須賀咲ちゃんです。

 京ちゃんを裸エプロンで出迎えたあの黒歴史の日から三ヶ月くらい経ちました。

 さ、さすがにもうやらないよ!

 あれは恥ずかしいもん! 絶対にヤダ!

 で、でもまぁ、京ちゃんがどうしてもって言うなら、考えなくもないかなぁ、なんて。


 「須賀さん。体調悪そうだけど大丈夫?」

 「そうねぇ。顔色悪いわよ」

 「だ、大丈夫。です」


 とは言うものの、本当は大丈夫じゃない。

 なんでかなぁ。最近何かと気持ち悪いんだよねぇ。

 風邪かな。京ちゃんに心配させないように、早めに病院に行った方がいいかな。


 「少しくらい休んで来てもいいのよ」

 「少しと言わず、本当に辛かったら休ませなさいよ」

 「だ、大丈夫れふ……。

  うっ」

 「須賀さん!?」


 う、うぇぇぇぇぇぇ。は、吐き気が。

 このままだとゲロインになっちゃう!

 おしとやかな文学少女咲ちゃんのイメージが崩れちゃうぅぅぅ。



 ……あ、ダメだこれ。我慢できない。吐いてこよう。




 「ちょっと須賀さん。

  病院に行った方がいいんじゃないの?」

 「体調悪い?

  どんな感じ?」

 「その、最近吐き気が出てきて、腹痛や頭痛がするんです。

  あとは味覚が変わったのか、酸っぱいものを食べたくなって……」

 「えっ」

 「須賀さん。それって」


 ……?

 パート仲間の人たちがニヤニヤし始めたよ?


 「きゃー!?

  須賀さん!」

 「須賀さん! 今すぐ病院に行きましょう!」

 「え、そんな大げさな」

 「そう言えば時期的にはおかしくないわね!」

 「産婦人科に行くのよ!」


 え

 産婦人科って、まさか

 え、えぇぇぇぇぇ!!?





 ……。

 あの後、為されるがままに病院に行って、その結果は……。


 「きょ、京ちゃんになんて言おう……」


 はい。見事に出来ちゃってました。

 いざこうなってみると、頭が混乱してどうしたらいいかわからない。

 体調が優れないことも相まって、すごく不安になる。


 「よ、喜んでくれるかな。

  迷惑だって言われたらどうしよう」


 大丈夫だと思うけれど、不安になる。

 涙まで出てくる。不安になるのは妊娠の初期症状だって言うけれど、どうしてもダメだ。

 私は嬉しいけれど、まだ若いし、京ちゃんがどう思うのか、不安で仕方ない。

 私たちはまだまだ裕福じゃない。お金のことだってあるし、子供を育てられるほど立派な大人になれてない。


 「咲!」

 「え、きょ、京ちゃん!?」


 と、不安になっていたら玄関がすごい勢いで開いて、京ちゃんが出てきました!

 あ、あれ。仕事が終わるのがまだまだ時間がかかるはずなのに、それまでに心の準備をしようと思ったのに!


 「咲のパート先から電話があった。

  大丈夫か?」

 「だ、大丈夫」

 「……」


 なんとか涙を隠して、京ちゃんの顔を見ないようにするけれど、京ちゃんに肩を掴まれて顔を見つめられます。


 「泣いてるぞ。咲、ちゃんと答えてくれ」

 「う、そ、その」


 きょ、京ちゃんが鋭い。

 えぇい。もうどうにでも、なれ!



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 「えっ」

 「……」


 玄関に沈黙が訪れる。

 京ちゃんは呆然としていて、私も俯いているから表情が見えない。

 や、やっぱり迷惑だったかな。なんて泣きそうになっていると。



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          / イ / // : l  |    ' / !  从 |  :   :.
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          ´  | {|从三三 /   三三三 /  /--、| ∧{
                {从 |     ,            ムイ r 、 }} /} \
               |                ノ ' }/イ/
                {               _,ノ
 「咲!!」            人       _,..::ァ       r }/
                     `     ゝ - '   イ   |/
                        `  ーr  ´  ___|_
                     ___|     |//////|


 しまりのない顔で京ちゃんが抱きついてきた!?

 うひゃあ!?


 「この、この! 心配させて!

  嬉しいぞ、このやろー!!」

 「わぁぁぁ!?」


 私の頭をもみくちゃにする京ちゃん。


 「う、嬉しいの?」

 「当たり前だろ!

  もう、病院に行ったって聞いて本当に心配したんだぞ!」

 「ぅひ」


 京ちゃんが収まらないようで、私の体をギューって抱きしめる。

 うげぇぇぇ。嬉しいけど今は気持ち悪いからだめぇぇ!


 「京ちゃん。正座」

 「はい」


 あれから数十分。熱の治った京ちゃんを正座させます。


 「女の子の髪の毛を安易に触ったらダメって言ったでしょ!

  彼女でも奥さんでもダメなの!」

 「うっ」

 「もー、女の子は髪型に気を使ってるんだからね!」


 くしゃくしゃになった髪の毛を整えながらお説教です!

 京ちゃんは女心がわかってないんだから!

 ……まぁ、家の中ならいくらでもやっていいけどさ。


 「いや、でも嬉しくて、さ」

 「……もー!」


 許しそうになっている自分が憎いぃ!


 「京ちゃん。その、本当に嬉しい?」

 「?」

 「だって、私たちまだ若いし、お金だって」

 「咲」


 京ちゃんが手を伸ばして、私の頭に手を乗せようとして、途中で止める。

 ……もー!!


 「こういう時はいいの!」

 「お、おう」


 理不尽?

 女の子はこういうものなの!


 京ちゃんが私の頭に手を乗せて、残った腕でゆっくり抱きしめる。

 今度は手を動かすのではなく、乗せるだけで安心させてくれる。


 「咲、大丈夫だよ。

  俺嬉しいよ。

  咲も、この子も、全部俺が背負っていくからさ」


 ふぇ。

 ……。

 まったくもー!

 きょ、京ちゃんはわかってないんだから!


 「私たちで、でしょ?」


 そう言って私も京ちゃんを抱きしめる。

 京ちゃんに抱きしめられるとポカポカする。

 さっきまでの不安が消えていく。

 ああ、安心するなぁ。

 まだまだ不安はいっぱいで、自分が親になるなんて考えもつかないけれども。

 京ちゃんと一緒に、少しずつ経験して行こう。

 産まれてくるこの子のためにも。

 私がお母さんなんですよ、って、胸を張って言えるように。




 「咲が妊娠した!?

  初孫だぁぁぁーー!!」

 「この中に子供が……」

 「お姉ちゃん、触る?」

 「うん」

 「さ、咲。お父さんにも触らせてくれ!」

 「え、嫌に決まってるじゃん。

  あ、お母さんはいいよー」

 「咲ー!?」

 「界さん……」

 「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ。

  それはそれとして、咲もいろいろ不安定だろうし、しばらくうちに暮らした方がいいんじゃないか?

  母さんもいるし、経験者がいた方が何かといいだろう」

 「えっ、京ちゃん、どうしよう」

 「うーん。俺がいない間の咲が心配だし、ここは言葉に甘えた方がいいんじゃないか」

 「お父さんが珍しくいいことを言った。

  咲、妊娠中の京ちゃんの相手は任せて」

 「お ね え ち ゃ ん ! ?」


 この後、京ちゃんのお父さんとお母さんが宮永家の改築を提案してくれて、現代に続くよ! カン!