ホストのスタンスというのは様々である。相手をいい気分にさせるといっても持っている武器はそれぞれ違う。
俺の場合は学生の頃に慣れたお姫様扱いが基本となる。逆に俺様キャラの人もいるのがこの業界だ。

これはホステスも同じだが、店での時間以外にも様々な武器がある。
同伴出勤やアフター、それにメールや電話での営業。これらに対する接し方もそのホストの裁量である。
人によっては性的な関係を結ぶ、枕営業をしている奴だって普通にいる。

肝心の俺のスタンスはというと、枕はおろか、同伴やアフターすら皆無である。
『お姫様になれるのは店の中だけ』、そういうポジションを維持してる。

そりゃあ、金を稼ぐにはした方がいいのは分かっている。しかし俺には無理だ。
なぜって、線引きをちゃんとしないと俺自身が相手に肩入れしてしまうからだ。
自分が人に甘いのを自覚しているのだ。だからこそ、こういうお客さんが一番困る。

憧「ね、店終わったら二人で飲みに来ましょ? こんなこと貴方にしか言わないのよ」

さわさわとこちらの太ももの付け根を撫でながら、今日の彼女はぐいぐいと攻めてくる。
彼女はOLで、大金を持っていて頻繁に来れる裕福な姫ではない。だから、こんな搦め手を使おうとしてくるのだ。

憧「マージンとられない分弾むし、京にもいい話だと思うんだけどな」

正直、彼女はモデルに出ても違和感のない美少女だ。それが密着して、酒はおろかその先をにおわせてくる。
一晩を過ごせばあるいは、と思っているのだろう。普段会社で大モテだろうになぜそこまで俺に執着するのかちょっとわからない。

京太郎「憧、俺はお金でお前を抱きたいんじゃないんだ。ホストだけど、ホストだからこそその一線は守る。
    抱くのは本当に大事になったお姫様だけだよ。だから、その物憂げな顔はお前には似合わない、笑顔でいてくれ」

憧「うん、わかった、ごめん、無理言ってるの分ってるんだけど」

ホストは多くが太客というお金を多く落とす客に優先してあてがわれる。元の資金の少ない憧にとってはこのクラブに来るだけでもかなりの負担なのだ。

京太郎「会いたいのも、寂しいのもわかる、だからできるだけメールと電話するよ。お前は俺の大事なお姫様なんだから」

ホストで困る客、上位は「店での関係を本物と信じ込み過ぎた女」「太客だからと横暴を押し通す客」「そして望まぬ関係を結ぼうとする客」だ。

ぶっちゃけ憧は超絶美人で、須賀京太郎として誘われたらついて行ってしまうだろう。
だが今の俺はホストKYOなのだ。守るべき矜持がある。まあ、もったいなかったとは思うんだけどな。


『ホストKYO』 魔性の誘い新子憧編  カン