拠点コミュ@1


→哩姫



―― 流石に最後の挑戦ともなれば、準備にも手を抜く訳にもいかない。

迷宮内で使う細々とした小物類は割りとどこでも入手可能ではある。
しかし、実際に中で使えるような回復アイテムはショップが入荷するまで待たなければいけない。
一応、優先的にこっちへ回してもらえるような契約にはなっているものの、その入荷待ちの期間はどうしても長くなってしまう。
結果、数日前に最終決戦への覚悟を固めたものの、俺達は未だ迷宮へと出発してはいなかった。

京太郎「(それにその間やる事もあるしな)」

それは勿論、これからお世話になる恋人たちとの甘い逢瀬…ではない。
それも重要ではあるが、さりとて、そればっかりに溺れていられるほど甘く考えられはしないのだ。
きっと咲は次の探索でこの前以上の手で俺を手に入れようとする。
それを防ぐ為にも、俺は今以上に皆をサポートする為の力を手に入れなければいけない。

京太郎「(…だから、こうして白水さん達の部屋に来た訳だけれど…)」

哩「ん?どげんしたと?」

京太郎「あ、いや…その…」

姫子「両手に花ばい。もっとリラックスしても良かたい」

…むしろ、それが緊張するんだよなぁ。
なんで、俺、ソファに座って両側を白水さんと鶴田さんに挟まれているんだろう。
いや、勿論、二人は美少女であるだけに、そうやって挟まれるのは光栄なのだけれど…。
何故かこう今の状況は身の危険を感じると言うか…。
食虫植物の口に入り込んでしまった虫の気分と言うか…。

京太郎「(…そもそも俺、なんでこの二人の所に来たんだろう…?)」

いや、勿論、自分でも理由は分かっている。
それは当然、今以上に自分の力を引き出す為だ。
けれど、それは別に臼沢さんでも大丈夫なはずなのに…。
なんで俺は臼沢さんじゃなくて…恋人同士である二人のところに来てしまったんだろう…?

哩「それで…今日は何の用と?」ギュゥ

京太郎「あ…え、えぇっと…な、なんで腕を組む必要が…」

哩「私がしたいけん、やっただけばい」

哩「…ダメやったと?」ジィ

京太郎「い、いや、ダメなんかじゃないですけど…」

姫子「じゃあ、私も須賀くん腕、片一方貰っとー♪」ギュゥ

京太郎「つ、鶴田さんまで…」

姫子「あー…こい結構、落ち着くばい」

哩「ん…思った以上に安心するけん、良か心地…」スリ

京太郎「うぅ…」

な、なんだ、コレは。
なんで俺は百合ップルに両側から挟まれて、腕を抱きしめられてるんだ…!?
勿論、ご褒美ではあるし…僅かながらに柔らかい胸の感触が伝わってきて、悪い気分じゃないんだけど…!!
でも、それ以上に訳が分からなさ過ぎて狼狽するというか…!!
相手にそういう気持ちがないのが分かっているだけにすっげえええ緊張する…!!

姫子「そいより、須賀くん用事は?」

京太郎「あ、えっと…この前みたいに能力開発手伝って貰えたら良いなって…」

姫子「ん…また迷宮ん探索すると?」

京太郎「えぇ。その為にも自分に出来る事があればしっかりやっておきたくって」

姫子「ふーん…見かけによらず努力家たい」

哩「こら、姫子」

姫子「えへへ、ごめんなさい」

哩「…ばってん、前回は色々大変やったって聞いたけん」

哩「本当に大丈夫と?」

俺の腕を抱きしめながら顔を覗き込む白水さんの顔は本当に心配そうなものだった。
何だかんだ言って、こうして彼女達との付き合いもそれなりに長いのだ。
多少は心配してくれるくらいには仲も深まっているという事なのだろう。
実際、こうして俺の腕を抱きしめる程度には心も許してくれている訳だしな。

京太郎「(…そんな白水さんになんて応えれば良いのか…)」

正直に言えば、未だ不安が晴れた訳じゃない。
大丈夫とハッキリ言い切れるほど咲が簡単な相手ではないのだ。
頼りになる仲間がいるとは言え、帰ってこれない可能性だってある。
けれど、それを彼女に言っても下手に心配させるだけかもしれないし… ――

京太郎「…正直、分かんないです」

哩「分からん?」

京太郎「今までは大丈夫って言えるくらいには自信があったんですけどね」

京太郎「今回ばかりはちょっとマジでヤバそうなんで」

京太郎「仲間の事を信頼していますけど…でも、それ以上に相手が本気ですから」

京太郎「なので…大丈夫なのかどうか分からないって言うのが本音です」

哩「…そっか」

俺の言葉に白水さんは小さく笑みを浮かべた。
まるで初めてのお使いが出来た弟を見る姉のような優しげな笑み。
それがいったい、どういう意味を持つのかは分からないが、そうやって微笑ましそうに見られるのはなんとなくくすぐったい。
実年齢はさておき、実際に経験した時間であれば俺の方が上なのだから尚の事。

哩「…そいけん、私らも気合入れんといけんね」

京太郎「お願い出来ますか?」

姫子「須賀くんの頼み事なら断れんばい」

哩「そいに…もっと色々と試してみたい事もあるけん」

京太郎「た、試す…ですか…?」

なんだろう…凄く嫌な予感がする。
いや、勿論、二人の事は信用してるし大丈夫だと思うけれど…。
でも、こうして俺の顔を覗き込む哩さんの目は何処か危ないもので…。
まるでこの前の春みたいに興奮してるって言うか…エロくなってるっていうか…。

哩「はい。じゃあ、須賀くんはそん辺で横になっとー」グイグイ

京太郎「い、いや、俺は…」

姫子「はい。膝枕してあげるけん、こっちにおいで」クイクイ

い、いつの間にか鶴田さんが俺の頭の辺りに膝を置いて…。
やばい…このままでは押し切られる…。
なのに…何故か身体が抵抗出来ない…。
俺を押す白水さんの手も鶴田さんの手も弱いはずなのに…。
まるでそれが正しい事のように横になってしまった…。

哩「そいけん、姫子の匂いに集中して」

京太郎「い、いや、それはやばくないですか…?」

姫子「ふふ…須賀くんやけん、大丈夫たい」

姫子「今はそぎゃんこつよりリラックスリラックス」ナデナデ

京太郎「ぅ…」

…しかも…鶴田さんに撫でられるだけでドンドン眠くなって…。
勿論…昨日も皆と朝までセックスしてたのが大きいんだろう…けれど…。
本当に気持ちがリラックスして…眠気が…抑えきれない…。
これ…やば…また…堕ちる…。
もう…眠…耐えら…な…い…。

―― 夢の中で俺は声を聞いた。

哩「相変わらずココたくましかねー…」

姫子「と言うか…前よりも大きゅーなってません?」

姫子「前は確かこうして二人で握ってもしっかりと指絡まったのに…」

哩「ふふ、姫子、寂しがっとー?」

姫子「…ち、ちょっとだけ」

哩「姫子はホント、可愛かね」チュ

姫子「も、もう…部長…いきなりチューするんは反則です…」

哩「姫子が可愛すぎるのが悪かよ?」

哩「…そいに…実は興奮しちょると?」

姫子「し、しとらんです…っ」

哩「…その割りにはさっきから姫子ん顔赤かよ?」

姫子「そ、それは…」

哩「須賀君んチンポ触って…発情しとーと?」

姫子「う…し、して…ます…」

姫子「…ばってん、部長だってそやなかですか?」

哩「…ん。今、すっごいドキドキしとー…♥」

哩「やっぱり…私もメスやけん…オチンポには勝てんばい…♪」

姫子「……」

哩「…姫子、もしかして拗ねとー?」

姫子「だ、だって…私が隣にいるんに部長ったらオチンポ夢中になって…」

姫子「…私にもコレがあったらなぁ…」スリスリ

哩「ふふ、オチンポなんかなくても姫子は私ん大事な子たい…♥」

姫子「…ホントですか?」

哩「私が姫子に嘘ついた事今まであったと?」

姫子「…なかです。ばってん…」

哩「ん?」

姫子「私…怖かです…」

姫子「こうして須賀君んオチンポ…触っちょるだけなんに…」

姫子「身体の奥からドキドキ…して…♪」

姫子「部長ん愛さちょる時と…全然…違って…♥」

姫子「癖になっちゃいそうな自分が…どうしても否定出来なくて…♪」

姫子「私…私…」

姫子「須賀君に部長ば取られそうなのも…自分がどんどん…須賀君のオチンポが好きになっとーのも…」

姫子「どっちも…凄く…怖か…です…」

哩「…姫子…」

哩「…それこそ心配要らんたい」

姫子「…部長?」

哩「例え、私が須賀君に堕ちても…姫子が須賀君に堕ちても…♥」

哩「行き着く先は…きっと一緒たい♪」

哩「何時でもどこでも…私は姫子ん側におる♥」

哩「私ん一番は姫子やけんね♥♥」

姫子「…部長…っ♥」

哩「あ…もう…姫子はホント甘えん坊たい…♪」

姫子「えへへ…♪」

哩「…じゃあ、そぎゃん甘えん坊な姫子の為にも…須賀君から精液採らなあかんね♪」

姫子「はいっ♥」

京太郎「う…うぅ…ん…」

…アレ?ここ…また白水さん達の部屋…か?
なんで俺またこんな所に…あぁ、そうか…。
能力開発の為に来て…それで寝ちゃったんだな。
でも、なんかこの前と違ってちょっと疲れてるような気が…。
5回連続で射精した時と似たような倦怠感が身体にのしかかってきて…。
うーん…なんでだろ…?

哩「あ、須賀くん、目ぇ覚めたと?」

京太郎「えぇ。お陰様で」

姫子「そりゃ良かったばい」

姫子「あ、これ、ハーブティ」

姫子「精がつく調合やけん、疲れもマシになるはずと」

京太郎「あ、ありがとうございます」

…ってあれ?
なんでここで精がつくなんて言葉が出てくるんだろう?
勿論、疲労回復に効くハーブティがあるのは俺も知ってるけど…でも、それを【精がつく】なんて言い方はしないだろうし…。
うーん…まぁ、いっか。
とにかく折角、差し出してくれたものだし飲んでみよう。

京太郎「…あ、美味しい」

姫子「ふふ、こん私のスペシャルブレンドやけんねっ」

哩「姫子んお茶は日本一ばい」ナデナデ

姫子「えへへっ♪」

相変わらずナチュラルにイチャつく二人だなぁ。
にしても…これは確かに美味しい。
ちょっと疲れている所為か、この微かな甘さが身体に染み込む感じで…。
独特な甘い香りも疲れで強張りそうな身体を優しくリラックスさせてくれる。
これは出来ればまた飲みたいな。

京太郎「(まぁ、それはさておき…)」

こうして哩さん達の部屋にやってきたのは決してお茶をご馳走になる為ではない。
自分の中の潜在能力を決戦の日までに出来るだけ高めておく為なのだ。
時計を見る限り、既に俺が来た時から数時間が経過しているみたいだけど…。
果たして成果は…… ――

京太郎「(…思った以上だったな)」

既に新しい能力が俺の中で芽吹いているのを感じる。
それはまだとっかかりのような僅かなものだが…しかし、それでも十分だ。
これだけハッキリと自分の中で新しい力があるのを感じるならば、最後の決戦までに形にするのは間に合う。
いや…間に合わせてみせる…!!

京太郎「…ありがとうございます、助かりました」ペコ

姫子「いや、こっちも色々とデータ収集出来たけん、お互い様たい」

京太郎「…データ収集?」クビカシゲ

哩「須賀くんが気にせんでも良い事やけん」

哩「こっちの話ばい」

京太郎「は、はぁ…」

明らかに今の流れだと俺のデータを集めているような気がするんだけど…。
でも、白水さんがそう言うんなら、きっと俺とは無関係なんだろうな。
白水さんが俺に対して嘘を吐いたりするはずがないし。
俺は彼女の言う通り、気にしなくて良いんだ。

哩「そいより、そっちはどうやったと?」

京太郎「はい。お陰様で何とか形に出来そうです」

姫子「そぎゃん良かったばい」

京太郎「本当にお二人のお陰です」

京太郎「あ、今度、お礼のお菓子持ってきますね」

哩「うん。楽しみにしとっと」ニコ

姫子「とっても美味しいの期待しとるばい」ペロッ

…あれ?
なんか今、背筋にゾクリとしたものが走ったような…。
まるで咲と初めて再会したような寒気…だけど…気のせい…だよな?

哩「それよりそろそろ夕食の時間ばい」

姫子「須賀くんの分も用意すっと?」

京太郎「あー…そうですね…」

…お誘いは嬉しいが、美穂子には特訓の事しか伝えていないからなぁ。
既に俺の分も作っているだろうし、その予定を崩すのも悪い。
それに恋人同士の部屋にあまり長いこと上がり続けるのもな。
さっきからずっとソファを占領してた訳だし、今日はそろそろ帰らせてもらおう。

哩「須賀くんの分くらいすぐ準備出来るけん、食べてけば良かよ」

姫子「色々と話も聞かせて欲しいけんね」クス

京太郎「はい。分かりました」

…あれ?なんで俺はそんな反射的に応えてたんだ?
さっきまではお邪魔するのはあまり宜しくはないって考えてたはずなのに…。
いや、でも…折角、二人に誘ってもらえたんだし、あんまり頑なに断るのも変だよな。
そうだ…白水さんと鶴田さんが言う事が間違っているはずもないし…『コレ』が正しいんだ。

京太郎「(…とりあえず美穂子には『俺の分は別に分けて置いておいてくれ』って連絡しておこう…)」ピッピッ

姫子「こーらっ」ギュッ

京太郎「わわっ」

哩「女の子ん前で携帯弄るのはマナー違反ばい」

姫子「そいよりももっとお話したかよ」

京太郎「わ、分かりました」

まぁ、確かにあんまり携帯ばっかり弄ってるのもな。
…でも、流石に美穂子には悪いから、後でトイレでメールだけでも打とう。
流石に夕食を一緒に摂るだけだからすぐ帰れるだろうし…詳しい事情の説明は後ですればきっと許してくれるだろう。

―― そんな俺の思惑とは裏腹に白水さん達は俺の事を中々、離してはくれず。

―― 途中でまたさっきのように強い眠気に襲われたのもあって…。

―― 結局、その日、俺が自室へと戻ったのは日付が変わる直前になってしまったのだった。




System

新道寺ペアの好感度が25になりました → <<この精液…とっても美味しか…♥>><<出来ればもっと絞りとっておきたかったばい…♪>>

須賀京太郎が新しいオカルト てんのめぐみを覚えました
 Lてんのめぐみ パートナーの全ての技の付加効果発生確率を二倍にする

滝見春の好感度が55になりました → <<もっともっと…エッチしよぉ…♥♥>>





迷宮前準備のコーナー


<<アイテム>>
きずぐすり 6/9   一体のHPを20回復する   売価150円
いいきずぐすり 3/6 一体のHPを50回復する  売価350円
すごいきずぐすり 4/4 一体のHPを200回復する 売価600円
まんたんのくすり 1/2 一体のHPを最大まで回復する 売価1250円 ※こそっと最大所持数修正
かいふくのくすり 1/1 一体のHPを最大まで回復し、状態異常を治療する※瀕死以外 売価1500円
げんきのかけら 2/3 一体の戦闘不能状態を回復する(HP50%回復) 売価750円
どくけし 9/9  一体のどく・もうどくを治療する  売価50円
まひなおし6/9 一体のまひを治療する 売価50円
やけどなおし 5/9 一体のやけどを治療する 売価50円
ミックスオレ 3/5 一体のHPを80回復する※戦闘中使用不可 売価175円


<<販売アイテム>>
きずぐすり@3  300円    一体のHPを20回復する  現在6/9
いいきずぐすり@2 700円  一体のHPを50回復する   現在3/6
すごいきずぐすり@2 1200円 一体のHPを200回復する  現在4/4
まんたんのくすり@1 2500円 一体のHPを最大まで回復する 現在1/2
どくけし@3    100円    一体のどく・もうどくを治療する現在9/9
やけどなおし@3 100円   一体のやけどを治療する 現在5/9
まひなおし@3 100円     一体のまひを治療する  現在6/9
げんきのかけら@2 1500円 一体の戦闘不能状態を回復する(HP50%回復) 現在2/3
おいしいみず@2  100円  一体のHPを50回復する※戦闘中使用不可 現在0/5
ミックスオレ@2 350円 一体のHPを80回復する※戦闘中使用不可 現在3/5

オッカの実@1 20円 効果抜群のほのお技を一度だけ半減する
ウタンの実@1 20円 効果抜群のエスパー技を一度だけ半減する
ヨプの実@1 20円 効果抜群のかくとう技を一度だけ半減する

媚薬ケーキ@1 5000円 魔力供給出来るようになったパートナー一人の好感度を10上昇させる
媚薬クッキー@1 3000円 魔力供給出来るようになったパートナー一人の好感度を5上昇させる




<<開発可能アイテム>>
半減実 → 別属性を半減する実を開発し、販売可能にする事が出来ます(要5000円)
こだわり系開発 → こだわりハチマキ開発(持たせると同じ技しか出せないが攻撃が1.5倍になる)(要10000円)
いのちのたま開発 → いのちのたま持たせるとわざの威力が1.3倍になるがわざが当たったときに最大HPの1/10が減る(要15000円)




現在の所持金は44485円です



System
まんたんのくすりを購入しました(2500円)

げんきのかけらを購入しました(1500円)

おいしいみずを二個購入しました(200円)

ミックスオレを二個購入しました(700円)


現在の所持金は39585円です



現在の♥のウロコは28枚です


どうしますか?


1…2…ポカン


滝見春はふんえんを忘れた


そして…


新しくれんごくを覚えた





京太郎「(…さて、準備は出来た)」

必需品のチェックは終わったし、アイテムも買い揃えた。
多少、パンチ力不足だった春にも新しい技を用意した。
俺も新しい能力を手に入れ、今まで以上に皆のサポートが出来るようになった。
…コレ以上、出発を先延ばしにしても、もう出来る準備は何もない。
決心が鈍らない内に早く迷宮へと足を進めてしまおう。

京太郎「(…でも、その前に)」

逸る心とは裏腹に俺にはやらなきゃいけない事があった。
俺がコレ以上、迷宮に挑戦するのかどうか、迷っていた時に…返事を返せなかった高鴨さんに俺なりの答えを返さなければいけない。
あんまり悪い事を考えたくはないが…次に俺達が帰ってこれる保証はない訳だしな。
下手をすれば俺の答えを一生待ち続けるかもしれない事を思えば、どれだけ気まずくてもちゃんと会いに行かなければいけない。

―― ピンポーン

穏乃「はーい」

京太郎「あ、須賀京太郎だけど…」

穏乃「…須賀くん?」

京太郎「ほんの少しだけで良いんだ」

京太郎「ちょっと話せるか?」

穏乃「うん。大丈夫」

穏乃「ちょっと待っててね」

その言葉と共に受話器が降りる音がする。
そのまま待つこと十秒ちょっと、高鴨さんの部屋の扉がガチャリと開いた。
何時もと違って、おずおずとした様子で開いていく扉から顔を覗かせるのは相変わらず黒ジャージなままの彼女。
しかし、その表情はほんの少しだけ緊張しているように見えた。

京太郎「…こんにちは」

穏乃「うん。こんにちは」

穏乃「えっと…元気…してた?」

京太郎「あぁ。おかげ様でさ」

多分、それは彼女も俺の意図に気づいているのだろう。
俺達が迷宮探索の準備を始めたのは憧を通じて彼女の耳にも入っているだろうから。
それでも尚、高鴨さんに会いに来なかった俺の突然の訪問。
それが以前の答えを返す為だと彼女もきっと理解しているんだ。

穏乃「えっと…中入る?」

京太郎「いや、ほんのちょっとだけだしここで良い」

穏乃「そ、そっか…」

穏乃「じゃあ…えっと…」

穏乃「何の用…かな?」チラ

そこで高鴨さんは俺から僅かに視線を泳がせてからこちらを見上げた。
何時もまっすぐに人の顔を見つめる彼女らしからぬ仕草からは不安が強く伝わってくる。
きっと高鴨さんは俺に同行を断られると思っているのだろう。
実際、これが最後の挑戦になる俺にとって、それは決して間違いではない。
そもそも初心者である高鴨さんを連れて赴けるほどあの場所は易しいところではないのだ。

京太郎「この前の返事…ずっと待たせてたけどさ」

京太郎「答え…ようやく出たから言おうと思って」

穏乃「……うん」

穏乃「じゃあ…聞かせて」

穏乃「須賀くんの答え…私に教えて」

…それでも高鴨さんはそこで俺の顔をまっすぐ見つめてきた。
不安を押し隠すようにして、俺に視線をぶつける彼女は…やっぱりとても強い。
俺だったらきっとこの状況で相手をまっすぐ見つめる事なんて出来ないだろう。
だから… ――

京太郎「…手、貸してくれないか?」

穏乃「え?」

京太郎「ちょっと次はかなり厳しいみたいでさ」

京太郎「高鴨さんの手助けが必要になると思う」

…無論、俺だってベストは高鴨さんを置いていく事だって分かってる。
幾ら基礎能力が高かったとしても彼女の意識はまだ普通の女子高生なのだから。
戦いにもまだ慣れていない彼女を連れて行っても、きっと足手まといにしかならない。

京太郎「(…でも、そうならないかもしれない)」

結局、圧倒的物量に対して抗えるのは物量だけなのだ。
少なくとも迷宮内部をコントロール出来る咲を前にして俺達が打てる手と言うのは一人でも多くの仲間を増やす事だろう。
無論、それは俺達にとって少なからずリスクの発生する方策だと俺も理解していた。

京太郎「(…でも、リスクがあるのはどっちも同じなんだ)」

京太郎「(なら…高鴨さんが少しでも後悔しない方法の方が…きっと良い)」

京太郎「(多分、それが一番、俺が後悔しない方法だと思うから)」

文字通り今回がラストチャンスだ。
これを逃せば、俺はもう二度と迷宮には挑戦しない。
そう覚悟を決めているし、仲間たちにもそう話している。
そんな状況で一番、俺が悔やまないで済む方法を選ぶのはきっと正しくはなくても間違ってはいない。
少なくとも今の俺にはそう思えるから。

京太郎「…多分、初めての高鴨さんにはかなりキツイ戦いになると思う」

京太郎「でも…まだこの前の気持ちが変わっていないなら…」

京太郎「俺と一緒に戦ってくれないか?」スッ

穏乃「~~っ!」パァ

そう言って彼女へと向けた右手に高鴨さんは顔を明るく輝かせる。
キラキラと眩いばかりの表情には、喜色が強く現れていた。
それは彼女の気持ちが今も変わっていないからなのだろう。

穏乃「うんっ!うんっ!!」

穏乃「私、頑張るよ!」

穏乃「精一杯、頑張るからね!!」

京太郎「…あぁ、期待してる」

そのまま俺の手を力強く握って、高鴨さんはブンブンと手を振るう。
半分、魔物になった女の子の力は強く、肩から持って行かれそうな激しい勢いだった。
しかし、それだけ高鴨さんが喜んでくれているともなれば、俺も嬉しい。
俺自身、まだ迷宮の恐ろしさについて知らない彼女を死地へと誘う事に良心の呵責を感じていたのだからなおのこと。

穏乃「あ、ちょっと待ってね!」

穏乃「今、準備してくるから!!」

京太郎「え、いや…」

まだ慌てるような時間じゃない。
俺がそう言うよりも先に高鴨さんは部屋の中へと戻っていった。
まるで嵐のような勢いに再び待つ事一分ちょっと。
再び扉を開けた彼女の背中には大きなリュックがドーンとのしかかっていた。

穏乃「えへへ、こんな事もあろーかとしっかり準備してたんだよ!!」

京太郎「お、おう…」

何処か自慢気に言う高鴨さんよりも遥かに横幅が大きいリュック。
正直、一体、どこでこんなものを見つけてきたんだと言いたいくらいだ。
そもそもあんまり荷物が多すぎると探索の邪魔になるのだけれど…。
…まぁ、それは今、指摘するのは無粋か。
折角、こんなにやる気になってくれているんだから、そういうのは後でも良いだろう。

穏乃「それじゃあ出発しんこ…あぅ」

穏乃「……」ジタバタジタバタジタバタ

穏乃「…………須賀くん、助けて…」

穏乃「コレ…出れない…」

京太郎「うん、とりあえず荷物減らそうか」


………


……