咲「…」

京太郎「よぉ、なんか元気無さそうじゃねぇの」

咲「京ちゃん…」

京太郎「隣、いいか?」

咲「ん…うん」

京太郎「よっと…ほれ」

咲「…なに?」

京太郎「タマゴサンド。マイソウルフードだ、これ食うと元気出るぞ」

咲「飲み物ないんだけど」

京太郎「しっとり系だからへーきへーき」

咲「ちっとも平気じゃないよ、もうっ…あむ」

京太郎「食うんかい」

咲「だって、せっかくくれたし…」ハムハム

京太郎「…んで?何があったんだよ?」

咲「何がって…」

京太郎「さっきマジで元気無かったじゃん。話してみろよ」

咲「…何があったって言うより、何もなかったこと…かな」

京太郎「どういうこった」

咲「大星さんって知ってる?」

京太郎「んー…あぁ、白糸台のなんぞ生意気そうなアレか」

咲「生意気そうって…それは京ちゃんも大概でしょ?」

京太郎「うっせ。…それで?」

咲「…その子がね、お姉ちゃんと仲良くしてたの…まるで姉妹みたいに」

京太郎「…ふうん」

咲「京ちゃんには話したことあったっけ、家族麻雀のこと」

京太郎「…色々アレなアレか」

咲「ふふっ、さっきからアレアレ言い過ぎだよ」

京太郎「仕方ねーだろ、オブラート的なアレに包まねーとアレだし」

咲「そうだね…それでずっとギスギスしててろくに姉妹らしいことしてこなくてさ…そのまま離ればなれになって」

京太郎「…」

咲「京ちゃんに無理矢理連れてこられた麻雀部でさ、私のトラウマ遠慮なく掘り返されたりしちゃって」

京太郎「その件はまっこと申し訳ございやせんでし、たっ!」ペッコリン

咲「あはは、もう気にしてないし別に良いよ。…友達もできて、ようやく麻雀を好きって言えるようになって…お姉ちゃんと話をしたくてここまで来たんだ」

京太郎「…うん」

咲「来たんだ、けど…」

京太郎「…それでさっきのに繋がってくんのか」

咲「…うん。二人とも、すごく楽しそうだった…大星さんは笑ってて、お姉ちゃんは無表情っぽいけど、どこか楽しそうで…」

京太郎「…」

咲「…私、お姉ちゃんとあんな風になれるのかな…普通の姉妹みたいに笑ったり、泣いたり、下らないことで喧嘩したり…最後には仲直り、出来るのかな?」

京太郎「…咲」

咲「京ちゃん、私ね…仲直りの仕方、知らないの…誰かに怒られた時、隅っこで縮こまって相手の気がすむまで大人しくする以外、知らないんだ…こんな私でも、出来るのかな」

京太郎「…なあ、咲」

咲「うん」

京太郎「お前はさぁ、ポンコツだろ?」

咲「…いきなりなにさ」

京太郎「泣き虫で、何やってもとろ臭くて、すぐ迷子になって、本に夢中になると周りが見えなくて…でも、麻雀だけは滅茶苦茶強ぇ」

咲「…マイナスが多いね、私って」

京太郎「今更だな。…そんで、家族ってのはよ、パッと見似てないように見えても案外どっか似るもんだ。だからお前のお姉さんだって、きっとポンコツなんだよ」

咲「…」

京太郎「多分、向こうも仲直りってどうすれば良いかわかんないんじゃねえかな。自分から喧嘩して、そのまま別れて、時間が経って…一緒にいるより、いない時間の方が多かったんだ。俺だって、仲直りの方法なんかそうそう思い付かねえよ」

咲「…そうかな」

京太郎「きっとそうだよ。面と向かって話してみれば案外上手くいくんじゃねえか?」

咲「…いかなかったら?」

京太郎「失敗したらそん時はそん時だろ。一度だけしか出来ないって訳じゃねえんだ、何度でもやりゃいいさ」

咲「…うん」

京太郎「なぁ咲、ちっとした賭けでもしねえか?」

咲「賭け?」

京太郎「そそ。この大会が終わって、俺達が長野に帰るまでに仲直りできるかできないか。負けた方は…そうだなぁ、そいつのできる範囲で何でも一つお願いを聞くとかさ」

咲「なにそれ…」

京太郎「良いじゃん良いじゃん。で、やるか?」

咲「もう、しょうがないなぁ…」

京太郎「よっし!んじゃ俺は上手くいかない方に賭ける!」

咲「えっ、ちょっとひどくない!?私達に仲直りして欲しくないの!?」

京太郎「…お前はホントにポンコツだなこのアホ」スパァン

咲「いったい!?何するの!」

京太郎「いいから聞け。…肝心のお前が成功する方に賭けなくてどうすんだ?」

咲「ぁ…」

京太郎「…で、お前はどっちに賭ける?」

咲「…うん。もちろん、私達が仲直りして、京ちゃんに好きな本を好きなだけ買ってもらう方に賭ける!」

京太郎「財布が軽くなりそうなお願いだなぁ…咲」

咲「なに?京ちゃん」

京太郎「……明日、頑張れよ」


咲「――――――うんっ!」

カンッ