「はーい☆ TVの前のみんなこーんにーちはー☆
 今日も牌のお姉さんの麻雀教室ぅ、はーじまーるよー!」

 インハイで優勝した数週間後、私達の目の前ではテレビカメラとアイドル雀士、瑞原はやりさんがいました。

「今日はなんとぉ、インターハイ団体で優勝した清澄高校麻雀部にお邪魔してまーす☆」

 瑞原プロが牌のお姉さんとしてパーソナリティを務める番組の収録のためです。
 それだけだったら名誉なことですから歓迎すべきこと。そのはずです。でも。

「そして今日の特別生徒はこの子、須賀京太郎くんっ☆」

「よろしくお願いします!」

「はぁい、よろしくねっ☆ 京太郎君は麻雀の腕はどのくらいかな?」

「あはは、恥ずかしながらほぼ初心者で」

「そっかそっか。でも大丈夫! そーゆー子のための牌のお姉さんだからね☆」

「ありがとうございます。美人でスタイルの良いはやりんに教えてもらえるなんてラッキー!」

「こら! そんなえっちな目をしちゃ めっ だぞ☆」

  ワイワイガヤガヤ キャッキャウフフ

 嬉しそうにどこかはしゃいだ風に笑い、素人とは思えない軽妙な喋り口で瑞原プロと絡む須賀君。
 その姿を見て私の胸が痛みました。気付けば拳は爪が食い込むほどに握りしめ、歯は軋むほど食いしばり。
 ……私の指導は、彼の身についていなかったのでしょうか。

「ふむふむ? 京太郎君は面白いツモ運があるね☆
 基本が堅実なデジタルだから悪い方向に偏っちゃってるみたい☆」チラッ

 ズキンッ。流し目を飛ばされて私の胸の痛みは更に強まりました。
 まるで、そう、まるで私の彼へのコーチングが間違っていたのだと言われているような。
 そしてそれを証明するように――

「ろ、ロン! えっと、タンヤオ七対子、混一色で一万二千……でいいのかな? やった!」

「っ……お見事☆ まさかこんなに早くはやりから跳直取るなんて、すごいよ☆
 京太郎君、今日は楽しかったかな?」

「? はい! すっごく楽しかったです!」

「そう、良かった☆ 初心者のうちはね? まず楽しむことが大事なんだよっ☆
 デジタル打ちもオカルト打ちもそりゃあ極めたらすごく強くなれるけど、
 麻雀はその人その人に個性が出るんだ☆ だから、まずはその個性に従って楽しんで好きになることが一番なの☆」

 きらきらと輝くような笑顔を浮かべている須賀君。
 そうなんですか? もしかして、今まで須賀君は麻雀、楽しくなかったんでしょうか……?

<カット! オツカレッシター!

「はーい、お疲れ様でしたー! 京太郎君もお疲れ様☆」

「はいっ、その、本当にありがとうございました! 最後に手加減していただいて……」

「こーらっ! 確かに試合みたいな本気ではなかったけど、あの和了は京太郎君の実力っ!」

 須賀君の瞳は瑞原プロだけに向けられています。いつもは、私の胸をちらちらと覗き見ているのに。
 言いようのない感情がお腹の底から湧いてくる感じがしました。
 すると瑞原プロが私に近付き、耳元で小さく囁いたんです。

「京太郎君はいい子だね。これまで麻雀をちゃんと楽しめてなかったのは可哀想。……このままならはやりがもらっちゃうからね?」

 部長たちや先生方が去り行く瑞原プロと撮影クルーに丁寧に頭を下げる中、私は身動きが取れませんでした。
 私、私はいったい、どうしたいのでしょうか――――


カンッ