京太郎「お茶漬け食べたい」

揺杏「藪からスティック」

成香「急にどうしました?お腹が空いたのでしたらお菓子とかありますけど…」

京太郎「別に腹減ったわけじゃなくて…や、減ってるのもあるんですけどこう…温かいものが食べたいというか、サラサラッといきたいというか…

    ああもう腹減ってるって事でいいです。ややこしいし」

爽「結局はそれかい…まぁいいや、確かカップ麺の買い置きがあったと思うけど」

京太郎「…」ハァ

爽「いやそんな『全然わかってないなこの人』みたいな目で見られても」

京太郎「全然わかってないなこの人」

誓子「口に出しちゃったよ…」

京太郎「いいですか?こんな肌寒い日、家には誰もおらず寒々しい部屋…暖房を付けるもすぐに暖まるわけではない。ひとまず暖をとる為に湯を沸かすとしましょう」

揺杏「ふんふん」

京太郎「もちろんお腹も空いてるでしょうね。何か無いか、何か無いかと見回しますねその時!ふと思い出します…そうだ、冷蔵庫に昨日の焼き魚の残りがあったんだ」

成香「な、なるほど…」

京太郎「焼き魚もあるということはもちろん、ご飯もある。とりあえずこれでササッといってしまおうそう思うでしょうが少し、お待ちください。もう一度、冷蔵庫をよーく見回しましょう…見付かりませんか?」

誓子「何が?」

京太郎「他のおかずですよ。梅干しに昆布佃煮に海苔に明太子…この内のどれかひとつでも。そうなると欲が出てくるのが日本人の性というもの。

    あぁあれと食べたいこれとも捨てがたいでもでも…ここで閃くんですよ、その欲をすべて解決してくれる一品を。……そう、お茶漬けです」

爽「お茶漬け…」

京太郎「想像してみてください。緑茶を淹れる間に少し大きめのお椀にご飯を盛り、中央に切り身の焼き魚を配置…そして外周に佃煮、梅干し、明太子…上から海苔をパラッと…

    あぁ漬け物を別皿に用意するのもいいですねぇ。配置が終わる頃には丁度いい抽出具合でしょう…いよいよお茶を注ぐ工程です。いいですか?」

「「「「……」」」」ゴクリ…

京太郎「まずは魚の脂を流すように中央に勢いよく注ぎその後ゆーっくり外周に沿ってひとまわし…

    ほら見えるでしょう?佃煮から甘辛い旨味が、梅干しから全体を引き締める酸味が、明太子に軽く熱が…そして調和された汁が海苔に染み込んでいく様が…」

爽「やーめーろーよー!お腹空いてくるだろぉ!」

誓子「あぁもうお茶漬け以外想像できない!お茶漬け!お茶漬け食べたい!」

揺杏「やべぇよ…昨日鮭フレーク切らしたばっかりだよ…」

成香「だ、大丈夫です!お茶漬け海苔が確かまだ残ってたはずですから!」

京太郎「ですが悔しいでしょうねぇ。お茶漬け海苔はこの間穴が開いていたせいで全て駄目になっていました」

「「「「うわああああああああ!!!!」」」」

京太郎「フッ、フフフフフ……俺のようにお茶漬けに餓えると良いさ……」

爽「お前!お前この野郎!何て事を!何て事をしてくれるんだ!」ユッサユッサユッサ

京太郎「ハァーッハッハッハッハッハッちょっと待って吐きそぉぇっぷ」ガックガックガック

揺杏「ああ…お茶漬け…お茶漬けぇ!」

誓子「おお、神よ…これもまたあなたの試練なのでしょうか…」

成香「さ、さすがにそれは無いんじゃ…」



ガラッ

由暉子「ただいま戻りま…なんですかこの状況?」

爽「ユキぃ!京太郎が!京太郎がぁ!」

由暉子「また何かやらかしたんですね」

京太郎「ひどい言い草ァ!」

由暉子「違うんですか?」

京太郎「その通りです」

由暉子「でしょうね。それで、今度は何をしたんですか?」

誓子「それが…」


―――――――

由暉子「なるほど、そういうことですか」

爽「全く、酷いヤツだよこの須賀野郎はさ!」

京太郎「人の苗字罵倒に使わないで下さいさわ野郎!」

爽「野郎じゃないやい!」

誓子「もー、不毛な言い争いは止めなよ」

由暉子「とりあえず、丁度いい話題ではありましたね」

成香「と、言いますと?」

由暉子「いえ、先ほど買い出しに行っていたんですけど」

爽「買い出し?何か切れてるもんあったっけ?」

由暉子「個人的なものですので。それで、丁度切らしていたのを思い出したので買ってきたんですよ」

揺杏「何を?」

由暉子「お茶漬け海苔」

京太郎「マジで!?」

由暉子「ええ、はいこれ」

爽「うっわマジだ!しかも天下の永谷園さんじゃないか!」

成香「早く!早く食べましょう!」

誓子「待って!大事なことを忘れてるわ!お米は、お米はあるの!?」

揺杏「こんなこともあろうかとパックご飯を用意しておいたよ!一辺言ってみたかったんだよなぁこれ!」

――――お茶漬け!お茶漬け!お茶漬け!

由暉子「……すごい熱気ですねぇ」

京太郎「何てったってお茶漬けだからな。お前も食うだろ?礼がわりに作ってやるよ」

由暉子「では、お言葉に甘えて。…ああ、わさびは多目でお願いしますね」

京太郎「了解っと」


――――この後、電気ケトル優先使用権を巡り苛烈な争いが起こったのは別のお話である

カンッ