「~♪」

「機嫌いいですね」

日が沈み、辺りを真っ暗な闇が覆い始めた頃、姫子先輩と一緒にベランダの壁に背を預け寄り添い合う。
特に何をするでもなく、ただただぼーと外を眺めているだけなのだが、先輩は幸せそうだ。

「京太郎と一緒やけん、嬉かよ」

「そうですか」

「えへへ」

気になり、少しばかり問いかけてみればその様な答えが返って来る。
何とも言えない、むず痒い気持ちが沸き起こり、その気持ちを誤魔化すかのように先輩の頭を撫でる。
姫子先輩のブラウン色の髪の毛は、触り心地良くしっかりと手入れをしているのが判った。
そんな先輩の女性らしさを改めて感じ少しばかり、照れくささが湧く。

「京太郎?」

「なんでもないです」

「そっか」

自分の行動を不思議に思ったのだろう。
先輩は首を傾げ、顔を覗きこむように顔を寄せてくる。

「わわわ」

「暖かい」

「ん……ぬっか」

改めて先輩の女性らしさを感じ照れてるのを見られたくなかったので、抱き寄せ
そのまま自分の前に持って来ると後ろからぎゅっと抱きしめる。
先輩の体は、ほんのりと暖かくとてもとても落ち着く心地よさがあった。

「京太郎」

「はい?」

「なんでんなかと」

「そっか、姫子先輩」

「なーに?」

「呼んだだけです」

「そっか♪」

お互いの名前を呼び合い、ゆったりとした時間を過ごしていった。

カンッ!





「わぷっ」

「うわっ!?」

「まったく」

姫子先輩と寒空の下でお互いに抱き合い暖め合っていると突如視界が遮られる。
何事かと二人で驚き手を動かしてみると視界を遮っていたのは毛布であった。

「ぶちょー?」

「哩先輩?」

「ん」

毛布を取り、二人で声が合った方へと視線を向けると其処には哩先輩が居た。

「風邪引いたらどがんすっ」

「あはははー……」

「すみません」

先輩は、いかにも怒っていますと少しムっとした表情をして咎めてくる。
これには乾いた声しか出ず、少しばかり気まずく視線を逸らした。
そんな自分達に呆れたのかその後、ため息をついてからマグカップの1つを姫子先輩に渡し後、自分の腕の中に姫子先輩同様入ってきた。
これは自分も抱きしめろという事なのだろうか。

「んっ、そいでよか」

「ふー……ふー……」

緊張しつつもゆっくりと片手を哩先輩のお腹に持っていき姫子先輩同様、抱き寄せてみる。
するとくすくすと軽く笑われトンっと背中を預けられた。

「はふ……」

「ぬっかにゃあ」

姫子先輩は、渡されたマグカップの中身を飲み幸せそうに一息つき、哩先輩は舌を出し、苦笑した。
どうやら熱くさせすぎたようだ。

「んぐっ……はぁ……」

「部長のカフェオレは、美味か」

「………」

美味しそうに飲み続ける姫子先輩を見てごくりと喉が鳴る。
自分の分はないのかと思うも催促するのは厚かましく思われるのではないかと思い口に出来ない。

「ふふふ……ほい、京太郎」

「……いいんですか?」

「よかよか」

「では、頂きます」

飲みたいと言う気持ちが顔に出ていのだろう。哩先輩に軽く笑われカップを差し出される。
既に先輩が飲んだ為、間接キスになるのだが本人は気にしてないようなのでそのまま頂いた。
一口口にするとほんのりとした苦味と甘さが絶妙にマッチしており、大変美味しかった。

「あ~……美味いっす」

「そっか……♪」

「むー」

素直に感想を言ってみると先輩は、恥ずかしそうにそれでいて嬉しそうに頬を染める。
その惹かれるような表情に、ついつい見惚れてしまう。

「あつっ!?」

暫くの間、見惚れていると頬に暖かい物が触れ驚く。
見れば姫子先輩が頬を膨らませ自分のマグカップを此方へと押し当ててきていた。

「……こっちも」

「えっと……」

「飲んで?」

「はい」

如何したのかと見ていればそんな事を言われ、素直に頷き一口、口にした。
此方も同じ物でとても美味しい。

「美味しいですね」

「うん♪」

一口飲んで同じような感想を言うが、姫子先輩はそれで満足したのか嬉しそうに頷いた。
本当になんなのだろうか。

「雪……振りますかね?」

「どうだろ」

「積もったらカマクラ作ろう?」

「そうですね」

「ふふふ……楽しみやね」

「はい、楽しみです!」

自分の腕の中で寄り添いながらそんな会話をする可愛らしい先輩達を離さないようにぎゅっと抱きしめた。
外は寒いが、今だけこの空間だけは、本当に暖かい。

カンッ!