「フォルダーの共有許可通知?」

 クラウドサービスを利用したファイルの共有を報せるメールが和から届いた。メールの文面には私の名前ではなく別の人、『京太郎』との記述がある。
 おそらく彼女は誤って送信してしまったのだろう。

「全く、和もうっかりしてるわね」

 この時、直ぐにでも間違いを報せるべきであった。人生において、この日こそが分岐点であったと後に私はそう振り返る。

 ”好奇心は猫を殺す”
 イギリスの諺だが、まさにその通りなのだろう。

 いったい和が男の人とどんなファイルを共有しているのか、興味を持たなければ私は違う道を歩んでいたはずだ。

「ふきゅ…!?」

 開いたフォルダーの中身は大量の画像や動画に音声ファイル。その全てが卑猥なものだった。
 幾つものフォルダーに整理され、撮影された日時や場所が記載、感想までこと細かに書かれている。詳しい情景を想起するには十分な情報が存在した。
 興味本意から一つを開き、二つ目を、三つ目と、次で止めようと思いながらもクリックする指は止まらない。
 見るべきじゃない、他人のプライベートを盗み見てはいけないという倫理感は、好奇心と興奮でいつの間にか薄れていった。
 華の女子高生、エッチなことにだって興味もある。自慰だって…する。だから、私は和の恥態を申し訳ないと思いつつも魅入ってしまったのだ。
 あの和と『京太郎』が繰り広げるアダルトな光景に下腹部がジンジンと熱くなり、自分の手で慰めた。それは背徳感がまるで麻薬のように作用し、かつてないほどの興奮と快感を与えてくれる。

 この日ならまだ戻れた。
 熱していた頭が気怠さの中で急速に冷やされ、凄まじい罪悪感を伴う羞恥心に苛まれる。それに従い、私は和に間違いを指摘すれば良かったのだ。
 しかし、愚かな私はそれをしなかった。
 きっとその内に和が自分で気づいて共有を解除するだろう。和が間違えたのだから私は悪くない。自己を正当化する勝手な言い訳を幾つも並べ、私は積極的にそれを見ないという選択を排除する。

 私の日課に二人の記録を見て、致すことが増えた。次々と新しくアップデートされてくるファイルの数々、火照った体をもて余す日々。
 男性が少し苦手なのに、興味関心が酷く募っていく。和の位置に私がいて”京太郎”と交わることをどれだけ妄想しただろうか。夢の中にさえ彼が現れる始末だ。

 恋だった。
 浅ましく、肉欲に溺れた情念に囚われていく。欲望の愛。既に、私は引き返せない。

 全て、和の思惑通り、私は踊っていったのだ。

「和は本当に変態だな」

 自らの恥ずかしい姿を友人に晒して興奮するのはどう取り繕おうと変態だろう。

「そうですね。ですが、憧も私に負けず劣らずだと京太郎くんも思いませんか?」

「う、うるさいわね…あんた達には言われたくないわよ……」

 NTRと言う性癖がある。
 和は京太郎が他人と交わることを見たいと願った。赤の他人ではなく、親しい友人としているのを眺めたかったのだそうだ。
 愚かにも蜘蛛の巣に引っ掛かってしまった獲物が私。彼女は狩人であり、誰ならば乗ってくるか熟慮したらしい。
 その結果、白羽の矢が立ったのが私と言うのは少し、否、多いに文句や不満がある。まあ、見事にのめりこんでしまっているのでそれを言える立場じゃないんだけどね。

 私は、観られていた。
 ファイルを開いた回数、頻度、ダウンロードされたか否か、視聴される傾向などから分析され、普段のやり取りからも思考を読まれ、然り気無く誘導されていった。
 それに気づくこともなく、目の前の果実を得たいと頼み込んだのは私自身だ。

「不満があるなら、何時でもこの関係は終えていいんだけどな」

「嫌よ…もう、戻れないって分かってるくせに……」

 私はもう堕ち切ってしまっている。
 京太郎と和を受け入れ、この奇妙な関係にどっぷりと嵌まり込んでいた。

「ふふ、そうですよね。じゃあ、三人で続きをしましょうか?」

 艶やかに笑う和と猛り立つ京太郎。私は一見不貞腐れたような態度を取ってしまうけれど、身体は正直なもので期待している。それも二人には見抜かれているのだろう。
 今日も気持ちよく、楽しい時間に流される。
 ああ、和は超がつく変態で、性癖もおかしい淫乱だ。それに合わせられる京太郎も同様ね。彼女が再び毒牙を友人に伸ばそうとしていることには気づいている。
 しかし、それを止めようとしない私も同類なのかもしれない……


カンッ!