和「彼は出会った当初から私の胸を見ていましたね」

 気づかれていないと思っていたらしいですから、甘いですよ。

玄『和ちゃんは昔から良いおもち持ちだったのです』

穏乃『ランドセルを背負ってた頃の写真を見ると犯罪チックだよね』

憧『まあ、目の前の相手が何処を見てるかなんて簡単に分かるって話ね』

 小学生の頃からその手の視線には慣れていましたし、敏感にもなります。

 正直に言えば、男性の欲望に満ちたそれはずっと不快でした。

 彼の場合は他の男性よりもずっと不躾で明け透けというか、全く隠しきれていなかったですね。

和「悪い人じゃないことは直ぐに分かったんですが、最初はちょっと苦手でした」

玄『昔の憧ちゃんとそっくりな子だったよね』

穏乃『うんうん、本当に似ているから……インハイ後の東京観光で私は何度か間違えて彼女を憧って呼んじゃったんだよね』

憧『しずッ!?』

穏乃『あはは』

 優希と仲良くなったから、私は彼を嫌いになれなかったのかもしれません。

 それに第一印象がマイナスだったからこそ、彼の良い所がよく目に映ったのでしょうか……

玄『京太郎君は良い趣味をしているのです』

憧『玄?』

玄『彼は同志なんだよ。おもち談義で盛り上がれたし、彼になら和ちゃんのおもちを任せられるのです』

穏乃『おもちは知らないけど、須賀君は確かに良い人だよね』

憧『……顔も悪くないし、気遣いもできるし、まあ、認めてあげても良いけどね』

 優希のためにタコスの作り方を覚えたり、迷子の咲さんを捜しにいったり、部長の無茶な要求に文句も言わずに応えたりしていました。

 献身的な姿の一方でインハイの予選で敗退してしまったことを気にしているのを隠していたり、気配りでいじましい所に落とされたんですよね。

和「背も高く、力強くて、麻雀の腕はまだまだですが彼は格好良いですよ」

穏乃憧玄『『『ノロケか』』』

和「大変だったんですからね。ライバルもいましたし、彼が告白してくれるまで頑張ってアピールしたんですよ」

 二人の時だけは京太郎君って呼んだり、然り気無くネト麻をしている彼の後ろに立って胸を当ててみたりとか……

和「ちょっと犯罪も犯しちゃいましたけど……」

憧『犯罪って和!?』

和「盗聴器にカメラ、パソコンへのハッキングに、彼の携帯に監視アプリを仕込んで少々……」

穏乃『』

玄『あ、愛が重いのです……』

 データを基に一杯分析して頑張ったんです。

憧『ま、まさか今もしているの?』

和「今は公認ですよ?」

穏乃『……須賀君って凄いね』

憧『ないわ……』

和「一緒の生活リズムに合わしてみたりとか、楽しいですよ? 接触回数を増やすように心がけました」

 起床時間、学校に行く時間帯を合わせて登校中に偶然で逢ったように装ったり、お弁当に彼の好みのおかずを入れておいて部活の仲間と食事しているときに分けてあげたり、家でもネットを介してネト麻で指導したりとか、彼の家に遊びに行って勉強会なんかもしましたね。

憧『心理学的に会う機会や話すことを増やすと好感を得られるんだったっけ?』

穏乃『へー、そうなんだ』

玄『さすが和ちゃん、恋愛も理詰めで行くんだね……』

和「それでも京太郎君は中々、告白してくれませんでしたね」

憧『意外とヘタレ?』

和「……インハイまでは家庭の事情もあり、私の態度が少し悪かったのも原因かもしれません」

 転校の可能性があったのですから、恋愛に構けている余裕はありませんでした。

 いきなり態度が急変するのも不自然でしょうし、少しずつ変えていったので彼には私が好いているようには見えなかったのかもしれません。

穏乃『和に恋人か……ちょっと羨ましいな』

玄『阿知賀は女子高だから出逢いの機会とかないのです』

憧『恋愛には憧れるけど、好きな人もいないしね。……男の人ってちょっと苦手だし』

玄『うん、私もお姉ちゃんからかったりしていたボク達への印象があるから同年代の子は少し……』

穏乃『恋人がいるってどんな感じ?』

和「毎日が楽しくて充実してますね。彼といるだけで胸が高鳴って幸せを感じるというか、それに……」

憧『和、あんた顔が赤いわよ?』

穏乃『それに?』

和「その、……エッチも気持ちいいですよ」

穏乃憧玄『『『!?』』』

カンッ!






オマケ

晴絵「はあ」

望「ため息なんか吐いてどうしたの?」

晴絵「望は和のことって覚えてる?」

望「憧の友達ね。よく覚えてるよ」

晴絵「あの子に恋人ができたらしいんだ……それにセックスまでしちゃってるって聞いてね……」

望「最近の子は早いよね。それで、男日照りのあんたは危機感でも覚えたの?」

晴絵「まあね。女性プロ雀士のジンクスって知ってるでしょ?」

望「早々に寿引退するか、アラフォーになるかだっけ?」

晴絵「そうそう……」

望「赤土晴絵プロは麻雀以外で気苦労してるね。そんなんで今度の小鍛冶プロとの対局は大丈夫なの?」

晴絵「そっちはやるだけやるよ……と言うか望だって今は彼氏とかいないでしょ?」

望「まあ、そうだけどね。私の場合は家の関係もあって多分お見合い結婚するから心配ないよ。来週も一件セッティングされてるし」

晴絵「」

望「あれ? 言ったことなかった?」

晴絵「き、聞いてないよ!?」

望「私も今年で26だからね。親に言われちゃったからさ」

晴絵「この裏切者ッ!!」


もういっこカンッ!