『三回戦敗退!? ハァーッ……ッザケンナヤ!
 くっそ、これじゃ予定が全部パーじゃねェかッ。
 ……仕方ない。真屋、ここに書いてある番号に連絡して指示通りにしろ。
 これ以上はウチでも庇えない。ったく、とんだ不良債権だよお前は』

  こんなはずじゃなかったんです

『18日午後10時、○×公園でベンツに乗れ』

  何が悪かったんでしょうか

『おお、来たか……グフフッ。こっちに来なさい。
 今を時めく真屋由暉子もついにここまで堕ちたとは悲しいねェ。
 ところでこういう経験はあるかい? 無い? そうか、処女か。
 ハッハッハッハッ! ABC事務所にはきちんと礼をしないといかんなァ』

  麻雀が弱かったから? それとも覚悟が無かったから?
  実力も無ければ後ろ盾も無い。先輩達も所詮田舎の女子高生。
  何ができるわけも無く、思い通りにならないと分かればさっさと居なくなってしまった。

『オボコを脱がして徐々に儂の物にする……堪らん瞬間よ――ウガッ!? 痛ッ、痛~! ウ

グググ……』

  我慢したんです。辛いこと、嫌なこと……それでも先輩たちのために、お仕事だから。
  あんなIVやグラビアを撮られても、それでも耐えたんです。
  でも、もう限界でした。
  私のお父さんよりも年上の太ったお爺さんがブラジャーの前ホックに手をかけた瞬間、
  言い知れぬ嫌悪感と怒りを覚えたんです。
  その激情に駆られ、私は感情の赴くままに足を振り上げました。
  ぐちゃりとした感覚を爪先に受け、確実に潰したと思いました。
  うずくまり呻くジジイをしり目に私は服を着る暇も無く部屋を飛び出しました。
  手近にあったお財布も回収し、目いっぱい走りながらどうにか上着だけは着ることができ

たのは上出来でしょう。
  揺れる胸がこれほど邪魔に感じたのはいつぶりだったでしょうか。
  あてもなく闇に包まれた灰色の密林を駆け、カコンッというくぐもった金属音に誘われて
  ようやく人気のない公園に辿りつきました。
  膝に手をつき、マネージャーに支持されて着させられた下品なパンツを晒しながら、
  私はぜえぜえと酸素を求めて喘ぎます。涙は不思議と出ませんでした。

「え……真屋さん?」

  誰も居ないと思っていたのですが、違ったようです。
  脳に酸素が回らなくなって視野がボケていたのかもしれません。
  いえ、そうに違いないのです。だってこの声は……あの髪の色は……。

「何があったってのは聞かない。まずはスカート……だよな、履いて水飲んで一息吐こう。
 大丈夫。“困ったことがあったら思い出してくれ。力になる”」

  いいのでしょうか。私はもう、こんなに汚されてしまって……。
  頬を伝う水の感覚。
  そうだ、もう我慢なんてしたくない。ああ、この優しさに溺れてしまう。
  彼の眼差し、耳朶を打つ甘い言葉。絡みつく蔦のような気配。もう、逃れられない。