『そう言えば、咲ちゃんって私たち以外に友達いるのかー?』

 『そうですね。私たちと京太郎君以外に遊んでいるところを見たことがありません』


 須賀咲ちゃんです!

 優希ちゃんも和ちゃんも私に友達が少ないって酷いことを言うよね!

 少ないんじゃないもん!

 一緒にいて楽しい人とだけいるだけだもん!

 え、中学校の友達? 大学の友達?

 ……。

 そ、それに、高校卒業すると意外と遊ばなくなっちゃうんだよね。

 優希ちゃんや和ちゃんともそんなに会えないし。

 やっぱり二人とも社会人だから、予定を合わせにくいし、何より私自身があまり外に行くタイプじゃないし。

 そもそも、みんな外に行ってどこに遊びに行ってるんだろう。

 京ちゃんと行くときは図書館とか……、図書館とか、図書館とか行ってたけど!

 いや、遊園地とか何回も行くものじゃないと思うんだ!


 「咲ー」

 「なぁに、京ちゃん」

 「ほら、準備できたぞー」


 うぅ……、そうは言っても子供は家デートで満足するわけがないので、今日は私も外に出ます。

 ちゃんと日焼け止めを塗って、お化粧もバッチリ。京ちゃんにアピールするために口紅も少し。

 あー! うう、主婦になってから可愛い服があんまり買ってないんだよね……。

 外に出ないし、可愛い服を着ても子供と一緒だと動きづらかったりダメにされちゃったりするんだもん。

 咲ちゃん悪くない。

 付き合い始めに可愛い服をちょっと買ったけど、どんどん買わなくなっていったなんて秘密だもん!

 付き合いはじめこそ遊園地とか水族館とか行ってたけど、大学時代にもなれば7割くらい家デート。

 残りの2割が図書館デート。最後の1割は記念日にしっかりとしたデート。

 ……我ながら京ちゃんに愛想つかされなかったのがすごい。

 中学生の頃の京ちゃんは割とアウトドア派だったと思うんだけど、高校に入ってからはそうでもなくなったような気がする。

 私に合わせてくれたのかな。そうなら嬉しいな。……やっぱり別に嬉しくないし!

 そんな私も、今は休みの日には遊園地や水族館に引っ張りだこ。

 子供ってすごい。何回同じ場所に行っても次の日にはまた行きたい! って言うんだもん。

 何より、子供達にとってはお父さんと遊べるっていうのが大きいんだよね。

 子供達は日中会えないお父さんに思いっきり甘えて大暴れ!


 「京ちゃん、少し休みなよ」

 「ああ、ありがとう咲。

  いや、いつもこれを相手にしてるなんてすごいな」


 えっへん! 京ちゃんにも褒められちゃった!

 優希ちゃんも和ちゃんも同じことを言ってたけど、それがお母さんの力って奴だよ!

 私だって実際にお母さんになるまではこんなこと出来ると思ってなかったもん。


 「体力落ちたかなぁ」

 「これからどんどん中年太りしちゃうよ。

  ちょっとは運動しないと」

 「げぇ……。そんなことを言う口はこれか!」

 「やふぇてよ京ちゃん」


 私の頬を両手でつまんで引っ張る京ちゃん。やめて化粧が落ちちゃうでしょ!

 それにしても、子供達が静かなような。

 あ、こっちをじっと見てる! 京ちゃん、恥ずかしいから離してよ!

 うぅ……。全く、こんなところを子供に見られるなんて。

 教育に良くないよ! 教育に!

 ……でもたまには、腕を組んでデートしてもいいかな。




 「あ~、疲れた!

  さすがにクタクタだよ!」

 「京ちゃん、お疲れ様!」


 帰りの電車の中では子供達がぐっすり。

 肩車をしたり、走る子供を追いかけたり、ひっきりなしに子供の要求を叶えていた京ちゃんはぐったり。


 「お父さんのお勤めだからね!」

 「へいへい」


 子供たちに両脇から抱きつかれ、疲労困憊の京ちゃん。

 こうは言ったけど、毎日私たちのために遅くまで働いている京ちゃん。

 週末くらいは休んでもらいたい、という気持ちもあるんだ。

 だから家族のお出かけは土曜日が基本。日曜日はお父さんをゆっくり休ませる、が不文律。

 例外は休みが不規則なお姉ちゃん絡みの時だけだ。

 そもそも妹の旦那と一緒に遊びに行くっていうのがおかしいんだよ!

 基本的には私もついていってるけどね! ……京ちゃん貸し出し券を使われたら仕方ないけどさ。


 「明日はゆっくり休んでいいからね」

 「ん、まだ大丈夫だぞ」

 「いいの! その分平日は牛馬車のように働いてね!」

 「ひでぇ」

 「ふふーん。京ちゃんは懲役40年近い労働刑に処されてるんだから、こんなところで倒れてもらっちゃダメだもん」

 「還暦までの懲役40年て。罪はなんですか」

 「うーん。レディースランチ毎回頼まされた罪」

 「いやいや、いくらなんでも罪が重すぎねーか」

 「あのせいでゆっくり本が読めなくなったりしたもん」

 「中学時代、本を読んでて昼食食べれなかった咲が言うことじゃねーな」

 「む」


 ケタケタ笑う京ちゃん。

 そ、そんなこと言われても続きが気になってたんだから仕方ないもん。


 「ふーんだ。もしかして、私を気にして昼食誘ってくれてたの?」

 「え……」


 急に黙って目線を逸らす京ちゃん。

 え、まさか、本当に?

 えへへ……。


 「明日は京ちゃんの好物作ってあげる!」


 京ちゃん! いつもお疲れ様! カン!