俺は須賀京太郎、とある旅館で働く板前――の見習いだ、別名追い回しともいう
父が転勤になって母の新しい勤め先が決まらないため、ペットの餌代のためにこうして働いている
オヤジさんは厳しいが、悪いことばかりではない

例えば――

玄「京太郎くん! 今日のお客さんはおもちもちが3人連れだよ!」

京太郎「マジっすか!?」

こうして気にかけてくれる同年代の同好の士がいる
だが、大体こういう会話の後にやってくるのは

板前「須賀ァ、油売ってんじゃねえ! そこ片づけとけ!」
京太郎「すいません! 今やります!」

板前「お嬢、注文通してくだせぇ」
玄「ご、ごめんなさい、竹3つ、1方は海老がダメだと」

板前「了解でさぁ、竹3つ、うち1つはお真薯をタイに変更、刺身はマグロとホタテにしろ!
   あとお嬢、あんま京太郎を甘やかさないでくだせぇ、示しがつきません」
玄「すみません、つい」

板前「そういうのは夜に二人でなさってくれる分には文句は言いませんので」
玄「私と京太郎くんはそういうのじゃないですのだ!」

プンプンと怒る将来の若女将と、笑いをこらえる板場の皆

板前「須賀、手ぇ止まってんぞ! それ終わったらお嬢と休憩して来い!」
京太郎「はいっ!」

オヤジさんだって厳しいばかりじゃないのだ
しかし

板前「空き間に連れ込むんじゃねえぞ」
京太郎「しませんよ!」

こういう冗談は勘弁してほしい

玄「京太郎くん、待ってるね」(ニコニコ

その笑顔に勝てるわけないでしょ、今日もパパッと終わらせておもち談義といこうか

こんな風に、俺の毎日は松実旅館で繰り返される


カン