明華(ニホンなんて来たくなかった)

明華(世界ランクも上がってきて、いいところだったのに)

明華(ニホンの高校生と打ってもランクは上がらない)

明華(活躍できなければ、リンカイの人も直ぐ帰してくれると思うけど)

明華(それはそれでランク下がりそう……)

明華(ムズかしい……)


明華(ママンはきっと素敵なことがあるって言ってたけど)

明華(きっとそんなことない)

明華(……コカジが高校生になって出てくるならともかく)


メガン「オーイ、須賀クン」

京太郎「あ、ダヴァン先輩」

メガン「ちょうどヨカッタ。新しい子を紹介しときマス」

メガン「フランスからの特待生、雀明華デス」

明華「…………」ペコッ

京太郎「どうもどうも……。まあ、既に顔見知りなんですが」

メガン「アレ? そうなんデスカ?」

京太郎「明華さんのホームステイ先がうちなんですよ」

メガン「ナルホドナルホド、ナルホド~」


明華『ダヴァン、彼も麻雀部なの?』

メガン『というかマネージャーかな?』

メガン『今年から共学になったから、数少ない男子部員ですよ』

メガン「ネ、須賀クン」

京太郎「いや、英語でペラペラ喋られてもチンプンカンプンですよ」

メガン「須賀クンはガイトのパシリという話をしていたンデスヨ」

京太郎「ひどっ!?」


明華「パセリ?」

メガン「んー……errand boyカナ?」

明華「…………」

京太郎「明華さんが可哀想なものを見るような目でこちらを……」

メガン「マー、簡単な日本語のヒアリングと、多少は喋ることもできますカラ」

メガン「明華とも仲良くしてあげてクダサイ」

京太郎「もちろんですよ」

京太郎「改めてよろしくお願いします、明華さん」

明華「ウン……」


智葉「須賀、コーヒー買ってこい」

京太郎「へーい」

明華「…………」

明華『ダヴァン、彼は麻雀打てないことに不満はないの?』

メガン『いや、打ってますよ。今日は特別なだけで』

メガン『実は昨日、須賀君がガイトに半荘十回の勝負を挑みましてね』

メガン『で、全敗したから今日は一日パシリなんですよ』

明華『ふーん……』

メガン『まあ最初の頃に比べれば大分上手くなりましたけどね、彼も』

メガン『なんだかんだでガイトは面倒見いいから、彼女の指導のおかげかな?』

明華「…………」


京太郎「辻先輩、コーヒー買ってきやしたー」

智葉「おう……ってこれブラックじゃねーか!」

京太郎「てへっ……押し間違えちゃいました」

智葉「うぜえ! 私がコーヒーって言ったらカフェオレに決まってるだろうが!」

ギャーギャー

明華(……仲いいんだ)


京太郎「うーん……こう切られてたんだなぁ」

明華「……パイフ?」

京太郎「あ、明華さん。そうです、牌譜です」

明華(今日一緒に打ってたパイフ……ベンキョーしてるんだ)


明華「……おしえる?」

京太郎「え、いいんですか?」

明華「ん……おせわ、なってるから」

京太郎「じゃあ、よろしくお願いします」

京太郎「さっそくですけど、東一局の五巡目で何故これを切ったんでしょうか?」

明華「……ナントナク」

京太郎「なんとなく!?」


明華「イタダキマス」

京太郎「どうぞ……」

明華「ん……」モグモグ

明華「…………」

京太郎「ど……どうですか?」

明華「……ママンのプーレ・オ・ポじゃない」

京太郎「ですよね……」


明華「でも……おいし」

明華「ありがと、キョータロー」


智葉「今日は日本食なんだな、明華」

明華「ん……キョータローがつくってくれた」

智葉「しかし須賀が料理か……タコス作って丸焦げにしている姿しか思い浮かばないな」

京太郎「なんでタコスなんですか……」


明華「おいひい……」モグモグ

メガン「ナルホド、これが胃袋つかまれてる状態デスカ」

明華「こんど、私もキョータローにつくる」

京太郎「ほんとですか? うれしいなぁ」






智葉「で、須賀は休みか」

メガン「腹痛でダウン中だそうデス……」


明華「キョータロー」

京太郎「はい?」

明華「えと……アレ」

京太郎「?」

明華「……ダヴァン」

メガン「ハイ? ……ふむふむ」

メガン「須賀君、今度やる日本のプロとの親善試合は君も来るのか、だそうデス」

京太郎「あ、行きますよ」

京太郎「といっても、俺は付き添いですけどね」


智葉「いや、ちゃんと打ってもらうぞ」

京太郎「え、マジですか」

智葉「マジだ。お前も部員だろ? じゃないとこっちも教えた甲斐が無い」

京太郎「ど、努力します……」


明華「…………」ウツムキ

京太郎「明華さん? どうかしました?」

明華「……なんでもない」フルフル

明華(……伝えたい人にちゃんと伝えられないって、さびしい)

明華(……なんでこんなにくるしいんだろ)


明華「キョータロー、おつかれ」

京太郎「五連続ラスでした……」ガックリ

明華「でも、プロ相手にトバなかった」

京太郎「そこはまあ、日頃の皆さんと打ってたおかげかな?」


京太郎「……いつか、明華さんに追いつきたいです」

明華「できるよ」

明華「……がんばれ」

京太郎「がんばります」




明華「キョータロー、おしえて」

京太郎「? 何を教えればいいんですか?」

明華「ニホン語……わからないとこ、いっぱい」

京太郎「いいですよー」

京太郎「あ、良かったら俺にもフランス語か英語でも教えてもらえませんか?」

明華「ん……いいよ」


智葉「もうこんな時間か……よし、今日はここまでだ」

智葉「明日は地区予選個人戦だ。言った通り学校集合な」

メガン「ハーイ」

智葉「もう月も出てるし、寄り道せずに帰るんだぞ」

京太郎「了解でーす」

明華「わかった……」


明華「キョータロー、かえろ?」

京太郎「はい」



明華「明日はキョータローも打てるね」

京太郎「そうですね……結局、男子の部員は俺だけですから」

明華「がんばってね」

明華「私も、ムズかしそうだけど勝つから」

京太郎「明華さんなら楽勝じゃないですか? 他の学校に特に怖い人いませんし」

明華「うちのみんなでトップあらそいになりそう」

京太郎「ああ、なるほど……」


明華「キョータロー」

京太郎「はい?」

明華「……月がきれいですね」


京太郎「あ、ほんとだ……きれいな満月ですね」

明華「…………」

京太郎「? どうしました?」

明華「なんでもない……」ションボリ


明華「キョータロー」

京太郎「はいはい」

明華「ニホン語って……ムズかしいね」

京太郎「大丈夫。明華さんなら楽勝ですよ」

明華「うん……がんばる、ね?」