「おーい、みんなー!!朝だよー!!おーきーてー!!」

午前7時、我が家に朝から元気なシズの叫びが木霊する。
どうやら、昨日俺の布団に潜り込まなかった分朝早くから走って来たようで、
いつもより割り増しでうるさい。

「ん……んぅ……」

だが、それに応える声は少なくとも俺の部屋からは聞こえない。
まぁ、おそらくは美穂子か霞(この二人はなぜかさん付けすると怒る)
に説教されていることだろうが。

「んにゃ……あさ……?」
「ふあぁ……オハヨ、です。キョータロー……」

「おう、おはよう。憧、メグ。
哩さんとまこさんは……まだ寝てるか。起こさないようにさっさと着替えていくか」


「あほぅ、もうおきちょるよ。」
ベッドから立ち上がったところで、後ろから聞こえた声に振り返る。

「あんなデカい目覚ましがなっちゃー起きんわけにはいかんじゃろ。
……ほれ哩さんや、あんたも狸寝入りなんぞせんではよおきぃ。」

「……だって、あげなこどしたけん……昨日の今日で姫子にあわせる顔がなかとよ……」

「あー……」
哩さんがいつものイジケモードに入ってしまった……
姫子さんと哩さんの日をズラすと決まって哩さんは姫子さんと逢うのを恥ずかしがる。
……なんでも、リザベーションしてしまうんだから、自分だけが俺と寝てしまえば姫子さんが生殺しになる。
とのこと。
だが、姫子さんは今日の夜に来る事になっているし、
リザベーションも本人同意の上のいわば【プレイ】なのだ。
つまり……

「フフフ、哩はあいかわらずカワイイでスネ、食べちゃいたくなりマス。」
「ひう!?そ、そこはダメぇ!?」
「おーおーメグは朝からお盛んじゃのう。」
「あー……私は何も見てない。オーケー。よし京太郎、下いくわよ。」
「えーっと……この惨状に対するツッコミは?」
「起きぬけからそんな面倒な状況にツッコミなんてしたくないわ……ま、飽きたら起きてくるでしょ。」
「さいですか……」

哩さんの艶を帯びた嬌声を聞きながら廊下に出て下の階に降りる。

下の階に下りると良い匂いが鼻をくすぐる。

「……麦味噌の匂い……って事は今日は春か?」
「九州勢は味噌から違うものね……って……はぁ……
なにやってんのよシズとセーラは……」

広々としたリビングでは元気印の二人組みのセーラと穏乃が正座させられていた。

「うぅ……みんなを起こそうとしただけなのに……」
「だからってあんな大声出すなや……つい怒鳴り返してもうて俺まで正座させられたやん……」
「ごめんなさい……」
「まったくあんた達はいつもいつも……」

「あぁ、うん。なんか察した。」
「まぁ、大体君の予想通りだよ京太郎。」
憧がシズたちへの説教を始めたのを見ていると、テーブルで釣竿を磨いていた誠子さんから声をかけられた。

「あ、誠子さん。朝釣りはどうでした?」
「全然、やっぱりこの時期だと学校に行く9時10時にならないと魚もまず動かないね。」
「そうなんですか?てっきり暗けりゃいいのかと思ってましたけど……」
「ははは、あんまり暗いとこっちも手元が見えないし、なにより熊が怖い。
そこらへんはもともとこっちに住んでる君の方が詳しいんじゃないかな?」
「なるほど確かに……なら気をつけてくださいね?誠子さんが怪我したら皆も俺も心配しますから。」
「……も、もう!いきなりそういう事言うのは卑怯だと思うな!」

「ん」
誠子さんと話していると横からズイと味噌汁椀が差し出される。
「ご飯できた。皆座って。」

「おうわかった……ってあれ?哩さん達は……ってもう座ってるし。」
「食欲には逆らわんようにしとるけぇな。かんらかんら」
「腹が減ってはデュエルは出来ぬ!デス。」
「うぅ……ハズかしか……」
「わーいご飯だー!」
「あ、こらシズ!まったくもう……」
「あー朝から酷い目に逢ったぜ……」
「ほら、京太郎。早く座って。」
「そこでさりげなく自分の隣に誘導する辺り春ちゃんってスゴイよね。」
「そういいながらも京太郎の隣を確保する誠子さんもスゴイ……」
「あー、面倒だからもういただきます!!」

男女比の狂った世界。どこか壊れたこの世界。
だけど、ここにいる皆や、今日は来ていない皆と一緒に過ごすこのドタバタした日常は
決して忘れる事のない尊い思い出として残るのだろう……

それにしても、麦味噌の味噌汁は美味しかったな……今度霞に作って貰おう。


カンッ!!