京明華ハオで修羅場

京太郎の教室 昼休み

ハオ(最近、明華が京太郎に告白したらしい)

ハオ(ネリーからそのことを聞いたときは、思わず耳を疑った)

ハオ(理由の一つは、勿論私も京太郎が好きだったというのが一番目で)

ハオ(もう一つの理由は、とても個人的な理由からくるものだった)

ハオ(私は、アナタが嫌いだ。明華)

明華「京太郎君♪」

京太郎「わっ、明華さん。驚かさないで下さいよ」

明華「ごめんなさい」

明華「でも、やっぱり私、この気持ちを抑えられないんです」

京太郎「皆、みんなが見てますよ?!」

明華「どうしてですか?だって京太郎君の彼女なんですよ、私?」

京太郎「その通りですけど...」

明華「だったらこうやって愛しい人を身近に感じていたいんです」

明華「昼も、夜も...」

明華「これからも貴方にずっと抱きしめていて欲しいの...///」

京太郎「もう、明華さんは仕方ないなぁ」

京太郎「人の目もあるから、短い時間で思い切りハグして下さいね?」

明華「やった♪やっぱり京太郎は優しくて頼れる私の愛しい運命の人」

明華「京太郎♪京太郎♪京太郎♪京太郎♪京太郎♪」

ハオ(京太郎は元々私のものだった)

ハオ(だけど、それを横から掻っ攫ってはあることないことを吹き込んで)

ハオ(どんどん私と彼の距離を遠くして、挙げ句の果てに略奪した泥棒猫)

ハオ(許せるはずがない。許してなるものか...)

ハオ(幸い、今年から仲裁役の三年生はもういない)

ハオ(取り返してやる。明華から京太郎を私の手に、必ず!)

京太郎「明華さん!もういいでしょ、ダダこねないで欲しいな」

明華「ええっ?!」

京太郎「あとでいくらでもしてあげますから。我慢して下さいよ」

明華「本当ですか?!」

明華「お姫様だっこはしてくれないんですか?」

京太郎「それは明華さんの卒業式まで取っておきましょう」

明華「まぁ!それは素敵な提案ですね」

京太郎「本当ですよ。さ、もうそろそろお昼休みが終わります」

京太郎「教室まで送るから、ハグを止めて手をつなぎましょう」

明華「はいっ♪」


 握りしめた私の拳からは、ぼたぼたと大量の血液が床に滴っていた。






放課後 玄関

明華「じゃあ。また後で落ち合いましょう。京太郎」

京太郎「ええ。部活が終わったらいつもの場所で一時間後に」

京太郎「え?ほっぺにキスしてくれって?」

明華「唇に情熱的なキスでも構いませんよ?」

京太郎「しょうがないなぁ...」

明華「キャッ!されちゃった♪されちゃった♪」

京太郎「じゃ、俺は帰りますんで。お先に失礼します」

ハオ(明華が部室に行った後、私は京太郎に近寄った)

ハオ「京太郎...」

京太郎「おう、ハオ...ってお前なんだか具合悪そうだな」

ハオ「そ、その...なんていうか、言いづらい理由で...早退です」

京太郎「ああ、すまねぇ」

京太郎「けど、俺だってそこまで鈍感じゃねーよ。ほら鞄貸せ」

京太郎「途中まで送ってやるよ。付いてこい」

ハオ(京太郎。初めて私に出来た友達で、初めて恋した男の人)

ハオ(その人が、初めて私と出会ったときに見せてくれた笑顔)

ハオ(私の鞄を持って先を歩く彼の笑顔は、あの時と何も変わってない)

京太郎「おいおい、なんだか益々具合悪そうになってきたな...」

ハオ(計画通り...)

京太郎「ハオ?おい、ハオ!!しっかりしろ!!」

ハオ(人の良い京太郎のことだ)

ハオ(誰かに頼ることよりも、自分で何とかしようと考える)

ハオ(きっと京太郎は自分の家に私を運ぶはず。その時が勝負の時)

 冷たいアスファルトに倒れ込んだとき、ちらりと見えた京太郎の顔は

驚きの中に、どこか影のある何かが見え隠れしていた。







京太郎の家

ハオ「すいません...京太郎。わざわざ家まで運ばせてしまって」

京太郎「いや、そういうこというのはナシにしようぜ?」

京太郎「友達が困ってるときに手を貸すのは当然のことだろ?」

ハオ「友達...そう、ですよね。私と京太郎は友達ですから...」

ハオ(計画通りに京太郎の家に潜り込んだ私は、京太郎の動きを見守っていた)

ハオ(何気ない風を装い、京太郎に明華への疑心を植え付ける)

ハオ(そして、京太郎が揺らいだときに一気にたたみかける)

京太郎「ほら、生姜湯だ」

京太郎「少し味はきついけど、飲んだらすぐに気分が良くなるから」

ハオ「そうですか。ではありがたく飲ませて頂きます」

京太郎「...どうだ?少しは楽になったか?」

ハオ「まだ飲んだばかりですよ?」

京太郎「あっ、そうだったな。すぐに効き目が出るわけないよな」

ハオ「ふふっ。優しいところはやっぱり変わらないですね」

京太郎「?」

ハオ「いえ、なんでもないですよ」

ハオ「ところで京太郎。明華とはどうなっているんですか?」

京太郎「ええ...お前までそのことを聞いてくるのかよ?」

ハオ「いいじゃないですか。もう皆知っているんだし」

京太郎「はぁ...そうだな。隠したってしょうがないもんな」

ピンポーン

京太郎「ちょっと待っててくれ。通販で頼んだ服が届いたかも知れない」

ハオ「はい...。まって、ます、から...ね」

 生姜湯の効果が覿面に効いてきたせいなのか、私は物凄い眠気に襲われた。

 京太郎がなにかを取りに部屋から出て行ったのを確認した私は、近くにあった

ソファーに身体を横たえ、そのまま目を閉じた.....

パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン

ハオ(なんでしょう...この音は?)

ハオ(まるで耳元でクラッカーを鳴らされてるような...?)

 浅い眠りからゆっくりと目覚めたハオは目の前の光景に目を疑った。

 それは一番自分が起きて欲しくないと願っていた悪夢が遂に現実に

なってしまった瞬間だった。

明華「んぅっ!!あんっ、あっあっあっああああ~~~~~」

明華「気持ち、イイですっ。もっと、もっと突き上げて!京太郎ッ!!」

京太郎「そうかっ、明華。ここが良いんだなッ!!」

明華「良いッ、イイのぉッ!京太郎の逞しいのが奥をゴリゴリってぇ」

京太郎「可愛いぞ明華。もっともっと乱れろ!ハオに聞かせてやれッ!」

京太郎「お前のその醜い本心と本性をぶちまけてしまえ!!」

明華「はいっ。ごしゅじんさまぁああああっ!!!」

ハオ「い、いったい....なにをしているんですか...あなた、たちは」

 愕然としたハオはここでようやく自分がビニール紐でぐるぐる巻きの

雁字搦めにされて手足を動かせない状況にいることを把握した。

明華「んぁあああんっ。ハオッ...どうですか?悔しいですか?」

明華「悔しいですよねッ。ずっと片思いしてた男を奪われたんだからッ」

明華「んくぅっ、ああぅんっ!!!京太郎は渡さないッ!絶対に誰にも!!」

 呆然とする私をよそに、京太郎にあられもない姿で抱きかかえられている

明華は更に信じられないことを言い放つ。

明華「私ッ、京太郎君と...結婚するのッ...これはもう、運命なの」

ハオ「嘘だぁ...京太郎が、こんな、明華をアイシテル...なんて」

 目の前の現実を必死に否定しようと狂ったように頭を振るハオを

京太郎は一顧だにすることなく明華の身体を貪り続けた。

四つん這いになり、ソファーから転げ落ちたハオと目線を合わせた

明華は、ハオが今まで知りたかった京太郎と明華がいかにして

結ばれたかの説明を、後ろから突かれながら始めた。

明華「ウソじゃないんんっ、です」

明華「あの日も私が一人で帰る途中、乱暴に襲いかかってきて...」

明華「でも、ずっと京太郎君は優しかった」

明華「私を何度も優しく抱いてくれたの...」

明華「好きだ...愛してる。俺の女になれ...ずっとかわいがってやるって」

明華「ずーっと一日中、私を抱き潰して...私を犯し抜いて壊したの...」

京太郎「出すぞッ、明華!!一滴残さず出してやるッ!!」

明華「やあああああ~~~~ッ、イヤッ、中は、中はダメぇええええ!!!」

京太郎「くぅうううう~~~」

明華「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」

 狂ったように腰を動かしラストスパートをかけた京太郎は、ハオの眼前で

明華を強く抱きしめ、激しいディープキスをしながら絶頂した。

 なんども跳ね馬のように激しく跳ね回るその肉体を腕一本で

押さえながら、残った腕は明華がキスの途中で逃げ出さないように、

しっかりとその頭の後ろをがっちりと押さえていた。

 ハオはあまりのことに気を失いそうになった。

ハオ「嘘...うそ...京太郎が...京太郎がとられちゃったよぉ」

ハオ「イヤ、イヤだよ...京太郎...私を、見捨てないで」

ハオ「うあっ、うあぁぁぁぁ....やだぁあああああ!!」

ハオ「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ、認めない認めないこんなの認めない!!」

ハオ「京太郎は私のなの!私の、私の...私が好きな大切な人なんだからぁ!」

 壊れたオルゴールのようにぶつぶつと呟くハオの瞳は光を失っていた。

 そして、明華の身体に込めた力を抜いた京太郎は息も絶え絶えの明華を

慎重にソファの上に横たえた後、テーブル上のハサミでハオの手足を

縛り付けた紐を切り始めた。 

京太郎「ごめんな、ハオ」

京太郎「本当はこんなことをするつもりはなかったんだよ」

ハオ「来ないでよ...嘘つき、偽善者。女の敵」

 怯えたハオはすぐ側に落ちていた自分の鞄をひっつかみ、まだ自分の理性が

正常な内に京太郎の家から出て行こうとした。

 しかし...

 後手に回った時点で、既にハオの方が京太郎に横恋慕している

泥棒猫に成り下がっているのは、明華も十分承知している。

 だが、今のハオの状態では怒りの感情が恋慕より勝った。

ハオ「バカなこと言わないでよ!!」

ハオ「そこの女が私から貴方を奪ったんじゃない!!!」

ハオ「告白する前に私の恋を終わらせて、貴方に愛されて...」

ハオ「許せない!!今の行為だって、明華の差し金でしょう?!」

明華「いいえ。今の言葉は京太郎君の本心ですよ」 

明華「確かに私は卑怯な手を使って彼を手に入れました」

明華「だけど、心までは...手に入れられませんでした」

 詭弁だ。

 今こうして京太郎と同じように懺悔しているように見えるが、

内心ではうまくいったとほくそ笑むのが目の前の女の本性だ。

京太郎「だけど、これだけは信じてくれ」

京太郎「俺は、ハオも明華さんも好きなんだ...これは嘘じゃない、真実だ」

 思わぬところで京太郎の口から出た『真実』がハオをとらえた。

 先程とは打って変わって弱気になった京太郎は、涙を流しながら

ハオに向かって自分の心情を吐露し始めた。

ハオ「え...?」

京太郎「いつか分かれるくらいなら、いっそ全部忘れたかった...」

京太郎「先輩達が卒業したあと、真っ先にお前の顔が浮かんだ」

京太郎「まだ一緒にいられるって言ってもあと二年しかない」

京太郎「明華さんはもう今年が終わったらフランスに行ってしまう」

京太郎「耐えられなかったんだよ、俺は...」

 ハオの目には少しずつではあるものの、希望が灯り始めていた。

 苦しい心の内を全部吐き出した京太郎は、そのまま床に突っ伏して

大声を上げながら、泣き始めてしまった。

明華「そこで提案です」

明華「私が卒業するまで、この勝負をお預けにしませんか?」

明華「私も貴方も好きな人を苦しめたくないでしょう?」 

ハオ「...」

明華「京太郎に悪い虫が付かないように遠ざけ」

明華「自分が欲する時に、好きなだけ京太郎を貪るんです」

明華「私が卒業するまでに京太郎が私を好きになれば貴方の負け」

明華「逆に私が卒業する前に貴女を好きになれば私の負けです」

 それはこれ以上ない好条件でありがら、どこまでもハオのことを

なめきっていた譲歩でしかなかった。

 しかし、ここまで差が出来ている以上...ハオが京太郎を手に入れるには

その条件をのむしかなかった。

ハオ「いいでしょう。貴女のことは嫌いです」

ハオ「でも、機会を与えてくれてありがとう」

声から始まった震えは徐々に全身を覆い尽くしていった。

 目の前の京太郎が、ずっとずっと求めてやまなかったそのぬくもりが

ハオの全身に伝わる。

 抱きしめられたハオの心はより一層京太郎の色へと染められていく。

ハオ「抱いて....?」

ハオ「明華にしたことよりも、もっと激しく、もっと優しく...」

 震える手がハオの心の鎧を、一枚、また一枚と剥がしていく。

 そして、遂に...

京太郎「好きだよ。ハオ。俺の側にずっといてくれ」

ハオ(もう、どうでもいい、彼と一緒になれたらそれでいいんです)

 ハオの心は京太郎という心地よい闇の中に永遠に閉ざされてしまった。

カン