「京さん」

 名前を呼ばれたと感じた少年は声の主を探す。

「京さん?」

 検討違いの方向を見ている彼にもう一度、声を掛けた。しかし、今度は全く聞こえもしなかったのか、彼の目は少女を捉えない。

「気のせいか……?」

 手を伸ばせば触れ合える距離にいるのに、彼には見えていなかった。

「そっか、もう、京さんにも、私は気づいて貰えないんすね……」

 街路の真ん中で少女はペタリと座り込んだ。彼のためにと着飾った服が汚れることも気にならない。
 雑踏の中に響く声。
 されど、往来の真ん中で涙を流す女の子を気にする存在は一人だっていやしない。

「何で、何でっすかッ!? どうして、届かない、私は、私は、桃子はここにいるっすよぉぉッお!!」

 慟哭の叫びも、遠ざかる彼の背にぶつかるだけだ。

「ハハ、ハ、はっぁッハッァハハハァァァハハハハッァァッアアアアーーーー」

 東横桃子を見つけ、求めてくれた男の子。彼がいれば、他の誰にも気づかれることがなくとも、それで良かった。
 幸せの味を知らなければ、きっと不幸を知らずにいられた。比較対象がなければ相対的な視点は得られないのだから。希望があったからこそ絶望はよく映える。

 私はここにいる。
 私はここにいる。

 ----.:*:・'°☆.:*'°・:.-♪

 賑やかな着信音、液晶に映る名前は須賀京太郎。

『桃子、どこにいるんだ?』
「京、さん……? もう、……ダメみたいっす……」
『…………』

 嗚咽交じりの声は届いているのだろうか。幾ら待とうとも返らぬ応答に苦しさが、不安が、加速度的に増していく。

 誰にも見えない。
 世界で独りぼっち。

 冷えていく、心が、体が、事実を前に凍えていく。

「京さん、京さん、京さんッ! 聞こえないっすか? 私の声が届いていないっすかぁぁあ!? 返事をしてくださいっすぅッ!!」
『----』

 必死の声も、現実は覆ることを拒むように携帯電話は沈黙する。

「嫌だ、嫌だ、もう、一人は嫌……耐えられない、耐えられないっすよ……」

 奇跡などない。
 超常の力はいつだって少女に牙を向けてきた。天の与えたもうたギフト。神は人を救わない。

「京さん」

 名前を呼ばれたと感じた少年は声の主を探す。

「京さん?」

 検討違いの方向を見ている彼にもう一度、声を掛けた。しかし、今度は全く聞こえもしなかったのか、彼の目は少女を捉えない。

「気のせいか……?」

 手を伸ばせば触れ合える距離にいるのに、彼には見えていなかった。

「そっか、もう、京さんにも、私は気づいて貰えないんすね……」

 街路の真ん中で少女はペタリと座り込んだ。彼のためにと着飾った服が汚れることも気にならない。
 雑踏の中に響く声。
 されど、往来の真ん中で涙を流す女の子を気にする存在は一人だっていやしない。

「何で、何でっすかッ!? どうして、届かない、私は、私は、桃子はここにいるっすよぉぉッお!!」

 慟哭の叫びも、遠ざかる彼の背にぶつかるだけだ。

「ハハ、ハ、はっぁッハッァハハハァァァハハハハッァァッアアアアーーーー」

 東横桃子を見つけ、求めてくれた男の子。彼がいれば、他の誰にも気づかれることがなくとも、それで良かった。
 幸せの味を知らなければ、きっと不幸を知らずにいられた。比較対象がなければ相対的な視点は得られないのだから。希望があったからこそ絶望はよく映える。

 私はここにいる。
 私はここにいる。

 ----.:*:・'°☆.:*'°・:.-♪

 賑やかな着信音、液晶に映る名前は須賀京太郎。

『桃子、どこにいるんだ?』
「京、さん……? もう、……ダメみたいっす……」
『…………』

 嗚咽交じりの声は届いているのだろうか。幾ら待とうとも返らぬ応答に苦しさが、不安が、加速度的に増していく。

 誰にも見えない。
 世界で独りぼっち。

 冷えていく、心が、体が、事実を前に凍えていく。

「京さん、京さん、京さんッ! 聞こえないっすか? 私の声が届いていないっすかぁぁあ!? 返事をしてくださいっすぅッ!!」
『----』

 必死の声も、現実は覆ることを拒むように携帯電話は沈黙する。

「嫌だ、嫌だ、もう、一人は嫌……耐えられない、耐えられないっすよ……」

 奇跡などない。
 超常の力はいつだって少女に牙を向けてきた。天の与えたもうたギフト。神は人を救わない。

「モモ」

 幻聴だ。

「桃子」

 彼にはもう彼女が見えない。
 目の前にいても気づくことができず、声すら届かない。だから、信じられない。
 差し伸べられた手は掴まれることもなく、宙に浮いていた。

「京……さん?」

 痺れを切らした京太郎は強引に蹲っていた桃子の手を取り、起き上がらせる。そして腕の中に捕らえた。

「……ごめんな」

 京太郎には桃子が見えない。
 今、腕の中にいても、朧気に何かがいることしか分からない。

「    」

 彼女が話す声すら一音たりとも届いてないのだ。それでも、彼は彼女を見つけた。

 この世に奇跡はない。
 不可思議なオカルトも彼にはない。
 人を救うのは何時だって神ではなく、人自身の力だ。彼の手に握られた文明の機器もその一つ。


カンッ!