京太郎「MerryX'mas!」パンッ!

自分の部屋でクラッカーを鳴らす。

一人で。

そう、一人で。

京太郎「…今頃、咲達はパーティー楽しんでんだろうなー…」

一ヶ月前だ、ハギヨシさんが俺を訪ねて来たのは。

ハギヨシさんとはタコスの作り方を教えて貰ってからも度々、顔を合わせては色々なことを教わっていた。

おこがましいかもしれないが、自分は友人だと思っていた。

ただ、その日のハギヨシさんは物凄く苦しげな顔をしていた。

どうしたのか訪ねたところ、真剣な顔になってクリスマスの話を始めた。

龍門淵の御令嬢が主催になって全国から今年縁を繋いだ高校の人達を集めてクリスマスパーティーを開くことになったという。

当然、清澄も呼ぶつもりであると。

龍門淵グループの御令嬢なのにそっちの用事は良いのか聞いたところ、顔見せと挨拶が終わったら直ぐに移動し、途中から参加するとのこと。

金持ちって大変だなー…。などと呑気に考えていたが次の言葉で思考が一瞬凍った。

ハギヨシ『そのパーティーには京太郎君、君は参加しないで欲しいんです』

京太郎『…え?』

言われた意味がわからなかった…。

ハギヨシ『…すいません』

京太郎『な、なんでですか!?』

詰め寄ると、ハギヨシさんは最初の時より苦い顔をしながら事情を説明してくれた。

曰く、招待する高校は全て女子高であること。

曰く、自分を知らない人間が大多数であること。

曰く、ホストとしてお客様が楽しんでくれるのに最善を尽くす義務があり、男性が苦手なお客様も多数いる女性のみの場に自分を招くことはできないとのこと。

曰く、清澄の人達にも楽しんで貰う為にも、自分には当日別の用事があって出席できないことにして欲しいとのこと。

…ここまで言われれば、自分にだってわかった。

京太郎『…俺は邪魔ってことですか…?』

ハギヨシ『…』

ハギヨシさんは答えなかったが、否定もしてくれなかった。

ショックだった。そして、フツフツと怒りが沸いてきた。

京太郎『…そんな話受けると思いますか?』

ハギヨシ『…受けて頂きます。主人である透華お嬢様の命ですので』

あくまでも冷静に対応するハギヨシさん。

怒鳴り散らしたくなるのを必死に押さえながら話を続ける。

京太郎『…勝手ですね』

ハギヨシ『…私は執事なのです。京太郎君。どうか穏便にことを済まさせて頂けないでしょうか?』

穏便に。

その言葉で怒りを通り超したのか、頭が一気に冷静になった。

…どこかで聞いた噂によると、龍門淵のお嬢様は自分が麻雀部に入る際、元々在籍していた部員を全員追い出したらしい。

何の為かは知らないが、そんなことをしでかす人間に歯向かったら、自分も家族もどうなるのだろうか…。

京太郎『…脅迫ですよね?それ?』

ハギヨシ『…』

京太郎『…わかりました。その日は家の用事があるって言って断ります』

友達からの誘いって理由だと、後々嘘がばれかねない。
家の用事ってことにしておくのが賢明だろう。

ハギヨシ『…ありがとうーー京太郎『ただし』…はい?』

京太郎『あなた達が俺にも家族にも金輪際関わらないって約束して貰えますか?』

ハギヨシ『…京太郎君』

京太郎『俺、ハギヨシさんのこと友達だって思ってました。でも、流石に今回のことは友達だからで許容できる範囲を超えてます』

ハギヨシ『…』

京太郎『俺にその約束を強制できる力なんてありませんけど、約束だけでもしてもらえませんか?』

ハギヨシ『…わかりました。必ず承諾させて見せます』

京太郎『…お願いします』

クリスマスパーティーの件はあちらの要望通り、家の用事と言って、咲達に断りを入れた。

友人達からも誘いがあったが家の用事と咲達に断りを入れたので、こちらも嘘がばれないように同じ理由で断った。

その後、ハギヨシさんとは会っていないが、自分にも周囲にも特段変わりはなかった。

いや、一つはあった。

母さん宛にクリスマスに使える旅行券が送られてきたことだ。

懸賞に応募していたらしいが、偶然にしては出来過ぎてる。

つまりはそういうことなんだろうと察した俺は、自分はもう予定があるので、たまには夫婦水いらずで行って来たら良いと両親を説得した。

家の用事と言って断ったので、自分も着いていくべきだったんだろうが、とてもそんな気にはならなかった。

クリスマス当日、両親を送り出した後、近くのコンビニで自棄になったようにクリスマス用のグッズと料理を買い込み、何をするでもなく、寝転がっていた。

心配したのか、カピーが寄ってきたので、適当に撫でたりして遊んでいたら、夜になった。

テーブルに料理とケーキを並べ、カピーと食べた。カピーが食べられるものだけでは足りないであろうと、カピーに餌を与えて自分の部屋に戻った。

買い漁ったグッズで馬鹿の様に騒いだ。

クラッカーを鳴らし、鼻眼鏡を付けて適当に踊り、トランプタワーに挑戦したりした。

一通り終わった後、寝転がりながら、去年はどうしていたか思い出していた。

受験生だったものの、一日位はと友達と一緒になって騒いだ。

京太郎「あれは楽しかったな…」

それに比べて、今年のクリスマス…いや、思い返せば今年は散々だった…。

ちょっと良いと思った女の子を追って入った麻雀部では、ろくな指導は最初だけ。

咲が入ってからは雑用の日々。

インターハイで優勝した時も俺は蚊帳の外。

インターハイが終わった後も今度はコクマの為に雑用の日々。

その後もろくな指導なんて受けずに独学だけで頑張ってみても、一度も咲達に勝てた試しが無い。

その上で、今日のこれだ…。

京太郎「…なんで麻雀部に入っちまったかなー…」

今あるのはただその後悔だけ。

他の部…。例えば運動系の部活に入っていたら、こんな惨めな思いせずに済んだんだろうか…。

そこまで考えて、ふと思った…。

京太郎「…あ、そうか。そもそも麻雀部に惰性で居続けたのが悪かったのか」

最近だと、部長は勿論、優希の奴や和も俺が雑用するのが当たり前みたいな態度だったし。

咲やまこ先輩も止めようとしてくれてたけど、結局最後には折れてたし…。

京太郎「そうか…。そうだよな」

だったら、話は簡単じゃないか…。






パーティー終了後

久「あー!楽しかった!」

優希「タコスにタコライス、タコ焼き!優希ちゃんも大満足だじぇ!」

まこ「これこれ、近所迷惑になるけぇ、あんまり大声出すな」

和「うふふ。でも、本当に楽しかったですね。隠乃達もわざわざ呼んでくれてとても楽しいパーティーでした」

咲「そうだね。お姉ちゃんにも淡ちゃん達にも会えたし。本当に楽しかったなー」

咲「京ちゃんも来れたら良かったのに…」

和「家の用事では仕方ないですよ」

優希「間の悪い奴だじぇ」

まこ「これ。和の言う通り家の用事があったんじゃからしょうがなかろう」

久「それにそれをプレゼントすれば幸せのおすそ分けには充分でしょ」

和「…思えば今年は色々と苦労をかけましたし、その労いにプレゼントするのは当然な気もしますね…。特に優希は」

優希「じぇっ!?」

久「まあ、毎日の様にタコス作らせてたからね」

まこ「おんしは人のこと言えんじゃろ…毎度京太郎に雑用させよってからに…」

久「うっ」

咲「と、とにかくせっかく当たったんですし、皆で明日渡しに行きましょうよ!この『麻雀セット』」






京太郎の部屋

京太郎「…良し。書けた」

《退部届》

京太郎「あいつらどんな顔するかな…。まあ、どうでも良いか…」

咲・京太郎「一日遅れのクリスマスプレゼントには丁度良い(ですよ)」

カンッ