須賀咲ちゃんです。私に女子力があるのかどうかわかりません。須賀咲ちゃんです。

 昔よりは家事などにも気合を入れていて、飲み会に着ていくようの服も何着か持ってます!

 というわけで、京ちゃんの飲み会に、何故か私も参加することになりました!

 う、うう……。コミュ障の私にこんなことをさせるなんて……。

 でも、逆に考えれば酔った京ちゃんの直デレを見られるというわけで、ハイリスクハイリターンなんです!

 ……緊張したら、京ちゃんから離れないもん。


 「あ、噂の須賀さんの奥さん!」

 「この前はごめんなさいね」

 「ひゃ、ひゃい。大丈夫です。

  こちらこそ、ありがとう、ございます」

 「「かわいいー!」」


 あ、前回いろいろと助けてくれた人だ。ちょっと安心したかも。

 女性相手ならまだなんとか喋れると思うんだ。


 「お、君が噂の須賀の嫁さん?」

 「あ、課長だー。浮気しちゃダメですよー」

 「しねーよ!?」

 「課長の顔怖いんだから気をつけて下さいよー」

 「え、どうやって気をつけるの?」


 どうやらこの人は偉い人なのに弄られ役も兼任しているらしい。でも社会経験のない咲ちゃんは縮こまることしかできません。


 「あれ、奥さん。随分古いガラケー使ってるじゃん」

 「は、はい。機械が苦手で」

 「おい須賀ァ! 嫁さんにくらい新しいスマートフォンくらい買ってやれよ!」


 須賀って怒鳴り声で咲ちゃんも泣きそうになっちゃったよ!


 「いぃ!? 課長!」

 「普段から支えてもらっているなら、少しでもいいものをプレゼントしてあげるのが男の甲斐性ってもんだろ?」

 「は、はい。その通りだと思います」

 「あ、あの、上司さん」

 「……ん?」

 「京ちゃ……旦那は新しいものにしようって言うんですが、私が機械苦手なんで、断っているんです。

  あまり裕福ではないので、そのお金を貯めて、家族で何かしたいなって考えてたり、その……」

 「咲……」

 「……須賀。嫁さん。酒が入っていたとはいえ、他人の家の事情も知らず、無礼を働いて申し訳ございません。

  須賀ァ! 本当にいい嫁さんじゃないか!!」

 「え、あ、はい。いい嫁さんです!」

 「それならもっと、稼げるようにならねーとな?」

 「ハイ!!」


 その後、京ちゃんはその上司に連れて行かれ、何やら上に上がるための方法見たいのを話しているみたいです。

 台風が過ぎ去った私は、隅っこの方でチマチマと飲んでいようかな、と思っていたところ、先ほどの女性職員にもみくちゃにされちゃう!?


 「須賀さんカッコよかったよー!」

 「あの上司に気に入られるなんて相当だよ!」

 「ふざけてるように見えて、人を見る目が違うからね。

  私たちは弄ってるけど、あれはそこまで読んで今のままでいいって結論づけているタイプだから」


 な、何やら仕事中の人の性格診断のようなのが怖いよぉ。

 京ちゃんも言っていたけれど、『これはこういう奴』と評価を下したり、自分が使う時にどう使うか、などで意外な所で自己評価は語られているようです。

 しゃ、社会って怖い。私が面接で落ちる理由がわかった気がする……。

 和ちゃんなんて生ぬるかったよ……。なんとなく察していたけれど、女子会とか言いながら緩めにしてくれていたんだ……。

 人の悪口だとか、評価付けだとか、どうするかだとかの話に巻き込まれて頭がふらふらするー。

 こ、こういう時はラインで京ちゃんに助けを求める!

 ガラケーでもラインくらいできるもん! チャットで、こう!



 ん、咲からラインだ。

 なんですぐそこにいるのに?


 『><』


 ……ああ、女子会に耐えられないから助けてくれ、と。

 はいはい、今行きますよー。




 「ふぇぇ」

 「咲は本当にコミュ障なんだからなァ」

 「そういうお前も、嫁さんのピンチにはすぐ来るんだよなァ」

 「うっ」

 「この前酔った時だって、嫁さんのこと」

 「おい、それは言わないでくれって」

 「言ってください」

 「咲!?」

 「知りたいです。すっごく知りたいです」

 「そうそう、こいつ酔うたびに嫁さんの惚気を始めるから、それを教えちゃうぞー」

 「ま、待ってくれぇー!!」


 私の知らないところで、酔った京ちゃんは私にデレているらしい。

 もー、本人の前でちゃんとデレてくれればいいのに! デヘヘ!


 「そう言えば、須賀さんってあの宮永プロの妹さんって本当?」

 「あ、聞いたことある!

  よく見れば似てるよね」

 「は、はい。宮永照は私の姉です」


 うう、よく言われるけどなんか恥ずかしい。


 「キャー! あのクールな宮永プロの妹さん!?」

 「私もファンなの! あー、サイン欲しいわぁ」

 「ダメよー。須賀さん困らせたら悪いじゃない」

 「クールでやわらかな表情! 女の子にも人気なのよー」


 え、クール? やわらかな表情?

 すみませんそれ別人です。私にそんな姉はいません。




 「そう言えば須賀。

  お前、宮永プロと熱愛疑惑が立ってたなァ」 

 「ゲッ、課長!?」

 「こんないい嫁さんがいながらお姉さんにまで手を出すとはふてぇやつだ」

 「ち、違うんです。あれは」

 「あんなクールで良くできて、気が利いてなんでも出来そうなお姉さんと出掛けるなんて、うらやましいぞ!」

 「……!?」


 京ちゃんもひいてるし。

 お姉ちゃんへの一般人イメージってそんなに良かったんだ。

 実際は、休日ともなればあんなにダラダラぐだぐだ、京ちゃんに甘えて気が向いたときに子供と遊んでるんだよねぇ。


 「宮永プロ、休日は何してるのかしら」

 「やっぱりオシャレに気を使ったり、スタバでコーヒーを飲みながら本を読んだり、Macを華麗に使ったりしてそうよねぇ」

 「は、ははは……」


 し、真実は絶対に言えないよね。


 『もー、お姉ちゃん。同じものばかり着ると、服がヨレヨレになっちゃうから新しいの買ってよー』

 『京ちゃん。買ってきて』

 『いや、自分で買いましょうよ……』

 『男の子は、女の子に服をプレゼントして脱がせたいって聞いた。

  京ちゃんの好みの服を買っていい。もちろん脱がしてもいい』

 『照さぁん!?』

 『も、もー、お姉ちゃん何言ってるのさ』

 『ところで、咲が持ってる白いワンピースは京ちゃんの趣味?

  咲ならもっとオシャレに縁がなさそう』

 『『』』


 お、オシャレに関しては、私も深くは言えないけどさ!

 ちなみに京ちゃんは女の子女の子していて、あまり露出がないものが好きです!


 『京ちゃん。コーヒーを飲んでみたい』

 『はいはい』

 『もー! お姉ちゃんはせめて私にお願いしなよ!』

 『ありがとう京ちゃん。……ぐえー』

 『苦いのダメなのになんでストレートで飲んだの!?』

 『ミルク入れてください!』

 『京ちゃんのミルク?』

 『お姉ちゃん、それ以上いけない!』


 ミルクと砂糖たっぷり入れてるし……、太るよ……。


 『京ちゃん。新しいパソコンが動かない』

 『いや、照さんタブレット使ってたじゃないですか』

 『このまっくぶっくえあーっていうの』

 『なんでわざわざそっちを買うんですか』

 『事務所がこっちの方がイメージに合うって勧めてきた』

 『俺もMacはそんなに詳しくないんですが』

 『京ちゃん。わかりづらいからもっと近くで教えて』

 『え、これくらいですか?』

 『う、うん。もうちょっと近くてもいいけど、今はこれくらいでいい』

 『?』

 『お姉ちゃん……』

 『な、なんでもないもん』


 隙あらばくっつこうとするし……。

 基本的に機械はダメダメだし……。

 うん、お姉ちゃんのイメージを崩さないように、愛想笑いで切り抜けよう!




 「もー、大変だったよ」

 「ははは、ありがとうな、咲」


 そうこう凌いで、なんとか帰り道。

 暗くなった道を、おしゃれした私と京ちゃんが歩く。

 思えば、最近こんなにおしゃれしてデートするなんてなかったなぁ。


 「それにしても、お姉ちゃんってイメージだけならすごいんだね」

 「俺もビックリした。

  まぁ、あの人営業スマイルすごいし」

 「むー。まぁ、お姉ちゃんなんてダラダラぐだぐだ虫でちょうどいいんだもん」


 もし世間の思う通りのお姉ちゃんだったら……鳥肌が立つよ。

 私たちにとってのお姉ちゃんは、あれでいいのだ。


 「咲だったらああはいかないしなァ」

 「む。そういうこと言う」

 「こう、営業スマイルしようとして、グギッって」

 「そ、そこまでは行かないもん!」


 もー! 京ちゃんったら失礼なんだから!

 ……? 京ちゃんがモジモジしてる。


 「咲、寒くないか?

  手、貸せよ」

 「ぅひ」


 わ、わ、わ。いきなり手を握られちゃった。

 むー。自分が握りたいだけなんじゃないの? ……えへへ。


 「今日の私、上着の下に白いワンピース着てるんだ」

 「へ、へぇ」

 「……」

 「あー、咲。俺も明日休みだし、ちょっと遠回りして帰ろっか」

 「もー、仕方ないなぁ。

  ちょっとだけ、だよ?」


 微妙に顔を俯いて、上目遣い攻撃! 和ちゃんから教えてもらったんだ。

 ま、まぁ、今日はご飯も作ってきたし、明日は用事がないし、ちょっとくらい遅くなってもいいよね?


 ……ちなみに、宮永家に着いたのは朝でした。カン!