須賀京太郎が現在通っている大学近辺のアパート。

一人暮らしのために借りた京太郎の自室。

うららかな春の陽射しが差し込んだいる、そこのベッドの上。

今正に目が覚めた京太郎は、混乱していた。

自身が置かれている状況に、である。

寝る前に掛けていた筈のタオルケットは剥がされている。

これはまあ良いだろう。些細なことだ。問題は……。


「きょ~うちゃん」


そう、最大の問題は、自身に馬乗りになり、すりすりと首筋に頬擦りしてきている咲だった。

洗髪料の爽やかな香りと咲自身のどこか甘く感じる匂いが、鼻腔を擽ってくる。

女の子は、いや、咲はどうしていつもこんなに良い匂いがするのだろうか……なんて、ふと頭の片隅にに過った。


「いやいやいや、咲、ちょっと待てって」


この体勢はまずい。非常にまずいのだ。

京太郎はいたって身体健康である。

必然、いわゆる朝の生理的現象が発生しているわけで。


「いまさら気にしなくていいのに」


股関に跨がる形となっている咲の腰が、小さく前後に動く。

だからまずいって、と京太郎は身を固くした。

トランクス越しに伝わる、下着とその先にある柔らかな感触。

さらにはその温もりが京太郎の理性を凶暴なまでに削ってきている。

「気にするなっていう方が無理だって!」

「あっ、やん……そんなに動いたら駄目ぇ」


上体を起こし、退かそうと両手を伸ばそうとするも、咲が左右それぞれ指を絡めるようにして、押し返してくる。


「京ちゃん……嫌?」


庇護欲を誘ってくる咲の悲しげな表情と声音。

演技だ。京太郎はわかっていた。長い付き合いなのだから。

しかし、わかってはいても抗えるかどうはまた別の話である。

咲とて手慣れたものだ。

何だかんだ言って彼女にはだだ甘の京太郎である。

こう振る舞えば、彼の方から折れることを熟知していた。


「嫌ってわけじゃないんだけどな……」

「あ、もしかして、こっちからなのが引っ掛かるとか? 京ちゃんから攻めたい?」

「直球過ぎるだろ……もうちょっとこうオブラートに包んでだな」


文句を言ってみるも、体の一部分は実に正直であった。

咲もそれは体感しているのだろう、艶やかに笑むと同時に、仔猫がじゃれる様にして頬や唇に何度も口付けを落としてくる。


「いいよ、京ちゃんの好きにして」

「……咲」

「あっ……」


そんな感じで、恋人達の春盛りめいた休日は幕を上げたのだった。



続かない