誰得とか言われなくてよかった。
それじゃ投下していきます。


私、京太郎は今苦境に立たされています。
それは何故か?
簡単なことです。
怖そうな方に絡まれているからでございます…。

京太郎「ああ、あのあの、俺に何か御用でしょうか…?」

だから、当然俺も何を話したものかと詰まる。
…なんでこんなことに。
と思っていた矢先、お姉さんの口が開いたのであった。

久 保「……」

なんで、こんなことになっているかを説明すると―
珍しく部活のない偶の休日、娯楽を求めて一人のんきに町中を歩いていた所、急に肩を掴まれた。
何事かと思い振り向くと、綺麗で怖そうなお姉さんが肩を掴んでいた…、という話である。
正直この人に覚えはないし、絡まれるようなこともした覚えがない。
そして、事情を聞いてみても複雑な顔をするばっかりでなにも答えてくれない。

京太郎「…」

だから、当然俺も答えに詰まる。
…なんでこんなことに。
と思っていた矢先、お姉さんの口が開いたのであった。

久 保「お前、清澄の生徒だろ?」

へ?
ちなみに今日の格好は私服。
なので、当然見た目で清澄だとわかるようなことはないはず。
ということは、この人は以前自分があったことのある人物なのだろうか…?
そんな感じで考えていると…。

久 保「さっさと答えろ!! オラァ!!」

京太郎「は…はい!!
    清澄高校1年 男子麻雀部に所属しています、須賀京太郎といいます!」

久 保「よーし! それでいいんだ!
    まったく…。 聞かれたら、さっさと答える! わかったな?」

怖ぁ…。
なんなんだよ…。


京太郎「あ…、あのー…。
    まことに申し訳ないのですが、ど、どこかでお会いしたことがあったでしょうか…?」

久 保「返事ィ!」

京太郎「は、はい! わかりました!!」

久 保「…麻雀部のくせに私のこと知らないのか?」

京太郎「すみません…」

久 保「まぁいい。 私もあんたは見かけたことがある程度の認識だからね」

京太郎「はぁ…」

久 保「私は、風越麻雀部のコーチ、久保貴子。 知ってる?」

京太郎「すみません…」

久 保「はぁー…、せめて相手チームのことくらい調べなさい」

京太郎「今後は気をつけます」

久 保「おまえ、随分と女子にこき使われてたじゃないか」
   「だからやけに目についた」

京太郎「あはは…」

久 保「おまえはマネージャーなのか?」

京太郎「いえ、男子部員です。(ってさっき自己紹介したよね?)
    男子部員は俺一人なんで、大会じゃ目立たなかったかもしれませんが」


久 保「ほう、経験者?」

京太郎「初心者です…」

久 保「個人戦の結果は?」

京太郎「うっ…、一回戦敗退です…。」

久 保「悔しくないのか?」

京太郎「当然悔しいですよ…。」

久保先生はやけに怪訝そうな顔を浮かべた。
どうやらなにか引っかかっているようだった。

久 保「上手くなりたくないのか? 勝ちたくないのか?」

京太郎「思うに決まってます」

久 保「なのに練習しないのか?
    こうしているうちに全国の強豪たちは腕を磨いているんじゃないのか」

京太郎「うっ…、そ、それはそうなんですけど…
    でも、本当に久しぶりの休暇ですし、たまには羽休めとかいうか…
    ダメですかね…?」

これを聞いた久保先生は『はぁ…』ため息をついたようだ…。

久 保「…ダメじゃない。 それを良しとするかはおまえ次第
    ただ、あんたが本気で全国やらを目指すというのなら、こんなことしてる場合じゃない」


京太郎「……」

久 保「全国出場している猛者と地区大会初戦敗退しているおまえ
    この時点で実力は尋常じゃないくらい差がある
    それを埋めることは並大抵の努力じゃ足りないんだ」

京太郎「……」

久 保「麻雀は運の要素が強く関わる。 が、それと同じくらい経験も重要な要素だ
    初心者なら尚更練習を………!!」

流石に言い過ぎたと感じたのか、久保先生は言葉を詰まらせた。

久 保「いや…すまん。 ちょっと熱くなった
    見ず知らずにこんなことを言われて気分を悪くしただろうに」

京太郎「いえ、おっしゃられていることは全部正しいですから。
    自分が甘かったんだと思います。
    わざわざ、他校なのに、気にかけていただいてありがとうございます」

どうしても言葉に棘が入ってしまう。
見ず知らずの、自分の事情などなにもわかってないような人にこんなことを言われれば当然…。




……違う。
それは表面上だけの怒りだ。
久保先生の言うことは正しい。
俺は自分で強くなることを放棄しているんだ。
こんなことに言われなきゃ気付かないなんて…

久 保「…あー、その、なんだ。 詫びってわけじゃないんだが…
    清澄には指導者がいないと聞く」

京太郎「あ、はい」

久 保「初心者じゃなかなか右も左もわからないだろう
    一応、全国へ行く程の部員はいるが、あいつらこそ全国の準備で忙しいだろうしおまえになかなか構ってられないだろう?」

京太郎「そうですね…。 まぁ地区大会が始まる前も雑用はこなさなきゃいけなかったですが…」

久 保「そこでだ、私が麻雀教えてやる」

京太郎「へ?」

久 保「私も生徒の指導をしなきゃいけないから、さほど時間があるわけじゃないが…な
    まぁ、メールなりなんなりでアドバイスが欲しいといえば教えてやる」

京太郎「あ、あの…、いいんですか? 一応、俺ライバル学校の生徒ですよ?」

久 保「お前は女子なのか? 違うなら大したことじゃない」


風越のコーチということは、当然風越の生徒を指導しているということだ。
団体戦では、惜しくも敗れはしたものの長野で堂々4位という成績を残している。
そしてその風越には女子個人戦1位だった風越のキャプテンもいる。
そんな自分からしてみれば天上人とも言える人たちの指導をしている人がわざわざ俺を…?
俺が強くなれる…!
そう考えるだけで胸が熱くなる。
もう答えは決まっていた。
俺は勝ちたい。
雑用なんかよりも、麻雀で勝ちたいんだ。
このチャンス、逃しちゃいけない。


京太郎「……お願いします。 俺に麻雀を教えて下さい!!」

久 保「よろしく。 ひとつ言っておくが、私はスパルタだからな」

京太郎「覚悟の上です。 俺は強くなりたいんです」

久 保「そうか…、じゃあこれを受け取りな」

京太郎「名刺ですか?」

久 保「連絡先が書いてある。 困ったことがあったらなんでも連絡しなさい。
    でも、プライベートなことは控えろよ」

京太郎「ありがとうございます! よぉ~し!! 燃えてきたぞぉ!!」

久 保「高校での3年間。 どう過ごすかはおまえ次第だ。
    せめて、後悔のないように過ごしなさい」

京太郎「はい! わかりました!
    それでは、そろそろ失礼しますね!」

久 保「ん。 なぁ、一つだけ聞かせてくれないか」

京太郎「はい?」




久 保「麻雀は好きか?」



そんなの決まってるじゃないですか




「大好きです!!」

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