県大会を勝ち抜き、やって来た全国大会。
友人達と切磋琢磨してようやくやって来れた。
そんな大会なのに、自分は何をやっているのだろうと一人の少女が項垂れる。

少女の居る場所は、全国大会会場近くの宿泊施設の一室。
自分に宛てられた部屋の中で、携帯の画面を眺め溜息をついた。

少女の携帯の中には、一枚の写真が撮られている。
撮られているといっても、慌てて撮ったのかピンボケしていて、よく分からない。
辛うじて、髪の毛が金髪の男らしい人が写っているということだけが分かるぐらいだ。

暫し項垂れるも体を起こし、そのピンボケ画像を見て幸せそうにニヤける。
この少年に会ったのは、たまたまだ。
友人達とお昼を何処にしようと話しながら会場を歩いている時に出会った。

その少年は、制服に身を包み、両手にお弁当の袋を持って隣を通り過ぎた。
たったそれだけ、何がドラマチックな出会いがあった訳ではない。
それでも、その瞬間、初めて自分の耳が赤くなってく音を少女は聞いた。

恋するつもりなんて、なかった。
でも、そんな時に限って恋はやって来る。

一目惚れして、離れていく彼を慌てて携帯のカメラで撮ってしまった。
慌てていた上に、時間もなかったので現物は、先ほど言ったとおりの出来。
その出来に落ち込むも、確かに彼が写っていると思うだけで心が暖かく、嬉しく、幸せになる。

恋などしたこともなく、本当に恋なのか、それすらも分からない感情。
それでもまた、もう一度会いたいと強く思う。

少女は、その訳の分からない胸の痛みを楽しむと携帯を置き、荷物を漁ると一枚の紙とボールベンを持ち出す。
机の上に広げて、よく分からない写真を前に置き、思い出せる限りで少年の顔を描く。
思い出して書いてみるも、一目見ただけ、ピンボケ写真のみの情報。

やっぱりモンタージュは、うまく行かない。

―――――――

「何してるの? 京ちゃん」
「んー……なぁ、咲、俺の顔って写真撮るほど?」
「へ?」
「……いや、なんでもない」

お弁当を部屋に運び、自分の顔を鏡に映し何度も京太郎は見返す。
見返していれば、不思議に思ったのだろう、咲が首を傾げ聞いてくる。

咲に先ほどあった事を思い出し、聞いてみるもすぐに誤魔化す。
聞けば答えは返ってくるだろう。
しかし、同時にからかわれるに決まっていると思い直したのだ。

「変な京ちゃん」
「ほっとけ」

そう言って去っていく咲に、京太郎は苦笑し見送った。
そして、鏡を見て彼女の事を思い出す。
自分の姿を顔を真っ赤にさせ撮った彼女を――。

カンッ!