ヤンデレ白望2

「あの時は死ぬと思った」

何時の間にかYシャツを着たシロが隣にきていた。

「動くのがダルくて動かなかったんだったっけ?」

「うん…それもあった」

「それもって?」

シロの方を見ると相変わらず虚ろな目で此方を見ていた。

「…秘密」

そう言ってまたシロは布団に倒れこんだ。

「秘密って教えてくれよ」

後ろを向いてシロを見る。布団に潜り込んで顔だけを出していた。

「…嫌」

こうなったシロは梃子でも動かない。俺は諦めてまたペンをとった。

「思えばあれだよな…小説みたいな出逢いだった」

そう何気なくシロに言ってみる。偶々出会った二人がこうやって結ばれる…普通なのかもしれないが俺にとっては何よりも大切な事だ。

「運命だから…」

シロの声が聞こえる。

「ああこれはきっと運命だ」

次は再開の物語を記そう。
舞台は岩手。清澄の重圧に耐えられなかった俺が父と共に岩手に行った話を…

「……そう思えば清澄の皆には感謝だな」

嵐の清澄…長野のダークホースと呼ばれ、全国優勝した麻雀部は今はもう無い。正確には二度と表舞台には出てこなかった。

俺が二年の夏には清澄高校に麻雀部は無くなっていたからだ。
理由は解らない。
優希に聞いても教えてはくれなかった。
咲や和は俺に謝るだけ。

そして三人とも最期に呟く。

「鈴の音が聞こえる…」

部長…竹井久と染谷先輩についても書きたいのだがそれはやめておこう。これはシロの話だ。

「それにしても…清澄に何があったんだろ」

その問いには誰も答えてはくれない。ただ俺の知らない所で何かが起きたのは間違いなかった。




三学期某日

(皆良いやつそうだから大丈夫だよな…てかこうやって夕方に帰るのって久しぶりだな)

電車の窓から覗く夕日を見て今日の事を思い返す。
転校生って事で色々と不安があったが温かく迎えくれたクラスの人達…清澄の事も聞かれたが普通に返せていたと思うしなんの問題もない。

「逃げてきたのに引きずりすぎだな」

そう言って視線を落とすと目の前に座っている女子高生と眼があった。白髪でダルそうな雰囲気…何処かで会った気がする。

「久しぶり…」

澄んだ声でそう言われてた。この声は…

「小瀬川白望選手?」

驚いた。こんな偶然があるのか…

「どうして居るの?」

首を傾げなら聞いてくる。どうしてと言われても転校してきたとしか言いようがない。

「い、家の事情で転校してきたんです」

もうすぐで最寄駅につく。はやく俺はこの場を立ち去りたかった。

清澄麻雀部の事をこの人に聞かれたくない。

「…そうなんだ」

小瀬川さんはそう言って怠そうに首をさげた。

「……小瀬川さんは試験か何かの帰りですが?」

「大学入試」

そう言っただけでこちらを向く事はない。少し無神経だっただろうか?

「あっ、俺はこの駅で降りますんで」

気まずいまま俺は電車を降りた。

「…嫌われたかな?」

そう呟いて改札を向かっていると後ろから足音が聞こえた。

少しだけ気になって振り返る。

小瀬川さんがきっちり俺の三歩後ろを歩いてきていた。

(マジかよ…)

早足にするのは失礼だから普段のペースで歩く。

(同じ最寄駅だったのか…まあ向こうは俺に興味がないだろうし大丈夫か)

そんな楽観的な事を考えて改札を出る。ここから15分かけて新しい我が家に帰らないといけない。長野の時は自転車で行けたがここは雪や路面凍結が激しくて無理。

辺りを見ながら歩いて行く。これから二年間は通う道だ。地理の把握はしとかないといけない。

自宅があるマンションが見えて来た時にふと人の気配がした為に振り返る。

「どうしたの?」

「えっ、いや、その…き、奇遇ですね」

俺の三歩後ろを保ったまま小瀬川さんが駅の時と変わらずに居た。

「家近いんですか?」

「あれ」

小瀬川さんはそう言って俺が帰るマンションを指差していた。

「えっ?」

「京太郎は何処に帰るの?」

立ち止まったまま小瀬川は俺にそう聞いてくる。何処にと言われても…

「俺も同じマンションです」

表情には出さないが少しだけ嬉しい。美人と同じマンションに住んでるというだけでラッキーに思う…絶対に口にはしないがな。

「…そうなんだ」

少しだけ考える素振りを見せてから小瀬川さんが此方に歩いてくる。

そして俺の隣にまできた。

「良かったら一緒に帰ろ」

「いいですよ」

俺はそれを二つ返事で了承した。