空から一滴の雨粒が落ちる。その一粒が雨雲の堰を切ったように、水音はすぐに轟音になっていく。

「…須賀君、どうする? 走って帰ってもいいけど」

「そしたらもっと濡れちゃいませんか…風邪、引いちゃいますよ?」

「今更って気もするけどね。髪の毛、もうグッショグショだもの」

そう言って髪を撫でる部長の姿はどこか艶やかで。見れば見るほど冷えた体が熱を帯びそうで、そっと目を逸らした。

「あーあ…須賀君、髪留めとかゴムとか持ってない? 髪が首や背中にかかるとすっごい気持ち悪いのよ」

「んなこと言われても」

言わんとすることは分かる。俺も水を吸った前髪が重くて、今すぐ切りたいくらいだけど…それを部長にいう訳にはいかないよなあ。

「仕方ないわねえ…よっと」

「もしかして、ずっと手で掻き上げとくつもりですか?」

「だってこれしか無いじゃない? ねー、腕疲れるから、代わりに持っててくれない?」

「女の子がそんな簡単に髪を触らせていいんすかね」

ぽたぽたと落ちる滴が木陰を濡らす。重そうな髪は、その陰から白い首筋を覗かせて。

今にも触れそうなくらい近くで、手にその熱を感じながら。

「雨…止まないっすね」

「そうね。もう少し時間掛かるかも…」

髪の毛が重くて、手が少しだけ、肌に触れる。

じっと俺を見つめる部長の瞳。無邪気に歪む口元から出る楽しげなハミングが、雨音の中で響いていた。



カンッ