インターハイが終わったころから、急に私に告白してきたリ手紙を下駄箱に入れる男の子が増えた
和ちゃんはモテても面倒くさいだけって言ってたけど、それって本当なんだって実感してる

しかもあれだよ、そういう人たちが見てるのは清澄の大将の宮永咲であって、ただの私じゃない

ずっと私への接し方が変わらないのは京ちゃんだけ
京ちゃんだけが等身大の私を見てくれる

曰く「どじで抜けててポンコツですぐに迷子になるくせに麻雀だけやたら強い変な自称文学少女」
なんだかとっても失礼な評価だけど、変わらず買い物に付き合ってくれたり迷子になったら探してくれる

別に私は恋愛に興味がないわけじゃない
ただ、恋人ができたりしたら今までのように京ちゃんと一緒にいられなくなる
男の人って他の男の子と遊びに行くだけで浮気だって感じるらしいしさ

それなら今までと同じで京ちゃんと一緒にあちこち行く方が楽だ
お散歩したり木陰で寝転がったり一緒にご飯食べたり、そういうので十分楽しい

そんな私には恋愛は早いんだろう、そう思ってたんだ

うんついさっきまでは、京ちゃんがあの人とキスしてるのを見るまでは、思っていたのに

心が波立つ
『どうして私じゃないの?』
『ずっと隣にいたのに』
『裏切者』
『京ちゃんに話しかけないで』
『京ちゃんに笑いかけないで』
『ずるい』
『――なんて、いなければいいのに』

心の中から、ポコポコと泡のように言葉があふれてくる

そうだ、京ちゃんは騙されてるんだ
外面がいいから、疑わなかったんだ
だって京ちゃんは優しいから

京ちゃんを守らなきゃ
じゃないときっと京ちゃんは傷ついちゃう
本当に京ちゃんを分かってあげられるのはその人じゃない

だから助けよう
あの女の魔の手から京ちゃんを
それが正しいんだ

そうだよね、京ちゃん

私の心が定まると、さっきまで苦しかった心臓が楽になった
そうだよね、京ちゃんのためだもんね、だから――さないと

あの女はいらない、京ちゃんにはふさわしくない
だから、――そう


カン

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最終更新:2016年11月27日 14:52