《星は儚く輝く》


私は強い。同年代で私に勝てる人なんていない。
皆皆、私の前では無力。他の人が手を揃える前に私がアガる。
そうだったはずなのに。
そんな私の前に二人、トクベツな人が現れた。

最初は部活の先輩、宮永照。
場の支配をものともせず、ばしばしアガられて負けた。
悔しい。ほんとに悔しかった。
なにより澄ました顔がよりいっそうむかつかせた。

二人目は喫茶店の店員、須賀京太郎。
テルにリベンジしようと思って、つけた先の喫茶店で四人目として卓に入ってきたのだけど、安々と私の支配を抜けてきた。
テルにも負けたし本当に最悪だった。


むかつく……けど……
私よりも強い人が同年代でもいる。

そう思うと、世界が少し開けた気がした。


テルは凄い。
強いのにそれを変に誇るわけでもない。
格好いいというのが相応しいのかもしれない。
なのに私達、身内の前ではお菓子が大好きな一面を晒してて、ちょっと可愛いかも。


きょーたろーは話してて凄く楽しい。
私と話をする時、時折嫌な顔をする人が多いけど、きょーたろーは全くそんなこと無い。
しかも色んな話題を振ってくれて飽きることもない。
麻雀の腕はそんなにだけど、何故か負ける。きょーたろーも私と同じだ。
だからかな?ちょっと親近感。


そんな二人が大好きだ。


きょーたろーが真剣に麻雀を練習し始めた。全国を目指すみたい。
確かに私との勝率は悪くないけど、私が抜けた途端がくっと勝率が下がる。
色々と試行錯誤しながら勉強してるきょーたろーの顔はちょっとだけカッコイイ……のかも。


でもちょっとムカつくことがある。
野依プロに頭を撫でられたときはあんまり抵抗しないのに、私が撫でると凄く嫌がる。
生意気。
そういう態度はちょっとカワイイけど、もうちょっと撫でられてもいいじゃん。


もしかして……そんなわけない。なんにもない。

顧問の先生からきょーたろーと練習してもいいって許可をもらってから一ヶ月。
きょーたろーのおかげでプロの人たちからの指導を受けられ、私はかなり上手くなった。
高校に上がった頃の気持ちなんて欠片も残ってない。
他の人に負けるわけない、なんて思いもしないけど、私は強い。自信を持ってそう言える。

きょーたろーもかなり上手くなった。もしかしたら、本当に全国にいっちゃうかも。
でも、きょーたろーはきょーたろーだ。
たくさん下らない話をするし、悪ノリにも付き合ってくれるし、軽口も叩き合える。


今の私ならちゃんと言えるよ。自分の気持ちをちゃんと言えるよ。

きょーたろーのこと好きだって。

でも、聞いちゃった。聞こえちゃった。
きょーたろー、野依プロのことが好きだって、だから少しでも近づきたくて真剣に麻雀やり始めたって……



私は応援するよ。
好きな人には幸せになって欲しいもん。

それからテルも。
妹が全国に来るみたい。
どこであたるかなんてわからないから決勝までいって闘わないとね。


ごめんね、きょーたろー。
テルのことは手伝ってあげられるけど、きょーたろーは手伝ってあげられない。
だから応援。
なんて声かけたらいいかわかんないけど、応援してるから。

きょーたろーはすごく頑張ってた。怖いぐらいに。
休憩時間、自分達の試合もあったけど、きょーたろーの試合見てた。
最後の試合はこっちの結果発表もあって見れなかったけど、ぎりぎりの逆転で、あぶなっかしいけど一位の人に勝ってたみたい。
でも……個人戦はその一戦で決まるわけじゃない。
たったの二。それだけの差をつけて、五位の人がきょーたろーを抜いて三位になった。

私は急いできょーたろーを探した。
スミレが電話をいっぱいかけたのに出なかったし……
会場内で見つからなかったから外まで行って探した。

見つけた時、きょーたろーは魂が抜けたようだった。
目は斜め下を彷徨わせ、足取りはまるで重りでもついてるようにほとんど引きずった歩き方。
声をかけても反応しなかったから思わず手を掴んで振り向かせた。
ようやくこちらを向いた目はこっちを見ているはずなのに見てなかった。
普段有り余ってる元気は欠片も感じられない。


違う……
私の知ってる京太郎と違う。
元気を出して「よぉ、淡!」って言ってよ。

元に戻って欲しい……
でも声のかけ方なんてわからなかった。

あんなに頑張ってたきょーたろーが三位に入れないなんておかしい。
だから慰めようとして難癖をつけてしまった。
結果は逆効果。

私、駄目だよ。
慰めたいなんて思ったの初めてだもん。
こんなに親しくなったの初めてだもん。
こんなに好きになったの初めてだもん。

スミレに叩かれて、きょーたろーが去っていって、きょーたろーのこと苦しみから助けてあげられなかったとわかったら悲しさが、自分の無力さが、それに対する悔しさが、涙になってこぼれた。


ごめんね。ごめんね、きょーたろー……




きょーたろーから連絡があった。
少し疲れた声してたけど、それでも元気な声だった。

ごめんって言ってきたけど、バカって返した。
バカってなんだよバーカって、冗談交じりな声で返してくれた。
自分がバカなんて知ってるよ。
もう聞いたもん、自分から。


そう、こんなんでいいんだよ。
私達の関係なんて。
バカって言ってバカって言われる、こんなやり取りをしながら笑いあって、ずっと友達でいられたらいい。




でも、ちょっと待ってよ。

もうすぐ雨はあがるから、そしたら星が輝いてるから―――



カン!