【注意】 艦これとのクロス成分が濃く含まれています


カチ… カチ……

今日は残暑でインターハイの熱気に包まれていた八月のあの日と同じくらい暑い。
夏休みも終わって生徒の声も学校に戻っていたが、その暑さのせいかどこか元気が無かった。
尤も、初出場の全国大会で優勝し日本中にその名を轟かせた清澄高校麻雀部にとっては暑さなど関係ない。


ナニヨモー!



「だぁぁ! だから何でそこでダメージ食うかなぁあ!!」


その証拠にパソコンの前に座ってマウスを操作する京太郎の顔には汗ひとつ見当たらない。


オドリャアー!

「……クッ、大破かよ! 撤退だな……」

カチ


全国大会優勝の栄誉と共に、部室用のエアコンが手に入ったのだから。
ちなみに、清澄高校で部室用エアコンを保有しているのは麻雀部だけ。
京太郎はさらにマウスをカチカチさせる、その時、涼しい部室の扉が開く。


「やっほー、須賀君早いわねー」

「よぉ、京太郎、何やっとるんじゃ?」


部長を引退した久と、部長を引き継いだまこが入ってくる。
後には1年女子トリオの姿も見える。


「こんにちは、部長、染谷先輩。実はブラゲを少々……」


まこの問いかけに少々シドロモドロになりながらも正直に答える京太郎。
部活は始まっていないので遊んでいても問題はまーったく無いのだが、少々後ろめたかったようだ。
ちなみに、京太郎は未だに久の事を部長、新部長のまこの事を染谷先輩と呼んでいる。



「……ぶらげ?」

「咲さん、ブラウザゲームの略ですよ。あの重課金で悪名高きモバ○スもブラウザゲームですね」

(あれ? モ○マスってソシャゲだよな)


機械音痴でネットなど殆ど弄らない先にとってはブラゲといった言葉は分からない様子。
一方の和はネットはお手の物、機械にも強く自宅では真空管ラジオの自作までやっている始末。
大学は工学部志望らしい。
その和が咲に端的に説明するが、その説明のちょっとした間違いにまこが心の中で突っ込む。
まこの方が和よりもサブカルチャーに対して造詣が深いようだ。


「……重課金…… って京ちゃん! まさかお小遣いつぎ込んだりしてないよね!? 破産するよ!!」


分からないなりにも和の言葉の意味を理解した咲は京太郎に詰め寄る。
好意を持っている男の子がゲームで破産などして欲しくない恋する乙女だ。
重課金の言葉はテレビのニュースで知っていたらしい。


「するかっ! 米帝プレイは俺のポリシーに反するっちゅうの!?」

「米帝……」

「プレイ……?」

「あっ!?」


咲の自身に対する認識に思わず声を荒げて反論する京太郎。
思わず、自分のしていたゲームのヒントを与えてしまったのはご愛嬌。
京太郎は「しまった!」といった表情をするが時すでにお寿司。


「一体何をやってたんだじぇ? 京太郎、見せろ!」

「ちょ!?」


優希がその小柄な体を生かして京太郎とPCの間に割り込み、京太郎を押しのける。
そして、優希をはじめ久、まこ、和、咲がパソコンの前に群がる。


「あーーっ、これって話題のMNB.comの艦隊これくしょんじゃない!」

「あちゃー」


パソコンの画面を見て久が声を上げ、京太郎が顔に手を当てて天を仰ぐ。


「艦隊これくしょん?」


そう、京太郎がやっていたのは最近アニメにもなった艦隊これくしょんだった。
サービス開始時に目標はユーザー数2万人と設定されていたが……
現在では登録ユーザー300万人を突破!
「目標とは一体…… うごご!」と言いたくなるゲームである。


「よくアカウント取れましたね、抽選でしかアカウント取れないはずですが」

「ネットとかで情報は見ちょるが、本物の提督にははじめてお目にかかったのぉ」

「どれどれ、所属とレベルはどんな……」


和とまこは当然のごとく詳細を知っていた。
で、優希はさらに京太郎の秘密を暴こうとマウスを操作する。
表れた画面に映っている情報を見て咲以外の皆が凍りつく。


「横須賀…鎮守府……?」

「司令部Lv150……?」

「あっ、アハハッハハッハ……」


最古参のベテランを示す情報だった。
京太郎はあさっての方向を向いてわざとらしく笑って誤魔化そうとしている。


「??」


尤も、咲には横須賀鎮守府や司令部Lvが示す意味はサッパリのようだが……


「よし、艦娘も見てみるじぇ」

「あーっ、もう止め々々!! 部活はじめよう!」

「ちょ!」


更にさらに京太郎の秘密を暴こうとする優希を強引に横に押しのける京太郎。
抗議の色の乗った声を優希があげるがお構いなしにブラウザを終了させる。


「仕方ないわね」


そんな様子を見てヤレヤレと言った感じで久が肩をすくめた。


部活終了後、久が「女子だけで話し合いをしたいから先に帰っててくれる?」と言ったので京太郎は先に帰宅した。
現在部室に居るのは清澄麻雀部の女子クインテットだった。
どうやら良からぬ企みの真っ最中らしい。


「…で皆、残ってもらった理由は分かるわよね」

「もちろんじゃ」

「ええ」

「もちろんだじぇ」

「????」


久の言葉に肯定の返事を返すまこ、優希、和。
咲だけは頭に?を浮かべていた。


「フッフッフ、須賀君をびっくりさせるわよ!」


何やら黒い笑みを浮かべて発破をかける久に「おー!」と同調する3人。
実は皆、京太郎に恋心を寄せているので酷い事にはならないと信じたい。


「??????」


咲だけは相変わらず?が頭の中で犇めいていたが……


京太郎提督発覚事件からおよそ一週間後、この日も残暑が猛威を振るい運動部をグラウンドから駆逐している。
額にうっすら汗を浮かべた京太郎は部室目指して歩いているのだが、いつもならもう既に部活が始まっている時間だ。
見た目によらず生真面目な彼がこの時間に部室に居ないのは久から部活の開始時間を遅らせると連絡が入ったからなのだが……


「それにしても、何で今日に限って一時間遅く開始なんだ?」


疑問は尽きることはないが、部室の前に到着しコンコンと扉をノック。
部室に入るのにノックがいるか?っと思うかもしれないが以前ノックなしで部室に入って咲の着替えを目撃したことがあるのだ。
それ以来、部室に入るときにノックは欠かさない京太郎だった。


「はーい」

「須賀です、入りますよ~」


そういって扉を開ける京太郎。
っと次の瞬間、頭の中が真っ白になって硬直する。
目に飛び込んできた景色が突拍子もなかったので、脳がフリーズしたのだ。


「こんにちはー。軽巡洋艦、大井です。どうぞ、よろしくお願いいたしますね」


オリーブ色のセーラ服と濃い緑色のプリーツスカートをはいた久と、


「生まれは大阪、所属は呉。うち、浦風じゃ、よろしくのぉ!」


肩まで袖を捲ったノースリーブのセーラーに黄色のスカーフ、股下ギリギリのスカートと白いロングの手袋をつけたまこに、


「元気ないわね! そんなんじゃダメだじぇ!」


いつもの改造制服ではなく、清澄のキチンとしたセーラーを来て大きな碇を担いだ優希、


「古鷹といいます。重巡洋艦のいいところ一杯知ってもらえるとうれしいです」


いつもの制服を着ているが、カラコンを入れているのか左右で瞳の色が違う咲、安物のカラコンを使っていないと信じたい。
4人とも服だけでなく、腕や太ももに装着したり、背中に背負うオブジェもばっちり付属している。
そう、まさしくそれは……


「……いつから部室は艦これコスプレ喫茶になったんですか……?」


まんま艦娘のコスプレだった。
久は軽巡洋艦「大井」、まこは駆逐艦「浦風」、優希は駆逐艦「雷」、咲は重巡洋艦「古鷹」のコスをしている。
再起動を果たした京太郎は頭痛いといった感じで手を顔に当て天を仰ぐ。


「あら、提督が喜ぶと思って頑張ったんだけど? どう、よく出来てるでしょ!」

「まあ、みんな元が可愛いからよく似合ってますけど…… ところで和は?」


さらりと木っ端恥ずかしいセリフを言って4人を京太郎。
なんやかんやと言っても彼も男、女の子の似合うコスプレを見れて嬉しくないわけがない。
ちなみにコスプレ娘カルテット、京太郎のセリフを聞いて顔を赤くしている。
和が見当たらないので京太郎がキョロキョロしているところに、ガチャッと音を立てて部室の扉が開く。


「駆逐艦、春雨です! 護衛任務はお任せください」


黒の布地に白襟のセーラに身を包み、頭に赤いリボンのついた白い帽子を被った和が入ってくる。
ご丁寧に、左手にゴツイ飯盒を持参して艤装ももちろん装備済み。
駆逐艦「春雨」のコスプレだ。
元が美少女の和である、コスプレも似合っていて申し分ない、それに京太郎も異存はない。
しかし…… 和が春雨のコスプレをするのは彼のポリシーとして認められないらしく……


「…違う…… 違うぞ、和! お前は間違っている!!」


びしっと春雨和に指を突き付け断言する京太郎。
久もウンウンと頷いて同意しているところを見ると彼女も同意見のようだ。


「そのとおりよ和。ところで、須賀君。和は誰のコスプレをするべきだと思う?」


久のその言葉に、溢れ出るパトス全開で京太郎の演説が始まる。
曰く、和のピンク髪は確かに春雨向きだろう、それは認める。
曰く、和の性格と春雨の性格の間には完全な不一致がある。
曰く、白露型はそんな立派な胸部装甲を持っていない!


「それらを総合すれば、和は乳風(注1)のコスプレをすべきなんだァ!!」

「ブッ飛ばしますよ!? あれだけ熱弁ふるっておいて胸しか共通点が無いじゃないですか!!」

「それが一番重要だろうが!!」

「このおっぱい魔人! クソ提督にもほどがありますよ!!」


ギャアギャアと姦しく口げんかする京太郎と和。
と言うか、和の性格がちょっと変わっている……


「……和に駆逐艦「曙」の性格が混じっちょらんか?」

「コスプレで裏の性格が表に出たのかな?」


まこと優希がヒソヒソと耳打ちしている。
その横にいる久はというと……


「和ー、超乳の浜風も確かに似合うわよー。 でも私は機械に強い面を押して工作艦「明石」が似合うと思うー、あの艦娘も性欲強そうだしねー」


火に油を注いでいた。
すったもんだの挙句、和のコスプレに関しては肉体言語も交えつつ話し合いが続き、春雨ということで決着がついた。
で、京太郎だけコスプレなしかと思いきや、久が部室の奥から旧海軍の第二種略装を持ち出してくる一幕もあり、ようやく部活開始と相成った。
ちなみに、部活中はコスプレしたキャラに成りきることが久の鶴の一声で決められた。

タン…… タン……

「う~ん、京太郎も成長してきたのぉ。次の秋の新人戦はいいとこまで行けるかもしれんのォ」

「そうねぇー、それと浦風。京太郎じゃなくて提督、もしくは司令官」

「はいはい、わーった、大井さん」


ゴゴゴゴゴ……

(京ちゃん…… じゃなくて、提督の方から凄いオーラが……)

(京太郎… 司令官め、デカい手を張ってるじぇ)

ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「……のぉ、大井」

「……なに浦風……」

「なんか、京太郎の周りの空間が歪んどるように見えるんじゃが……」

「……そうね……」


チャ……


「ツモ!」


山から牌をツモり、京太郎が上がりの宣言と同時に手牌をオープンしたその瞬間、
部室の中を眩い光と衝撃波が駆け抜けた。
京太郎たちには何が起こったのか全く分からなかっただろう。
次の瞬間には6人の姿が部室から消えていた。
何故か開いた窓から吹き込む一陣の風が部室に残された雀卓を撫でていく。
京太郎がオープンした手牌は―――

白白白發發發中中中東東東北北

トリプル役満だった。


潮風が心地よく吹き込んでくる初夏の空。
赤いレンガで出来た質実剛健のなかにもセンスが光る建物が海辺に建っている。
他にも工場らしき建物や倉庫らしき建物も何棟か同じ敷地に建っていてここが何かの施設であることが窺える。
赤レンガの建物のある一室に1人の少女が居た。


「そ、そろそろ来られるのですよね……」


少女がそう呟いたその時、赤レンガの建物の上空に異変が起こる。
ある一点が白く光ったかと思うと六つの黒い点が生まれ、建物目がけて一塊になって落ちていく。
空気以外に遮るものの無い自由落下によってグングン加速していく黒い点。
それは―――――


「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉお!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」


――――人の姿をしていた。



視点を戻して少女の居る部屋。


「や、優しい司令官さんならうれしいのですが……」


彼女の言葉が部屋の空気に溶け込むか溶け込まないかと言った瞬間、
部屋の天井が爆ぜた!


「はにゃぁぁぁっぁぁぁああああああああ!」


上空から建物目がけて落ちていた人型の物体が屋根に衝突、天井をブチ抜いたのだ。
この部屋は3階、慣性に従ってそのまま床をブチ抜き、2階の床も受け止めるには役不足。
そのまま1階の床にめり込んだ。
少女は大慌てで直下の1階へ急行する。
その目に飛び込んできたのは……


「そ、そこの彼女…… い、医者を呼ん… でくれると…… うれ…しいなぁ……」

「あ゛ー、死ぬかと思ったじぇ……」


司令官と思しき海軍2種軍装を着た少年と、5人の艦娘と思しき少女。
つまりは咲たちだ。
ドクドクと血は流れているが、相当な高さから強制紐無しバンジーをした割には軽傷……
命に別条は無さそうである。
このあまりに非常識な光景を見て件の少女はパニックに落ちいていた。


取りあえず場は落ち着き咲たち6人と少女は自己紹介をして情報の交換をして事態の把握に努めた。
件の少女は駆逐艦「電」の艦娘だった。
で、現状把握の結果分かったことは

1.清澄の6人は京太郎が作り上げたトリプル役満のエネルギーによって違う世界に飛ばされたこと
2.この世界は深海棲艦が人類の生存を脅かしている“艦これ世界”だと言うこと
3.京太郎は司令官として5人の艦娘を連れてこの鎮守府に着任することが何故か前もって電に知らされていたこと
4.元の世界に還る為には、おそらく京太郎がもう一度ガチの麻雀でトリプル役満を上がる必要があるのではないかと言うこと
5.現在、何故かこの世界では雀卓・麻雀牌が超贅沢品で高級品でまず手に入らないこと
6.海軍の状況は逼迫の一途である、当分の間戦力の補充は出来ない

以上の5つの事だった。


「4も致命的だけど…… 5で完全に詰んだわね……」

「お、大井さん… 一応、大本営は戦果ランキングでトップを取れば雀卓・麻雀牌を支給してくれると言ってますし……」


絶望的な状況に髪を掻き毟る大井(久)にフォローを入れる電。


「電ちゃん…… 所属艦娘6人で戦果ランキングのトップを取れると思う?」

「はぅうっ!」


咲たち女子5人の身体が完全に艦娘に成っていることは電に確認してもらっている。
かなりの葛藤(戦いたくないな~、痛いのはイヤだなぁ~)があったが、帰る為には艦娘として戦線に立つしかないと5人は覚悟を決めていた。
京太郎の言葉にビクッと身を竦ませた電であったが、ハッと何かを思いだし、京太郎たち6人に伝える。
尤も、それは特大の爆弾であったのだが……


「大切なことを伝え忘れたのです。深海棲艦との戦闘ですが…… 真面に攻撃を喰らえばいきなり轟沈するのです」

「そ、その辺はゲームとは違うのォ……」

「なのです。が、あることをすると大破進軍しない限り沈むことは無くなるのです」

「そ、そうなの、電ちゃん?」

「なのです、古鷹(咲)さん。その方法とは……」

「その方法とは……」


電の発言に空いた間でゴクリと唾を飲み込みながら次の言葉を待つ咲たち6人
6人の目を真っ直ぐ見て電の可愛い唇が言葉を紡ぐ。
何故か少しばかり電の頬が赤くなっていた。


「し、司令官さんの精を子宮に収めておくのです」

「……は?」


今、電は何と言った?
司令官の精を子宮に収めておく?
司令官とはこの場合、京太郎のことだ、精を子宮に収めるとは×××をするのであって……
つまりは京太郎と夜のベットでくんずれほっつれ……
此処で6人の思考は限界を迎える。
ボンと言う音共に倒れる6人、こんなことで果たして元の世界に還れるのであろうか……?



―――カン―――