「ただいまー」「お邪魔します~♪」
「なんでここに!?」

 清澄麻雀部の夏が終わり、皆が学校への報告に向かった中俺は一足先に家路に着いたはずだ。
 優勝を噛み締める部長とそれをからかう染谷先輩。
 興奮して普段の3割増しでタコスを食べる優希に、どこか遠い目をした和。
 嬉しそうでいて悲しそうな表情を時たま見せる咲。
 何くれとなく皆(悲しいかな俺以外だ)の世話を焼く風越の福路さんに、にゃーにゃーと五月蠅い池田先輩、
 あわあわと右往左往する吉留先輩。
 新幹線で一緒だったのは彼女たちだけだったはずだ。
 それなのになぜ、どこから彼女は一緒だったのか?

「貴女は東京の高校所属でしょ、明華さん!」

 そう、臨海女子高校所属高校二年、風神とあだ名される雀明華さんが何故か俺の隣にいて、玄関に上がっている。

「ちゃんとお話ししたはずですけど……。忘れちゃいました?」

 ふわふわにこにことした雰囲気が一転、悲しそうな雨模様を纏う。
 俺は慌てて記憶を探り――思い出した。

『臨海高校との契約は夏までで、結果次第で秋、春大会。果ては3年生まで延長だったんです。ですけど、負けちゃいましたから』

 東京とは思えない寂れた街頭で、インハイ個人戦が中継された電気屋のモニターを切なそうに眺める日傘を差した金髪美女。
 思わず声をかけた俺が雀明華だと気付いたのはそんな言葉を聞いた時だった。

『帰る場所、無くなっちゃいました。ふふっ』

 悲しそうであるのにどこか清々しそうな声音で微笑む彼女に俺はつい、こう声をかけたのだ。

――だったらうちに来ませんか。ちょうどフランス語が分かる人、親父が探してるんで――


「思い出してくれました? このままじゃフランスに帰れませんから……責任、取ってくださいね♪」


 その後、雀明華は清澄高校に転入。翌年の春・夏大会清澄連覇の一翼を担った。
 連覇を成し遂げた際に受けたインタビューで彼女はこう語ったという。

『愛は、無敵です♪』


カンッ