《運命に依って心が通じる》


そう、それは本来繋がってなかった道かもしれない

たまたま親戚が東京にいて、
たまたま東京の高校に進学することを許され、
たまたま親戚を通して知り合い、
たまたま気が合って、
たまたまお互い好きになった、

全部偶然かもしれない。
でも、その偶然が重なったから今、一緒にいる。


もしかしたら今頃長野でそのまま進学し、ハンドボールを続けていたか、あるいは何か別のことがあって麻雀をしていたかもしれない。
全く別のことをしている可能性もある。

そんなことを言い出したらきりがないだろう。
だから、ここにいるのは必然であり、奇跡だ。






京太郎「ただいまー」

理沙「ただいま」

京太郎「よいしょっと……それじゃ残りの荷物降ろしてくるわ」

理沙「手伝う!」

京太郎「ダメダメ、理沙はゆっくりしてて」

理沙「」ムー

京太郎「そんな顔しても許しません!」

理沙「」ショボーン

京太郎「そ、そんな顔しても……くっ」

理沙「もう一押し」

京太郎「はっ、駄目ったら駄目だ!理沙の仕事はゆっくりすること!」

理沙「わかった」

京太郎「まったく……うちの両親に感化され始めてから押しがつえーんだから……」

理沙「いい両親」

京太郎「俺は振り回されっぱなしだよ!」

京太郎「ふぅ……うん、こんなもんか」

理沙「ありがと」

京太郎「なんのなんの」

京太郎「さて、これどう配置する? 赤ちゃんグッズ」

理沙「見えるとこ!」

京太郎「そりゃそうだけど、うーん……ほらこことか良いスペースだけどキッチンからだと隠れるじゃん。キッチンからでも見える位置にしたいよな」

理沙「……!テレビの位置!」

京太郎「あー、それがいいかも。変えるしかないな」

京太郎「でもテレビ台重いしなぁ……前は父さんに手伝ってもらったけど、最近腰やっちゃったって言ってたしな……」

理沙「みさき!」

京太郎「みさきさんの彼氏手伝ってくれっかな?忙しそうだし予定合うかどうか」

理沙「来る」

京太郎「あ、そうなんだ。そん時に頼んでみようか」

理沙「」クイクイ

京太郎「ん、おいで」

理沙「」ギュー

京太郎「やっぱりちょっと不安になる感じか?」

理沙「……」コクリ

京太郎「とりあえず座ろっか」

理沙「」コクリ

京太郎(一緒に買い物行ったからかな?)

京太郎(いやいや、やっぱこういうのは一緒に選ぶもんだろ。間違ってない。こうなるのは仕方無いことなんだ)

京太郎(何か話題……)

京太郎「あ、そういや見てもらいたいもんがあるんだ」

理沙「?」

京太郎「子供の名前さ、理沙がこんな名前が良いっていくつか挙げてただろ?」

理沙「」コクリ

京太郎「そんなかの一つに俺が漢字当てはめて占いしてもらってきたんだよ。それがこれ」


 『沙耶果』


京太郎「『耶』は他の人の声を聞くことに長けていて、人が集まってくるって意味があって『果』はそのまま果たす、果実に使われてる通り実らせるって意味がある」

京太郎「そこから人を尊重しつつ自分の夢も果たし、他の人が集まってくるような、しっかりした明るい子に育って欲しいって意味を込めたんだけど……どうだ?」

理沙「良い名前!」プンスコ

京太郎「……ほんとはな、『沙』を『早』に変えたほうがいいって言われたんだ。そっちのが運勢的にいいらしい」

理沙「……」

京太郎「でもさ、やっぱ『沙』の字を使いたかったんだよ」

京太郎「俺が一番好きな人の名前からあやかりたかったからさ」ポリポリ

京太郎「あ、でも、あれなんですよ。『沙』には悪いものを捨てるって意味あるから、やっぱ良い子に育ってほしいしな」

京太郎「名前の意味欲張りすぎたかな?」アハハ

京太郎「名前占いも秘められた内面?の占い結果が悪かっただけで他の結果はいいんだって」

京太郎「ほら、性格なんて最大吉でさ、話上手とか人に喜びを与えるとかべた褒めで

 ギューー

京太郎「り、理沙?」

理沙「…………」ヒック

京太郎「」ナデナデ

理沙「あ、ありがと」ポロポロ

京太郎「……こちらこそ。いつもお世話になってるしな」

理沙「ほんと?」

京太郎「ほんと」

京太郎「だからこうやって甘えてくれると嬉しい」ニコ

理沙「……子供」

理沙「もう一人」

京太郎「え?気早くない?まだ一人目産まれてないぞ」

理沙「京太郎から名前もらう」

京太郎「……あはは、なんかそう堂々と言われると恥ずかしいな」

京太郎「ん?てことは俺が考えた漢字は……」

理沙「採用!」

京太郎「よっしゃ!頑張って考えた甲斐があったぜ!」

理沙「」クス

理沙「……」

京太郎「……」


雰囲気に誘われてか、どちらからともなくキスをする。
自分達の空間を甘美な空気で満たしていく。


そう、ここは二人で作りあげた部屋 ―せかい―。
他の人に後押しされ
笑い合って
冗談を言い合って
恋人がするようなことをし
時には喧嘩をしたこともあった。
そうして繋がっている。


まるで最初の頃が嘘のよう。
最初は全く考えてることがわからなくてどうしようかと悩んだものだ。

それが今では言葉にしなくても理解できる。



必然であり、奇跡。


こういうのを『運命』って呼ぶのだろう―――



カン!