―― 新しい調査内容が出来た事に政府の人は喜んでいた。

どうやら俺達に起こったその現象は今までに報告されていないものだったらしい。
指輪による変化に彼らは嬉々として検査を開始した。
既に霧に飲まれて魔物と化しているとは言え、その知識欲は研究心は衰えてはいなかったのだろう。
それぞれ推論や難しい単語を口にしながら検査を進めていく彼らに、俺は一人帰らされる事になった。

―― とりあえず検査の結果が出るまで数日はお休みだ。

指輪による進化は、最初のそれよりも強烈なものだった。
その分、身体に異常をきたしていないかを数日掛けてじっくり調べたいらしい。
それだけながら美穂子までいなくなる必要はないのだけれど、その変化が憧と智葉だけなのか、あるいは他の二人にも適用出来るものなのかも検証しなければいけないそうだ。
お陰で俺は今、五人で過ごしていた部屋の中、一人でポツンと座っている。

京太郎「(…なんだか随分と広いよなぁ…)」

普段、それを意識する事は滅多にない。
久のハーレム加入によりダブルルームからダブルルームを二つぶちぬいた部屋へと変わったのだから。
普段ならば、俺の周りには大抵、誰かが居るし、抱きつかれている事だって珍しくはない。
そんな彼女達とのスキンシップを楽しんでいる時間は、お互いがお互いに夢中になっている。
だが、今はそうやって俺を夢中にさせてくれる彼女たちが一人もいない。
それを考えると、なんとなくもの寂しいような落ち着かないような、そんな気分になった。

京太郎「(ずっと誰かと一緒だったからなぁ…)」

東京に来てから、既に数ヶ月が経過している。
その間、俺が部屋に一人でいた時間なんて最初の二週間くらいなものだ。
それ以降は智葉がずっと一緒だったし、他の面々もすぐに加入したのだから。
そうやって賑やかで暖かい生活をずっと続けて来られた反動が、今更、来ているのだろう。

京太郎「(仕方ない…どっか行くかなぁ…)」

既に報告書は書き上げてしまって、基本的に暇をしている。
こうして一人部屋の中でボーっとしていても、時間の進みも遅くなるだけだ。
それよりも適当に何処か遊びに行って、みんなが帰ってくるまでの時間を潰した方が良い。
って、これじゃ俺もみんなに依存しているみたいだな…。
多分、その通りなんだろうけど。

ピンポーン

京太郎「ん?」

そんな自分に何とも言えない笑みを浮かべた瞬間、インターフォンが鳴った。
一瞬、予定前倒しでみんなが返ってきてくれたのかとも思ったが、そんなはずはない。
俺がみんなに会いたいように、みんなも俺に会いたいのだから、前倒しになれば即座に連絡をくれるはずだ。
それがない、という事は彼女たち以外の誰かが俺達を訪ねに来たのだろう。


京太郎「(ま、とりあえず、部屋にいるのは俺一人なんだし…)」

京太郎「はい」ガチャ

淡「やっほ」

居留守を使うのも気分が悪いし、出るだけ出よう。
そう思って扉を開けた俺の前にいたのは見慣れた金髪を輝かせた大星さんだった。
スッと気軽に手をあげて、こっちに挨拶してくる彼女に俺は… ――

京太郎「あ、金髪は間に合ってますんで」

淡「ち、ちょっとおお!!」ガシッ

京太郎「何をするんですか…!?」

京太郎「そんな無理やり、扉に手を入れて…開けようとするなんて…」

京太郎「警察呼びますよ、警察!」

淡「警察なんてもう殆ど動いてないんでしょ…っ!」

京太郎「だからって、人の部屋に押し入って良い訳ないでしょう…!この変質者…!」

淡「アンタが言うなああああああああ!!」

うん、まさにその通り過ぎて何も言えない。
まぁ、大星さんで遊ぶのはこれくらいにしておくか。
折角、部屋に訪ねてきてくれたのに、それで始終するのも可哀想な話だし。

京太郎「まったく…で、何の用なんだ…?」

淡「とりあえず今、アンタの事を思いっきりぶっ飛ばすって言う用が出来たわ」

京太郎「OK。落ち着け。暴力は何も生まないぞ」

淡「何も生まないかもしれないけど、私をすっきりさせてはくれるのよ」ニッコリ

そう言って握り拳を作りながら大星さんは満面の笑みを浮かべた。
何処か田舎のひまわり畑が似合いそうな純朴で朗らかな笑み。
けれど、それが恐ろしいのは彼女の目がまったく笑っていないからだろう。
笑顔とは本来、攻撃的なものであり以下略、なんて言葉が瞬時に浮かび上がってきたくらいだ。

京太郎「まぁ、その用はとりあえずこっちに置いておこうぜ?」

淡「むー…」スネー

京太郎「で、改めて聞くけど、何の用なんだ?」

京太郎「今日は俺だけ…って言うか、皆は数日帰ってこないぞ?」

淡「へぇ」ニヤリ

そこで大星さんが拗ねるような表情から、ニヤリとした表情へと変わる。
何処か悪戯小僧を彷彿とさせるその表情は何かろくでもない事を思いついた証だろう。
さっきの分の仕返しをここでしてやろうとか考えてるのが丸わかりだ。

淡「なんだ。アンタついに皆から捨てられちゃったの?」ニヤニヤ

京太郎「…そうなんだよ」

淡「へー。まぁ、そんな生意気な性格じゃあ仕方ないって」

淡「その上、恋人だって四人もいるんじゃ愛想も尽かされて当然じゃない」

淡「これを機に心を入れ替えて、淡ちゃん様にご奉仕すると良いわ」ニッコリ

一体、心を入れ替える事と、大星さんに奉仕する事に何の繋がりがあるのか。
出来ればその辺、理論的に突っ込んでみたいけれど、きっと大星さんは何も考えていないんだろうなぁ。
考えていたとしても、きっと彼女にしか分からない超理論なんだろう。
多分、一々、そこを突っ込んだところで無駄だ。

京太郎「…つまり大星さんは俺に奉仕されたいのか?」

淡「そりゃアンタは顔見る度に人の事おもちゃにしてくれるし…」

淡「い、いや、別におもちゃにされてる訳じゃないんだけどね!?

淡「ただ、アンタがあまりにも哀れだからおもちゃになってあげてるだけだけど!!」

淡「でも、たまには仕返し…じゃなくて、見返りは欲しくなって当然じゃない」

京太郎「見返りかぁ…」

ふと考える。
ここで大星さんが俺に求めている見返りとは一体、何なのか。
日頃、おもちゃにされている彼女が求めているのはやはり安らぎだろう。
では、安らぎとは一体、どういう時に得られるのか。
それは勿論、恋人と一緒にいる時だ。
だけど、俺の両手両足はもう恋人たちで一杯である。
ここはやっぱり… ――

京太郎「…ごめんな」

淡「そうそう。そうやって素直に謝れば」 「俺、大星さんの気持ちには応えられない…」

淡「え?」

京太郎「まさかいきなり告白されるとは思わなかったけれど…」

京太郎「でも、大星さんとはまだあんまり仲良くないし…」

淡「ち、ちょっと…」

京太郎「出来れば友達でいたいかなって…」

京太郎「ほら、一緒に帰って噂されると困るし…」

淡「な、なんで私が告白してフラれてる流れになってるの!?」

京太郎「面白いからに決まってるだろ」

淡「いきなり素に戻るな!!」

いやー、だってなぁ。
大星さんは憧よりも扱いやすくて面白げふげふ、楽しい人だからさ。
ついついこうして弄んでやりたくなるというか、なんというか。
こうやってリードして弄ぶのが一番、面白げふげふ…円滑にコミュニケーションが取れると思う(真顔)


淡「まったく…皆、いないって聞いたから寂しがってるんじゃないかって思って遊びに来てやったのに…」

京太郎「大星さん…」

淡「…後、ついでに怖い智葉さんとか美穂子さんとかいないから、仕返しも出来ると思ったのに…!!」

淡「なんで私が何時もみたいに弄ばれてるのよ、もぉ…っ!」

京太郎「…多分、そういうところじゃないかなぁ…」

最初の部分で止めておけば、まだいい話で終わったのに。
自分の気持ちを最後まで吐露しちゃう、そういうところがダメ、と言うか残念なんだと思う。
まぁ、そこに突っ込んで彼女で遊ぶ事が多い俺にとっては喜ばしいし、好ましい部分ではあるんだけれど。
正直、こんなに分かりやすくて遊びやすい子が白糸台で孤立してたとか信じられないよなぁ。

京太郎「まぁ、でも、心配してくれてありがとうな」

京太郎「良ければお茶出すけど、部屋にはいらないか?」

淡「変な事しないでしょうね…?」

京太郎「自分の胸見てから言えよ」

淡「こ、これでもCはあるもん!ギリギリだけど!!」

はは、C程度で胸を張られてもなぁ。
こっちはその遥か上を行くボインサイズの恋人が二人もいる訳で。
大星さん程度の戦闘力じゃ、ちっともお話にならない。


淡「って言うか…憧とか久さんとかは私とそう変わらないじゃん…」サッ

京太郎「分かってないなぁ、大星さんは」

淡「…すっごい聞きたくないけど…何を?」ジトー

京太郎「憧はアレで結構、胸成長して来てるし、久はアレだ」

京太郎「どっちかっていうと太ももとかお尻で勝負するタイプだから」

淡「うん…聞くべきじゃなかったわ、コレ…」

何故か大星さんはげっそりしてるが、事実である。
確かに憧と久はおっぱいとしては物足りないタイプだ。
だけど、それでは収まりきらない確かな魅力があるのである。
それを聞かれた分、応えただけなのに、なんでげっそりされるのか。
解せぬ。

淡「はぁ…なんか毎回、アンタと顔を合わせる度に、こんな流れになってる気がする…」

京太郎「それでも俺に会いに来てくれる辺り、大星さんってマゾだよな」

淡「マゾ?」キョトン

京太郎「あーうん…なんかごめんな…」

まさかのピュア枠に思わず反射的に謝ってしまう。
いや、もう半分、魔物と化しているから完全にピュアって訳じゃないんだろうけどさ。
でも、てっきりそういう言葉を知っていると思っただけに、すげぇ申し訳なくなったというか。
そういや、大星さんって機械オンチ疑惑もあったっけか…。
俺が思っていた以上にこの人ってダメな子なのかもしれない。

淡「ふふーん。なんか良く分からないけど、謝らせたって事は私の勝ちよね!?」

淡「図が高いわ!ひれ伏しなさい!」ドヤァ

京太郎「調子に乗るなよ、金髪」

淡「あ、アンタだって金髪でしょ!!」

京太郎「俺は良いんだよ、俺のは超金髪だから」

淡「そ、それなら私だってハイパー金髪だもん!!」

淡「ハイパーってスーパーよりも凄いって事でしょ!だったら私の勝ち!」ドヤヤァ

そんな風に謎理論でドヤ顔を続ける大星さんを凹ませてやりたいが、流石にコレ以上、玄関先で遊ぶのはな。
あんまり立ち話も続けるのはなんだし、そろそろこの辺りで折れてやるべきだろう。
…言ってて思ったけど、これ完全に年下の子に対する扱いだよな。
具体的に言うと小学生低学年レベルの。

京太郎「じゃあ、そんなハイパーな淡ちゃん様に提案があるのですが」

淡「くるしゅーない。もーしてみよ」ドヤヤ

京太郎「お菓子をつまみながら部屋でお茶会などどうでしょう?」

淡「ふふーん。くるしゅーない、くるしゅーないぞ」

…なんか苦しゅうないを勘違いしてないかなぁ。
まぁ、上機嫌で部屋の中に入ってくれるのはありがたいし、別にいっか。
それにまぁ、席に座ったら、気を使う必要はなくなる訳だし。
後で思いっきり遊んでやろう。

淡「…で、お菓子は?」

京太郎「はいよ」

淡「えへへ…中々に良い心がけぞよ?」

淡「このハイパー淡ちゃんさまが褒めてつかわすっ」

京太郎「へぇへぇ。ありがとーごぜーますだ」

淡「もーこのハイパー淡ちゃん様が褒めてあげるって言ってるんだからもっと喜びなさいよー」

京太郎「いやぁ…別に大星さんに褒められてもなぁ…」

感謝を口にされるのは良いんだが、大星さんに褒められるのはなんかこう違和感があるというか。
こう彼女のキャラ的にすっげぇこれじゃない感と言うか下に見られてる感があってちょっと悔しい。
まぁ、そんな殴り合いのような付き合いを選んだのは俺だし、これも仕方のない事なんだろうけれども。
ともかく、大星さんがポリポリとお菓子を摘んでいる間に、お茶を入れてしまおう。

淡「…あ、このケーキ美味しい」ハムハム

京太郎「今、お茶入れてるんだから、あんまり食い過ぎるなよ?」

淡「その時はアンタが外まで買いに走れば良いでしょ?」

淡「勿論、自費で!」

京太郎「思いっきり渋いの入れてやろうか」

まぁ、流石にそれは茶葉に対する冒涜だからしないけどさ。
しかし、ここまで調子に乗られているのを見ると一回、叩いておいた方が良いだろうか。
あるいは、今食べている媚薬成分抜きのケーキじゃなくて、憧が発情したあのケーキを食わせてみるとか。
…いや、流石にそれは色々と洒落にならないな、うん。

京太郎「はい。どうぞ」スッ

淡「わーい」スッ

淡「あっつぅ」ビクッ

京太郎「そりゃ淹れたてだしな」

淡「えー…すぐ冷ます方法とかないの?」

京太郎「ふーふーしてりゃ良いんじゃね?」

淡「じゃあ、アンタがやってよ」

京太郎「え?」

淡「私、ケーキ食べる役、アンタ、お茶冷ます役、オッケー?」

…何を言ってるんだろう、この金髪は。
俺を働かせる事優先過ぎて自分で言っている意味分かっていないんじゃないだろうか。
そうやって息を吐くって言う事は唾液も入るって言う事なんだけど…。

淡「はむはむ。美味しいーっ♪」

ぜってー分かってないよなぁ、コレ。
今も脳天気な顔でケーキ切り分けてパクパク食ってるし。
つーか、その速度やべーだろ、もう殆どなくなってるじゃないか。
折角出したお茶と合わせる気、まったくないな!!

淡「ねー、早く冷ましてよ、ケーキなくなっちゃうじゃん」

京太郎「氷でもぶちこんでろ、金髪」

淡「「その手がっ!」ガタッ

京太郎「いや、ねぇよ」

そんな事したら折角の茶葉の匂いが薄れるだろうが。
ハギヨシさんから幾らか手順を教わった身としてはそんな暴挙を許す訳にはいかない。
つーか、少し考えれば分かるだろうに…本当、麻雀以外には色々と足りない奴だな!

淡「ま、また騙したの!?」

京太郎「騙したんじゃない、ただ投げ槍なだけだ」

淡「えー。この私とお茶会が出来るってだけで普通、心から喜んで、尽くしたくなるもんでしょ?」

京太郎「鏡見てから言えよ」

淡「…???」チラッ

淡「美少女しか映ってないけど?」

まさか本当に鏡を見るなんて思ってなかった。
しかも、自分のこと、美少女って言うなんて。
いや、まぁ、確かに大星さん顔だけは良いけどさ。
良いけど…一体、どれだけ自信があるんだよ。
正直、ヘタレな俺としては、ちょっとうらやましいレベルだぞ。

淡「あ、美少女と言えばさ」

京太郎「そこを拾うのかよ」

淡「え?」

京太郎「いや、良い。それで、なんだ?」

淡「あ、うん。めいきゅー攻略って今、どんな感じ?」

京太郎「そうだなぁ…」

正直なところ、これからどうなるかはまだ分からない。
智葉たちの検査結果もまだだし、ましてや次からはまた階層が異なるのだから。
今までの傾向から言って、またガラリとタイプは変わるし、実力も高くなっていくだろう。
それらを総合的に考えた結果、一番に出てくる言葉はやっぱり… ――

京太郎「まぁ、色々と不安要素は強いな」

淡「そうなんだ…」

淡「まぁ、アンタ、見るからにヘボそうだもんね」

京太郎「まぁ、なぁ…」

それは正直否定出来ない。
何せ、俺は何時だって最適解を行えている訳ではないのだから。
前回の探索だって常に自分の判断が正しかったかと言えば、決してそうではない。
俺の代わりに身体を張ってくれている恋人たちの為にももっと判断力を磨かなきゃいけないんだけどなぁ…。

淡「な、なんでそこで…」

京太郎「ん?」

淡「な、なんでもない…っ」プイッ

そう言って大星さんは俺から顔を背けた。
けれど、そうやって顔を背けたところでその表情が隠せる訳ではない。
こちらへと向ける横顔は少し罰が悪そうなものに染まっていた。
きっと彼女は俺がそんな風に反応するとは思っていなかったのだろう。
だからこそ、俺のマジな態度に戸惑い、こうしてそれを取り繕っている。
…そう思うと、ちょっと可哀想な事したかなぁ。
何時もどおりネタで返せば良かったか。

淡「…じゃあ、そんなへぼへぼなアンタにプレゼントをあげる」スッ

京太郎「え?」

そう言って大星さんから差し出されたのは一枚のメモリーチップだった。
俺の持つCOMPに既に三枚刺されているのと同じそれはきっと彼女の個人情報が詰まったものだろう。
けれど、それがどうして俺の前にいきなり差し出されているのか分からない。
いや、勿論、これをプレゼントと言う彼女の意図は俺にも見えるのだ。
ただ、どうしてこの流れで、しかも、大星さんが出すのかが俺には理解出来なくて… ――


淡「私がいれば、ヘボなアンタでも少しはマシになるでしょ」

京太郎「いや…でもさ」

大星さんの実力は相対した俺達も知っている。
メデューサと言う神話に語られる化物クラスの彼女をあっさりと倒せたのは相性が良かったからだ。
そうでなければ、俺達はきっと彼女に苦戦させられただろう。
そう確信するだけのプレッシャーは間違いなくあった。

淡「あーもう!良いからこれ貸しなさい!」

京太郎「あ、ちょ…!?」

淡「えっと…何処に挿せば良いの?」キョロキョロ

淡「この穴?」

京太郎「ち、違う。そっちじゃなくて…!」

淡「じゃあ、こっち?」

京太郎「いや、それはサイズが合わないだろ」

京太郎「ってか、返せよ…!」

淡「やだもん!」

淡「あ、ここかっ」グイッ

見るからに高級そうなCOMPを壊されては堪らない。
そう思って手を伸ばした俺の前で大星さんがチップの挿入口を見つけてしまう。
そのまま乱暴に押し込んだ彼女にすげぇ嫌な予感がしたが、どうやらCOMPが思いの外、頑丈であるらしい。
押し込まれたメモリーチップを吸い込むように飲み込み、情報を読み取る。
そんな画面を大星さんは勝ち誇ったように俺へと向けて… ――



名前 大星淡
Lv23
種族 デミメデューサ
タイプ いわ/どく
特性1 あまのじゃく(能力の変化が逆転する)


HP 170/170
MP 27/27

こうげき90
ぼうぎょ100
とくこう40
とくぼう60
すばやさ40

技1 へびにらみ 消費7 ノーマル 変化 命中100 相手を麻痺にする 
技2 かなしばり 消費3 ノーマル 変化 命中100 相手が最後に使った技を4ターン使用不能にする
技3 がんせきふうじ 消費 岩 物理 威力65/命中95 相手の素早さを一段階下げる(100%)
技4 ポイズンテール 消費 どく 物理 威力50/命中100 相手を毒にする(10%)急所に当たりやすい(30%)


京太郎「(…これは…)」

大星さんの能力を一言で言い表すなら鈍足耐久型アタッカーだろう。
足が鈍い代わりに物理には強く、攻撃力だってそこそこある。
ただ攻撃するだけじゃなく変化技で相手の妨害をする事が出来るのも大きなメリットだ。
反面、特殊には少し弱いが、その辺は特殊にはめっぽう強い憧で補ってやれば良い。

京太郎「(…何より一番はほのおに強いって事だよな)」

憧と智葉にとって天敵に近いほのお属性。
それは俺のパーティにとって課題にも近い問題だった。
前回は憧が雨乞いを覚えてくれたからどうにかなっていたが、今回はどうなるか分からない。
それを思えば、ここで大星さんの加入は有難い話ではあるのは確かだろう。

京太郎「(…問題は美穂子との相性が悪いって事だが…)」

美穂子の戦術は自分でバフを積んでから、その力を他の仲間に分け与える事だ。
しかし、その戦術が特性である、あまのじゃくによって機能しなくなってしまう。
代わりに相手のデバフにも強いから決してデメリットという訳ではないが、使い方は多少、考えなければいけないだろう。

淡「ね、ね、どう?私ってば強いでしょ?」

淡「私の助け、あった方が良いでしょ?」

京太郎「…それは」

そうやって考え始めた俺の横で大星さんがキラキラとした目を向けてくる。
まるで褒めて欲しいと尻尾を振るう小型犬のようなその姿に俺は言葉を詰まらせた。
確かに大星さんはいてくれた方が苦手なタイプが補完出来るし、有難い。
でも、俺には弘世さんとの約束があって…… ――


京太郎「…弱いな」

淡「…え?」

京太郎「智葉や憧のデータを見てみれば分かるよ」スッ

淡「…え、何コレ」

大星さんがそう言うのは二人が自分とは比較にならないほど強いからだろう。
既に二回目の進化を終えた二人はレベルだけでも大星さんと二倍近く離れている。
その上、ステータスだけ見ても、大星さんとは比べ物にならないほど強い。
出会った当初に彼女を一撃でのした智葉など今の大星さんでは文字通り歯がたたないだろう。

京太郎「…分かったか?」

京太郎「俺や皆が戦っているのはこれでも苦戦する事があるレベルなんだ」

京太郎「大星さんはもう足手まといでしかない」

淡「…っ!」

そう断言する俺に大星さんは怒りを込めた視線を向けた。
キッと睨みつけるようなそれは、しかし、何も言わない。
それはきっと自分でも智葉達とレベルが離れすぎているのを自覚しているからなのだろう。
文字通り、格が違う相手に、大星さんは悔しいと思いながらも何も言えないんだ。

京太郎「(…正直、心苦しいけど…)」

こうやって俺の力になろうとしてくれている彼女は色々と考えていたはずだ。
命のやりとりをする場所に行くのだから、間違いなく不安もあっただろう。
そんな大星さんの気持ちは嬉しいが、さりとて、ここで甘い顔をする訳にはいかない。
彼女の性格上、ここで思いっきり突き放さなければ、無理やり、ついてくる事だって考えられるのだから。

京太郎「だから、悪いけど…」

淡「…もう…良い」

京太郎「大星さん」

淡「良いっ!この私が折角、言ってあげてるのに…!」

淡「アンタの手助けになるように言ってやってるのに…そんな事言うんだったら!!」

淡「もう良いもん!アンタが後悔しても知らないから!!」ガタッ

淡「あ、アンタなんか野垂れ死んじゃえ!ばーかっ!!」ダッ

京太郎「あ…」

そう言って俺に背を向けて部屋を飛び出していく大星さんを俺は追いかける事が出来なかった。
はっきりと現状を突きつけるのが大事だとは言っても、俺の言葉は間違いなく彼女を傷つけてしまったのだから。
そもそも言い訳する言葉も、前後を撤回する理由も見つからない以上、追いかけても大星さんを余計に傷つけるだけだろう。

京太郎「…ふぅ」

けれど…言い訳をするならば、彼女を傷つけるつもりなんてなかったのだ。
大星さんがどれだけ辛い思いをしてきたかは俺も知っているのである。
出来れば傷ついて欲しくはない。
弘世さんとの約束もあるし、何より、俺自身、彼女のことを好ましく思っているのだから。
普段、彼女で遊んでいる分、平穏の中に居て欲しいという気持ちは強かったのである。
でも… ――

京太郎「…仕方ない…よな」

自分に言い聞かせるようなその言葉に俺はそっと肩を落とした。
勿論、そんな言葉ひとつで胸の中の苦々しい感情が消える訳じゃない。
どれだけ言い訳しても俺が彼女を傷つけてしまった事実は変わらないのだから。
そんな中で俺が出来る事は… ――

京太郎「…とりあえず洗い物するか」

そう言って立ち上がった俺は食べかけのまま残されたケーキの皿を持ち上げ、そのままシンクの方へと歩き出したのだった。



System
大星淡の好感度は変化しませんでした




―― まぁ、そんな風に落ち込んでいても時間は過ぎ去っていく訳で。

大星さんが来た分の片付けを終えて、俺は一つ息を吐いた。
自分の気持ちを仕切り直そうとするそれに、応えるものは相変わらず誰もいない。
まだ智葉たちが検査を始めて一日も経っていないのだから当然ではある。
けれど、今の俺には彼女たちに会いに行く気力もなかった。

京太郎「(…ふて寝でもするかなぁ)」

魔物になってから俺はろくに睡眠を取っていない。
数日間ぶっ通しで恋人とセックスし続けるなんて割と何時もの事なのだから。
人間時代の睡眠時間に比べて1/3以下になっていてもおかしくはないくらいではある。
それでも疲れないどころか、こうして健康そのもので生活は出来るのだけれど。
ただ、肉体的な健康とは無関係に睡眠がほしいという時はあるのだ。

京太郎「(まぁ、ちょっと早いけど)」

まだ日は落ちてはおらず、夜と言うには早すぎる。
そんな時間に眠るのもなんだか不健康な気がするが、こればっかりは仕方がない。
どの道、智葉たちが帰ってきたらきっと週単位で離してもらえないだろうし、今からでも英気を養っておこう。
そんな風に言い訳しながら俺の足がベッドへと向かった瞬間… ――

―― ピンポーン

京太郎「ん?」

聞こえてきたインターフォンの音に俺は足を止めた。
本日二度目のそれに一瞬、俺の脳裏に大星さんの姿が過る。
けれど、あんな風に喧嘩別れな感じで立ち去った彼女がこうしてすぐ戻ってくるはずがない。
きっと大星さん以外の誰かだろう。

京太郎「(…でも、珍しいな)」

基本的に俺達の部屋に誰かが訪ねてくる、という事はあまりない。
きっと何時でも発情セックスしてる可能性がある恋人同士の部屋だから、と遠慮しているのだろう。
俺達に用がある場合は大抵、メールや電話などで済まされる事が多かった。
けれど、そんな日常とは違い、今日は二人もこの部屋を訪ねてきている。
千客万来だな、とそんな事を胸の中で思い浮かべながら、俺は踵を返し、部屋の扉を開いた。

春「…あ」

京太郎「え?」

瞬間、俺の視界に入ってきたのは巫女服姿の春だった。
あの迷宮で出会った時となんら変わっていないその姿。
特に包帯などが巻かれている訳じゃない辺り、身体に異常などはなかったのだろう。
それに強い安堵を感じながらも、俺は言葉に詰まってしまった。


京太郎「(…やっべ。どうしよう)」

まさか春がもう起きているとは思わなかったのである。
携帯にも春が意識を取り戻したという連絡はなかったし、てっきりまだ昏睡状態のままだと思っていた。
そんな彼女がこうして動いているだけでも驚きなのに、春は今、俺の部屋の前に立っているのである。
明らかに俺達に対して何か用があるであろう彼女に、俺はどう反応すれば良いのか分からない。

京太郎「(だって、記憶がないだろうしなぁ…)」

ここで春と反応するのは簡単だ。
少なくとも俺にとって彼女は初対面の相手ではないのだから。
けれど、これまで通りであれば、春は迷宮での出来事をほとんど忘れてしまっているのである。
それなのにいきなり目の前の男から下の名前で呼ばれたら面食らうだろう。

春「貴方がキョウチャン?」

京太郎「…え?あ…うん」

春「…そう。やっぱり」

そんな事を思って内心、狼狽えていた俺に春の言葉が届く。
決して間違いではなかったから、つい反射的に頷いてしまったが…一体、どうしてその名前が彼女から出てきたのだろうか。
その名前は俺にとっては幼馴染とその姉だけの特別なものである。
あの魔物にとりつかれた春も何故かそれを口にしていたけれど…最後は俺の事を須賀くん、と呼ぶようになっていた。
その記憶を失った今、俺の事を再びそう呼んでいると言う事は、やっぱり…… ――


京太郎「…えっと、とにかく…部屋の中、入りませんか?」

京太郎「俺も色々と聞きたい事があるし…折角、訪ねてきてくれたのに立ち話って言うのも失礼ですから」

春「…ん。お邪魔します」

俺の促しに春は小さく頷いてから部屋へと足を踏み入れる。
スタスタと落ち着いたその歩みには、見知らぬ男の部屋への警戒心はなかった。
俺の事をどれだけ聞いているのかは分からないが、ある程度は信用してくれているらしい。
それに一つ安堵した瞬間、春が小さく顎をあげた。

春「……」クンクン

京太郎「どうしました?」

春「…………匂い」

京太郎「匂い…ですか?」

春「…キョウチャン以外の匂いがする」

春「凄いエッチな匂い…」

京太郎「す、すみません…っ!」

俺にとってはもう感じ慣れて半ば麻痺したものだけど、毎日毎日セックスしまくりだもんなぁ。
そりゃあ、智葉たちが居なくてもそういう匂いがするくらいに染み込んでいるだろう。
大星さんとかはもうまったく気にしてない感じだったから、俺も今までまったく意識していなかったけど!!
出迎える前にリセッシュの一つでも使っておくべきだったか…!?

京太郎「…やっぱ外で話しましょうか。代金は俺が出しますし」

春「良い」

京太郎「いや、でも…」

春「…良い。嫌な匂いじゃないし」

京太郎「そ、そう…ですか?」

…まぁ、春がそう言ってくれるなら良いんだけど…。
でも、嫌じゃないって…色々と大丈夫なんだろうか。
セックスの匂いに対する忌避感がないって…それ結構、魔物化が進行しているような気がするんだけれど…。
さっきからキョウチャンと俺を呼んでいるし…やっぱり以前、取り付いた魔物の影響は今もしっかり残っているのかもしれない。

京太郎「とにかく、お茶淹れますね」

春「…ん」

まぁ、その辺の事は後で聞かせてもらえるだろう。
今はともかく、彼女に対して失礼がないようにお茶を淹れないとな。
…後はお茶請けとしてお菓子を出して…っと。
巫女さんだし、とりあえず和菓子で良いよな…?


京太郎「…で、身体の調子はどうですか?」

春「…うん。問題はない」

京太郎「本当に大丈夫です?」

京太郎「心配させるからって強がってませんか?」

これまで助けてきた人たちと春とはまた違う。
彼女は明らかに自分の身の内に巣食う魔物の影響を受けているんだ。
そんな春がまったく問題がないとは思えない。
少なくとも俺が出迎えてから、こうしてお茶と共に席につくまでの数分の間にも魔物化が大分、進行している傾向が見える訳で。
彼女自身、それを意識していない訳ではないだろう。

春「…ううん。本当に大丈夫」

春「寧ろ、起きる前よりも身体が軽くて楽なくらいだから」

京太郎「…それなら良いんですけど…」

春「うん。…心配してくれてありがとう」

京太郎「いえ、それくらい当然ですよ」

…まぁ、ここまで言って、大丈夫というのならばきっと大丈夫なんだろう。
とりあえずコレ以上、踏み込む事は、俺には出来ない。
今の俺は滝見さんにとってほとんど初対面も同然だからなぁ。
幾ら自分を助けた相手とは言え、ガンガン突っ込まれるのは不愉快だろう。
まぁ、それはさておき… ―― 

京太郎「でも、そうやって動けるくらいに回復したみたいで何よりです」

京太郎「混乱とか大丈夫ですか?俺で良ければ出来るだけ質問にも応えますけど…」

春「…混乱?」

京太郎「……え?混乱…してません?」

…あれ?俺に連絡が来る前に動いてるみたいだから、てっきりまだ世界の変化についてこれていない時期だと思ったんだけど…。
もしかしてそういうの全部受け止めきってしまったのか…?
もし、そうなら大物としか言い様がないな。
俺なんてここまで受け入れるのに数年かかったくらいなのに。
やっぱり巫女さんって凄い、改めてそう思った。

春「…していると言えばしてるけど…」

京太郎「あ、じゃあ、なんでも良いんでそれを言ってください」

京太郎「分かりやすく説明する自信はないですけど、包み隠さず応えますから」

春「……じゃあ、貴方は誰?」

京太郎「…え?」

…まさかそんな哲学的な問いが来るとは思わなかった。
勿論、俺は須賀京太郎ではある。
けれど、それをそのまま口にしたところで十二分に伝わったりしないだろう。
そんな記号で理解してくれるのは、あくまでも俺の事をよく知っている人たちだけだ。
そして、彼女は俺の事を殆ど知らず、だからこそ、こうして問を投げかけてきている。
そんな春に返すべき言葉は、やっぱり… ――

京太郎「貴女の助けになりたいと思っている男です」キリッ

まぁ、ちょっと格好つけたけれど、これが一番、近い。
そもそも春は俺の事を覚えていないんだろうしなぁ。
それなのに友人だの恋人だのと言っても、困惑するだけだろう。
それよりも自分の立ち位置と思いをしっかりと定義した方が良い。

春「…私の助けに?」

京太郎「えぇ。まぁ…その、突然、何を言っているんだって感じかもしれませんけど」

京太郎「知っての通り、俺も貴女の心に触れた訳ですから」

春「知らない」

京太郎「…え?」

春「…私の心に触れたってどういう事?」クビカシゲ

…あるぇ?
これって…もしかして、なんだか意見の行き違いがあるっぽい?
と言うか…そもそも春は救出された時どういう状況だったのか説明されていないのか…?
いや、でも、説明されてなかったら、こんなところには来ないと思うし…。
一体、どういう事なんだろう…?

京太郎「えっと…じゃあ、俺の事ってどう聞いてます?」

春「…聞いてない」

京太郎「えっ」

春「そもそも…私、何も説明されていない」

春「だから、さっきもキョウチャンは誰って…そう聞いた」

京太郎「じゃあ、貴女はどうしてここに?」

春「…私の中の何かが呼んでた」

春「あっちにキョウチャンがいるって」

春「私の大事な人がいるって」

春「…だから、私、起きてすぐ部屋を抜けだして…キョウチャンに会いに来た」

京太郎「あー…」

…つまりはアレか。
春は起きて、本来、受けるべき説明とか全部、すっ飛ばしてこっちにやってきたと。
そりゃあ、俺が誰かも分からないし、心に触れたなんて言われてもピンと来ないよな!
って、そうじゃない…そうじゃなくって…・・!!


京太郎「異常ありまくりじゃねぇかっ!」

春「…そうなの?」

京太郎「そうなんだよっ!!」

京太郎「つーか、それならまず検査して貰って…えぇっと、携帯は…」

とにかく、政府の人に連絡して春が起きた事を伝えないと。
説明だけなら俺も出来るけど、検査とかも色々あるだろうしな。
特に春は今までとはまた違った形で変化している訳だし。
智葉たちと一緒にちゃんとした形で検査して貰った方が良い。

春「……キョウチャン」グッ

京太郎「あぁ、大丈夫。すぐ人を呼んで、色々と検査して貰うから」

春「…いや」

京太郎「え?」

春「…私、それよりももっと貴方の事が知りたい」

京太郎「…春?」

春「…ぁ」

思いもよらぬ春のアピールに俺は思わず彼女の名前を呼んだ。
それも仕方のない事だろう。
何せ、彼女はあの迷宮で頑なに俺達に何かを求めるという事をしなかったのだから。
自分はそんな事をしてはいけないとそう思い込んでいた春の始めての要望。
それに驚きを感じたのは、俺だけではないのだろう。

春「わ、私…なんで…」

春「ち、ちが…私……こんな…こんな事しちゃいけないのに…」フル

京太郎「…良いんだよ」スッ

春「あ…」

俺が触れた彼女の手は震えていた。
まるで寒空の下にいきなり放り出されてしまったような反応。
それはきっとそうやって自分が何かを求める事に忌避感があるからなのだろう。
けれど、彼女がそれに忌避感を感じる必要はまったくない。

京太郎「俺に…いや、俺達に対してはそうやって自分を出して良いんだ」

春「でも…」

京太郎「…『良い子』じゃないと嫌か?」

春「…っ」

京太郎「…ごめんな。さっきも言った通り、俺、大体、知ってるんだよ」

京太郎「春の過去に何があったか、そしてどうやって生きて来たか」

京太郎「覗こうと思って覗いた訳じゃないけど…そういうのが見える場所に、春はずっと眠っていたから」

正直、それだけでも俺に対する警戒心を覚えられても仕方のない事だと思う。
自分の知らないところで過去や感情を覗き見されたなんて気味が悪く思って当然なのだから。
けれど、ここでそれを隠したところで、俺の言葉は彼女には届かない。
ようやくその本心を見せ始めた彼女が、再び自分の殻に閉じこもらないように、こっちも打って出なきゃいけないんだ。

京太郎「正直、気持ち悪いと思う」

京太郎「でも、俺はだからこそ、春の助けになりたいって思ったんだ」

京太郎「春に頼られたいって…そう思ったんだよ」

京太郎「だから、そうやって無理に抑えこまなくても良い」

京太郎「我儘だなんて思わずに俺にぶつけてくれれば良いんだよ」

春「…良い…の?」

京太郎「あぁ。どんな我儘でも俺は受け止めてみせる」

京太郎「それが春の本当にしたい事ならば、俺は最大限、力になるからさ」

これが大星さん辺りであれば、こんな事は口が裂けても言えない。
けど、春は今まで自分の気持ちを押し殺してずっと過ごしてきたんだ。
そんな彼女の我儘なんて可愛らしいものだろう。
ちょっと大げさに多すぎたかもしれないが、春の信頼を勝ち取る為にもこれくらいハッキリ言い切ってしまったほうが良い。

春「……」

京太郎「なんて…ちょっと臭かったかな」スッ

京太郎「まぁ、そういう訳だから…今は何でも質問してくれて構わないぞ」

京太郎「勿論、春の為にも検査の人は呼ぶけど…その間も俺はずっと側にいるからさ」

京太郎「俺の事を知りたいって言うなら、3サイズでもなんでも赤裸々に答えるぞ」

春「…………」

…って思ったんだけど…これは外したか…!?
冗談めかして言ってみたが、クスリともしないし…!!
いや、元々、春はそういう表情の変化が薄い人ではあったけれども!!
だけど、この状況でまったくの無反応はちょっときついっていうか、なんて言うか…!!

京太郎「え、えっと…」

春「…敬語」

京太郎「え?」

春「…敬語使わなくなったのも、私の事を知っているから?」

京太郎「あー…ごめん、馴れ馴れしかったか?」

春「…ううん。嬉しかった」

春「…春って呼んでくれた事も…始めてなのに何故かしっくり来て…」

春「私…キョウチャンにそう呼ばれた事…あったの?」

京太郎「まぁ、数回だけどな」

春「…そう」

……ふぅ。
とりあえず春は俺の言葉を嫌がっていた訳じゃないらしい。
少なくとも得心したように頷く彼女の表情に嫌そうなものは浮かんでいるようには見えなかった。
表情の変化に乏しい春だから、まったくの油断は出来ないけれど、ここで俺に対する反発が出ない辺り、安心しても良いだろう。

春「…じゃあ、やっぱりキョウチャンは私にとって大事な人だったんだ…」

京太郎「んー…それはどうだろうな…?」

春「え?」

京太郎「そもそも俺と春が一緒に居た時間って一日もなかったしなぁ」

京太郎「何より、春は俺の事、キョウチャンなんて呼んでなかったよ」

京太郎「俺の事は須賀君って呼んでた」

まぁ、あの炎のような魔物に取り憑かれてからは基本、京ちゃん呼びだったけれど。
それは彼女と俺が親しくなったがゆえの変化ではなく、あの魔物に影響されてのものだった。
それを彼女の意思としてカウントするのは、あまり相応しくはないだろう。
春が消える瞬間、俺の事を『須賀くん』と呼んだのだから、そっちの方こそ、彼女の本来の呼び方だとそう思うべきだ。

京太郎「だから、きっと春が今、感じてるそれは春本来のモノじゃないと思う」

京太郎「…まぁ、その辺りはまた色々とややこしくて説明がしにくいんだけどさ」

京太郎「それにまぁ…俺の事覚えていない春にとってはほぼ初めて会った相手な訳だし」

京太郎「あんまりそれに引きずられない方が良いと思う」

春「…ん」

俺の言葉に春は素直に頷いた。
そこには迷宮で対峙した時のような頑なさはない。
やはり迷宮での事を忘れたとしても、そこで交わした言葉が完全になかった事にはならないのだろう。
それに安堵した瞬間、俺はひとつしなければいけない事を思い出した。

京太郎「…じゃあ、改めて自己紹介だな」

春「自己紹介…?」

京太郎「あぁ。だって、春はまだ俺の名前も知らないだろ?」

春「…そう言えばそうだった」

京太郎「まぁ、ちょっと今更な気もするけどさ」

京太郎「…俺は須賀京太郎。よろしくな、春」スッ

春「…滝見春。よろしく」

差し出した俺の手に春が応えるように手を伸ばしてくれた。
おずおずと俺へと触れるその手はあの時、俺を突き飛ばして助けてくれた時と変わらない。
けれど、もう心が曇る事はなかった。
ようやく差し出されるようになったその手を、これから大事にしていこう。
そう心に決めながら俺は滝見さんとしっかりと握手して… ――


―― それから俺はこの数年の間に起こった変化を彼女に伝え始めたのだった。



System
滝見春の好感度が20になりました → <<…本当に信じて良いの?>>





―― それから数日して智葉たちは帰ってきた。

検査の結果、二人の進化には何の問題点もないらしかった。
少なくとも身体的には健康そのもので、類を見ないほど強靭なものになっているとか。
具体的なアレコレも説明を受けたが、学のない俺にはまったくちんぷんかんぷんだった。
まぁ、俺からすれば二人に異常がないのであれば問題はない。
それよりももっと遥かに重要な問題が俺にはあって… ――

―― …絞られました、そりゃもうこってりと。

数日間の別離。
それを我慢出来るほど皆は理性的でもなんでもない。
説明の最中からしてウズウズしてたのが丸わかりな彼女達は部屋に帰ってすぐ俺へと襲い掛かってきた。
4人がかりで服を脱がせ、そのまま舐めたり、身体を擦り寄らせたりする恋人たちに俺も我慢出来なくなって…… ――

京太郎「(…で、結局、何日目だろ、これ…)」

正直、そこから先はあんまり記憶が残っていなかった。
俺自身、皆と離れていて、寂しかった、というのも無関係ではないのだろう。
何時も以上の熱心さでセックスを強請る皆に夢中になって腰を振るっていた。
結果、何度、外が暗くなり、そして空が白んじたのかさえ明白ではない。
けれど、それを確かめようにも俺の身体は心地よい倦怠感に満たされ、ろくに動かせなかった。


京太郎「(それに美穂子がいるしなぁ…)」

美穂子「…すぅ」

かつて俺が憧れた女性は今、俺の胸板に全身を預けるようにして微かな寝息を立てていた。
すうすうと穏やかで可愛らしいそれはどうしても離したいと思えないものだった。
寧ろ、その柔らかな肢体が押し付けられているのを感じるとムスコがまたムクムクと大きくなってきてしまうというか。
身体さえ動けば、そのまま襲いかかってしまいたくなるくらいに興奮する。

京太郎「(…でも、今回の美穂子は激しかったよなぁ)」

基本的に美穂子とのセックスはあまり激しく動くものにはならない。
何もかも受け止めてくれるような彼女の肉穴は挿入れているだけで力が抜けていく魔性のモノなのだから。
魔物となってチンポも色々と強化されてはいるが、未だに美穂子のオマンコには中々、勝てない。
どれだけ興奮で頭が一杯でも挿入れた途端に腰が甘く蕩け出し、意識が彼女へと甘えるものに変わってしまうのだ。

京太郎「(普段はそんな俺を抱きしめるくらいなんだけどさ)」

甘える俺を抱きしめるくらいで美穂子は基本的に反撃も何もしてこない。
ただ俺のチンポにアヘり、淫語をまき散らすだけだ。
けれど、今回の美穂子は俺へと馬乗りになったりと自分から責めてきていたのである。
それはきっと彼女が途中で冷蔵庫の中に入っていた媚薬入りのケーキを食べたから、だけではないだろう。

京太郎「(…やっぱり思うところはあるんだろうなぁ…)」

憧に引き続き、智葉も進化した。
けれど、二番目に俺の恋人になった美穂子は未だ進化する事が出来ていない。
それは勿論、彼女の分の指輪がまだ未完成という事もあるのだろう。
しかし、検査ついでの実験で彼女にハートのウロコを与えても、まったく光る事はなかった。
憧や智葉には反応があったのに、美穂子と久にはまるで何も起こらなかったのである。

京太郎「(勿論、その原因は分からないけど…)」

ただ、美穂子はきっとショックだったんだろう。
自分より後に入った後輩が進化して、そして友人が進化して。
自分がそれに置いて行かれて、ついていく事が出来ていないという現状が。
だからこそ、美穂子は俺に対して何時も以上に、そして皆以上に求めてきた。
その結果、彼女は他の皆が起きている時間にも関わらず、未だこうして寝息を立てているままなのである。

京太郎「(普段は誰よりも早く起きるのに…)」

未だ夢の中で眠る美穂子はきっとそれだけ疲れているのだろう。
普段は騎乗位なんてしない癖に、思いっきりガクガクになった腰を動かしていたのだから。
何処か思いつめたその様子に皆も何か感じるところがあったのだろう。
このだだっ広い部屋の中には今、俺と美穂子しかいなかった。


京太郎「…ごめんな」

美穂子「ん…ぅ…♪」

そう言葉に出して彼女の髪を撫でれば心地よさそうな声が帰ってくる。
一体、どんな夢なのかは分からないが、きっと今の美穂子は幸せの中にいるのだろう。
それだけが唯一の救いだとそう思いながらも、俺は笑みを浮かべる気にはなれなかった。
幾ら夢の中で幸せであっても、現実での問題が消える訳ではない。
彼女が思いつめる元凶である俺としては、まずそれを取り除く方法を考えなければいけないのだ。

美穂子「ん…ふ…ぅ…ご主人様ぁ…♥」

京太郎「あ、起こしちゃったか?ごめんな」

そんな風に考え事をしながら美穂子を撫で続けていた所為だろうか。
俺の目の前で彼女の瞳がゆっくりと動き、色違いの双眸が俺へと向けられた。
何処か胡乱なそれは、輝きこそ鈍っているものの、その美しさは変わらない。
こんなに綺麗なんだから、もっと見せても良いと思うんだけどなぁ。
その辺は彼女の中で強いコンプレックスなのが分かるから、あまり口には出せないんだけれど。

美穂子「いい…ぇ…らいじょうぶ…ですぅ…」コテン

美穂子「…あれ…?みなしゃんは…ぁ…?」

京太郎「皆、色々、用事があるってさ」

京太郎「今は俺と美穂子の二人っきりだよ」

美穂子「ごひゅじん…しゃまぁ…♥」

俺の言葉に美穂子が嬉しそうな声をあげる。
寝起きの所為か、何処か舌足らずなそれは聞いているこっちも嬉しくなりそうなくらいだ。
それを笑顔として顔に浮かべながら、俺はゆっくりと美穂子の事を撫で続ける。
何時も頑張ってくれている彼女を慈しむようなそれに彼女は甘く声をあげながら、俺の身体の上でもモゾモゾと動いた。

美穂子「ご主人様の固くなってます…♪」

京太郎「そりゃ美穂子が裸で上に乗ってたらなぁ」

美穂子「…あっ。ご、ごめんなさい…っ」バッ

京太郎「あ、いや、離れなくても良いのに」

美穂子「で、でも、私…」

京太郎「良いから。今日は俺に甘えとけって」グイッ

美穂子「きゃんっ♪」

京太郎「何時も頑張ってるんだから、たまにはご主人様に良いところ見させてくれよ」

美穂子「ひゃ…ふぅ…♪」

そう言って無理やり美穂子を引き戻しながら俺は彼女の事を抱きしめる。
俺の腕の中で丁度、収まりきる美穂子の身体はそれに抵抗しようとはしなかった。
強引な俺が嬉しいのだと言わんばかりにその口から甘い吐息を漏らしている。
きっと後もうちょっと押したら、美穂子の方がセックスを我慢出来なくなるだろう。
そう思うとちょっと押したくはあるけれど、流石に皆が気を遣ってくれているのにセックスと言うのはちょっとなぁ…。

美穂子「…ご主人様は良いところばっかりです」

京太郎「ん?」

美穂子「優しくて暖かくて…誰かのために必死で…」

美穂子「ちょっぴりエッチなところもあるけど…それも魅力的なくらい…素敵な方です」

京太郎「はは。ありがとうな」

正直、そこまで持ち上げられるのは違和感がある。
自分ではそこまで立派な奴だとは俺はまったく思っていないんだから。
何時もその場その場で必死になっているだけだ。
けれど、恋人である彼女にはきっと俺がそう見えているのだろう。
ならば、ここで俺がするべきはその差異を指摘する事じゃなく、そんな格好良い男になれるように努力する事だ。

美穂子「だから…きっと…」

京太郎「…え?」

けれど、そう思った瞬間、美穂子の口から暗い声が漏れる。
俺に対する情熱的なそれではなく、何処か冷めたその言葉に俺は思わず疑問を返した。
そんな俺の言葉に美穂子は中々、応えない。
俺の胸に頭を預けたまま、そっと視線を反らし、その表情に逡巡を浮かべる。

美穂子「…ご主人様…ごめんなさい」

京太郎「なんで謝るんだよ」

美穂子「だって、私…全然、至らない事ばっかりで…」

京太郎「いや、美穂子が至らないなんて言ったら、俺全国の男に刺されると思うぞ」

と言うか、俺が刺す。
何せ、美穂子は昔の俺にとってまさに憧れと言っても良い存在だったのだから。
そんな彼女が至らないだなんて言う贅沢者は刺されても文句を言えないと本気で思うくらいだ。

美穂子「…だけど、私、進化出来ません」

美穂子「智葉さんや憧さんはご主人様の為に強くなっているのに…」

美穂子「私は……どうしても進化出来なくて…」

美穂子「きっと…それはご主人様の所為ではないんです」

美穂子「だって、二人はもう進化しましたから」

美穂子「だから…問題があるのは…きっと私の方で…」

美穂子「敵もドンドン強くなっているから…私も強くならなきゃいけないのに…」

京太郎「…美穂子」

思いつめたその言葉に俺は何を返せば良いのか判断出来なかった。
大体、予想はついていたが、自分は至らないとそう思うくらい追い詰められているなんて思っていなかったのである。
きっと今の美穂子にとって、自分が欠点の塊に思えるのだろう。
ドンドンとか細くなっていくその声には自責の念が強く浮かんでいた。

美穂子「…ご主人様、教えてください」

美穂子「私には…何が足りませんか?」

美穂子「私は…どうすればもっとご主人様のお役に立てますか…?」

京太郎「…それは」

その声は俺へと縋るもののようになっていた。
きっと彼女にはどうすれば良いのか分からないのだろう。
自分に何かが足りないのは分かっているけれど、それが何なのかまるで見えてこない。
けれど、ライバル達はドンドン先に進んで、もしかしたら久にも先を越されてしまう可能性だってある。
焦りが不可解を生み、不可解が焦りを生む。
そんな悪循環に囚われているのであろう彼女に俺は… ――


京太郎「美穂子に足りてないものなんてない」

美穂子「でも…実際、私は進化出来なくて…」

京太郎「そもそも美穂子も同じように進化出来ると決まった訳じゃないだろ?」

まだあの♥のウロコによる進化はどういう原理なのか分かっていないままなのだ。
魔物化とはまた違い、肉体を一つ上のランクに『進化』させる事くらいは判明しているが、それがどういう条件なのかすら謎のままなのである。
まだまだサンプルが少なすぎて、分からない事だらけだが、美穂子には智葉たちと同じように進化する素質がない可能性だってあるのだ。
それなのに、進化出来ないという理由だけで自分を追い詰めるのは、少々、焦り過ぎだろう。

京太郎「大丈夫。美穂子が良くやってくれているのは俺はちゃんと良くわかってるからさ」

美穂子「…本当…ですか?」

京太郎「あぁ。じゃなきゃ、俺の生活を美穂子に預ける事なんてしないって」ナデ

そう。
俺の生活はもう殆ど美穂子任せと言っても良いものなのだ。
掃除から洗濯、食事まで家事と呼べるようなものは全て彼女が担当してくれている。
それはきっと美穂子にとってはメイドとして当然です、とそんな受け止め方をするものなのかもしれない。
けれど… ――


京太郎「生活を預けるってさ、結構、大変なものだと思うんだよな」

京太郎「その人がいなきゃ生活出来ない、生きていく事が出来ないって訳だから」

京太郎「一日とか二日とかの短期間ならともかく…美穂子の場合、ずっとな訳だし」

京太郎「俺はもう美穂子に依存しまくってるよ」

京太郎「実際、俺は数日間一人で暮らしてたけど…やっぱ美穂子がいないとダメだと何度も思ったし」

その言葉は嘘じゃない。
俺だってある程度、家事は出来るが、やはり美穂子には及ばないのだ。
何より、自分一人だとどうしても色々と手を抜いてしまう。
美穂子がやってくれるのに慣れてしまった所為で、中々、そういった雑事へのやる気が起こらなくなってしまっていたのだ。

京太郎「美穂子は自覚ないかもしれないけど…もうそれくらい俺を夢中にしてるんだよ」

京太郎「家事の腕一つで男を一人籠絡させてるんだ」

京太郎「そんな美穂子に足りないものなんてある訳ないだろ」

京太郎「何から何まで美穂子は完璧な俺の恋人で…そしてメイドだよ」ナデナデ

美穂子「…あ」ジワ

そう断言した俺に美穂子は短く声を震わせた。
今にも泣きそうなその言葉に、俺は何も言わない。
ただただ彼女の身体を撫で、色んな感情が沸き上がっているであろう美穂子を慰め続ける。
そんな俺の上で彼女は小さく肩を震わせ、俺の胸に小さいしずくを幾つも零した。

美穂子「…ご主人様」

京太郎「ん?」

美穂子「…私、ご主人様はやっぱり素晴らしい人だと思います」

京太郎「…本当に素晴らしい奴だったらこんな風に美穂子を泣かせたりしないんじゃないかな?」

俺の胸で涙を浮かべる美穂子の言葉に、今度は俺の口から自嘲めいた言葉が漏れる。
本当に俺が彼女の言うような素晴らしい奴なら、こんな問題は起こらなかったのだ。
きっと最初から美穂子に対してフォローして、ここまで思いつめさせたりはしなかっただろう。
けれど、俺はこうして問題が表面化してからようやくそのフォローに動く程度の男だ。
そんな男が美穂子から『素晴らしい』という評価を貰うに値するとは到底、思えない。

美穂子「そうかもしれません。でも…きっとどれだけ素晴らしい人でも、ご主人様には敵わないと思います」

美穂子「だって…私にとってご主人様は世界で一番の素晴らしい人なんですから」

美穂子「ご主人様に恋してよかったって…愛されて幸せだったってそう思うくらいに…」

美穂子「私も…ご主人様にゾッコンなんですよ…♥」スッ

京太郎「美穂子…」

美穂子「…だから、もし、ご主人様が私の事を完璧だとそう言ってくれるのならば」

美穂子「ご主人様はそんな完璧な私を虜にするくらい素晴らしい人になりませんか?」

京太郎「それは…」

…確かに美穂子の論理は決して間違っていない。
俺が完璧だとそう評した彼女には、つまりダメンズウォーカーと言うような欠点がないという事なのだから。
そんな美穂子が惚れ込むのは、彼女に相応しい立派な『ご主人様』しかない。
そう結論づける美穂子の言葉を正しいと思いながらも、けれど、俺は中々、肯定の言葉を返せなかった。


美穂子「…私、そんなご主人様に相応しいメイドになりたいです」

美穂子「もっともっとご主人様に頼って貰えるような女に」

美穂子「ご主人様の寵愛を受けるに値すると思えるようなメスに」

美穂子「…そしてご主人様をもっともっとダメに出来るようなメイドに」

美穂子「そんな私は…イケナイメイドですか…?」

そして、彼女は俺の言葉を待たない。
代わりに俺へと向けられるのは、何処か誘いにも似た甘い問いかけだった。
声のトーンを低くし、俺をジッと見つめる美穂子の瞳にも強い欲情が浮かんでいる。
きっとさっきの俺の言葉が『最後のひと押し』になったのだろう。
涙で濡れていたはずの瞳に期待と興奮を浮かばせ、じっとこっちを見つめる美穂子に俺が逆らえるはずがなかった。

京太郎「…んな訳ないだろ」ギュッ

京太郎「ご主人様の気持ちを汲んでくれる最高のメイドだよ」

美穂子「ふぁ…あぁ…♥」

そのまま強く抱きしめて、俺は彼女の言葉を肯定する。
美穂子にもっと頼りたいと、美穂子をもっと愛したいと、美穂子にもっとダメにされたと。
そんな肯定混じりのそれに彼女の背筋がブルリと震えた。
まるで感極まったような力強いそれに美穂子の足が応えるように俺へと絡みついてくる。
胸と同じく肉付きの良いその足が下半身を撫でる感覚に、ついついムスコの方へと意識が引っ張られてしまうのだ。

美穂子「…では、そんなメイドとなる第一歩として…ご主人様の今、一番したい事をさせてあげなければいけませんね…♥」

京太郎「一番、したい事…か。美穂子は分かるか?」

美穂子「はい…♥だって…さっきから私のお尻の間でピクピクってオチンチン揺れてるんですから…♪♪」

美穂子「何時もと同じ…ううん…♥何時もよりも元気なご主人様…ぁ♥♥」

美穂子「こんなの押し当てられたら…我慢なんて出来ません…♪」

美穂子「メイドなのに…ご主人様の逞しいのが欲しくて欲しくて溜まらなくて…♥下からドロドロって…お汁出ちゃいます…ぅ♪♪」

京太郎「じゃあ、どうするんだ?」

美穂子「勿論…セックス…です…♥」ニコ

美穂子「ご主人様の性欲処理セックスぅ…♪♪」

美穂子「ご主人様が満足するまで…たっぷりご奉仕しますからぁ…♥」

美穂子「思う存分……楽しんでくださいね…♪♪」

そう言って、美穂子は俺のチンポを自分の膣肉へと誘導していく。
既に慣れたその手つきに俺は身体から力を抜き、抵抗の意思を一つたりとも示さなかった。
それは勿論、未だ身体の中に倦怠感が残り続けているという事も無関係じゃない。
でも、それ以上に俺もまた美穂子とセックスがしたくて… ――


―― 結果、俺は智葉たちが帰ってくるまで美穂子とセックスをし続け、その場で我慢出来なかった他の三人にもまた襲われるはめになってしまったのだった。




System
福路美穂子の好感度が90になりました(媚薬ケーキ込) → <<これからもご主人様のメイドとして、メスとして、女として、頑張りますね…♥>>





迷宮前準備のコーナー

<<所持アイテム>>
きずぐすり 7/9   一体のHPを20回復する   売価150円
いいきずぐすり 4/6 一体のHPを50回復する  売価350円
すごいきずぐすり 4/4 一体のHPを200回復する 売価600円
まんたんのくすり 1/2 一体のHPを最大まで回復する 売価1250円
どくけし 7/9  一体のどく・もうどくを治療する  売価50円
まひなおし 3/9 一体のまひを治療する 売価50円
やけどなおし 1/9 一体のやけどを治療する 売価50円
おいしいみず 5/5 一体のHPを50回復する※戦闘中使用不可 売価50円
ミックスオレ 1/5 一体のHPを80回復する※戦闘中使用不可 売価175円

※ミックスオレ、まんたんのくすりを売却した場合、次回から購入可能

<<販売アイテム>>
きずぐすり@3  300円    一体のHPを20回復する  現在7/9
いいきずぐすり@2 700円  一体のHPを50回復する   現在4/6
すごいきずぐすり@2 1200円 一体のHPを200回復する  現在4/4
どくけし@3    100円    一体のどく・もうどくを治療する現在7/9
やけどなおし@3 100円   一体のやけどを治療する 現在1/9
まひなおし@3 100円     一体のまひを治療する  現在3/9
おいしいみず@2  100円  一体のHPを50回復する※戦闘中使用不可 現在5/5
オッカの実@1 20円 効果抜群のほのお技を一度だけ半減する
ウタンの実@1 20円 効果抜群のエスパー技を一度だけ半減する
ヨプの実@1 20円 効果抜群のかくとう技を一度だけ半減する

媚薬ケーキ@1 5000円 魔力供給出来るようになったパートナー一人の好感度を10上昇させる
媚薬クッキー@1 3000円 魔力供給出来るようになったパートナー一人の好感度を5上昇させる

<<開発可能アイテム>>
がくしゅうそうちver2 → ver3 がくしゅうそうちの対象に選べるパートナーが増えます(要15000円)※こそっと増加量軽減
半減実 → 別属性を半減する実を開発し、販売可能にする事が出来ます(要5000円)
良い釣り竿 → 凄い釣り竿 釣りマスの時のコンマ判定を末尾から末尾×2倍に変える(要20000円)

現在の所持金36410円



System
クッキー(3000円)ケーキ(5000円)やけどなおし三個(300円)ヨプの実(20円)を購入しました
学習装置のバージョンアップを行いました(15000円)
現在の所持金は13090円です



京太郎「(よし)」

アレから美穂子の調子も元に戻ったみたいだし、必要なアイテムも買い揃えた。
前回の探索から色々あったが、流石にそろそろ迷宮へと潜り始めるべきだろう。
智葉や憧も大分強くなったけれど、その状態で戦闘を始めるのは初めてだ。
もしかしたら感覚が違いすぎて、変なところで苦戦するかもしれないし、油断せずに行こう。

哩「あ、須賀くん」

京太郎「あ、白水さんに鶴田さん」

姫子「久しぶりやね」

京太郎「ですね」

そう思ってエントランスから街へと出ようとしたところ、白水さん達に話しかけられた。
お互いに腕を絡め合わせるその姿は相変わらず仲睦まじいものだった。
まぁ、相変わらずと言っても、あんまり良く会う人じゃないんだけどさ。
お互いパートナーがいるし、何より二人はあんまり部屋から出てこない。
技の開発なんかでお世話になる事は多いが、それがなければ、顔を合わせる機会はほぼないと言っても良かった。

哩「今日はこれから探索と?」

京太郎「えぇ。そろそろ潜っておかないと勘も鈍りそうですし」

姫子「じゃあ、こげんなのどうと?」スッ

京太郎「ん?」

そう言って姫子さんが差し出したのは真っ白卵状の何かだった。
大きさは俺の手のひらくらいだろうか。
スーパーで売っているものよりも幾分大きなそれに俺は首を傾げる。
こうして二人が持ってきてくれたのだから、ただの卵じゃなくて特殊な効果があるんだろうけど…少なくとも表面からではそれがまったく分からない。


哩「幸せタマゴって言うらしいばい」

京太郎「幸せタマゴ…ですか?」

姫子「うん。私と部長の愛の結晶ばい」ポッ

京太郎「え゛っ」

愛の結晶って…え?
い、いや、二人は確かに仲が良いとは思ってし…ガチっぽい雰囲気は感じてたけどさ。
まさかタマゴまで出来るなんて思ってもみなかった。
もしかして魔物になってIPS棒が生えちゃったりしてるんだろうか…?

哩「まぁ、愛の結晶ば言うちょっても、私と姫子の研究成果みたいなものやけん」

姫子「えへへ。びっくりしたと?」

京太郎「いや…マジでびっくりしましたよ…」

タマゴ出されて愛の結晶だなんて言われたらそりゃだれでもびっくりするわ…。
ましてや、二人はちょっと仲が良すぎるくらいに仲が良い訳だし。
魔物の中には卵胎生な種族もいるみたいだから、本気で出産したのかと思ったぞ…。

哩「詳しか原理はとりあえず置いておくとして…主な使用方法は須賀くんのがくしゅうそうちとの併用ばい」

そう前置きして始まった説明は正直、良く分からないものだった。
何かがくしゅうそうちの機能がどうとか、バージョンアップにおけるブラックボックスの制御がどうとか言っていたけれど。
とりあえず、分かったのはがくしゅうそうちの持ち主である俺にも魔力は供給されているという事。
けれど、俺はそれを効率的に使う事が出来ず、大半が空気中に霧散しているという事。
これの石はその魔力の流れを強く引き寄せるという事。
そして… ――

姫子「つまり須賀くんを介して約二倍の速度で魔力を吸収出来ると!」

哩「しかも、他の仲間に供給される分の魔力は減らない形で調整してあるばい」

京太郎「なるほど…!」

とりあえずそれだけ分かれば十分だ。
とにかく、この幸せタマゴと名付けられたアイテムがとても有用な事は良く分かったのだから。
これからも迷宮に現れる敵はどんどん強くなるだろうから、そういった強化につながるアイテムは是非とも欲しい。

京太郎「では、それを譲ってもらいたいんですが…」

姫子「ふっふっふ、タダじゃダメばい」

哩「出すもん出して貰わんとね?」

京太郎「やっぱりそうですか…」

あくまでも二人はこっちへの協力者でしかないからなぁ。
お互いにwin-winな関係を続けてはきているが、あくまでもそれだけだし。
流石に無償で譲ってもらえるなんて甘い話しはないだろう。


京太郎「やっぱり目当てはハートのウロコですか?」

姫子「勿論ばい」

哩「20枚ほど貰えば譲ってあげると」

京太郎「20枚…」

…今の手持ちはその半分だ。

京太郎「ローンとか効きますか?」

哩「須賀くんの事ば信用しちょるけど、ダメばい」

京太郎「ですよねー」

流石にそれは調子が良すぎるか。
あのタマゴ状の鉱物が欲しければ、ハートのウロコをもっと集めろ、とそういう事なのだろう。
まぁ、それだけ手間を掛けた分の効果はありそうだし、心にとめておくのも良いかもしれない。

姫子「まぁ、それはそれとして誰かの技を調整すると?」

京太郎「そうですね…じゃあ…」



1…2…3…ポカン

憧はあまごいを忘れた

そして…

憧はムーンフォースを覚えた