東京の夜空は地元に比べて星が少なかった。そんな中でも月だけはしっかりとその存在感を主張している。
彼はその夜空に手を伸ばし、なにもつかめないままに手を握る。

京太郎「やっぱ遠いなあ。あいつらが綺羅星や月なら、俺は5等星以下か」

自嘲するようなそんな声を聴いて、私はくすりと笑う。

久「須賀くんは星っていうよりも空じゃないかしら」

京太郎「部長、聞いてたんですか」

久「ま、ね。なーんか一人黄昏てるから声かけそこなっちゃったわよ」

いつも通りを意識して、彼に笑いかけてみる

京太郎「でも『空』ですか? いや確かに何もないところは似てるかもしれないですけど」

久「違う違う、あなたがいるから私たちは気兼ねなく輝けるって話よ。いつもありがとね、須賀くん」

京太郎「そ、そんな、部長がそんな風にお礼を言うなんて……本物の部長をどこにやった!?」

ノリで返してきてるんだろうけれど、それは流石に傷つくわー。なに、私って感謝の一つもしない女に見えるかしら?

久「私はいつでも私よ。証拠に明日の差し入れをリクエストしちゃおうかしら」

京太郎「俺は優希のタコスで手一杯ですよ。だから高いものは、どうか、どうかお許しを」

本気でこの子の中の私像ってどうなってるのかしらね? いつも気安い女路線でいってるはずなんだけど。

久「高いっちゃ高いかもね。明日私達が優勝したら、笑顔で抱きしめてちょうだい。空に抱きとめられるから星はそこにあるんだから」

京太郎「部長? あなた何言って。もしかして頭でも打ったんですか」

久「失礼な。明日の決勝が終わったら私はほぼ引退、好きな人のハグぐらい思い出にちょうだいよ」

彼の口が半開きになってぽかんとしてる。
2つ下の男の子に惚れちゃいけないわけ? わがまま聞いてくれるからついついちょっかい出してたことにも気づいてないのかしら。

久「決勝終わったら返事聞かせてね。まあ悪い待ちだけど、そういうので勝ってこそ私の真骨頂だし」

本人には自覚がないんだろうけど、モテるのよねこの子。優希は確定、咲も怪しい。
麻雀初心者って以外に欠点がないから、部活外では隠れファンまでいる始末。知らぬは本人ばかりってね。

久「私って欲張りなの。優勝もあなたも逃す気はないから、覚悟しておいてよね」

ばちっといつもの調子でウインクして、階段を下りて見えないところまで来てから、真っ赤になった顔を押さえる。

久「つ、ついに告白しちゃったわ。いつも通りにできてたわよね? ドキドキする……須賀くんに変な奴って思われてないかしら」

私の煩悶は、部屋に戻ってまこに『なにニヤニヤしとんじゃ、気味の悪い』と言われるまでおさまらなかったわ。


カン