須賀京太郎は、恋人である滝見春が黒糖を口にする姿をただ黙って見つめていた。
その行為に特段意味があるわけではない。ただ、普段は表情の起伏に乏しい彼女が
黒糖を食べている際に時折見せる幸せそうな顔がとても愛おしかったのである。


そうして見つめていると

「……食べる?」

と問いかけられた。そんなに物欲しそうな顔をしていたのだろうかと少々気恥ずかしく思う。
彼女の厚意を無碍にするのもあれなので

「それじゃ、一ついただきます」

と手を差し出すが、彼女はそれに応じず、黒糖を一片自分の口に含んだ。
訝しく思いながらそれを見つめていると、

「!」

突然唇を奪われた。


いきなりの口付けに驚き、半開きになった口の中に何かが押し込まれる。
独特の風味と甘味から、それが黒糖だと分かった。

「んぅっ……ふっ、ふぅ……」

京太郎の口の中で春の舌が黒糖を転がし、ゆっくりと溶かしていく。
最初はあっけにとられていた京太郎だが、気が付くと春の体を自身に抱き寄せ
お返しだとばかりに黒糖を春の口へ押し戻した。

「んぁっ……ん」

春は小さく肩を震わせたが、すぐにどこか蕩けたような顔になり
京太郎の服をギュッと掴み舌を伸ばした。

お互いに舌を絡め、歯列をなぞり、口蓋を撫で擦る。
それは黒糖が溶けてなくなってからも続いた。







「ふぁ……」

しばらくして、二人の口が離れる。
二人の口の間に、名残惜しそうに唾液の橋が架かった。
口の中にはまだ黒糖の甘味が残っていたが、物足りなかった。





「……おかわり、いる?」

そういって春は黒糖の袋を差し出した。
京太郎は一瞬ガッカリしたが、すぐに彼女の意図を察し、
黒糖を一片口に含んだ。