がしてな……」

咲「大丈夫。京ちゃんは長野人だよ。幼馴染みの私が言うんだから間違いないって」

京太郎「うん……うん……そうだな。咲は俺の……おっ、幼馴染み……だもんなっ……」

なんだ?貧血だろうか。さっきまで寝てたから、立ち眩みでも起こしたか?

咲「ふふふ……」

咲が、笑っている。こっちを見て、笑っている。

咲「京ちゃん……つらい?苦しい?だぁいじょうぶ、そんな風に京ちゃんを苦しめるモノは、私が全部……」

京太郎「俺、俺は何を……っ」

なんだ、自分は何を忘れている。そうだ、忘れているはずだ。何か、大切な――

咲「んっ……」

京太郎「んぅっ……!?」

突然の口付け。咲と目が合う。

京太郎「っ……」

視界が暗転する。何も考えられない。意識が遠ざかっていく。

咲「全部、ぜぇんぶ……私が無くしてあげるから。京ちゃんを苦しめるモノ……思い出も過去も記憶も故郷も、
女の子も京ちゃん自身も……。私に任せて、京ちゃんの幸せは私が決めてあげるから……」


薄れていく意識の中、ただ咲の声だけがはっきりと存在していた……。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2017年10月12日 23:22